森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.12.02
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第54回形外会で戸梶さんという女性が次のように発言されている。

まだ入院中ですが、前にはただ、自分の恥ずかしい・苦しい気持ちを取り直したり・取りつくろおうとしたりして、それに心が一杯で、ただ不可能の努力ばかりして、かえって動きのとれないことになりましたが、今はお陰様で、無理な考え方をやめ、しだいに自然に従うことができるようになり、心が楽になりつつあります。
近頃はあれもこれもと、やりたい事が多くなり、竹山先生のお歌を見ると、自分もあんなに歌を作りたいという気持ちになります。
またここでよくなられた人を見ると自分も早くあんなようになりたいと思います。

これに対して森田先生は、「今いわれたような心持が自然です。こんな風になると神経質もよくなります」とコメントされています。(森田全集 第5巻 617ページ)

この話はなにげない会話のようですが、森田理論の核心部分に触れておられる部分です。
普通は神経症を克服した人を見ると、あの人は自分とは条件が違うと考えやすいのです。
あの人は生まれつき頭の回転がいい。理解力や分析力がある。もともと行動力が旺盛な人だ。
症状が自分ほど深刻な状況にはない。先生の治療方針とぴったり合っていた。

裕福な家に生まれて何不自由なく育っている。

自分と他人を比較して、あの人とは元々の条件が違う。
相手には神経症を克服できる条件がそろっているが、自分には悪条件ばかりが重なっている。
森田理論でいう劣等感的差別観に陥っているのです。
そして相手のことをねたむ。ひがむ。そねむ。すねる。ひねくれるようになるのです。
相手の事を快く思わない。相手に対して嫌がらせをする。対立関係に陥る。
そして悪いことに、自己嫌悪に陥り、悲観する。自己否定するようになるのです。
ひとり相撲を取っているような状態になるのです。

この点戸梶さんは違います。立派なものです。
治った人をうらやんで自分もその恩恵にあやかりたいと思っています。
治った人の行動を見て、早くあの人のようになりたいと願っています。


戸梶さんと私たちの違いは何か。
他人と自分の違いを明らかにしているところまでは一緒です。
他人と自分を比較することは、よくないという人がいますが、私は自覚を深めるために、他人と自分を比較することは有効だと思っています。
大いに比較して自覚を深めようではありませんか。
そうすればより正確に、詳細に現状の把握ができます。


普通比較した後に、どちらが優れているか、どちらが劣っているかという価値評価をしてしまうのです。相手が優れていて、自分が劣っているという評価をしてしまうと、相手に対しては「ひがむ」「ねたむ」「すねる」などという行動をとるようになります。
また何かきっかけがあると、軽蔑するようなことも起きるのです。
そして悪いことは重なるものです。
自分自身もあるがままに認めることができなくなるのです。
いつまで経っても自己肯定感が持てないのです。

もともと事実はあなたが価値判断する必要はないのです。
事実に向き合う態度は、事実を事実として認めて、受け入れるだけで十分なのです。
それ以上の事はする必要もなければ、決して踏み込んではいけない領域になるのです。

それなのに長年の習慣から、どうしても是非善悪の価値判断をしてしまうのです。
是非善悪の価値判断をして他人だけではなく自分自身も苦しんでいるのです。
このことが理解できて、事実に対する態度が変化してくると、神経症はよくなります。
葛藤や苦悩が少なくなります。
さらに、その人は、これから先の長い人生のコツのようなものを身につけたということになるのです。味わい深い人生になっていくのです。
ぜひとも理解を深めていただきたいと思います。





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Last updated  2020.12.02 06:35:49
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