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大津絵は江戸時代、東海道の大津で売られた土産物の絵です。型紙を使って量産されたもので、旅の安全を祈る初期の仏画から、のちの鬼や動物、七福神などを描いた様々な戯画まで幅広い題材が描かれるようになりましたが、明治期になるとやがてすたれていきました。驚いたことに、大津絵の展覧会は今まで美術館で催されたことはほとんどなかったそうです。だいたい博物館、資料館でしか展示されなかったことで、とても意外でした。大津絵美術館ってどこかにありませんでしたか?浮世絵と異なり素人臭にあふれ、美術品としては価値がないと考えられていたのでしょうか。ところが、実際には大津絵にも目利きがおり、コレクターも昔からそうそうたる人々が名を連ねているのです。そんなコレクターの旧蔵品から展示構成された今回の展覧会。優れた大津絵ばかりで実に楽しいものでした。今はやりのヘタウマ江戸絵画の極めつけ。素人臭さがプンプンと漂うゆるくてかわいい作品の数々。「鬼の念仏」など類型化された作品も多く、いろいろ見比べてみるのもおもしろかったです。実は今回の展示でいちばん衝撃だったのは、今まで間違えて覚えていた慣用句が明らかになったことでした。それは「瓢箪から駒」。実は「駒」は「独楽」だとばかり思いこんでいたのです。今回の大津絵を見て初めて気づきました。ああ恥ずかしいことでした。
2020年09月25日
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私が宮島達男をはじめて知ったのは、東京都現代美術館の常設展示室の最後の部屋にある作品「それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く」です。はじめて見た時には、いったいこれは何なのだろうと思いました。現代日本美術のさまざまな作品を見てきて頭も身体も飽和状態になったところに現れる巨大なデジタルカウンター。椅子に腰かけて、じっと眺めているとその時々の気分と体調によって、心地よく感じる時もあれば、苦痛に感じてしまうことがあります。いずれにしても東京都現代美術館といえば、まず最初に思い浮かぶ作品がこれです。この都現美にある作品のテーマが宮島達男の作品つくりの3つのコンセプトになっているとのこと。今回の展覧会でも様々な発光ダイオードの点滅に出会うことができました。特に衝撃的だったのは「Deathclock for participation」です。自分の死ぬ(であろう)日付をパソコンに入力すると自分の顔写真が壁面に映し出され、その上で、デジタルカウンターによる死までのカウントダウンが映し出されます。まさに生きるということは、死へのカウントダウン・秒読みだと実感します。そして、それぞれのデジタル表示が移り変わるその一瞬の間が永遠なのではないかとも思えるのです。最初の展示は、デジタル数字を顔面にペインティングし、ワインや墨に顔をつけたりするパフォーマンス「Counter Skin」のビデオです。これはきっと「それはあらゆるものと関係を結ぶ」というコンセプトで作られた作品ではないかと勝手に推測しながら見てましたが、笑えるような場面も多く、こちらには残念ながら、崇高さ峻厳さは感じられませんでした。最後は巨大な円形プールの暗闇の中に青色LEDが浮かぶ「Tranquility-静謐」です。東京都現代美術館の作品に匹敵するすばらしい作品です。千葉市美術館の所蔵作品です。ぜひ都現美のように常設してもらえればうれしいです。1階のさや堂のホールにも展示がありました。青、赤、黄のそれぞれの色の床に様々なデジタル数字が映し出されます。その上を自由に歩くことができます。終末医療患者への精神的ケアを目的として作られたそうです。美しい空間の中に浮遊する数字。空間の中に身をさらし、来し方行く末を考える楽しい展示でした。
2020年09月24日
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豊島区立トキワ荘マンガミュージアムに出かけました。コロナウィルス対策で入館予約制になっていましたが、申し込み時間前に入場させて頂きました。このトキワ荘は、以前あった土地から少し離れた場所に再建築されました。以前あった土地にはモニュメントが建っています。大学1年の時、関西から出てきた友人が、ぜひトキワ荘に行きたいというので同行した記憶があります。中に入ることはできませんでしたが、友人は大感激していました。当時、マンガ家がすんでそんなに関心がありませんでした。さて、この再建されたトキワ荘。外観内観ともには当時の姿を忠実に復元しているのには驚きです。トイレの便器の黄ばみまで再現しているのにはびっくりです。水洗便所ではなかった時代。2階の共同トイレは便器から直に土管を通じて落とす形状。これもリアルに再現されていました。臭気までイメージしてしまいます。共同の台所。2階の居室はすべて4畳半。ここが今や世界に冠たるアニメの世界の原点となったのですね。1階はミュージアムになっていました。トキワ荘のジオラマや多くの出版作品が展示されていました。また1982年のトキワ荘解体の日に手塚治虫が天井板に描いたリボンの騎士の絵。これは長年見たいと思っていたものでようやく願いがかないました。企画展示室では、開館記念に合わせて、多くのマンガ家の色紙が展示されていて見応えがありました。トキワ荘はまさにアニメの原点だということを再認識しました。
2020年09月22日
