イゾルデ: des Quelles sanft rieselnde Welle rauscht so wonnig daher 狩りの角笛ではないわ。波が優しく打ち寄せているのよ。
ブランゲーネはメーロトのたくらみを感じ取っていて忠告する。
ブランゲーネ: vor Melot seid gewarnt! メーロト様にはお気をつけあそばせ。
イゾルデ: まあ勘違いも甚だしいわ。 メーロト様は彼の大親友なのよ。
ブランゲーネ: きょうの急な日程変更の夜狩りだってどこかあやしいわ
イゾルデ: Lass meinen Liebsten ein! 早く私の彼を呼びよせさせて
ブランゲーネ: mein Werk, muss ich Schuld'ge es wissen? 私ったらひどいことをしてしまったのね。
イゾルデ: Des kühnsten Mutes Königin? おまえのせいじゃないわ。愛の女神のなせる業なのよ。
イゾルデ: Wie sie es wendet, wie sie es endet, was sie mir küre, wohin mich führe, ihr ward ich zu eigen: num lass mich Gehorsam zeigen! もうどうなってもいいの。 私は愛の女神の言いなりなの。
イゾルデはブランゲーネの制止も聞かず灯りを消してしまう
逢引の合図。
がっくり肩を落とし出て行くブランゲーネ。
トリスタンが早足でやってくる。 (トリスタンが馬を駆ってやってくる。)
も~音楽打って変わってめちゃ速~~~
トリスタン: Isolde! Geliebte! 愛するイゾルデ!
イゾルデ: Mein! Tristan mein!
トリスタン: Mein! Isolde mein!
トリスタン: Das Licht! Das Licht!
トリスタン: Dem Tage! Dem Tage!
トリスタンとイゾルデの二重唱のシーンは慣例のカット。
トリスタン: Durch des Todes Tor, wo er mir floss, あの盃を呷って、死の扉をくぐって
トリスタン: O, nun waren wir Nacht-Geweihte! 僕らは夜にだけ生きているんだ。
トリスタンはイゾルデの手を引いて、堤防の上に続く階段に誘導する。
聴かせどころがきました。
二人: O sink hernieder, Nacht der Liebe 愛の夜に溺れよう
all Gedenken all Gemahnen heil'ger Dämm'rung hehres Ahnen löscht des Wähnens Graus welterlösend aus すべての観念が消えて世界が消え去っていく
イゾルデ: Barg im Busen uns sich die Sonne, leuchten lachend Sterne der Wonne 陽が沈めば星空の下で歓喜し笑いあうのよ
ブランゲーネ: Einsam wachend in der Nacht 夜の見張り Habet acht! Bald entweicht die Nacht 気をつけて! もう夜明けですよ!
高音での震えない長いレガートが必要な屈指の難所。
ブランゲーネの忠告も裏切りの愛で得られる絶頂の幸せの中で愛し合う二人には届かない
トリスタン: Lass mich sterben! 死なせてくれ
トリスタン: Unsre Liebe? Tristans Liebe?
トリスタン: So stürben wir, um ungetrennt,ewig einig ohne End' 二人で死んでしまおう。永遠に離れることができないよう。
再びブランゲーネが忠告する。
ブランゲーネ: 注意してください もう朝ですわ
O ew'ge Nacht, süsse Nacht! Hehr erhabne Liebesnacht! 永遠の甘き夜、最高に気高き愛の夜よ
meiner Ehren Ende erreiche? わしの名誉はついえた Die kein Himmel erlöst, 神も救うこと能わぬ warum mir diese Hölle? 地獄の苦しみ Die kein Elend sühnt, warum mir diese Schmach? Den unerforschlich tief geheimnisvollen Grund, wer macht der Welt ihn kund? どうしてわしにこのような恥辱を与えるのだ 誰がその謎を解いてくれるのだ
トリスタン: O König, das kann ich dir nicht sagen 王よ、私はその問いには答えることができません
イゾルデに
トリスタン: Wohin nun Tristan scheidet, willst du, Isold', ihm folgen? 私がどこへ向かったにせよ、あなたはついてきてくれますね?
