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2014.05.25
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カテゴリ: 映画/ヒューマン
【わが母の記】
20140525

「雨がやんだ。校庭には沢山の水たまりが出来ている。太平洋 地中海 日本海 喜望峰 遊動円木の陰。だけどぼくの一番好きなのは、地球のどこにもない小さな新しい海峡。おかあさんと渡る海峡。だけどぼくの一番好きなのは、地球のどこにもない小さな海峡。おかあさんと渡る海峡、、、」

この映画を心行くまで堪能するには、やはり何と言っても井上靖の『しろばんば』を一読しておいた方が良さそうな気がする。
『しろばんば』というのは、井上靖自身の幼少年時代を描いた自伝小説で、その中に登場する“おぬいばあちゃ”という存在が、映画『わが母の記』にも名前だけ度々登場する。
この“おぬいばあちゃ”という存在が、井上靖にとって、あるいは井上靖の実母にとって、どのような位置関係にあり、どのような感情を注いで来た人物であるのかを読み解いておくと、『わが母の記』は一段と深みを増しておもしろく感じられる。
(当ブログの【読書案内】にも『しろばんば』の感想と簡単なあらすじを寄せているので、興味のある方は参考にご覧下さい。※ コチラ から)

井上靖の実母が暮らした伊豆湯ヶ島は、自然美にあふれ、山の匂いと、川のせせらぎと、みなぎるお日様の陽射しの下、ゆっくりと時が刻まれている。
清らかで混じりけがなく、誰かの不実の行為を詰るものではなく、淡々としていて、それなのに、押し寄せるような感情の波に視聴者は一気に呑み込まれていくに違いない。

作品のストーリーはこうだ。
舞台は、静岡県伊豆湯ヶ島。

父の病状が落ち着いているため、いったん東京の自宅へ帰ることにした洪作だが、帰り際、実母の奇妙な行動に唖然とする。
東京の本宅では、家族総出で検印作業に精を出していた。
その晩、湯ヶ島の実家から父の訃報が伝えられる。
洪作は、妻と3人の娘をつれ帰郷。
湯ヶ島で葬儀一切を済ませたものの、実家で母の面倒をみている妹の志賀子から、母のひどい物忘れや言動に手をやいているという愚痴を聞かされる。
洪作は幼少年時代、自分は母から捨てられたのだという苦い記憶があるため、なかなか素直になれずにいるのだが、加齢による認知症の母を前に、少しずつ気持ちに変化が現れるのだった。

この作品の見どころは、改めて言うまでもないが、やはり何と言っても洪作の母・八重に扮した樹木希林の演技であろう。
コメディ・ドラマでは度々老け役を演じて来た樹木なので、違和感はまるでなく、むしろハマリ役として圧倒的な存在感を誇っていた。
2000年代に入ってからの出演作に、『東京タワー~オカンとボクと時々オトン~』があるが、この時も見事な母親役で恐れ入った。
樹木希林は文学座出身で、その個性的なキャラは芸能界でも有名だ。
常に偽善を憎み、見せかけの憐れみや優しさ、歯の浮くようなおべっかを軽蔑している。

年を経て、ますます演技に狂信的なリアリティーを増したように思えるのは、私だけだろうか?
一方、ほんのチョイ役で三国連太郎が病床の父に扮して登場するのだが、これまたスゴイ。
セリフはなく、ただ、主役の役所広司の手を握り、雰囲気で何かを感じさせるだけの役どころだが、さすがの貫録。
残念ながら、三国はこれが正真正銘の遺作となってしまった。

邦画のあるべき姿が全て凝縮された『わが母の記』は、間違いなく2012年の大ヒット作品だ。




20121008
コチラ から


20130124aisatsu





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最終更新日  2014.05.25 06:03:56


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