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「……俺が呼んだの。てか、前々から連絡は取り合ってたんだよね」
「静馬! お前無事だったのか!?」
「まあな。いきなり殴られて……でも確か、風撃でも氷結でもなかったと思うよ」
「んなこたどうでもいい! なんでこんなやつ呼んだんだよ!」
「どうでもいいんですか。さっき聞いた通り、本当に嫌ってるんですね」
「お前らこそなんでこんなやつと一緒にいるんだ! こいつは……」
「『アブソリューダー』『コントロール』もしくはその二つを合わせて『アブソリュード・コントロール』と裏社会で呼ばれている天才外科医」
「そして八年前、瀕死のお前を治した医者だそうだな」
「そんなんじゃない! こいつは無免許のくせにバカ金を請求して、しかも手術はどれも非人道的処置の外道医者だぞ! おまれにこいつは命を救いたいんじゃない、相手の命を支配して弄ぶことに快感を感じる最低な変態医者だ!」
「ずいぶん言ってくれますね、誰が治してやったと思ってるんだが……ま、快感を感じているのは認めますが」
「え……」
「命を支配する。この手の中に、他人の生殺与奪権を握る――ちょっと手をひねればそいつは絶命する。ちょっと指を動かすだけで、そいつの命は助かる。その狭間、正に命を支配する絶対者となった悦楽は何にも例えがたい……特に、あなたのような強い命はね」
「冗談じゃねえ、誰がお前なんかに診てもらうかゴフッ」
「四の五の言わないでください。回復したとはいえ、そう無茶していいわけじゃないんですから……動かないで」
「だああ、放せ! お前なんかに誰が……うぅ」
「……鎮静剤か。まあ確かにそれくらいやらねば収まらんからな」
「抜けたきゃ神速で逃げればいいのに、それすらできんほど体悪いのに抵抗しやがって……子供かこいつは」
「てか、ずいぶん嫌われてますね。一応命の恩人なんでしょ?」
「ま、ね……八年前色々あって、それ以来毛嫌いしてるのよ」
「私としては、嫌われようが嫌われまいがただ治せればそれでいいから構わないですけど……ふむ、内臓に大した支障はないですね。これくらいならすぐに治ります」
「御苦労さまです……しかし、八年も治療が必要な怪我なんて、何があったんだか……」
「ん……違いますよ。八年かかったのは怪我の治療じゃありません」
「え? でも五体がバラバラになったとか」
「ああそれはなりました。右腕右足左腕左足、あと首も吹っ飛ばされてね」
「……首!?」
「いや、首が飛んだら死ぬでしょ普通……」
「まあ凡庸な医者にかかればね。私の手にかかれば、首を切断されたくらいかすり傷と一緒ですよ」
「……腕は本当にいいんだよなあこの人。性格はアレだけど」
「むしろ手間取ったのはこいつ自身の既往症というやつでしてね……まあ簡単に言うと、神速の使いすぎです」
「使いすぎ?」
「あいつの超加速能力……たしか、『アクセル・アップ』なんて名でしたっけ。知っての通りあの力は動きを素早くしますが、原理の類はフォルトどころか誰にもわかっていません。ただ言えることは、あれは能力や力というより『病気』だということです」
「……病気?」
「ええ病気。あえて言うならですが。だから、その超人的な加速に――体が耐えられないんですよ」
「…………」
「内蔵なんか酷いものでしたよ。控え目に言ってもボロボロで、九十歳の老人でもあそこまでじゃない。内科も専門でしたから治療できましたが、さすがに回復には八年かかってしまいましてね。はっきり言うと、今も治療の途中なんですよ」
つづく
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