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2008.06.01
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カテゴリ: 映画/青春

「女の人がいるのね。・・・ごめんなさい、余計な事を(言ってしまったわ)。」
「成り行きさ・・・成り行きでそうなった。」

失われてゆくものの象徴や、喪失感を描くのを得意とする作家がいる。
言わずと知れた、村上春樹である。
この村上文学に触れたことのある者ならば、「卒業」の背景、テーマは自ずと理解できるはずだ。
酒とドラッグとセックスの混沌とした60年代。
行き場のない鬱屈とした精神を、若者たちは持て余していた。
漠然とした将来への不安や、急激な世相の変動に取り残されていく焦燥感。

逃避願望を埋め合わせするのには、酒に溺れるか、ドラッグで身を滅ぼすか、あるいはゆきずりの誰かと無意味な性交を繰り返し、快楽に耽ることが何よりの対策だった。
社会のモラルなんて関係ない。
その場しのぎの、幼稚なゲームを続けているに過ぎない。

舞台は60年代後半。
親類縁者の集う、大学卒業記念パーティーで、ベンジャミンは皆から祝福を受ける。
だが彼には漠然とした将来への不安や、現状から回避したい苦悩を抱えていた。
そんな折、両親の友人であるミセス・ロビンソンから誘惑を受ける。
いったんはその誘いを断ったものの、彼の中に眠る肉欲や若さの塊が加速を増す。
親子ほどの年齢差があっても、ベンジャミンの飽くなき快楽への欲望はやまず、毎晩足しげくホテルへ通う。
愛息子ベンジャミンの背徳を知らない両親は、友人であるロビンソン夫妻の一人娘、エレーンとの交際を薦める。
だがエレーンの母親は、ベンジャミンにとっての不倫相手。


この作品を単なる青春映画と捉えてしまうのは、あまりに短絡的すぎやしまいか。
ラストは、ベンジャミンが教会に乗り込んで、エレーンを連れ出しバスに飛び乗るシーンだが、その二人の表情に注目していただきたい。
決して、決してハッピーエンドではない。
二人の未来が、前途多難であることの象徴に他ならないからだ。
非常に文学性に富んだ、優れた名画である。


【監督】マイク・ニコルズ
【出演】ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2008.06.01 06:23:13 コメントを書く
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