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マグニチュード8規模の直下型大地震が、東京を襲うというお話。 映画化・ドラマ化するのに、十分な完成度を持つ作品であるとともに、 単なるエンターテイメント作品に留まらない、存在感ある作品に仕上がっている。 ボリュームある一冊だが、思わず一気に読み切ってしまった。 主役を演じるのは、阪神・淡路大震災で、家族を失った神戸高校出身の3人。 震災十年後、ポスドク地震研究者、衆議院議員秘書、自衛官として活躍中。 そこに、元神戸大学教授で、地震研究第一人者だった人物を絡ませながら、 地震予知段階から発生時、そして、復興に向けての第一歩までが描かれる。「地震予知」と、それに対する「政治的判断」の難しさ、さらに、それらに絡む、政治家や研究者たちの諸事情が、上手く描き出されており、フィクションでありながら、妙にリアリティを感じてしまう。とは言え、実際には、さらに複雑な事情や思惑が絡み、困難な事態・状況になるだろう。阪神・淡路大震災の教訓を基に、構成された本作品は、大地震が起こると分かった時、そして、実際に起こってしまった時、政治家は、研究者は、そして、人々は、何が出来るかの一例を示してくれている。ただ、実際にやるべきことは、ここで描かれていることの何十倍、何百倍もある。と言うのも、本作品で描かれている震災の現場は、フィクションにしか過ぎないからだ。阪神・淡路大震災から十年以上の時を経て、私の頭の中にある、あの頃の神戸のイメージも、急速に現実感が薄れ、空想世界のイメージと見極めが付かない程度のものになりつつある。それでも、実際の現場は、本作品で描かれたレベルでは、決して済まなかったと言い切れる。実際の現場では、もっと色んな思いや感情が複雑に絡み合い、常に、様々な葛藤が、あちこちで生じていた。本作品は、フィクションであり、それ故、様々な読者に対する色々な配慮があって、この程度の表現・描写に留めていることを、肝に銘じておく必要がある。
2008.12.29
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クレーム対応関連本も、今や、立派な一つのジャンルに成長し、 その出版される数も、相当なものになってきました。 それだけ、世の中にクレーマーが増加したというか、 「言わなきゃ損」「言ったモン勝ち」という世の中になってきたということでしょう。 本著も、そんなクレーム対応関連本の一つですが、 私がこれまで手にしてきたものに比べると、ちょっと趣が違います。 読んでいて、何だか、そのノリが軽いのです。 この軽快さで「心を疲れさせない」ということに繋げようとしているのでしょうか。著者は、兵庫県生まれの女性。某大手和洋菓子製造販売企業で、お客様相談室等を担当した後、2000年に「カスタマーケアープラン」を設立、クレーム対応に関する講演や指導を行っています。また、対応者として占有率の高い、女性クレーム対応者に特化した『女性電話対応者のセミナー』も主宰しており、このようなことが、本著に「電話対応」や「女性としての対応」の事例が多く示されたり、関西弁の軽快なノリの記述が見られる、大きな要因となっているのでしょう。本著を読んでいて、今さらながらに気付かされたのは、お客様相談室等に電話をかけた際、その受話器を取ってくれるのは、こういった人たちなんだなぁ、ということ。中には、「派遣」の人たちもいるのだという事実。私が、これまで読んできた、この種の本においては、クレーム対応の実例として示されていたものの多くが、とんでもないクレーマーの無理難題に、百戦錬磨のベテラン男性が、如何に立ち向かったか、というものが多かったのです。けれど、考えてみれば、それらは、本当の意味で、特殊ケースのはず。お客さんから寄せられるクレームの多くは、それらとは質の違うもので、また、そのクレームに、まず対応するのは、本著に示されたような女性が多いのでしょう。そう言う意味で、本著は、これまでに出版されたクレーム対応関連本では、描かれることが少なかった、場面・人物を描いているため、異質に感じるとともに、その軽さというか、浅さというか、戸惑い感というものが、現場の妙にリアルな雰囲気を、読者に伝えてくれているのではないでしょうか。さて、私が本著の記述で、最も頷かされたのは、次の部分。ちょっと長めですが、引用します。 “怒り”だけを鎮めることはできません。 “怒り”を発生させた1次感情を鎮めない限りは、“怒り”は鎮まらないのです。 逆に言うと、そもそも1次感情が鎮まれば、“怒り”は自然に鎮まるものなのです。