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この作品も村上春樹特有の日常と非日常の世界とを行き廻る短編集。偶然の不思議を描いた「偶然の旅人」人生にびっくりするくらいの偶然ってあります。私の一番の偶然は、もう20年位前の夏休み、登山の帰りに寄った富山の片田舎の無人駅で、ばったりと中学時代の同級生に出会ったことです。世の中の出来事は全て偶然で、要は本人がそれを意識するかしないかだというこの短編、説得力がありました。自分の名前を忘れていく女性を描いた「品川猿」。何で猿が~と思うのですが、それは奇譚ということでOK。主人公が抑圧された過去に気づいて再生していくラストは美しいです。「日々移動する腎臓のかたちをした石」の中のキリエという謎の女性のセリフ。この世界のあらゆるものは意思を持っているの・・・たとえば風はひとつの思惑を持ってあなたを包み、あなたを揺さぶっている。風はあなたの内側にある全てを承知している・・・こんな文章が胸に響きました。
2006年01月29日
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自分の周囲の人は何故か東京タワーを読んでいるんだというと「ああ、あの黒木瞳の映画になったやつね。」と皆、一応に反応する。まぁ、失楽園以来、黒木瞳のファンになったようなオヤジばかりなのでしょうがないのかもしれない。残念ながら、私も周囲の仲間も皆、江國香織の「東京タワー」は未読、未見である。さて、リリー・フランキーという人、テレビをほとんど見ない私は知らなかったのだが、あとで「盲獣vs一寸法師」という石井輝男監督のおどろおどろしい映画に主演していたとあの人だと知った。この「東京タワー」も昨年、どこかで今年一番の泣ける本というコピーを見た記憶があって、偶然、読み始めたのであった。前半部分は、作者とほぼ同世代であるため、あの時代背景とともに、共感できる部分もあったのだが、どうも快調に読み進めない。当初は主人公の出生の秘密をめぐるミステリーなのかとも思い期待していたのだが、結局、そんなこともない単なる私小説だった。それでも、後半、オカンが癌になってからの件が、やはり涙を誘うのであった。「孝行をしたい時には親はなし」という言葉どおり、親不幸であればあるほど自責の念に駆られるリリー・フランキーの叫びは哀切の極みである。この本の装丁も作者だし、見返しの題字はオトンの字ということで、この本全体がオカンに捧げるレクイエムになっているのだ。週末には久々に実家に顔を出そうと思った。
2006年01月23日
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「漫画誕生から黄金バットの時代」展 逓信総合博物館漫画の誕生から昭和38年までのマンガ本の展示と日本漫画の幕開けを飾った作家の紹介。マンガ本はどうやら松本零士のコレクションのコレクションがほとんどらしい。石ノ森章太郎が松本零士あてにサインした本も展示されていた。昭和一ケタから戦前にかけてのマンガ本がハードカバーだったのには驚き。戦後はソフトカバーになり、貸し本屋ができてまたハードカバーに戻ったのだろうか。自分自身の記憶では、幼少の頃、絵本は読んだが日本の漫画は読んだ記憶がほとんどない。小学校一年の頃、週刊少年マガジンを買ったことがあり、そのインクの匂いと値段が50円だったことを覚えているのみ。テレビの漫画は鮮明に覚えているのだが。マンガを買うようになったのは、小学校高学年になってからのことだろう。だから、この展示を見ていてもそんなにノスタルジーも感じなかったのだが、昨年南千住の荒川ふるさと文化館でも見た小松崎茂のサンダーバードの絵だけには、わくわくした。 前川國男建築展 東京ステーションギャラリー建築のことは不案内で、建築図面が展示してあってもよく分からない。まぁ、知っている建築物も多く、この建物もこの建築家の作品なのだなぁと思った程度。なるほど、上野の東京文化会館のようにコンクリート打ちっ放しの平面と直線が特徴の建物が多いなぁと感じた。