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2005年05月22日
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カテゴリ: 小説
 それから私はひどく冷静に少年Aに接した。
 少年Aの作ったお好み焼きはほとんど味がしなかった。きっと少年Aがお好み焼きを作るのが下手でソースを入れすぎたせいだと思う。きっと少年Aがその夜は私に妙に優しくて、めずらしい笑顔をふりまいていたせいだと思う。
 だから私は少年Aと話したことをほとんど覚えていない。少年Aはいつもより口数が多く、どうでもいいことばかり話した。そのわりには自分がどうしてピアスを耳たぶにはめたかということには一切触れなかった。私はそのことを訊こうとはしなかった。
 だって、私と少年Aはしょせん恋人同士ではないのだから。少年Aはあくまで少年Aで、私にとっては名前すらどうでもいい存在なのだから。
 私はべつに少年Aと二度と会えなくなってもさみしくなんかない。少年Aがどこで恋愛をしようともそれは少年Aの問題だ。
 そう、私は二十九歳の大人の女だ。十七歳のガキとつきあっているのは、単なるなりゆきだ。少年Aがまた手首を切って、自殺未遂をしないように私は見張っているだけだ。
 生意気な少年Aは、それなりに慣れた仕草でその夜も私を押し倒した。
 少年Aは丁寧な手つきで私の服を脱がせ、丹念に私の体を舐め回す。
 私はこんなガキにリードされるのがいやで、少年Aのものを口にふくんだ。

 少年Aが眉をひそめて、下目づかいで私に言う。少年Aはいつも私にされると
こんな表情をする。
 だが、目の色が少し違う。
 いつもは口ではそう言っているけれど、してもらえる興奮を隠しきれないのに
その夜は本気で困っていた。私はその理由を問いたくなる口を少年Aの肉塊でふさぐ。
 舌でゆっくりつつんで、軽く吸ってやると少年Aはいつものように鼻にかかったあえぎをもらす。きつく目を閉じて、腰をゆらす姿は女の子みたいだ。私はこうするといつも少年Aを犯しているみたいな気分になる。いつも私は満たされる。少年Aにとって、私はなくてはならない存在で、少年Aは私にしかこの器管をゆだねたことがないと思えるから。
 私と違って、少年Aは私以外の異性しか知らないのだ。
 だが、その夜の少年Aのいつもは塩辛くて、汗のにおいをはなっているそこは
シャボンの匂いがした。
 私はそれが悲しくて、顔を動かす。少年Aの泣いているような声が私によるものだと思うことで、私は自分に生まれてくる疑念を消す。
 きっと少年Aは偶然、ここにくる前に入浴したんだ。何事もすぐ気にする性質の少年Aだから、きっと今の季節、自分が汗くさいのではないかと気になったのだろう。ピアスだって、単なるファッションに違いない。そうだ、私に見せるためのおしゃれなのだ。

 私の中でもうひとりの私が言う。 
 私はその声に耳をそむけたくて、一生懸命少年Aを吸う。とりあえずこうしている間は、少年Aは私のことを考えてくれているはずだから。

 翌朝、ホームルームの時間に教卓には小さな箱が置かれていた。ハート模様の包装紙に、ピンク色のリボンがかけられている。
 私が出席簿を置いて、その箱に見入っている間に、日直が間延びした号令をかけた。
 私は異変を感じた。ふだんなら教室はおしゃべりの声で騒々しいはずなのに、その日は妙に静まりかえっていたからだ。