(中略) それでは、“怒り”を発生させる1次感情とはどんな感情か。 悲しい・淋しい・悔しい・恥ずかしい・切ない・格好が悪い・痛い・怖い・不安・心配などの 重苦しい感情たちが、“怒り”のアクセルを踏んでいるようです。 これらの形容詞をこうして並べてみると、 な~んや“怒り”の根拠は、へこんでいるということにしかすぎないと思えませんか?(中略) “怒り”の怒声を浴びながら、 正直、まだまだ平常心でその怒声を聞けるとは言えませんが、 「なににへこんでるのかなあ~。なにがあってんやろう。 なんかできることがないかなあ。あったらいいのになあ」 と言う気持ちで話を聞くように心がけています。 そうすると、少しずつではありますが怒声の恐怖感もやわらいできます。 ただ、対応担当者としては今、直面している“怒り”を発生させている 1次感情はどの感情であるのかを見出す力と作業が必要です。(p.186)本当に目から鱗が落ちる感じ。これまでモヤッとしていたものが、結構ハッキリ見えてきたように思いました。この部分を読むことができただけでも、本著を読んだ価値があると思いました。クレームを受けた時、これからは、この手でいこうと思いました。
2008.12.29
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本屋さんにやって来た人が、そこに並んでいる、数ある本の中から、 たった一冊を選んで、それを手にし、ページをめくるという運命的な出会い。 その際、最大のポイントとなるのは、何と言ってもタイトル。 本屋さんを訪れた人に、読者となってもらえるかどうかが、それで決まる。 そんな本のタイトルも、実に様々。 その本に書かれている内容を、 たった一言で、見事に言い表しているタイトルもあれば、 何故こんなタイトルが付いたのだろうと、首をひねるものもある。例えば、『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?』という本がある。この本は、ベンツのことばかりを書いているわけではないけれど、タイトルとなっている内容については、きちんと触れたうえで、副題となっている「誰も教えてくれなかった!裏会計学」について述べている。また、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』も同様で、さおだけ屋のことばかりを書いているわけではないけれど、そこに挙げられたいくつかの「身近な疑問」を通して、会計学というものを、学べるようになっている。さらに、『スタバではグランデを買え!』や『食い逃げされてもバイトは雇うな』は秀逸で、これらの本を丸ごと読むことで、そのタイトルに示された内容が、きちんと理解できるようになっているというものである。そして、本著。私は「2次会は出るな!」と言うタイトルに惹かれ、ネットで購入したのだが、タイトルに示された内容については、ほんの一部で触れるに留まり、そこで言わんとしているのは、「死に金は使うな」ということだけ。単純明快と言えば、その通りなのだが、その記述は、あまりにも突っ込みが浅く、深みが感じられない。私がタイトルを見て、期待したような視点からの、優れた洞察や見識は、残念ながら、そこには存在しなかった。それでも、「死に金は使うな」ということを軸に、その他諸々の記述が、展開されていってくれたならば、本著を読み終えた時、納得感・満足感を得ることができたのだろうが、残念ながら、そういった構成にもなっていなかった。本著のタイトルが違うものであったならば、ここまで物足りなさを感じることもなかったのになぁと思う。と言うのも、本著に書かれている内容自体は、かなり面白く、述べられていることの中には、「なるほど!」と思わせる所も多々あるからだ。出版するからには、もちろん、売れてもらわなきゃ困る。だからこそ、インパクトのあるタイトルを背負った本が、目白押しなわけだ。書店で実物を手にすれば、名前と実体に齟齬があっても、それなりに気付けそうだが、ネットで購入する際には、よくよく注意が必要であると、今回改めて気付かされた。
2008.12.27
