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「とうとう今日が最終回かあ……なんだか悲しいなあ」
「その前に、溜まった分片付けておきませんとね」
「ぐっ……!」
「角田課長が、100万円の謝礼金がついた、調布のマンションでの殺人事件への捜査協力を求めるビラを持ってきた。しかし、警視庁のデータベースにそんな事件は存在しない。不審に思った二人がビラ配りをしている男性に話を聞くと、その人=中津留健吾さんは自分の娘=順子さんがストーカーに殺されたと思っているが、病死として処理されたらしい。病名は、急性心不全」
「どんな病気だ?」
「主に、死因がはっきりしない病気につけられる病名だったと」
「え? それじゃ死因がはっきりしなかったってこと?」
「表面監察だけで、解剖はされなかったそうだな。明らかに事件性があるもの以外は解剖しなくて、東京23区やその他ごく一部以外には監察医制度がないから、基本的に司法解剖はされないんだ。こうしてる間にも何人の人間が、急性心不全で死んでるのかもな」
「どうもストーカーがいたのは事実らしい。しかし遺体に外傷もなく、部屋が密室状態故事件性はないと担当の熊沢刑事は判断した。だが父親は納得せず、再捜査を依頼するも証拠がないと門前払い。だったら自分で調べようとビラ配りをしていたそうな」
「しかし、ピッキングの跡もないし、男女関係にも問題はなかったのだろう? 間違っているとも思えんがな」
「甘いですよ。最近電子ロックに限らずとか鍵の性能も上がってきましたが、ここのはそんないいものじゃないそうですから簡単に合鍵くらい作れるでしょう。それにストーカーが知人なんて甘い甘い。どっかで眺めてるだけで惚れたアホがいるかもしれないし」
「う……」
「とにかく現場を調べるしかないね。でもとっくに現場検証されただろうから無駄足だと思うけど……」
「そうでもないぞ? タンスの裏からなんか見つけた。円い……シミ?」
「早速米田さんに頼むと、それはペットボトルキャップの形をしたオレンジジュースのシミでした。青酸ソーダ入りの」
「青酸ソーダ? どこかで聞いたような……ちょっと待て、劇物だろそれ!?」
「まさか、毒殺!?」
「可能性はあるな。毒物が全部刑事ドラマみたく血吐いて倒れるとは限らん。表面上に症状が出なくて死ぬ場合もある。すると、オレンジジュースに毒を入れて、死亡した後合鍵で入りオレンジジュースとペットボトルを回収した――こんなとこか」
「やった! これで捜査の手が……」
「無理だよ」
「え?」
「死体はどこですか? 灰になっちゃったでしょう。青酸ソーダ入りのオレンジジュースは? そんなものどこにもないでしょう。証拠がなんにもないじゃないですか。耳の指紋=耳紋も検出されましたが、そんなの何にもなりません。既に病死と決定された以上、動くことなどあり得ませんよ」
「そ、そんな……」
「入院した中津留さんも愕然としちまった。しかし、なんとか捕らえてみせる。まずは、毒の混入経路だな」
「ずいぶんブログで私生活暴露してたんだな、順子さん。好きなオレンジジュースの銘柄とか自分の習慣とか。これならオレンジジュースを用意すれば可能かもな」
「そうか?」
「可能性はありますよ。順子さんはバス出勤でしたから、バスの中でオレンジジュースをすり替えるのは難しくありません。ついでに鍵も掏り取れば、合鍵だって作れるでしょうし」
「となると、ストーカーは同じバスの乗客の可能性が高い。お、丁度良く停留先に城南大学理工学部の名前が。理工学部なら毒の入手も余裕だろう」
「ちょっと待ってよ、そんな青酸ソーダがそんな簡単に盗めるわけないじゃん。厳重に管理してるはずだよ」
「おっと電話です。……え? 中津留さんが死んだ?」
続く
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