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8月の読書メーター読んだ本の数:14読んだページ数:5449ナイス数:228平成怪奇小説傑作集2 (創元推理文庫)の感想鈴木光司の「空に浮かぶ棺」を読みリングの映画に夢中になったころを懐かしく思う。朱川湊人「トカピの夜」、光原百合「帰去来の井戸」などのファンタジーにほっとする。「鳥とファフロッキーズ現象について」の山白朝子ははじめて知った作家。気に入った。川上弘美や小川洋子ってこんな作品も書いていたのかとびっくり。森見登美彦「水神」や津原泰水「水牛群」の重苦しさが好き。読了日:08月29日 著者:平成怪奇小説傑作集1 (創元推理文庫)の感想宮部みゆき以外は初読。篠田節子の「静かな黄昏の国」は素晴しい。近未来SFホラー。最近、彼女の現在のコロナ禍の論評を新聞で読んだばかり。吉本ばななの「ある体験」も怖い。この人、こんな話も書くのかと再認識。坂東眞砂子の「正月女」はお得意の土俗ホラーが懐かしい。ホラー小説集でもバブル崩壊前後の熱気を感じるのが不思議。読了日:08月25日 著者:地形で解ける! 東京の街の秘密50 改訂新版 (じっぴコンパクト新書)の感想高輪ゲートウェイ駅などの新しい情報を盛り込んだ改定版。東京メトロ四ツ谷駅がどうしてJRよりも高い位置にあるのかずっと不思議だったが、この本を読んで解決。コロナ禍と熱波が過ぎたらこの本片手にあちこち廻ってみたい。読了日:08月22日 著者:内田 宗治美しい3D地図でみる 東京スリバチ地形散歩 都市新発見編 (新書y)の感想色分けされた3Dの地図で東京山の手を眺めると台地の間に谷が入り込んでいるのがよく分かる。なるほど坂が多いわけだと納得。高台から谷を眺めるのも良し、暗渠を歩くのも良し。無限にある東京の坂道、まずは本書で紹介された場所を歩いてみよう。読了日:08月20日 著者:皆川 典久秋の牢獄 (角川ホラー文庫)の感想「秋の牢獄」で浮気している奥さんとその相手を殺戮する登場人物のエピソードにゾッとした。「幻は夜に成長する」の主人公のラストではおぞましさと何とも言えないカタルシスを感じた。「神家没落」は古民家カフェという設定には笑えた。読了日:08月18日 著者:恒川 光太郎ナポレオン狂 (講談社文庫)の感想どんでん返しがお勧めと紹介されていたので図書館の書庫から借り出しました。40年も前の短編集ですが、ほとんど古さを感じません。「来訪者」はよくある話ですがゾッとしました。「サン・ジェルマン伯爵考」の不老不死の捉え方が好きです。読了日:08月17日 著者:阿刀田 高大地の牙 満州国演義六 (新潮文庫)の感想昭和13年。情けなくなるほど国内の政治はガタガタ。世界情勢もグタグタ。まったくの混沌の中で時代はひたすら第2次世界大戦に向かっていく。敷島4兄弟のイヤな面もどんどん描かれてきて、次巻に続く。読了日:08月16日 著者:船戸 与一本当の自由を手に入れる お金の大学の感想お金の5つの力①貯める②稼ぐ③増やす④守る⑤使うについて、分かりやすく説明しているが、①に多くページを割いており、④⑤が少ないのは残念。基本的なことばかりだけど、知らなかったことがいくつかあり、これだけでも1,500円の価値は十二分にあった。読了日:08月14日 著者:両@リベ大学長ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)の感想取り上げられているジャズマンによって、村上春樹の文章は分かりやすかったり、難解だったりする。スタン・ゲッツのラスト「そして僕らは、深い魂の森に生きることの宿命的な残酷さを、そこに静かに見て取るのだ」なんて意味不明だが、まさに村上春樹の文体で心地よい。なんでコルトレーンやチック・コリアがいないのかとずっと気になっていたら、最後のあとがきで理由が分かった。和田誠のチョイスだったのですね。和田誠のイラストはどれもいいが、ジェリー・マリガンのバリトンサックスがかっこいい。読了日:08月12日 著者:和田 誠,村上 春樹美術館の舞台裏: 魅せる展覧会を作るには (ちくま新書)の感想先日、ぶらぶら美術館を見ていたら、高橋館長が勇退すると話されていた。次はどちらへ?本書では展覧会作りの裏側を垣間見ることができた。いろいろと知らない仕事をする人が多く関わっているのですね。成田空港で搬送中の作品がフォークリフトに貫かれた事件などびっくりでした。読了日:08月12日 著者:高橋 明也女のいない男たち (文春文庫 む 5-14)の感想ベタかもしれないが、「イエスタデイ」の失われた青春を回顧する話が好き。「シェラザード」はこの続きはどうなるのか楽しみと思ったところで終了。「木野」も醸し出す禍々しい雰囲気から今後どうなっていくのか知りたくてたまらない。読了日:08月08日 著者:村上 春樹天上の葦 下 (角川文庫)の感想伏線回収。怒涛の結末。これで終わりかと寂しいが、鑓水の出生の秘密など次回作に向けての楽しみもあり。描かれたテーマは重い。コロナ罹患者バッシングなど、重苦しい雰囲気が周囲に漂う現在の姿は、戦時中と似ている気がする。マスコミの責任は重い。マスコミとSNSへの介入を図ろうとする権力の動きにも要注意。渋谷駅のロープ―ウェイの話も少し前に知ったばかりだったので嬉しかった。読了日:08月07日 著者:太田 愛天上の葦 上 (角川文庫)の感想ラ・トゥールの絵のカバーデザインが好印象。上巻を読んでも、事件の全体像が分からないが、追われる者の逼迫感が息苦しい。下巻でのカタルシスを期待。読了日:08月04日 著者:太田 愛巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)の感想小市民シリーズ新刊。起こる事件もおとなしめ。次回は復讐に燃えるもっとダークな小佐内さんを楽しみたい。読了日:08月01日 著者:米澤 穂信読書メーター
2020年09月04日
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