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日本生命で、実際に営業を十数年していた後田さん。 その経験を基に書かれた本著は、生命保険を知るには絶好の一冊。 言われてみれば、当たり前のことだけど、 それを、実際に売っていた当事者が語ることで、大いなる説得力が生じている。 「美味しい話」などどこにもない。 保険を考える時、これが究極の結論である。 それでも、いざという時、保険は、やっぱり有り難い存在。 じゃあ、何を選べばよいのかというと、本著第7章が大いに参考になる。 ***本著では、私が持っていた「保険」に対するイメージを、ものの見事に言い尽くしてくれている。「それを言っちゃあ、お終いだよ!」というような内容なのだが、著者は臆することなく、正面から堂々と書いている。 保険というシステムの基本は、 保険会社がトータルでは絶対に負けないように仕組まれたギャンブルのようなものです。(p.47)そう、保険会社は、絶対に損をしない仕組みのもとで、経済活動をしている。それは、商売なのだから、当たり前といえば、至極当たり前。だから、客が支払う保険料は、トータルとして、客が受け取る金額以上に支払わねばならないに決まっている。客の方が、「トータルとして得をする」ことは、決してあり得ない。競馬でも、競輪でも、競艇でも、パチンコでも、あらゆるギャンブルにおいて、胴元の方が、必ず儲かる仕組みになっているのと同じだ。それは、宝くじでも同様。客から支払われた保険料は、保険会社が経済活動をする際の、様々な経費・収入となる。つまり、それらのお金は、保険会社で働く人々の給料となり、必要経費となり、テレビ放映で流される莫大なCMの資金や、その他諸々の宣材の資金ともなったうえで、「万が一のことが起こった客」に、保険金として支払われるのである。もちろん、支払った保険料以上に、保険金を受け取る客も存在する。しかし、それは、確率的に言って、ギャンブルで当たるのと同じ程度のものだ。そして、私自身は、自分が病気になったり、怪我をしたり、死んだりすることに、「お金を賭ける」という行為には、とても抵抗がある。以上が、私が保険に入ることに、あまり積極的ではない理由。それでも、やはり、自動車人身事故や火災、自身の死亡等、万が一の場合には、預金だけでは、何ともしがたい状況に追い込まれる可能性がある。一度に何千万、何億というお金が必要な状況に備えるには、保険以外の手段はない。その辺のところを考えるのに、本著第7章で書かれている「プロはどんな保険に加入しているか」は、本当に分かりやすく、実行しやすいものだ。保険屋さんに保険加入を勧められたら、逆に質問で切り返すのも、とてもいい手だと思う。私も、これを機会に、自身の保険の見直しをしてみたのだが、この保険嫌いの私ですら、自動車任意保険、生命保険、医療保険、火災保険等、実際には、相当数の保険に加入し、お金を支払っていたことに気付かされ、大いに驚くことになった。
2008.12.23
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精神科医自身が「うつ病」の患者となり、 その時の実体験を、専門家の視点から描いているので、 「うつ病」になると、どんな風に感じ、考えてしまうものなのか、よく伝わってくる。 そう言う意味で、たいへん貴重な一冊。 本著の記述は、自分自身に、その兆候が現れた時にも、 また、自分の周囲にそのような人が現れた時にも、 どのように対処していけばよいのか、 大きなヒントとなるはずである。私自身が、本著の中で、最も共感したのは、著者が、精神科医になりたての頃、指導医の先生に教わった 『治療とは患者さんを愛すること』 『川の流れは止めることはできないが、その流れを変えることができる。 それが精神科医だ。』の二点について、O病院で出会った、デイケア主任で、二十年以上の経験を持つ、ベテラン看護士岩崎さんが、想い川の前で言った言葉。 「一つ目は賛成です。しかし、二つ目はちょっとどうかなと思いますね。 先生、この川を見てくださいよ。一人で流れを変えられるわけないでしょう。 小さなドブなら話は別ですが。たとえ医者でも無理がありますね。 強引ですよ。そりゃ、病気にもなります。僕だったらこう言いますね。 『川の流れを、そっとそばで見守ってあげる精神医療もある』ってところですかね。 川は、激しく流れることも涸れそうになることもあるでしょ。 でも、温かい目で見つめながらどんな時でもずっとそばに居続けるんです。 それで十分だと僕は思いますよ。川の流れるままにですよ」人に接する仕事、人の心と向き合う仕事をしている人全てに、この岩崎さんの言葉は、当てはまると思った。「鳴かぬなら……」における、織田信長と豊臣秀吉、徳川家康の違いに、ある部分通ずるところがあるような気もするが、さすがに、ベテランの一言である。 ***さて、私は、この著者のようなタイプの人間は、基本的にあまり好きでない。自分が患者になっても、この先生にだけは見て欲しくないと思う。本著を読んでいて、この人は、何と傲慢でナルシストで、我が儘で、物事を斜に構えて見ようとする人間なのかと、感じたからだ。父に対し、学校に対し、大人に対し、世の中に対し、かなり歪んだ見方をしたまま、著者は成長し、社会人になってからも、それに基づいて行動している。そのような人間形成に至った、著者の生育歴には、気の毒な面もあるが、それだけでは済まされない、著者の持つ独特な個性が感じられる。終章の「二人への手紙」など、私には、とても受け入れ難い内容・存在だ。現代風に言うなら、全くもっての「KY」である。それでも、6年後、文庫版発行に際しての「あとがき」を読んで、少しホッとした。彼も、曲がりなりにも成長し、少しは大人になってきていると、十分に感じられたから。
