ちょっと本を作っています

ちょっと本を作っています

Feb 1, 2005
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カテゴリ: 本を作る
出版業界でメシを食う方法(その二十四)

さて。昨日の特価卸とゆりさんとの再会の話を記憶の片隅に留めて置いて頂いて、私があちこちの出版社の倒産事件や再建や企業買収や新社設立に関わった件に話を移します。


「何でー? だってオレ、倒産の当事者だよ」

普通じゃ考えられないことが起きてきました。

私が銀行取引停止になった頃から経営相談が相次ぐようになりました。

知り合いの中小出版社の社長さんたちです。


私に相談を持ち込むのは、幾つかの理由がありました。

一つは、私の会社が倒産したにも関わらず、経営を続けていたことです。

事務所も電話番号も同じです。代表者も同じです。


私もカラ元気で、以前にも増して仕事で飛び回っていました。

「どうすれば、そのように出来るの?」。明日は我が身と切実です。

経営不安におののく中小出版社の社長にしてみれば、夢のような話です。




中小出版社の経営者十数人が集まり、「出版野武士の会」と名付けました。

でも一、二回の飲み会だけで続きませんでした。個別相談が多過ぎるのです。


「そんなことやっているヒマがどこにあるの?」

相談に来る社長連中の相談に時間を割かれるので女房の叱責が飛びます。

でも相手だって必死です。「時間を取ってください」と食い下がります。

「いいよ、いいよ。お宅も大変だねー」と倒産した本人が慰め役です。


銀行交渉、在庫調整の仕方、販売ルートの開拓、取次との条件交渉、etc.

ついには経営計画のたて方から債権債務の整理に、人事まで相談されます。

もともと顔は広い方でしたが、さらに一気に、人の輪が広がりました


私のところの債権者に紹介されて来た方も大勢います。

「お宅も大変だろうけど、ちょっと相談に乗ってやってよ」

迷惑を掛けた相手からの紹介だけに断れません。




私の倒産時に業界の大物が揃ったので、「こいつ顔が広い」となったのです。

実は倒産後も私のために「面倒を見てやってよ」と取次に連絡が相次ぎました。


「エッ、社長さんもご存知なんですか?」

大手の出版社の営業部長や専務さんなどです。社長さんもいます。

「えー、あなたもお知り合いなんですか?」

「うん、昔からね。あいつが二十歳くらいの時から知っているよ」




みんな出世して、それぞれの会社の役員になっていました。

猪突猛進型の私は、幸いなことにみんなの記憶に残っていたようです。


常に私は最年少の仲間です。みなさん私よりはるかに年上でした。

「あいつは若いんだから、面倒を見てやらなきゃ」

そのような思いをいつまでも持ってくれていました。


今度は出版取次からの紹介です。出版社の社長が相談に来ます。

「あの出版社に倒産されるとウチも困るんだよ。相談に乗ってやってよ」

いつの間にか取次の管理部にも足繁く通うありさまです。


ついには弁護士さんまで紹介してきた

私の倒産事件の後、お世話になった弁護士さんがいます。

一円も払っていません。それなのに面倒を見てもらいました。

その弁護士さんから話を聞いたと昔の知り合いが飛び込んで来ました。






ある日突然

事件は突然飛び込んできた。ある出版社が、きょうの仕手決済が出来ないという。保証人にもなっている私の友人、I氏のところへ飛び込んだが、これといった手が思いつかない。

思い余って弁護士さんのところへ相談に行ったらしい。彼の会社がつまずけば、I氏の会社も連鎖倒産の憂き目にあうと言う。

ノンバンクやサラ金、果ては暴力金融にまで手を出している。それも手形帳がないので、ほとんどが先付けの小切手を差し入れている。ほかにも業者さんへの支払いに多額の先付け小切手を振り出していた。

それこそ一度でも不渡りを出したら収拾がつかなくなる。いくら弁護士さんでも、これでは手の打ちようがない。自己破産を勧めるしかないのだが、それではI氏の会社も連鎖倒産を免れない。

