森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.07.15
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達磨大師の仏性論に次のような文章があるという。
「至人は、その前を謀らず、その後ろを慮(おもんばか)らず、念念道に帰す」
今日はここで言われている、「念念道に帰す」ということについて考えてみたい。
森田先生の説明によると、以前にしでかしたミスや失敗などにいつまでも拘泥しない。
また、これから先のことについても悲観的になっていつまでも思い悩む事をしない。
その時々の現在に対して、「現在になりきり」全力を尽くしていくことが「念念道に帰す」と言う事だと言われている。
過去や未来のことにいたずらに多くの時間を費やすのではなく、そのエネルギーの大半を今現在にフォーカスさせていくということである。神経症で苦しんでいる人は、これが反対になっている。
つまり、過去のことを後悔したり、未来のことに取り越し苦労ばかりしている。
そして日常生活や目の前のやるべき仕事がおろそかになっている。本末転倒というのはこのことである。


仕事も遊びごとも、僕には同じ熱心さである。特に自分ながら、おかしいのは、将棋を指すときに、負けたら悔しがり勝ったら喜ぶ。 4 、 5番もやって後には、幾番やって、何度勝ったかとかいうことは、少しも覚えていられないことである。
ただ、「現在になる」ばかりである。勝ちの誇りも、負けの恨みも、少しもその後に残らないのである。

「現在になる」ということを、車に酔うということに応用すると次のようになる。
車に酔うと気分が悪い。ムカムカして今にも吐きそうになる。
この時、決して心を他に紛らせないで、一心不乱に、その方ばかりを見つめていることが大切だ。
息をつめて、吐かないように耐えている。吐けば楽になるとか考えて、決して気を許してはなりません。
断然耐えなければならない。
この時、ちょっと思いちがいしやすい事は、自分の苦痛を見つめていると、ますます苦しくなるような気がして、ついつい気を紛らせて、他のことを考えたりしようとすることである。
早く行き着いて寝ようとか、ここまで来たから、もう十分だとか、都合の良い楽なことを考えようとするからいけない。
こんなとき、後2 、3分というところで、安心し、気が緩んで急に吐き出すようなこともある。

過去や将来のことについて思い悩むのが我々人間の特徴である。

言葉を使って抽象的、論理的にに推論できる能力を持っているからである。
ミスや失敗をすると後悔や懺悔をする。
あるいは将来を取越し苦労して、予期不安で手も足も出なくなる。
これらに思い悩むことをなくすることはできない。これこそが人間の人間たるゆえんである。
後悔や取越し苦労は、将来のリスクを軽減できる面もあるので、役に立つ面は役に立てる必要がある。


度が過ぎていると、行動が停滞して、生活がしりすぼみになってくる。
いかにもバランスが悪い状態になっている。その場合、バランスを回復させるためには、この際、後悔や取越し苦労には時間切れを宣言して「現在になりきる」方面に100%のエネルギーを注ぎこむことで、やっとバランスがとれてくるようになる。

私たちは誰でも、何かに無我夢中で取り組んでいるとき、時間が早く経過しているのを後から気づくことがある。この状態はまさに「現在になりきっていた」状態である。
そのためには、森田では日常茶飯事に丁寧に取り組むことを勧めている。
今まで機械的に取り組んでいたのならば、少しだけ丁寧に取り組んでみる。
あるいはもっと効率的になるように少しだけ工夫・改善をしてみる。
新しい気づきや発見が見つかるようになれば、もう「現在になりきる」状態になっている。
今やっている日常茶飯事に今一歩のめりこんでみるだけで十分に目的は達成できるはずだ。





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Last updated  2017.07.15 06:30:04
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
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