「Upward Spiral」(2016)以来のブランフォード・マルサリスの新作。 最近のブランフォード・マルサリスは耽美的な演奏が多く、熟成が進んで、腐敗寸前の果物のような危ない雰囲気を感じさせる。 反面、ジャズのガッツが不足しているようにも思える。 今回も同じ傾向かと思っていたが、予想はいいほうに裏切られた。 「Dance of the Evil Toys 」は最近のブランフォードの演奏では聞かれなくなった激しい表現と,虚無的な表情のコントラストが絶妙だ。 現在のブランフォードのジャズ界での立ち位置は分からないが、こういう激しいプレイを聴くと、「腐っても鯛」という言葉を思い出してしまう。 もっとも、来年には60歳になるわけで、衰えても何ら不思議はない。
カルデラッツオの「Conversation Among the Ruins 」はリリカルなナンバー。 あくまでも清冽で、耽美的でないところがいい。 遺跡の対話?というタイトルから伺えるような寂しさも感じられる。 アンドリュー・ヒルの「 Snake Hip Waltz 」はコミカルなワルツでモンクの作曲といっても、おかしくない。 ブランフォードの火の出るようなソプラノ・ソロが聞きもの。 「Cianna」は、カルデラッツオ作のラテン・バラード。 曲自体は悪くはないが、まったりとした感じで、他の曲に比べると刺激が少なく、物足りない。 エリック・レビスの「Nilaste」は半音階的なメロディがオーネット・コールマンの作品を思い出させる。 ブランフォードの「Life Filtering from the Water Flowers」はこのアルバムのハイライト。 悲しみを帯びて耽美の極致を行くような演奏で、今にも崩れ落ちそうな浪漫の香りが感じられる。 キース・ジャレットの傑作「Death & The Flower」(impulse)の雰囲気によく似ている。
Branford Marsalis / The Secret Between the Shadow and the Soul
1. Eric Revis:Dance of the Evil Toys 2. Joey Calderazzo:Conversation Among the Ruins 3. (Andrew Hill:Snake Hip Waltz 4. Joey Calderazzo:Cianna 5. Eric Revis:Nilaste 6.Branford Marsalis: Life Filtering from the Water Flowers 7. Keith Jarrett):The Windup