幼少の頃住んでいた世田谷の烏山の家のそばにあったテラスハウス(当時の友人が住んでいた)もこの人の設計だったのかと驚いた。東京ステーションギャラリーもこの展覧会の後、しばらく休館して、改装するそう。次回オープンは数年後になるらしい。あの木の階段とステンドグラスもしばらく見ることができなくなる。 平山郁夫シルクロード美術館展 日本橋高島屋山梨にある同美術館からの出展。やはりガンダーラ仏教彫刻が圧巻。仏像の立像が片足に重心をかけて両足をわずかにずらしているのをその中で支脚遊脚表現といい、ギリシャ彫刻の影響だとのこと。そういえば日本の仏像もみんなそうだようなと思う。イランの紀元前10世紀の水牛を形どった焼き物など、ユーモラスで気に入った。水牛の胴体に豹の絵が掘られていたのは、家畜が教われないようにという願いのためのものか。平山郁夫の作品が2点しかなかったのが残念。
2006年01月22日
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子ども会で「カプラ・ワークショップ」というイベントを実施した。カプラという積み木を組み上げ、タワーや動物などを作る。フランス生まれで、当初は建築模型のための道具だったようだ。なるほど、向こうはレンガ作りの建築物が多いからなぁと文化の違いに納得。あいにくの雪でどれだけ子どもが集まるか心配だったので、積み木なんて行くの嫌だと言っていた小5の息子も無理やり引っ張ってきたのだが、帰りがけには次のイベントもまたカプラをやりたいとすっかりはまってしまった様子。確かに、大人がやっても面白い。大きな作品が出来た時の達成感とそれがカシャーンと音を立てて一瞬にして崩れ去る時の爽快感を味わうことができる。私もこの間見た杉本博司の写真にあったような数学的形体を作ろうと思ったのだが、きれいなアーチを作るのが難しく断念した。イベント後半、子どもグループはカマクラ、大人グループはナイアガラの滝という作品に挑戦。ナイアガラの滝の端をひとつ外すと、ドミノ崩しのように端から崩れ去っていく様が何とも言えず美しかった。魔法の板というキャッチコピーであったが、まさにその通りだと実感した。
2006年01月21日
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この常設展は20世紀初頭から現代に至る日本の近代美術の流れが概観できるよう展示されています。年に数回展示替えがあって、今回は昨年末から3月までの展示です。今回も名品多数でしたが、今回は日本画のほうが印象的でした。伊東深水「雪の宵」新浮世絵の風俗画。とにかく雪の表現が抜群に美しい。灯篭や木々に積もる雪は真綿のように立体的に感じました。雪は小降りになったのだろうか、少し大きめの雪の粒がポツポツと降っています。それが黒い着物に鋭く映えています。雪景色をよく見ると、白い梅の花がたくさん咲いています。灯篭に火が入ってほのかなピンク色に輝いています。二人の女性の強烈な着物の色彩と背景の白の対比が鮮やかで、背景の雪景色の幻想的な世界に引きずり込まれてしまいました。日高理恵子「樹を見上げてVII」こちらは、現代作家の日本画?。冬の木の枝を下から見上げた構図のモノクロームの絵が壁の一面を飾っています。この部屋の周りに他の作家の写真も数点展示されていたので、最初はこの作品も写真なのかと思いました。無数の鋭い枝の一本一本に、自分の心が引っ掛けられてしまったようです。ひょっとしたらこの枝の一本一本は千手観音像の手のように、衆生を救済するのかもしれないなんて夢想しました。またお気に入りの画家が一人増えました。その他、小さな掛け軸の絵でしたが、速水御舟 の「門(名主の家)」の朝の霧が立ち込めるリアルさを再現しながらも幻想的な感じのする絵なども素敵でした。
2006年01月19日