2008.12.23
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いよいよ、『鋼練』の最終章(のようなもの)が始まった。 これまでに登場したキャラクターは、相当数にのぼり、それぞれに個性的。 ストーリーも、様々な要素が絡み合って、一筋縄ではいかない重厚なもの。 こんな破格のスケールの大きさを誇る長編作品も、ついに佳境に突入! このように、『鋼練』は、連載マンガとして表現された作品としては、 そのお話しが、スケールの大きさ故、かなり複雑になっている。 そのため、時として、読者が「ストーリー展開を見失う」という事態に遭遇する。 「今、この場面のお話しは、一体どういう状況の中、展開しているの?」映画のように、2時間程を途切れることなく、集中してその作品を見続けられるのなら、その場面に至るまでのストーリー展開や、そのキャラクターが、どんな設定の人物なのか、しっかりと記憶に残っているから、多少複雑なお話しであっても、誰もが、それなりに対応できる。 ところが、連載マンガは、そうはいかない。一つのお話しが、何カ月も、さらには何年もかけて展開していくから、相当うまくやらないと、頭の中でストーリーが、ちゃんと繋がっていかない。おかげで、コミックスなら、改めて前巻や、さらにはその前の巻まで、開き直すことになる。私が読み続けているマンガの中で、『鋼練』は、こういったケースが最も多い作品である。ところが、『ONE PIECE』では、こんなことには、まずならない。もちろん、扱っているお話しも、そこで描こうとしていることも、さらに、それを描き出すために用いられている手法も違う。しかし、このあたりの、読者への配慮というものに、二つの作品のクオリティの違いを感じているのは、私だけなのだろうか?この点について、『鋼練』という作品の中で解決していくことは、もはや不可能だろう。荒川さんの、今後のレベルアップに期待したい。
2008.12.23
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本著の「あとがき」が書かれたのは、昨年の12月24日。 そこには、「ソニーの業績も上向き始めている」ので、 「ソニーにまつわるビジネス書刊行タイミングとしては、 ベストな時期を逃してしまったかも知れない」と記されている。 しかし、それから約1年経った今年の12月9日、 ソニーは、全世界で正社員も含め1万6千人の従業員の削減を決めた。 相次ぐリストラで“ソニーらしさ”をそぎ落とす懸念も広がっている。 期せずして、本著の価値が上昇してしまう事態となった。 ***さて、私が本著の中で「なるほど」と思ったのは、次の部分。 成果を数字化しやすい営業職や研究開発職の場合でさえ、 チームワークの側面を排除できない以上、 誰が誰をどれだけ助けたかをまともに数字化できるはずもなく、 そこは結局コジツケるしかない。 成果を数字化しづらい経理職や総務職などでは、 そもそもコジツケ成果の山にならざるを得ない。(p.57)このあたりの記述には、成果主義の怪しさが、的確に表現されており、まさに「言い得て妙」である。 そしてお局さんは、駄目な上司も容赦しない。 「下ネゴ」などという姑息なマネなんぞ絶対しないし、されもしないから、 上司が会議でお局さんからの厳しい追及を受けてメンツ丸潰れ、 といった場面も日常的にあった。(p.92)これも、確かにである。肩書きには表れない、こういう存在が、職場に睨みをきかせ、上下問わず、社員全体を鍛え、駄目な社員を淘汰していたのは間違いない。現在の職場は、言わばブレーキを失い、暴走したらしっぱなしの状態である。 そこもまた例によって顧客主義を標榜していたが、 営業の現場では、いかに顧客のいいなりになるかに 全力をあげているような状態であった。(p.140)そう、社員が「顧客の言いなり」になってしまうようではいけない。また、顧客は「社員は言いなりになるのが当然」と思うのもおかしい。 