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2006年03月30日
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カテゴリ: 小説
 ハイヒールの踵を鳴らして、奈津子は黒服たちに拘束されたままの千晴につかつかと歩み寄った。ニヤリと笑ってから、千晴の顎をつまみ上げる。
「このフィルムを手に入れるために、この部屋に忍び込んだのね。ちゃんと監視カメラに映っていたわ。でもどうしてこれがここにあると分かったのかしら?」
「……智里さんが教えてくれたんだよ。オレは憑巫だからさ」
 千晴は奈津子をにらみつけた。震えそうになる声が情けないと思う。ここで自分がしっかりしなければ、死してなお実里を助けたいという智里の想いは報われないのだ。
「憑巫?」
 ハッと声を上げて、重文は笑った。それまで悪事の発覚におびえていた自分を払拭しようとするかのような笑いだった。
「そんなインチキにだまされるのは、実里くらいのものだよ」
「そうでもないみたいよ」
「奈津子?」

「この坊やがフィルムの在処を知ることができるとしたら、智里の霊が教える以外に方法はないもの。なぜならこのことは、私たちだって知らなかったんだから。きっと智里は自分が生きているうちに、このフィルムを証拠にして私たちのことを告発しようとしたのだけれど間に合わなかったのでしょうね。だって私たち、あの娘に飲ませる毒の量を途中からぐんと増やしたじゃない。智里が何か感づいている様子だったから」
「お、お前ら……腐ってる」
 憎悪を込めて、千晴はつぶやいた。
「あら、そうかしら」
 おどけた調子で、奈津子が肩をすくめる。背後で重文がおやおや、と笑っていた。まるで子供をからかう大人のような態度だった。彼らにとって智里を殺したことは何の罪悪感もないのだ。胃がむかつくほどの怒りを感じ、千晴は唾を吐きかけた。奈津子の念入りに化粧をほどこした顔にそれがたたきつけられる。
 赤い唇をねじ曲げてにぃっと笑って、奈津子は千晴を平手打ちした。千晴が顔をしかめている間に、黒服の一人が奈津子にハンカチを手渡す。
「この坊やを智里のところへ送ってあげて」
 ハンカチで智里の唾を拭いながら、奈津子が冷徹に指示を下した。急速に千晴の鼓動が早まっていく。何か脱出できる方法はないか。このまま自分はやられてしまうのか。そう考えをめぐらしている間に、重文が訊ねてきた。
「君は海が好きかね、山が好きかね? それともどこにも行かず、安らかにベッドでおねむなんてどうだい?」
 重文の言いぐさはまるでテレビドラマのようだったが、それが本気によるものなのは間違いなかった。重文の双眸は尋常ではない光を放っている。こいつは真性のサディストだ。 千晴は底知れぬおびえを感じながら、黙って重文をにらみつけるしかなかった。
 その時、軽やかな声がどこかから聞こえてきた。それは今、千晴がもっとも聞きたくて、それでいて聞きたくなかった声だった。

「おっさんっ? 」
 思わず叫んで、千晴は声がした上方を見上げる。バルコニーから、才口はこちらを見やっていた。その瞳はいつものように幾分おどけた余裕を持って笑っていた。一同は驚愕して、才口を見つめる。千晴は呆然とつぶやいた。
「どうしてここに……」
「おいちゃんはな、お前のいるところにはどこにだって参上するの。ま、本当のところは何かしでかしそうなお前にこっそり発信器をつけてただけだけどな」
 才口は微笑んだ。つつみこむような笑みだった。千晴はこわばっていた自分の頬が、ゆるんでいくのを感じた。

「バカ! おっさん、こっち来るな! やめろ、あぶな……」
 言い終えないうちに、奈津子が指を鳴らし、黒服たちが才口に襲いかかった。才口は器用にそれをかわして、キックやパンチをお見舞いしていく。その様は軽やかなダンスを見ているようだった。
 だが、才口の快進撃もそう長くは続かなかった。
 奈津子が懐から取り出した拳銃を千晴に向けて、怒鳴った。
「動かないで! 動くとこの坊や死体になるわよ!」
 俊敏だった才口の動きが、石のように固まる。冷たく光る銃口を突きつけられながら、千晴は必死に訴えた。
「オレのことには構わないで、おっさん!」
 千晴の叫びも空しく、才口は黒服たちに取り押さえられた。
「おっさん……おっさん、あんたバカだよ。オレなんかのために、こんな危険な真似して……」
 千晴の視界は、急速に涙にかすんでいった。才口がしみいるように笑う。
「おいちゃんはな、惚れたお前のためなら何だってしちまうんだよ」
(おっさんは、キザだな)
 千晴は思った。それでもって、バカだ。どうして自分なんかのために、ここまでしてくれるのだ。千晴の胸に熱を帯びた痛みが宿る。
 千晴の頬に、熱いものがしたたり落ちた。奈津子と重文が鼻で笑うのが聞こえる。
「二人とも、そういう仲だったのか。いやはや羨ましいことだな」
「それじゃ、二人仲良く一緒に智里のところへ逝ってもらおうかしら」
 自分の殺害計画を話す奈津子たちに、才口は目もくれなかった。ただ、千晴だけを見つめる。泣いている千晴が心配でたまらないというように、見つめてくる。その瞳は限りなく優しく、よけい千晴は泣いてしまう。才口はウィンクして、千晴に微笑みかけた。両親が死んだ時。叔父に襲われたことを告白した時。いつもこうして才口は千晴のことを慰めようとしてくれた。それなのに、千晴は。
(オレは……オレは、おっさんのことなんか、何とも思ってないのに。オレは、智里さんが憑依したから、おっさんに抱かれただけなのに……)
 次の瞬間、千晴は叫んでいた。
「頼む――オレは、オレはどうなってもいいから、おっさんは助けてやってくれ! お願いだ!」
「千晴……」
 驚きと困惑、そして喜びの入り交じった表情を才口はした。おのれの愛情が受け容れられた喜びに、才口は満足気に微笑んだ。だが、すぐに心配そうな色がその瞳を覆う。才口の目は、重文と奈津子に向けられた。
 千晴の唐突な嘆願に重文は虚をつかれていたようだったが、奈津子は違った。赤い唇をゆがめて、才口と千晴を交互にねめつける。奈津子はどす黒く笑った。
「美しい愛情ね。でもね、私、そういうのは吐き気がするほど嫌いなのよ――さっさと死んでちょうだい!」
 奈津子が手にしていた銃を、才口か千晴のどちらかに向けようと考えている間、。才口と千晴は互いに互いを庇おうと必死に身をよじった。
 かちゃり、と乾いた音がした。奈津子が安全装置をはずす音だった。千晴と才口は、まなざしだけでも絡み合って死にたいと必死に見つめ合う。二人が撃たれるのは、もはや時間の問題と言えた。


                          つづく





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最終更新日  2006年03月30日 19時51分16秒
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