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今回、初めて知った画家。この前の日曜日の新日曜美術館で取り上げられていました。あの番組を見ると生涯、黒を追及し黒と戦い続けた画家ということで紹介されていたが、そんなに黒一筋の画家とは感じられなかった。吉井由吉さんの解説はちょっと情緒的過ぎたのかとも思います。確かに全体的な印象は、暗い漆喰の壁に塗りこめられたような絵というような感じでしょうか。全体的に暗く、鮮やかな色彩がダイレクトにこちらに迫ってくるような絵ではありません。おまけに近くで見ると、そこに描かれている対象物の輪郭はもわっとしており、はっきりしないので目がくらくらとしてきます。ところが、少し離れてから振り返ると、絵のどこか一部分(花だったり、動物だったり、山や川や木々の風景だったり)に明るい光が当たって燦然と輝いているのに気づきます。蒔絵の中に一ヶ所仕組まれた螺鈿細工がきらりと光るような感じでした。だからこの画家の絵は近づいて見るよりも離れた見たほうが美しいです。光と影、明暗の対比がみごとによく分かります。新日曜美術館で紹介されていた山梨県にある「窪八幡神社」の絵は、すばらしかった。白壁と鮮やかな赤塀、黒い屋根と土。番組ではこの作品が須田の追及した「黒」の到達点だと紹介されていたが、やはりこの作品は赤い神社の塀のほうが、ずっと強烈でインパクトがありました。黒は引き立て役に徹しているのではないかと思いました。後半、たくさん展示されている能舞台での役者のデッサンは、重苦しい油絵とは異なり、洒脱な線が楽しい作品でした。どこかの大学生が集団で先生に引率されて来ていましたが、作品のすぐ前に立って鑑賞している自分の目の前を平気で横切る無神経さにはあきれ返ってしまいました。会釈も何も無しに。おまけに男女かかわらず何人もの学生がです。何回もこんなことが繰り返されたので思わずにらんでしまいましたが、何も感じないようでした。この展覧会に須田国太郎が模写したティツィアーノの「ヴィーナスとオルガン奏者」の絵がありましたが、いよいよ3月末から東京都美術館のプラド美術館展でこの現物を見ることができます。ちょうど近代美術館に置いてあったチラシの表紙絵になっていました。楽しみです。このチラシを持って、須田の絵と比べてみると面白いかもしれません。
2006年01月18日
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「ハリー・ポッターと謎のプリンス」が発売される前に読まなくてはと積読状態だった「不死鳥の騎士団」、やっと読了。上巻だけでひと月近くかかってしまい息切れ状態。うちの子どもより読書スピードが遅い。今頃読んでるの?って顔されている。ハリーと同様、いらいら募る。持ち運ぶのが重いので電車の中では読めないし。もう少し枝葉を落として読みやすくしてくれればいいのに。それでも魔法省からホグワーツに送り込まれたアンブリッジ先生の極悪非道振りあたりからやっとペースが乗ってきて、下巻は根性で読み進めた。ラスト近くの戦いの場面は、相変らず手に汗握る展開。ネビルの成長にも拍手。ハリーの出生にかかわるもろもろの秘密が分かって、ようやくカタルシスを感じることができた。ダンブルドアはなぜスネイプを信頼しているのか、ハリーの父親とスネイプとの関係、ハリーの両親の過去などまだまだ謎は多いのだが、今後、明らかになることを楽しみにしている。勢いで「謎のプリンス」を予約してしまった。
2006年01月16日
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人間国宝展の後、ブリジストンか、三井記念美術館に行こうかなとも思ったのだが、結局、昨日から始まったわたせせいぞう展と相成りました。20年前、週刊モーニングに連載されていた「ハートカクテル」をちょうどリアルタイムで読んでいました。ここ何年か、大丸か三越で行われた展覧会には必ず出かけています。毎年、サイン会の日に都合がつけば出かけているのですが、今回は今度の土日がサイン会なんですが、仕事で行けないのが残念です。サイン会でのわたせさんはとても気さくな感じで、サインだけでなく、話もしてくださって、前回は息子の頭も撫でてもらいました。その分待ち時間はかなりありましたが。わたせさんの作品。ぎざぎざした線にカラフルな色がのっかって、眺めていると心がふわっと浮いてくるような感じです。ラフスケッチの鉛筆の柔らかい線も素敵です。当然ながら、物語の登場人物に自分を重ね合わせるなんてことはまったくありませんが。今回は粘土工芸作家が作った花々が絵から飛び出しています。チラシにもなっている白い木蓮の花が鮮やかでした。生花ではなく粘土で出来た花なのですが、薔薇やコスモスなど本物かと思いました。ただ、アサガオなど赤い色の花は少し派手すぎる気がして、薄い色の花のほうが素敵でした。