「Iさんもご存じの、あの人しか相談出来る相手はいないでしょう」と弁護士の先生が言ったということで私のところへ相談に来た。

概要を聞くと、難関はあるものの、整理出来ないでもない。時間もないので古書の卸問屋の社長に協力をしてもらうことにした。


三時間の勝負

無茶を承知で、「今すぐ○○万円用意しておいてくれないか。事情は後で説明するから」とだけ電話で話して、すぐに飛び込んだ。

卸問屋の女社長も何がなんだかわからずに、それでも頼んだ金額を用意してくれていた。説明のために私は残り、F氏は現金を掴んで銀行へ走って行った。

「悪いっ、もし返せなくても、彼のところの商品は古本市場で捌ける商品だから面倒を見て欲しい」

当座の手当てが出来てすぐ、次の段取りにかかった。すぐにも次の決済が押し寄せてくる。一息入れる時間もなかった。

F氏が銀行から戻って来ると、さっそく主な取引き先へ電話を入れさせて、アポを取る。大口債権者から順に回り始めた。

「このままではすべてがなくなってしまいます。ぜひ協力してください」

「事業継続が出来れば全部とは言えませんが返済の方法もあると思います」

なんで私まで頭を下げなければならないのかと思ったが、ほかに説得のしようがない。


当面の危機を回避

期日を定めて債権者集会を開催した。

「私も役員に入って責任を持って再建します。そのためには皆さんのところへ出回っている先付けの小切手を返してください。もし一枚でも残っていて、それが回ってくるようでは再建の見込みはありません」

「私が名を連ねている会社が倒産しようものなら、せっかくここまで頑張ってきた自分の会社への影響も出てきます。一枚でも先付けの小切手が市中に残るようなら、残念ですが私は手を引かせてもらいます」

半ば脅迫に近い言い方だったかも知れないが、なんとかそれで債権者の方たちも了解してくれた。


一気に不良債務整理

債権者集会に集まってもらった取引き先の人たちの了解は得られた。暴利の違法金融は弁護士さんに動いてもらい処置をした。

次にはノンバンクやサラ金の処理が控えている。ノンバンク・サラ金とはいえ上場しているようなところばかりなので、金利が高いとはいっても法定利息や出資法ギリギリだ。

ここまで来ると、逆に不渡りも出していないので思い切った手は打てない。そうかと言って高利の借金を残していては再建のメドも立たない。なんとか金を作って、債務を消すしかない。

そこで目を付けたのがF氏が遺産相続で所有している静岡の土地だ。細長くて地形はあまり良くないうえに十七坪しかない。それでも売れれば借金の穴埋めになる。

その時、私の両親の土地が競売になった時に落札したのがお隣さんだったことを思い出した。まず隣の土地の持ち主に交渉しよう。これ以外にすこしでも高く売る方法はない。

何度かの連絡の末、私とF氏、さらには最初に私のところへこの件の相談を持って来た友人のI氏の三人で出向くことになった。


「わかりました。協力させてもらいましょう」

先方は謄本も取り寄せてあるらしく、サラ金業者の担保が付いているのも知っていた。さらに、「この辺の評価額を知っていますか」と聞いてきた。

相場は、こちらの言い値の半分以下だと、暗に語っていた。まともな交渉なら、かないっこない。率直にこちらの状況を説明して、協力してもらうしかない。

「売りにくい土地だということも重々承知しています。いずれ競売にかけられるような状況になるのも目に見えています。競売になれば評価よりはるかに安くなるでしょう。お願いするしかありません。彼は千七百万円どうしても必要なんです」

延々とこの間の経過を、何度も、何度も繰り返して説明した。私の話を聞きながら、しばらく考えていた先方の社長は、突然、

「わかりました。買いましょう。お隣さんの息子さんが困っておられる。聞けば大したお付き合いでもないのに、お二人さんが彼のために静岡くんだりまで頼みに来る。同じ静岡の人間として協力させてもらわんわけにはいかないでしょう」

気の短い方なのか事務員に、早速「小切手を切るように」と言い出した。「いやそれは、正式に書類を整えてからでないと」と辞退して席を立ったが、本当に嬉しかった。帰りに今日出会った社長の経営する駅弁会社の『鯛めし』を買って新幹線に乗り込んだ。



皆さ~ん。静岡へ行ったら駅弁は『鯛めし』ですよ。

続きます。

静岡の『鯛めし』の会社の名前は何ていったっけ。ちいさんなら知っているよね。





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Last updated  Feb 2, 2005 12:21:03 PM
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失礼ながら  
nn☆  さん
勇気というか、エネルギーを感じてしまいました。これが生きるということなのでしょうね^^ (Feb 1, 2005 06:01:25 PM)