それは夜の国 私をこの世に送り出した死んだ母の国
イゾルデ: Wo Tristans Haus und Heim, da kehr' Isolde ein: auf dem sie folge treu und hold, den Weg nun zeig Isold'! トリスタン様の故郷の家にイゾルデも参ります。忠実についてまいります。どうぞご案内ください。
トリスタン: Wehr dich, Melot! メロート、覚悟!
立ち回り。トリスタンは王の手下を何人か切り捨てるがメロートに向かい合うと…! (割愛)
3幕
相変わらずの夜 海の稜線が赤く二重に輝いている。
寄せては返す波(の音楽)
断崖絶壁がしもてにあり、かみてで臥せっているトリスタン。そばにいるクルヴェナル。
牧童のもの悲しいシャルマイが聴こえる
牧童が急な岩場を下りてくる
牧童: Kurwenal! He! ねえ!クルヴェナル どうしたの?
クルヴェナル: 殿が目覚めたらその時がお陀仏の時かもな あの女医しか頼みはないんだ
牧童: 船が来たらさ、とびっきり楽しい笛を吹くよ! でもさ~殿様は大丈夫なのかい?
詮索してくる牧童に語気を強めるクルヴェナル。
クルヴェナル: Lass die Frage おまえ、うるせえんだよ!
クルヴェナル: 見張っててくれ
牧童: 海は荒れてて何も見えないよ
目覚めたトリスタン
Die alte Weise
meinem Tristan neu gegeben!
ここはあなた様のお国です!
Tristan, mein Held, hehr ertrotzt!
コーンウォールにいるのか?
そうじゃなくて、カレオールですよ
クルヴェナル: Nun bist du daheim, daheim zu Land: im echten Land, im Heimatland; auf eigner Weid' und Wonne, im Schein der alten Sonne, darin von Tod und Wunden du selig sollst gesunden
Ich war, wo ich von je gewesen, wohin auf je ich geh 私は旅立つ
göttlich ew'ges Ur-Vergessen その国は、忘却の国
Isolde noch im Reich der Sonne! イゾルデはまだ「昼の国」にいるのだ
あなたが恋しい あなたに会いたい
sie zu suchen, sie zu sehen; sie zu finden, in der einzig zu vergehen
Verfluchter Tag mit deinem Schein!
Wann endlich, wann, ach wann löschest du die Zünde, dass sie mein Glück mir künde? Das Licht --- wann löscht es aus? いつになったらあの灯りは消えるのか? 私に幸せが訪れるのか?
クルヴェナルはイゾルデを呼び寄せたことを語る
Isolde kommt! イゾルデが来る!
トリスタン: Mein Kurwenal, du trauter Freund Range: D3 - A4
Es naht! Es naht mit mutiger Hast! Sie weht, sie weht --- die Flagge am Mast. Das Schiff! Das Schiff! Dort streicht es am Riff! Siehst du es nicht? Heftig. Kurwenal, siehst du es nicht? 船が近づいてきた マストに旗が翻っている お前には見えないのか?
クルヴェナル: 船はまだです。
哀しい響きのシャルマイの音
あの音色だ
Sehnen! Sehnen! Im Sterben mich zu sehnen, vor Sehnsucht nicht zu sterben! 憧れているのだ 死ぬほど憧れている 死なないための憧れではない
Der furchtbare Trank! あの呪わしき盃よ ich selbst --- ich selbst, ich hab' ihn gebraut! Aus Vaters Not und Mutterweh あれを作ったのは私自身だ 父の苦しみと母の悲しみから Verflucht, wer dich gebraut! 呪われるがいい
イゾルデ: Liebestod (Mild und leise) 優しく穏やかに彼が笑ってるわ あなた方には見えないの? 彼の心臓の鼓動を かぐわしい息吹を 感じないの?
Süss in Düften mich verhauchen? In dem wogenden Schwall, in dem tönenden Schall, in des Welt-Atems wehendem All --- ertrinken, versinken --- unbewusst --- höchste Lust! 甘い香り が私を包んでいます 押し寄せる激流の中で、 響き渡る音の中で、 この世の息吹を感じ 空間を超えて 溺れ沈んでいく 無意識の世界へ 最高の歓喜へと!