シンセのOB-6とマーク・ジュリアナのドラムから楽曲を得たという。 一聴パット・メセニー・グループのサウンドに近いと思ったが、似ているのはサウンドだけ。 ジャズ色は希薄で、もっと広範囲な領域の音楽を志向しているような感じがする。 ユダヤ教やキリスト教に理解があれば、このアルバムを深く理解できるだろうが、宗教に無縁な当ブログには想像の域を出ないのが悔しい。 「The Prophet Is a Fool」のように子供と大人の会話が入ったプロテスト色の高いナンバーもあるが、全体的には宗教的な清冽な曲が多い。 そこにジャズ、エレクトロニクスなどが混じっていて、トリップ・ミュージックのような妖しい音楽になっている。 当初メルドーとジュリアナのデュオかなと思っていたが、出入りはあるにしても、ミュージシャンが入れ替わり立ち替わり参加しているので、当初の予想とはいい意味でだいぶ違ってしまった。 ヴォイスが参加しているトラック(track 1,3,5,7,8,9)が何ともすさまじい迫力。 迫力だけでなく癒しが感じられるのもヴォーカル入りのトラック。 このアルバムを聴いて以来、この肉声がなぜ癒しに感じられるかを考えている。 楽器の音ではそう思うことはないのに、肉声だと違う。
ヴォイスの歌うメロディーが賛美歌のような清らかなメロディーなことも、この感想になった一因ではある。 track1,6に参加しているアンブローズ・アキンムシーレのトランペット・ソロも切れる寸前といった感じでかなり説得力がある。 「The Garden」のサックス・ソリも切れる寸前のような凶器が感じられ、かなり危ない世界だ。 「The Prophet Is a Fool」のMichael Thomasのアルト・ソロもほとんど狂気の世界だ。 この中では「Proverb of Ashes」がかなり風変わり。
SOIL & PINMPSのアジテータのような感じだ。 後半のメルドーの一人二重唱はスケールが大きく印象に残る。 「Prophet Is a Fool」はホーンが複数入っていて最もジャズ色の濃い作品だが、一風変わっている。 大勢の人たちのシュプレヒコールと子供と大人の会話、続く中近東風の音楽。木管のソリ、プッツンしそうなテナーソロ。 脈絡のないような音楽だが、単調なピアノの和音とせわしないドラムスやホーンの音楽は聴き手の心をざわつかせる。 このアルバム中随一の聞き物だろう。 タイトル・チューンでも冒頭語りが入るが、これはメルドーの声。 このトラックではメルドー単独の演奏。 ヴォイス、ピアノなど9種類のパート(何とドラムスまで!)を担当して、独特の世界を創っている。 技術が発達しているとはいえ、これだけ壮大な世界を単独で創っていることには驚きしかない。 ただしメロディーは月並み。 「Born to Trouble」もメルドー単独の演奏で、コーラスが実に清冽で感動的だ。 短いトラックだが、癒しを感じさせる作品。 「Make it All Go Away」はメルドーとジュリアナのほかにはベッカ・スティーブンスとカート・エリングのヴォイスのみ。 カート・エリングが大きくフィーチャーされている。 穏やかな音楽だが、温くてアルバムの中では平凡な出来。
1. The Garden 2. Born to Trouble 3. Striving After Wind 4. O Ephraim 5. St. Mark Is Howling in the City of Night 6. The Prophet Is a Fool 7. Make It All Go Away 8. Deep Water 9. Proverb of Ashes 10. Finding Gabriel
Recorded at Bunker Studios,Brooklyn, between March 2017 and October 2018