つまり、自分と机を並べる上司の言葉に、 それがどんなに素晴らしいものであっても、 部下はモチベートされなくなってくる。 これは、上司にも部下にも不幸なことである。 もちろん、会社にとっても経営者にとってもだ。 管理職が部下の隣に座っていては駄目なのだ。 経営者に社員が通勤電車出会えるようではもっと駄目だ。(p.152)最近、なかなかこういう論調は見られないのだが、私も、著者の主張に賛同する。 経費節減キャンペーンは、その始まりと終わりで二度、 社員のモチベーションを落とすものである。 まだある。実はこうした実のないキャンペーンは、 「形だけやっているふりをする」企業体質を生むものである。(p.157)世間で「エコ」を論じる時、このあたりの部分で著者が述べていることと相通じるものがあるのではないかと、私は感じた。また、これら以外の部分でも、わりとあっさりとコンパクトにまとめた文章の中に、他の書物ではあまり見られない、「!」というところが、随所に見られた。押しは強くないが、キレはある一冊といったところか。
2008.12.13
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「ピアニストが読む音楽マンガ」 というサブタイトルが付いている通り、 その道のプロから見ると、『のだめ』や『ピアノの森』『神童』が、 どんな風に見えるのかという、興味深い一冊。 私は、『のだめカンタービレ』は、最初から全て読み通し続けているものの、 その他の作品については、全く読んでいないので、不明な部分もあるが、 それでも、著者の述べていることには、本当に納得できるし、 また、新たな発見もあって、とても面白かった。そして、前半部のメインとなる「専門家の目から見たマンガ解説」や、「マンガとはちょっと違う、本当のところ」のお話しも面白かったのだが、それ以上に、私が興味深かったのは、後半から語られることの多くなる「音楽家への道の厳しさ」や「プロ音楽家の生活事情」である。身近にそういう人たちを、結構多く見てきたので、その辺の事情については、ある程度は知っているつもりだったが、本著を読んでみると、私が思っていた以上に、厳しい現実があることに気付かされた。音大やプロ演奏家を目指す人には、必読の一冊かも知れない。
2008.12.13
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この本を知ったのは、新聞広告だったような気がする。 普通であれば、このような類の書物に対して、 私が関心をが向けることなど、あまり無いはずなのに、 なぜか、この本には惹かれるところがあった。 この本に強く執着することになった理由は、よく分からない。 タイトルも、さほど強烈なインパクトを与えるものではないから、 広告に記載されていたキャッチコピーや内容紹介が、 それを見た時の、私のフィーリングに、よっぽどマッチしていたのだろう。それに加えて、著者のプロフィールが、多少関係しているかも知れない。上智大学の電気電子工学科を卒業し、富士通に入社。その後、コンピュータソフト会社を経営し、開発した通信ソフトが郵政大臣賞を受賞という、バリバリの理系人間。だから、データを用いて、理論的に「この手の話」をしてくれるのではないかと、あらぬ期待を、勝手に膨らませてしまったのも確かだ。ところが、読書開始早々、違和感を感じてしまうことになる。「こんなはずじゃ、なかったんだけど……」 ***この本の内容は、終始一貫している。中国のどこだか分からない(明かせない)辺境の村に、著者が出向き、そこで、前世を覚えているという人たちにインタビュー。村人たちが語ったコメントを、そのまま掲載し、それらに対して、著者がコメントを加える、というもの。あの世にあるといわれている「スープ」を飲めば、前世を忘れてしまうらしい。著者がインタビューを行ったのは、そんな言い伝えが、今でも残る村。そして、インタビューに答えた、前世を覚えているという人たちは、いずれも、あの世で「スープ」を飲まなかったと答えている。また、生まれかわる時は、いきなり赤ん坊として生まれるのだと。ただし、前世と同じ性で生まれた人もいれば、違う性で生まれた人もいる。そして、早くから、前世の記憶を持っている人もいれば、しばらくたってから、思い出したという人もいる。う~ん……、期待した展開・内容とは、かなり違っていたなぁ……。そして、著者のプロフィールの後半部分を、よ~く見てみると、「不思議研究所を設置」とか、「不思議現象を探求し、世界中の取材」とかある。やはり、正真正銘、この手の類の著者による、この手の類の本であった……。
2008.12.13
