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「悪いが君に選択肢はない。その剣は私にしか扱えないのだからな」
「どうかな? やってみなければわからんぞ」
「そう言って死んでいったものが何人いたことか……愚か者の前轍を踏むことはあるまい」
「やかましい! やらねばならぬのならやるまでだ! 軍人崩れが余計な口出ししないでもらおうか!」
「軍人崩れ? ……まあ確かに、我々は本来の職務を捨て、裏切りの道を選んだがな。だが、先に裏切ったのは奴らの方だぞ?」
「なに?」
「命を捨て己を捨て、ただ国を守るために尽くした防人――だが、あいつらはそれを無視した。嘲った。そして我らを捨てようとした――嘲笑とともにな。戦が終われば、軍人は、特に我々のような闇に関与した者は邪魔でしかない。有害だから――というより、目障りだったんだろうな。こんな奴らが自分たちを守っていたなど、認めたくなかったんだろう。故に我々を、汚物のように捨て去ったんだ。誰よりも戦に貢献し、身体を捧げてきた我々をだぞ? これが裏切りでなくて何というのだ?」
「………」
「その魔剣――『ディスプ』こそが象徴だ。自らの命をかけ、その剣で勝利したとしても、誰も誉めるどころか相手にもしない。それが当然だとな。勝つのは当然、だが負けるのは許されず、無能だの役立たずだの責め立てられあげく不用論だ。何も知らぬくせに……私は元々、ベンガルディ同盟国のものではなく、敵国の人間だった」
「なんだと?」
「だが、あの国には私の守るに値するものなど何もなかったよ――国も、政治も、人も、家族もな。故に私は亡命し、タクティカルレッドに入った。軍人が軍人として、純粋に戦えるところへな」
「…………」
「タクティカルレッド司令官となり、私は自らが自らでいられる『戦場』を創造する。そのためにはディスプが必要不可欠だ。さあ、さっさとそれを……」
「言いたいことはそれで終わりか?」
「……なに?」
「ならさっさと失せろ。私はあいにく忙しい。この魔剣を制御するのは難しそうだからな……」
「聞いていなかったのか? その剣は貴様などが持つに値……」
「聞いていたさ。だがすぐ忘れた。貴様のような阿呆の言葉など、記憶に留める価値もない」
「……今何て言った?」
「感謝されない? 当たり前じゃないか。軍人なんて仕事は必要ないならそれでいいんだ。武器を持って相手を殺す仕事なんか、いらないのが理想であって必須ではない」
「な……!」
「それが今現在も存在し続けるのは、現実は武器がないといけない時があるからだ。国を、人々を傷つける『敵』――相手がいる限り、守るためには必要だからだ」
「ましてや、負けた時笑われるだと? お前職業軍人か?」
「そ、それがどうした?」
「馬鹿が! 貴様に払われる金はどこから出した? 武器は? 食事は? 貴様が守るべき民からだろうが! だというのに敗北すれば、非難や嘲笑は受け止めて然るべきであって、逆恨みして復讐に走るとは言語道断!」
「き、貴様――!」
「――かつて私も、貴族であるが故のしがらみに耐えかねた」
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