 ただ一人、一ノ瀬だけがまっすぐに私を見つめている。一ノ瀬の白目は朝の光を白く反射していて、そこだけ潔い空気が発散されているようだった。
 私は嫌な予感がして、その小箱を無視することにした。どうも悪い予感がする。ひょっとして、箱の中にはとんでもない代物ーーーーたとえば小動物の死骸か何かが入っているのではないか。以前も私はプレゼントと称して、机の中に死体写真を入れられたことがあった。どこかの事故現場を撮影したものであろう、車にひかれて脳漿を巻き散らしたその写真に私はとうぶんの間、ケチャップがかかったものが食べられなかった。
「ねえ先生、その箱開けてくださいよ」
 学級委員がお下げ髪をゆらしながら小首をかしげて言う。
「そうだよ、俺らのプレゼントなんだからよォ」
 飛んでくる声に、私はできる限りの威厳ーーーーそんなものあればの話だけれどーーーーを込めて言った。
「ホームルームが終了してから、ゆっくり見せてもらうわ」
 私の言葉に一ノ瀬以外の生徒は一斉にブーイングした。
「生徒の好意を無視するって言うのかよ~」
「うわー、すっげーエラそう!」
「俺ら、淳ちゃんの授業、ボイコットしてやろうか? ついでに学校の目安箱に、
淳ちゃん先生が生徒の気持ちを踏みにじりましたって書いてみたりして~」
 情けないことに、私はその生徒の言葉に真剣におびえた。職員会議ではしょっちゅう生徒が問題を起こしているクラスの担任がやりだまに上げられる。そうして他の教員から嫌みを言われたり、バカにされたりする教師もめずらしくない。
 ただでさえ教室でこれだけいじめられているのに、この上職員室でも立場がまずくなると、私は退職するしかなさそうだった。
 幸い、生徒たちのいじめはまだ表沙汰になっていない。それはすなわち彼らのやり方がそれだけ如才なくて陰湿だということでもあるが。
「みんな、静かにして!」
 私は叫んだ。声が震えているのがなさけない。
「じゃあ、あなたたちの好意を受けて、プレゼントを開けてみることにします。これが終わったら、さっさとホームルームに戻るわよ。いいわね?」
「は~い」
 生徒たちは悪のりそのものの声でユニゾンした。
 私が好意、という単語を口にした途端、生徒たちはニヤニヤ笑いをしていた。
 顔を見合わせて笑っているものもいる。きっと私が自分たちの悪意に気づいていないとでも思っているのだろう。
 わかってます、それくらい。けど、鈍感なフリをしていなければ、私はとっくの間に教師をやめていた。少年Aみたいに手首を切っていたかもしれない。私にはもう手首を切れるほどの自由も残されていないのだ。私が手首を切ったら、きっと生徒たちや同僚の教員たちはめざとく私の傷跡を見つけるだろう。そして情緒不安定の教師として、この学校から追い出そうとするだろう。 
 もしそうなったら、私は一人暮らしの生計が立てていけなくなる。実家に戻って、両親に一家の恥として扱われなければならなくなる。若くない人間の傷なんて、今の世の中にとってはやっかいごとでしかないのだ。
 私は嫌いな食べ物を早くたいらげてしまおうとする子供のように、小箱を手にとってリボンを取った。包装紙をはずすと、瀟洒な紙ケースが目に入った。そのケースの意外なかわいらしさに意表をつかれながら、私はふたを開ける。
 そこに入っていたのは、一式のピアスだった。
 さっきから私をじぃっと見つめている一ノ瀬が耳たぶにつけているのと同じ銀色の輪っかの形をしたピアスだった。そう、少年Aがはめているのと同じピアスだった。
 その箱には、ハート型をしたメッセージカードが添えられていた。開いてみると
カードにはこう書かれていた。
”一ノ瀬ばっかりひいきしてんじゃねえ、このバカ女。どうして一ノ瀬だけピアスOKなんだよ? てめーもピアスしてみたら? だったら少しはマシな人生送れるかもしれねえけどよ。まあ、てめえみたいなブスババァ、死ぬしかねえけどな”
 少しはマシな人生。
 赤いサインペンで書かれたその汚い文字が、私の中の何かを呼び起こした。
”ねえ、君もピアスでもしてみたら?”
 かつて私に、このカードを書いた人間と同じことを指摘した者がいた。言い方はもっとやわらかく、常識的だったが。
 その人間とは、私の初めての男だった。大学時代、私が手首を切ってまで引き留めようとしたあの男は、私にそう言ったのだ。ピアスでも入れて、少しはおしゃれしたら、変われるかもしれないよと。
 たしかあの時は私は「ピアスは痛いからイヤだ」とか何とか言ったと思う。本当はピアスホールを開けるのが怖いからいやなのではなくて、私を変えようとしているあの男が悲しかった。
 君はそのままでいいよ、と私は言ってほしかったのだ。男は私に自分の提案をつっぱねられると、つまらなさそうに口をとがらせた。もしかしてあの時、すでに男には新しい女がいて、それは私の単なる捨てられる前兆だったのかもしれない。
 私は置いていかれたのだ。
 私はピアスの入った箱を手にしたまま、一ノ瀬に目を向けた。今は髪の毛に隠れていてよく見えないが、一ノ瀬の耳にはあのピアスがはまったままだろう。だから生徒たちはこんな皮肉な贈り物を私にしてきたのだ。
 本来なら、攻められるのは私ではなく、校則を堂々と破った一ノ瀬のはずだ。それなのに今、生徒たちが「なんとか言ってみろよ」と私ばかりをなじっているのは、ひとえに一ノ瀬と真っ正面から衝突するのが怖いからであろう。
 一ノ瀬にはそういった強さがあった。
 強くなりたい。
 私は思う。きっと一ノ瀬は強いから、誰にも攻撃されないし、他人に好かれるのだ。
 私が一ノ瀬のようになれるとしたら、どうすればいいだろう。





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最終更新日  2005年05月24日 01時04分08秒
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