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本著は、マクドナルドを世界的チェーン店にしたレイ・クロックの自伝である。 そして、巻頭の「はじめに」の文章は、ユニクロの柳井さんが、 巻末の「おわりに」の文章は、ソフトバンクの孫さんが書いており、 付録として、この二人の対談や、柳井さんによる本著の解説も掲載されている。 かなりボリュームのある一冊であるため(と言っても、400頁足らずだが)、 最初手にした時には、購入すべきかどうか、躊躇してしまうかも知れない。 しかし、いざ読み始めると、予想したよりもスイスイとページをめくることができ、 お話しとしても、結構面白い。 ***ペーパーカップを売り歩いたり、アルバイトでピアノを弾いたりした後、「マルチミキサー」のセールスをしていたレイ・クロック。そんな彼のもとに、「カリフォルニアのある店で使っているのと同じマルチミキサーが欲しい」というオーダーが、全米中から殺到する。そのある店を経営していたのが、マクドナルド兄弟。彼らのハンバーガー店は、マルチミキサーを8台も所有しているという。大いに興味をそそられたクロックは、その店の様子を見るため、カリフォルニアへと向かい、その斬新な店舗経営を目の当たりにする。店内を動き回る従業員の動きは、緻密に練り上げられたもので、ハンバーガーやフライドポテト、ミルクシェイクを流れるように、次々と完成させていく。これは、メニューを最小限に絞っているため、作業能率が非常に良いからである。さらに、兄弟は、現店舗を改良したドライブイン・スタイルの新店舗構想まで持っていた。このことに、大いに感銘を受けたクロックは、このハンバーガー店を、国中の主要道路に展開することを思い立つ。そして、兄弟に自分と組んで事業展開することを持ちかけ、現状に満足していた兄弟を説き伏せる。その時、レイ・クロック52歳。そこからは、今となっては誰もが知る世界のマクドナルドへと大きく発展していった様子が、語られていく。もちろん、そこに至る道のりは、決して平坦なものではなかった。ヒトやカネにまつわる様々な危機を、何度となく乗り越えてきたからこそ、現在がある。 ***現在、ハンバーガーショップなら、どの店でもやっているようなことでも、当時は、決して当たり前のことではなかった。その素晴らしさや、将来性にいち早く気付き、チャンスを逃すことなく、外食産業に新たなスタイルを確立させたレイ・クロック。まさに、アメリカン・ドリームの大成功者である。しかしながら、『おいしいハンバーガーのこわい話 』や『ルポ 貧困大国アメリカ 』を読んている私としては、このビジネスの、「光」の部分ばかりに目を向けるわけにはいかなかった。また、レイ・クロックという人物の人柄についても、ちょっと距離を置きたい気分。例えば、昔から好意を寄せていたジョニと結婚する好機が訪れたとはいえ、それまで彼を支えてきた妻のジェーンを、気軽にポイと捨て去ってしまうことのできる感覚に、私は到底付いていけないし、彼のとったその行為を、当然のこととはしたくない。ビジネスにおいても、そして、プライベートにおいても共通する彼の根底にある人間性を、そこに垣間見た気がした。
2008.12.07
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「人脈」とは何か? ネットで辞書検索をかけると、「ある集団・組織の中などで、 主義・主張や利害などによる、人と人とのつながり」と出た。 つまり、この本は、「人とどう繋がっていくか」をまとめた教科書ということ。 人と繋がっていくためには、まず、自分はどうあらねばならぬのか? まず、オリジナリティがあって、単独で行動ができ、フットワークが軽いこと。 そして、計算より「志」の実現を見据え、志の高い者が、人脈に恵まれる。 さらに、相手からの「期待値」が高ければ、強い人脈力を築けると、本著は説く。 ***スタートは、会いたい人をイメージし、積極果敢に会いに行くこと。とにかく、顔を覚えてもらうために、イメージギャップで目立ってみる。その際、熱風と涼風とのバランス感覚を決して失わず、メールやポストカード、電報を駆使してサプライズ・アタック。ただし、仕事を達成するためには、多くの人の手が必要になってくる。そこで、社外人脈の構築・活用以前に、自分の所属する会社・組織を機能させねばならない。即ち、社内人脈を、まずは確固たるものにしておく必要がある。同僚、上司、後輩、異性、ライバルとの人脈を構築し、社内スペシャリストを目指す。そして、いよいよ外に向かって人脈を広げていく。仕事上の人脈だけでなく、脱仕事の人脈も重要。高いレベルの出会いを求め、フットワークを軽くしてチャンスを逃さない。自分を高め、礼儀正しく、お金・名誉のためでなく、自己実現のために人脈づくり。 ***そんなに難しいことは書いていないし(実行は、必ずしも容易ではないが)、文章も平易で、スラスラ読める。読者のターゲットは、まだ、社会人としてのスタートを切って、間もない人たちだと思われる。本著は、あくまでも教科書であって、そこに、ハイレベルの応用的記述を求めてはいけない。