2006年01月12日
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「あなたは知っていますか、日本の美しい技と心を」と展覧会のちらしにうたってありますが、その言葉の通り、現代作家のすばらしい作品を堪能しました。どの作家の作品もすばらしく、ため息の連続でしたが、あえて3人の作品を挙げるすると、前史雄氏の沈金の漆塗りの箱。赤い漆に桜の花が一面に描かれた箱は艶やかであるけれども落ち着いた感じのする逸品でした。それ以上に気に入ったのは、その隣にあった竹やぶに雀が飛び交う黒い漆箱「竹叢」。ふと気がつくと金色の細かい竹の葉の中に吸い込まれていた自分がいました。次は佐渡の無名異焼の伊藤赤水氏の板皿。練上花紋皿。釉のかかっていない赤茶色の下地に椿の花?が散りばめられています。そり返しの下から覗くと裏にも、花々が描かれていました。これも地味な華やかさとでも表現したらよいのでしょうか。帰りに6階の美術工芸サロンで見たら、小さな器がうん十万もします。さすが人間国宝。ぜひとも佐渡の窯にも行ってみたくなりました。人形では林駒夫氏の桐塑人形。神ノ坐ス森。表面はざらっとした感じの緑の着物に金色の衿が美しい。まるで仏像を見ているようでした。この他にもそれぞれの匠の技の美しさを味わうことができ、しばし幸福感に浸ることができました。先日、NHKの夢の美術館にゲストで出ていた江里佐代子氏の截金(きりがね)の作品もその細やかさを身近に見ることができて感激しました。和紙の紙すきにも人間国宝の方がいらっしゃるのには驚きました。和紙の良し悪しは残念ながら分かりませんでした。
2006年01月12日
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朝から、夢の美術館「仏の美100選」を朝から3時頃までついつい見入ってしまったのでどこにも出かけられなくなってしまった。普段は暗い寺の中に明るく照明が当てられた東寺の講堂の立体曼荼羅や室生寺の十一面観音などの美しい映像に見とれてしまう。また平等院鳳凰堂内部の極彩色に復元された様子が紹介されていたが、となりの博物館にでもその様子が展示されているのだろうか。浄土寺の快慶の阿弥陀三尊像は知らなかった。ぜひ出かけてみたい。(どこにあるのだろうか)大倉集古館の普賢菩薩像に残っていた金の模様。きり金という技法で、金の紋様を仏像に張り込んでいるそうだ。ゲストの方が再現していたが、その細かさにびっくり。横綱朝青龍が、インタビューで文化を大切にしない国は滅びる。子どもたちに文化を伝えることが大切と答えていたが、とても25歳の若者の言葉とは思えない。さすが横綱と感心した。夕方の初場所の取り組みで黒海に圧倒されてしまった番狂わせには驚いた。
2006年01月09日
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広い会場を使って5人のスイス人アーチストの作品をゆったりと展示・・・・。本当にゆったりと・・・一作品しかない部屋もあったから、出品リストで確認すると展示作品はわずか13点。最初の展示室、エンドレスで3面スクリーンに建物の映像が流れている。次の部屋ではルーブル美術館のルーベンスの絵画の前で、なぜか裸になって逆立ちする男の映像。これはいったい何なのだ???次は白い板塀に展示された海辺でさ迷う男と女の無数の写真。男女は別々のフレームに納まっていて、決して一緒にはなれない。寂寥感が漂うのみ。で、次の部屋にはエンジンのクローム模型?がいくつかあって、8階は終わり。7階に下りると、最初の大部屋には演劇の舞台が再現してあって、その舞台セットから、そこで上演された心理劇のビデオを眺めるしくみ。30分の芝居なので、途中から見てもよく分からないのでパスする。