森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.12.03
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第54回形外会での水谷氏の発言です。

対人恐怖の者は、そねむ事が非常に多いと思います。
この間私の会社に、若手の課長がいまして、こちらから挨拶してもろくに挨拶をしてくれなかったから、こちらも不快に思って、話をしなかったのであります。
しかるに私の同僚には、交際上手な奴がいて、朝も早くから、その課長と親しく話をしているのです。そんなことで私もその同僚をそねみ始めたのです。
(森田全集 第5巻 618ページ)

水谷氏という人は、後に自助組織NPO法人生活の発見会の礎を作られた方です。
この方の存在無くして、森田理論学習の自助組織は存在していません。

さて、こちらが挨拶をしているのに、無視する人が時々います。
ムカッとして腹が立ちます。

水谷氏のようにわざと嫌がらせをすることもあります。
その後の人間関係に遺恨を残してしまいます。
こういう場合は、発作的な怒りはとりあえず抑制することが大切になります。
これはこれで機会を見て考えてみたいと思います。

ここでの問題はその次にあります。
そういう相手と親しく会話している同僚に対しても、「ねたむ」「ひがむ」「ひねくれる」という気持ちになるということです。
人を軽々しく扱う若手の課長に対しては、部下は一枚岩になって反抗したほうがよいのにと思っているのに、抜け駆けをしているような同僚は許せないという気持ちになっているのだと思われます。

同僚と自分の行動の違いを比較して、そのような課長と親しくできている同僚を快く思っていないのです。自分の頭で考えていることと反対の出来事が目の前に起きているわけですから、心中穏やかではありません。無意識的に同僚を無理やりにでも自分の考えている方向に引き込みたいと考えているのです。
森田理論でいうところの思想の矛盾に陥っているということです。
思想の矛盾は相手を非難、否定するだけではすみません。
その矛先は自分にも向けられてしまうのです。

自己嫌悪、自己否定に陥ります。自己肯定感は全く感じることができなくなる。

どうしてこのような事態を招いてしまうのでしょうか。
若手の課長と同僚の会話を事実として目撃した後にあります。
その事実を自分のモノサシでよいことなのか悪いことなのか価値判定をしているということなのです。その事実は決して認めることはできない。
無意識のうちに、事実は観念の世界で考えた方向で修正されるべきものだと考えているところにあります。これが他人との間に軋轢を生みだしているのです。


この事実を目撃したとき、事実を事実として認める。
事実を素直に受け入れるということになると、事態は全く違った展開になります。
同僚も課長から挨拶を返されないこともあるかもしれない。
仕事では聞きたくない批判や叱責を受けているかもしれない。
それなのに不快な感情を持ったまま、普通の人と同じように対応できている。
普通の人とは違う何らかの能力持っているのかもしれない。
あるいは、悪いイメージを封印して、本来の目的を果たすという方法を身に着けているのかもしれない。それは自分でいくら考えても見当がつかない。

よし、今度居酒屋にでも行ったときに、そのコツや考え方を聞いてみよう。
自分も相手と同じように、対人関係をそつなくこなせるようになりたい。
事実を価値判断しないで受け入れることができると、無理がなくなります。
そして事実を足掛かりにして、より良い方向へ舵を切りなおすことができるようになるのです。
事実を自分勝手に捻じ曲げる、言い訳をする、よく確かめないで行動に移す。
これらが思想の矛盾となって私たちに立ち向かってくるのです。
少しは戦えるかもしれませんが、いずれみじめな敗北を味わうことになるのです。
言葉でいえば事実を事実として認めて受け入れるということになりますが、これはかなりの修養が必要になります。森田理論学習はその態度を身に着けるために応援してくれているのです。
そして私たち先輩も全力でアシストしていきたいと思っているのです。





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Last updated  2020.12.03 06:36:52
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