Re:出版業界でメシを食う方法(その二十四)(02/01)  
Mikku@  さん
すごい話ですね!私も隠居さんと同じタイプです。何でも即決即断!私は女で良かったです!
すごい人生ですね・・一気に毎日読んでいます! (Feb 1, 2005 09:46:19 PM)

駅弁は  
新鮮美観  さん
東海軒の「鯛めし」ですよね
http://ekiben.or.tv/cb-shizu3.htm

そんな気風のいい経営者は、せめて宣伝してあげましょう。でも510円で鯛めしは安いですね。 (Feb 1, 2005 10:20:40 PM)

Re:駅弁は(02/01)  
両国の隠居  さん
新鮮美観さん
>東海軒の「鯛めし」ですよね
>http://ekiben.or.tv/cb-shizu3.htm
-----
思い出しました。東海軒です。ここの社長さんです。ほかにも色々と事業をやっておられる方です。
(Feb 1, 2005 11:03:54 PM)

Re:出版業界でメシを食う方法(その二十四)(02/01)  
ちい021  さん
知っていますよ。「東海軒」老舗の駅弁やさんです(^^
鯛めしファンは多いですよ(^^

ご隠居さんってほんとすごいですね。
機転が利くしここぞと思うときの力は憧れの的です。居直り方が素晴らしい!ってこんなこと私が言ったら失礼ですが・・・ごめんなさい。

明日発売ですね。楽しみです。
各1冊はしっかり私のものにいたします(^^

(Feb 2, 2005 07:15:16 AM)

両国の隠居さんは、  
おばど  さん
名前に惹かれてやってきました。。すごい人生!!すごい人なんですね。。太っ腹!!男の中の男!!う~~~ん・・いろいろ考えさせられます。でもきっと、お徳いっぱいの方なんでしょうね。お元気で頑張って下さいませww今はそれしか、、言えませんが・・ (Feb 10, 2005 08:09:10 PM)

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38万円で本ができた


第一章 もっと手軽に自分の本を作れたら


第二章 協力出版と懸賞募集の甘い罠


第三章 自分の本を作りたい理由を考えよう


第四章 本にする原稿をまとめよう


第五章 自分の本を売ってみよう


第六章 安く本を作る方法を考えよう


第七章 物書き稼業と編集者稼業の裏表


第八章 昨今の出版業界のお寒い事情


第九章 いまどきの本屋さんと物流事情


第十章 出版業界こぼれ話


【出版後記】


負けてたまるか


その1


その2


その3


その4


その5


その6


舞台裏からの独白


すぐそこの田舎暮らし


第一章 先住民/黒猫の『タンゴ』


第二章 山里「コンタ」発見


第三章 知らないってことは


第四章 竹の子で仲間を釣り上げる


第五章 森の天使の小さな落し物


第六章 小悪魔『チビクロ』参上


第七章 チビクロ砦とチビクロ王国


第八章 まったくもう、田舎暮しってヤツは


第九章 チビクロ、チビコゲへ変身中


第十章 隠れビーチで日向ぼっこ


第十一章 チビクロ、何処へ行こうか


第十二章 何で、お前まで行ってしまうの


第十三章 ムジナに見送られ、街へ帰る


エピローグ みんなで遊ぼうよ


両国・千夜一夜物語


前編


後編


はみ出し人生・出版屋稼業


第一話 私の出版屋事始め


第二話 ちょっぴり生意気だった理由


第三話 出版企画会議の話


第四話 土木から資格試験へ


第五話 工学書転じて実用書に 


第六話 なぜかスキー書


第七話 退職、そして創業


第八話 行け行けドンドンの始まり


第九話 原稿は役員専用車で届く


第十話 スパイにされちゃった


第十一話 ただ酒、ただ飯、お土産は仕事


第十二話 閃いた


第十三話 出版から映像へ


第十四話 ヒットチャートに載っかった


第十五話 思えば、いろいろやったもんだ


身も心も捧げた女は飽きられる


プロローグ


第一章 身も心も捧げた女は飽きられる


第二章 したたか女はイイ女


第三章 女の勘違い


第四章 私の出会ったイイ女列伝


エピローグ


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第二話 やっぱり巻き込まれてしまった


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