次の部屋にはエアバックやテントがドンと置いてある。壁に展示してあるのは、灰色のモノトーンの絵かなと思ったのだが、実は一枚の布が貼ってあるフレームが何点か。天井からはステンレスでできた動物のあばら骨が下がっている。この部屋も???最後は部屋中に壁に上から下まで黒い縦線が描かれていて、一部は妙にゆがんでいる。そこで、石に金属を打ちつけるような不快な音が流れる。目がまわって追い立てられるようにして部屋を出るともう終わり。これじゃぁ、馬鹿にしているって怒り出す人が多くてもうなずける。理解できなくても、何か響くものがあればいいのだけど、最後の展示で気分が悪くなり、心地よさとは程遠い展覧会。すでに今年のワースト1決定か。スイス現代美術展 リアルワールド
2006年01月07日
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今年のアート見学は東博でスタート。「博物館に初もうで」としゃれたテーマの企画。いつもは駆け足で通り過ぎるだけの本館常設展をゆっくりとまわる。まず一階の仏像コーナー。昨年暮れから3月までの展示。薬師寺の十一面観音の右足を一歩踏み出し、腰をくねらせた身体の流麗さに見とれる。後ろの当麻寺の十一面観音に比較してもお顔も小さく、とてもスマートだ。今回展示の不動明王のこっけいな顔には笑ってしまうし、奥の小振りな十二神将像の立体展示はみごと。三段の段飾りにしてあって、戦闘集団だという感じがよく表れていて迫力充分。なお、2階にあった日光菩薩坐像。手先も欠けていて、金箔の剥落も激しいが、切れ長の目元の端正なお顔に引き込まれてしまう。法隆寺の国宝百済観音が展示してあって、東京に来ているの?って驚いたが、昭和初期に作られたレプリカ。でも痛み具合まで本物そっくり。一見の価値あり。↓日光菩薩坐像漆工のコーナーでは、江戸時代までの蒔絵。磁器がチャイナというように、ヨーロッパで漆工芸をジャパンと呼んだ時代があったのだそうだ。江戸時代の中山胡民という人の作った虫かごの形をした金蒔絵の菓子箱が面白い。かごの中の玉虫が螺鈿細工になっていて、きらきら光って美しい。次の部屋に進むと「欧州を魅了した漆器と磁器」という特集展示。漆黒の漆に螺鈿で飾ったキリスト像のある書見台とか、フリーメーソンの箱とか、花鳥風月を螺鈿で細工してある裁縫台など豪華絢爛でまばゆい作品ばかり。こんなものも作っていたのだなぁと当時の日本の技術の高さに感心。一階奥の特集陳列「江戸の見世物」は今月15日まで。生人形という実物そっくりの人形。イギリスでいえば蝋人形といったところだろうか。江戸時代のものはさすがに残っていないが、明治末期に国際博覧会に出品した安本亀八という人の作った人形が何点か残っている。首だけのものは本当にリアル。口の中の歯並びまで本物そっくり、気持ち悪いのだが見てみたくなる。今も各地で残る菊人形もこんな見世物の一環だったのだなぁ。今も昔も人の興味は変わらないものだ。2階は、国宝室の長谷川等伯、松林図屏風が圧巻。濃い松は、近くで見ると、何かで引っかいたよう。竹筆というもので描いたとのこと。霧の中から現れては消え、また現れては消える松の林と奥の山。桃山時代の豪華絢爛な花鳥風月画と対極にあるわびさびの世界。近世水墨画の最高傑作と言われているそうだ。伊藤若冲の鶴の作品2点。片方はリアルで生々しい、言い方を変えれば毒々しいぐらいの鶴。もう一方の松樹・梅花・孤鶴図。これってマンガ!っていうくらいの楽しい絵。ついていたキャプションには、ゲジゲジのような松、綿棒のような鶴とあったが、まさにその通り。正月のお笑いにぴったり。ここで、5時閉館時間。正面階段に正月飾りの立派な生け花。残念ながら本館のみしか廻れなかったが、年の初めにふさわしい展示を楽しんだ。帰りに西洋美術館のライトアップされた前庭に寄った。ロダンの地獄門。青銅色した昼間に比べ、夜はライトアップされて黄金色に輝いている。また、光による陰影も深く現れて、地獄に落ちる男女の姿は迫力満点だ。
2006年01月06日
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