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「有名マジシャンミスターアキのマジックショーにたまきさんに誘われやってきた杉下さん。まあマジックのネタなんか杉下さんには丸わかりだろうけど、それはマナー違反だから。お、瞬間移動マジックか。明かりが消えて……ん、人が落ちてきた!?」
「マジックじゃなくて事件だな。死亡したのはミスターアキこと秋川満さんの弟子で沢田……ん、田中? 沢田というのは芸名か。照明用の足場でマジックの手伝いをしていた。転落死したようだが、手のひらの三本傷はなんだろう? あ、それとマジックの手伝いだが、なんでも秋川さんの頭上に黒い布を穴から落とすそうだ。しかし、照明が消えてから足場に移動するから、何も見えんではないか。これでは落ちて当然だ」
「のために、穴の前にはあらかじめケミカルライトが置かれて目印になってました。にもかかわらずライトと布ごと落ちちゃって……あれ、確かステージは真っ暗になってましたね。ライトが落下したら見えるはずなのに、そんな光ありませんでしたよ」
「それとあの奥さん、沢田の名前が芸名って知ってやけに動揺してたな。なんか半年前に来た四年ぶりの弟子だって言うからどんな奴かもよくわからんし、一度調べてみる必要あるぞ」
「息子の元くん、母親で芸能プロの社長である香菜恵さんはマジシャンにしたいんだけど、秋川さんは大学入ってからでいいってことで予備校通いさせてるんだって。下積み時代が長くて苦労したんだろうね、一理あるけど。あれ、沢田さんの部屋調べてたらトランプ見つけたけど、これトリックカードだよ。裏面の模様がそれぞれ違って数字がわかるの。それと……スペードのエースないね。あとは別に……ボールペンくらいしかないや」
「違うぞ、このボールペン型のICレコーダーだ。中身は……沢田と香菜恵さんの睦言やん。不倫してたんだあの二人。でもこれ、使用上遠隔操作できないから沢田自身が録音したものだよな。わざわざこんなもの残して不倫する奴いるか? ――待て、こういうのを残すために不倫したのか?」
「は? なんだそれは。とりあえず携帯に残された番号でも……ん、なに、探偵事務所につながった?」
「ただの探偵事務所じゃありませんよ。別れさせ工作と言って、離婚したい相手に工作員を送って不倫させ、離婚をスムーズに行えるサービスやってました。こういう仕事があるらしいですけど、いいんですかこんなことやって。で、沢田こと田中さんがそこの工作員だとすると、依頼主は十中八九秋川さんですね」
「なんでもこの人、四年前に弟子がやっぱり事故で死んでるらしい。それで弟子をとるのを嫌がってたんだが、熱意に負けて田中を……やっぱ別れせ工作は完全否認か。で、事件の方だが、数分間あのブリッジ近くに誰もいなかった時間があるのが判明したから捜一もアリバイ調べに入った。香菜恵さんは最後尾でショーを見てて、転んだ客を助けていたそうだ。息子もそれを目撃してたって」
「でも、離婚についてはあり得ないって言ってるよ。ミスターアキの名前はスタイルは全部香菜恵さんが考案したものだから、離婚なんかしたら使えなくなるって。てことは、不倫を理由に離婚して、その権利を奪おうとしたってこと? でも、それと事件とは関係ないよねえ」
「どうかな。ところで面白いことが分かったぞ。四年前の事故とやらだが、当時秋川の弟子だった奴がスタジオで一人ファイヤーマジックの練習やってたら火がネクタイに燃え移り、あわてて水場に行こうとしたら階段から落ちて転落死したらしい。で、その現場に弟子が自分で特注したトランプ百セットのうち一セットなくなってた。それがあの秋川のとこで見つけたトランプだ。こりゃどうも怪しいぞ」
「秋川夫妻、やはり離婚するそうだ。元くんは秋川さんが引き取り、ミスターアキの名を捨ててやり直すと。元くんには辛いだろうに……」
「その元くんの部屋から焦げたトランプ、例のスペードのエースが見つかりました。なんでも、四年前の事件の変装した秋川さんが捨てるのを偶然目撃し、不審に思って回収していたそうです。その経緯を記した日記とともに沢田に盗まれ、秋川さんへの脅しの種に使われたいたそうな。で、なんとかそのトランプを回収しようとあのショーの隙をついてかすめ取った。秋川さんが脅されたいたとすると動機は成立しますが……あの時確かにステージの上にいた人が、どうやって突き落とせたんでしょう」
「突き落とす必要はない。自分から落ちるにすればいいんだ。穴を見落とす、いや、穴の位置を勘違いさせてな」
「は? そんなことどうやるんだ」
「あの落ちてた黒い布だよ。あれを折って穴を塞ぐ。そうすると暗くなった床と完全に同化するんだ。その上にケミカルライトを乗せてしまえば、勘違いして落ちるさ。よく考えてみりゃ変な話だ。沢田が黒い布を穴から落とす段取りなら、秋川さんは穴の真下にいなきゃならない。だったら墜落した沢田さんに激突してるよ」
「でも完全否認してるよ。あ、四年前の件はやっぱ現場にいたんだ。なんでも、そのお弟子さんは優秀だったから図に乗るようになってきて、秋川さんの許可も得ずデビューしようとしてたんだって。そしたら階段から落ちちゃった。だけど弟子を死なせたなんて知れたらキャラ的にまずいから口をつぐんだって。本当かな? ……え、どうしたの?」
「元の奴、客席じゃなくてあのブリッジにいたんだ。見ちまったんだな細工をする父の姿を。どうしていいかわからずその場にいると、沢田が来て落ちてしまった。手のひらにあった傷は、手を出した元の腕時計で削れたんだ。殺してまで隠したいとなると……やっぱ四年前の件も殺しか。考えてみりゃ、ファイヤーマジックの使い手がネクタイに火点いたくらいでビビるわけがない。突き落としたんだ」
「才能が憎かったんですね。追い越されるんじゃないかと。そして、ミスターアキの名を捨ててまで元くんを手元に置いたのは、彼をマジシャンにしないために。自分が一番で居続けるために」
「さ、最低だなこいつ! 自分の地位を守るためなら息子まで手をかけるか! 弟子が事件以前次々と逃げ出したのは、マジシャンにする気がないことを見抜いたからだろう! こんな奴捨てられて当然だ!」
「でも、元くんはそんな父の思いに気づいていて、受け入れようとしてたってのになあ……栄光も未来も自分で握り潰しちまって。結局、墓穴を掘ったのも落ちたのもこいつ一人か」
「酷い話だけどさ、元くんはマジシャンになるにしてもならないにしても、立ち直ってほしいねえ」
「また議員になんか手出して……何されても知らんぞ」
「ま、宿命みたいなものと諦めるべきでしょう」
現実VS虚構(ニッポンVSゴジラ) 2016.08.31
レビュー企画 相棒Legend12 2015.09.20
レビュー企画 相棒Legend11 2015.07.28
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