2008.12.07
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本著を読んで、つくづく、内向きになってはいけないと感じた。 日本に住んで、日本のことしか知らないで、 それが良いだの悪いだの言ってるだけでは、 これからの時代、本当にやっていけないと感じた。 アメリカは、日本にとって、かなり身近に感じられる国である。 テレビやインターネットでも、アメリカの情報は豊富かつ詳細だ。 だから、私も、それなりに、アメリカがどんな国かある程度知っているつもりでいた。 でも、それは、単に思い込みにすぎなかったようだ。これは、やはり、一種の情報操作なのか?何らかの意図が働いて、本著で紹介されているような情報は、きちんとした形で、私たち日本に住む一般人に、伝わってこないようになっているのか?それならば、これは、日本にとって、かなり厄介な状況だ。或いは、単純にビジネスとして考えた場合、本著で紹介されているような情報は、直接儲けに繋がらないネタであり、あえて、採りあげるほどのものでないと、マスコミが判断してのことなのか?それならば、これは、私たち日本に住む一般人にとって、結構不幸な状況だ。 ***アメリカの貧困地域では、過度に栄養が不足しながらも、ジャンクフードが幅をきかせているため、肥満率が上昇している。また、公共部門の民営化が進むなか、貧しい人々が切り捨てられている。病院や学校までもが民営化され、命や未来に関わる部分で、平等な機会を奪われている。アメリカでは、新自由主義の流れが主流となり、「自己責任」という言葉の下、「自由診療」という保険外診療が増加。公的医療は縮小され、中間層は、世界一高い医療費で破産するものが続出している。急性虫垂炎で入院、手術した時の医療費は、私たち、日本に住む者には、とうてい予想できないレベルのものだ。日本で4~5日入院しても、30万円を超えることが、まずない盲腸手術・入院代が、ニューヨークでは、たった1日入院しただけで、243万円もかかるという事実。入院出産費用の相場は、1万5千ドル。1日入院するだけで、4千~8千ドルかかるので、日帰り出産する者さえいる。一方、病院は株式会社化し、効率を求め、人員削減・節約を推進。このような市場原理を医療現場に取り込んだ結果、医療過誤が急増しているという。 「民主主義であるはずの国で、持たぬ者が医者にかかれず、 普通に働いている中流の国民が高すぎる医療保険料や治療費が払えずに破産し、 善良な医師たちが競争に負けて次々に廃業する。 そんな状態は何かが大きく間違っているのです。」(p.95)また、「落ちこぼれゼロ法」が、実は裏口徴兵政策だったというくだりも驚きだ。貧しい地域の高校生たちは、大学に行きたくても、普通には行くことができない。そこへ、軍のリクルーターが現れ、高校生たちに直接勧誘をするのだ。軍に入れば、大学の学費は免除され、家族全員兵士用病院で治療が受けられるし、市民権だって得られるのだと言って。さらに、最近では、戦争そのものが民営化されていっている。派遣会社が雇った貧しい人々が、社員として戦地へ派遣されるようになってきている。彼らは、兵隊として戦闘に加わるわけではない。しかし、様々な危険が、そこには待ち受けている。劣化ウラン弾の影響で放射能に汚染された恐れのある現地の水ですら、飲まねばならない。 ***日本がモデルとして目指そうとしている国の現状は、こんなことになっていた。日本の方が、まだ上手くいっている所も、案外多いのだと気付かされる。まさに「幸せの青い鳥」的状況も、実は存在するのだ。内にばかり目を向けていては、そのことにすら気付くことが出来ない。しかし、日本は、確実にアメリカの後を追いかけている。「民営化」の先に、何が待ち受けているのかを、もう一度しっかり考えたい。そして、「格差社会」という言葉が頻繁に飛び交い、憲法改正の言葉が、聞かれるようになってきた今日この頃。日本は、どこを目指そうとしているのか、もう一度しっかりと考えたい。気付けば、某国に、そこに引きずり込まれていた、なんていうことにだけは、ならないようにするために。
2008.12.06
