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2013.08.05
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テーマ: コラム紹介(119)
カテゴリ: コラム紹介
20130805

【北國新聞 時鐘】

松井秀喜さんを「風(かぜ)の人」と呼びたい。高校生のころからきょうまで、たくさんの「風」を送ってくれた。

引退会見で最高の思い出にあげた長嶋(ながしま)さんとの素振(すぶ)り練習(れんしゅう)。その仕上(しあ)げは「風」だったという。師弟(してい)2人にしか分からないバットが空(くう)を切る音。野球はバットとボールのスポーツだが、バットの切る風の音がすべてだと知った。球史(きゅうし)に残る名言(めいげん)だ。

5連続敬遠(けいえん)。グラウンドにメガホンやジュースの空き缶(かん)が乱(みだ)れ飛んだ。騒然(そうぜん)となった球場の中を淡々(たんたん)と一塁へ向かい始めた瞬間(しゅんかん)、甲子園に静かな風が舞(ま)ったのを見た。もちろんニューヨークヤンキースの優勝を導(みちび)いたあの日の快打(かいだ)には野球の神さまの疾風(しっぷう)が吹いた。

「未完成」の人だったとも思う。五つも敬遠されながら勝利につながらなかった高校時代。MVPを得ながらもヤンキースからの移籍(いせき)。昨日のセレモニーは「引退式(いんたいしき)」ではなくて、完成へ向かっての「出発(しゅっぱつ)式」だったと思う。

男の人生80年。まだ前半戦を終えたばかりだ。希代(きだい)のヒーローは後半戦にどんな風を巻(ま)き起(お)こすのだろう。バットを置いて歩き出した青年の明日を祈(いの)る。


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実に爽やかで印象深い引退セレモニーであった。テレビを見て熱いものがこみ上げた人も少なくないのではないか。
松井さんは、所作を見ていても、インタビューを聞いていても、安心していられる。それが実にうれしい。礼儀を身につけているのだ。
美輪明宏さんは「当たり前のことを当たり前にできる」と褒め、作家の伊集院静氏は著書で絶賛する。皆、松井さんを見ていると安心できるのだ。

さて、残念ながら私は石川には縁もゆかりもない人間だが、北國新聞の「時鐘」は最も大好きなコラムである。読んでいて安心していられるのである。読者に対して礼儀を失することが無い。
松井さん同様なのだ(^^)

してみれば、時鐘も松井さんも石川であり、彼の土地柄が何か影響しているのであろうか。これが加賀百万石のもつ「歴史と伝統」かしら。

それはさておき「風の人」とは何ともオツではないか。サスガである。
少し加説をお許しいただければ、その風は藤原正彦さんの言う「日本の美風」に通じるものであるはずだ。松井さんにひと昔前の青年を見るのは私だけではないと思うのだが、それは松井さんのまわりに吹く美風を感じるからではないか、そう思ったのだ。
いずれにしても、コラム氏のようにこれからどんな風が吹くのか楽しみだ。

松井さんに関して、2012年6月9日の別府育郎氏(産経新聞 論説委員)のコラム(抜粋)をひく。私は「そういう男である」の一文にシビレた。


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6年前の秋、全国でいじめに悩む子供の自殺が相次いだ。当時社会部で、「一人でも思いとどまってくれる紙面を作れないか」と話し合い、広岡に相談した。

移動の車中で依頼を聞いた松井は「いじめている子と、いじめられている子、どちらに書けばいいのだろう」と悩み、260字のメッセージは2日後に届いた。

《もう一度考えてほしい。あなたの周りには、あなたを心底愛している人がたくさんいることを。人間は一人ではない。一人では生きていけない。そういう人たちが悲しむようなことを絶対にしてはいけない》

呼びかけは、翌日の産経新聞1面に掲載された。



「自分から勇気づけたいなんておこがましい気持ちはありません。ニュースで僕が打っているのを見て少しでも元気になってくれる人がいたらうれしい。少しでもいいプレー、少しでもいいニュースをお伝えしたい」

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ご参考まで。
現在、産経新聞「話の肖像画」で別府育郎氏の『現代最高のホームラン打者・松井秀喜』が連載中である。
松井さんを語るとき、「そういう男である」が最も適した言葉であることを確信した。

20130124aisatsu





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最終更新日  2013.08.05 12:51:11
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