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「さて、お前らこれが終わったら紫苑さんとこ行ってこいよ」
「わかってますとも」
「で、あの幸子さんとやらはいったい誰なんだ?」
「かつて夫を殺したヤクザに復讐しようとした女だ。幸子の名のわりに全然ついてない人生を歩んできて、復讐を果たしたら外国に高飛びする気だった」
「ところが逃亡中に車が故障して、ああ不幸だと思ったらその場に居合わせた人が助けてくれました。しかし、それがなんと特命係」
「無論察知されてしまい、逃亡寸前に逮捕、御用となったわけだ」
「犯罪を犯したのは許せんが、あの特命係に捕まったのは哀れだな……犯罪者側からするととてもムカつく相手だからな。本当、不幸なんだな」
「ところが、そうじゃないんだよそのヤクザ、向島と言うだが、命を取りとめたんだ。しかもその事件がきっかけでそいつが所属していた暴力団が壊滅して、その捜査協力の功績が認められて殺人未遂、銃刀法違反あともろもろの罪にもかかわらず懲役三年という軽いものとなった」
「そこはついていたのかね。出所まであと1年半、出られたら服飾の仕事がしたいそうだ。まあよかったじゃないか、一人の不幸な女が社会復帰できて」
「……しかし、世の中そんなに甘くなかった」
「だ、脱獄!? ちょっと待って後一年半だぞ、そんなことする必要ないじゃないか!」
「模範囚ならもっと短くなる、わざわざリスクを冒して逃亡犯となる必要性は感じられないな」
「ビンゴですよ、健康診断で異状が見つかった幸子は春麗という囚人と医療刑務所に送られることになりましたが、その途中、春麗の仲間らしき男たちが護送車を急襲し刑務官を人質にとり逃亡。つまり幸子さんは春麗脱獄に巻き込まれただけです」
「ついてない女は健在か。せめて自分は出してくれと頼むが、春麗は聞きゃしない。逆に殴られるし」
「その頃逃亡犯を捕らえるために検問が敷かれていた。しかしそれは主要幹線道路を塞いだセオリー通りのもの。計画的な犯行ならば検問がされそうな道は避けるだろう。杉下さんはイチかバチかで裏道を塞ぐ方針を採用します」
「賭けだぞ、大丈夫なのか?」
「そう言われて怖気づいてしまった中園警視正、すぐに戻してしまいます。意志がない人。実際そこに来てたのに、車。幸子さん「ついてる」なんて言われてますが、とんだ迷惑ですね」
「検問があの調子じゃ、もうかからんだろ。手がかりを探しに護送車を調べてみると、そこには大量の血痕が。幸子さんが殴られた時のものだな」
「まったく、酷い女がいたものだ」
「その血液を採取、検査してもらうことに。どうも裏があるようだ」
「一方幸子さん、人質の刑務官に血で書いたメモを渡して脱走させました」
「おお、やった!」
「ここで新事実。春麗の父は台湾マフィアのボスだった。獄中から父へ「逃がして欲しい」手紙を書き、今回の逃亡劇を用意してもらったという。このまま台湾へ逃亡する気だ。元々台湾人だったが四歳の時に日本へ来て母が死亡、その後親戚をたらい回しにされるという絵に描いたような不幸話を披露してくれました」
「つまり、これは台湾マフィアの救出劇ということか?」
「……なんかおかしくないですか?」
「確かに。そんな話検閲に引っかかるだろうし、だいたい周は一ヶ月前に日本来ているようだが返事の手紙消印四日前だぞ。だいいち、返事の手紙検閲が雑すぎる。読めるわあんなもん」
「おっと、ここでまた新情報、幸子さんはまったくの健康体だそうだよ」
「ちょっと待って、幸子さん病気で運ばれる予定だったんでしょ、問題ないならどうして」
「つまり、狙いは幸子さん、巻き込まれたのは春麗の方だったんですよ」
「ってストップ! 助けられた刑務官さん、護衛の巡査の人の目盗んで、メモ捨てちゃったよ!」
「ふむ、裏切り者はあの女だったか。検閲のことといい、刑務所内部の人間に協力者がいるのは明白だったがこいつか」
「よりによって犯人相手に……なんて不幸なんだ」
「……それはどうかな。しかし、台湾マフィアがフェイクで狙いが幸子さんだとすれば、主犯はもちろん、」
「う、うげっ!」
「やっぱりこいつでしたか、向島」
「む、向島だと? 生きていたのか?」
「そりゃ殺人未遂だから生きてるだろ。しかし警察から逃げ延びていたか。動機は復讐か。しつこい男だ」
「それより続くってなんだ続くって! こんなんで一週間待てってのかよおい!」
「まあ、一週間欲求不満に苦しむことですね」
「できるかぁ!」
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