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期待した以上に新鮮で、たいへん面白かった。 おそらく、私は、本著を古本屋さんに売り飛ばすことはしないだろう。 ずっと、自分の手元に起き続け、必要に応じて、必要な部分を読み返し、 本著に掲載されている曲を聞くために、新たなCDを購入することになると思う。 私のCDライブラリーは、何と言っても交響曲が幅をきかせている。 一番多いのはマーラー、それから、ベートーヴェンにブルックナー。 そして、その他の作曲家のものも、大半が交響曲。 もちろん、同じ曲でも、演奏者が違えば、複数枚購入しているものも多い。まぁ、それでも最近は、協奏曲を、ちょっとばかり聞くようになってきた。ピアノとヴァイオリンが、ジワジワ増えてきている。今は、ピアノではアルゲリッチ、ヴァイオリンではヒラリー・ハーンがお気に入りだ。そして、来年1月にヒラリーが来日する際には、演奏会に出かける予定。おっと、話が本著の内容から、かなり遠いところへと逸れてしまったが、先に書いたような、ある意味、かなり偏ったクラシックの聞き方をしている私にとって、本著は、本当に最適の一冊だったと思う。それは、クラシックの幅広いジャンルの名曲を、悉く紹介してくれているからだ。もちろん、未知のジャンルの曲(特にバロックや室内楽、現代音楽)については、そのメインとなるメロディーすら、思い浮かべることが出来ないものが多いのだが、それが、本著を読んでいると、何だか分かったような気になってきてしまう。そして、「一度聞いてみたいなぁ」と思わされてしまう。さて、どれから聞いてみることにしましょうか?
2008.12.06
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一つ一つのお話が、とってもライト。 だから、心にジワ~ッと染み入って来るとか、 ドカ~ンと衝撃を受けて、感動の雨嵐状態、なんていう心配は一切ない。 あくまでも、フワッと、軽~く、軽~くである。 でも、このホン、結構売れたらしい。 やっぱり、現代人はライト感覚。 短い文章で、難解な部分は一切なし、とにかくスラスラ読めて、 それなりの結構「いいお話し」が並んでると、安心できるのか。そう、それなりの「いいお話し」が、このホンには確かにある。例えば、「本当に強い人」というお話しの中のお父さん。父親って、やっぱり、家族の中では、威厳を保とうとして、自分が何かミスっても、妻や子どもに、きちんと謝るのは、気恥ずかしいモノ。でも、そこの所を乗り越えて、自分が家族に不信感を与えてしまった言動について、そこに至った理由をきちんと説明し、正面から詫びる姿は、ちゃんと伝わるモノ。その場を無言で立ち去った息子も、「俺には出来ない。すごい」と認めた下りなんて、「本当にいい話しだ!!」と思わされてしまう。ただし、「じゃ、他にいいお話しは?」と聞かれると、実は、ちょっと困ってしまう。先にも書いたように、それなりの「いいお話し」が、それなりに並んでいるのが、このホン。そして、押しつけがましくなく、説教臭くないのも、良いところかな。
2008.12.06
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登場するキャラが、誰も彼も皆、メッチャ強い人たちばかりになってきて、 このお話しも遂に佳境、凄まじいストーリー展開になってきたなぁという感じ。 あちこちで行われる一つ一つのバトルが、もう、それこそ命がけの連続、 そのあまりの激しさに、細かい状況が、よく分からないところも……。 そんな中でも別格なのが、シルバーズ・レイリー。 ゴールド・ロジャー海賊団で、副船長を務めていただけあって、 その強さは、一体どれ程のものなのか、予測不能レベルのモノ凄さ。 こんな男が、ルフィーたちの味方についてくれたのは、本当に心強い。そして、ユースタス・“キャプテン”キッドや、トラファルガー・ロー等のルーキー達も、流石に億を超える賞金首だけあって、なかなかのスゴ腕。バジル・ホーキンスにX・ドレークも強い!でも、やっぱり凄いのは、バーソロミュー・くま!偽物でもあの破壊力だが、本物の持つ力は、計り知れない。本巻最後の場面で、瀕死のゾロを、くまは、一体どうしたのか?この状況、全く先が読めない……。それにしても、黄猿って、どう見ても田中邦衛さん。既出キャラの青キジも、ほぼ松田優作さんでしたが、黄猿は、そのレベルを遙かに超える、まさに正真正銘の田中邦衛さん。これって、肖像権の侵害には、当たらないのでしょうか?
2008.12.04
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