Last Esperanzars

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紫静馬

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サジタリウス~神の遊戯~


プロローグ 崩壊の序章


第1話 その出会い、運命にあらず


第2話 日常(地獄)の喪失


第3話 神の矢 来る(前編)


後編


第4話 鏡映しの悪魔


第5話 野犬達の咆哮


第6話 放浪者達の邂逅(前編)


後編


第7話 好奇と狂気(前編)


後編


第8話 小悪魔賛歌


第9話 信奉者達


GIGANTOMACHIA


GIGANTOMACHIA設定


麒麟キャラ、ロボット紹介


戦姫キャラ、ロボット設定


巨神戦車・駆け抜ける咆哮


プロローグ 亡霊達の夢


第一話 地より這い出し亡霊(前編)


後編


第二話・刻まれぬ英雄伝


中編


後編


巨神戦姫ブレイブノルン


プロローグ 未来を告げる神話


第一話・目覚めるは女神なり(前編)


後編


第二話・決意、紅く燃えて


後編


SS-50


濡れたベール


座敷わらしは大喰らい


擬人化シリーズ


汚れなき咎人


想いは雪に埋もれて


消し屋


自傷碧


赤いスカート


後編


LE社員紹介


新訳サジタリウス1


新訳サジタリウス2


新訳サジタリウス3


新訳サジタリウス4


新訳サジタリウス5


新訳サジタリウス6


新訳サジタリウス7


新訳サジタリウス8


新訳サジタリウス9


新訳サジタリウス10


新訳サジタリウス11


新訳サジタリウス12


新訳サジタリウス13


スーパーロボット大戦B


第一話 蝶はただ地を進む


第二話 アポトーシスXII


第三話 神が望みし戦い


後編


第四話 風速四十メートル


後編


楽園のサジタリウス3


楽園のサジタリウス3 二


楽園のサジタリウス3 三


楽園のサジタリウス3 四


楽園のサジタリウス3 五


楽園のサジタリウス3 六


楽園のサジタリウス3 七


楽園のサジタリウス3 八


楽園のサジタリウス3 九


楽園のサジタリウス3 十


楽園のサジタリウス3 十一


楽園のサジタリウス3 十二


楽園のサジタリウス3 十三


楽園のサジタリウス3 十四


楽園のサジタリウス3 十五


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2010.03.25
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カテゴリ: カテゴリ未分類
「それぐらい口で言えよ麻紀!」
 言い終わるや否や、やけ気味に袋を向かいのパソコンの前に座っている少女に投げつけた。少女は驚くこともなくキャッチすると何事もなかったかのようにチョコスティックを口にくわえた。
「まったく乱暴ですね一機さん、中のチョコ少し砕けちゃったじゃないですか」
「お前がしょーもないことチャット越しに言うからだろ! そんなのキーボード打つまでもねーじゃん麻紀!」
 そうジョンド、本名的場一機が柳眉を逆立てても、麻紀と呼ばれた少女は素知らぬ顔でパソコンへ視線を戻した。
三つ編みをツインテールで両端に生やすという触角のような髪型が、大きくて少し垂れた目を隠していた。少しのぞいた小さな八重歯などのチャームポイントが可愛くはあるものの、見るものに猫のような印象を持たせる不思議な雰囲気をかもし出している。
その瞳に映る画面には、一機と同じく《サジタリウス》と《プシュケー》が……そう、彼女が一機の相棒であり《プシュケー》の操縦者、ティンカーベルこと間陀羅麻紀である。
この二人、二台のパソコンを向かい合わせて一つ屋根の下でプレイしていたのだ。日付も変わったというのに二人とも同じ高校指定のブレザーなのは、学校から帰って夕飯を一緒に食してからぶっ通しでプレイしているからである。この家は古いが広く部屋は多いので、泊まろうと思えばいくらでも泊まれる。
「にしても、このパソコンスペック悪いですね。最近処理落ちが目立ちますよ」

 なんてめんどくさそうに一機が言うと、にやりと嘲ったような薄笑いを見せてきた。
「ただ? 掃除洗濯炊事その他諸々全部やってるのは誰でしたっけ」
「いや俺だってできるわい。お前が勝手にやるんだろうが」
「ほう? 最近は洗濯物どころか食器もなおざりな人がそれ言いますかね」
「……だって、うち食器山ほどあるし」
 何も反論できなくなり、一機は隣に置いてあったボトル麦茶を注いでがぶ飲みする。
 こんな半同棲(一機は断じて認めないが)が始まったのはいつ頃であったか。一機の記憶では高校始まってすぐだから、もう二年近くになる。
 鉄伝自体一機は中学から始めていたが、ある日家のパソコンが壊れて修理に出している間仕方なくネットカフェで遊んでいると、クラスメイトの麻紀にばったり会ってしまった。しかも鉄伝のプレイ画面まで見られ、自分も始めたとか何とか言いだす。

――うちに家は厳しくてやらせてくれないんですよ。でも、ネカフェは金かかるんですよねえ……
――ああそう? 俺んとこじいちゃん住んでた家だけど、今一人だから誰もいないし、パソコンも二台あるけど壊れちゃってさあ、はっはっは……

なんて一機が笑っていたら、気がつけばコンビを組んでこの家でプレイすることに……どうしてこんなことになったのか、未だに理解できない。

「あ、そうだ、またメール来てましたよAAから」
「……AA? サーバの?」
 AA……『アイアンレジェンド』の製作者でありサーバの運営企業バルフコーポレーションの最高経営責任者(CEO)A・アールグレイの通称である。十年近くでバルフコーポレーションを大企業にした人物なのに、その顔は知られていない。ネットの噂だと、すごく不細工だとか大怪我で生命維持装置にくくりつけられてるとかいやホントはとっくに死んでいて隠されているだとか、しまいには実在の人物ではなくバルフの役員が作ったキャラクターなどという始末。……ということは、これは空想上の人間からのメールになる。
「またなんかくれんのかな? この前《サジタリウス》くれたみたく」
 一機は少し機嫌よくメールを開いた。AAからメールを貰うのはこれが初めてではない。

 なので、一機はまた何かくれるのかと期待していたのだが、今回は違った。
「……なんだこりゃ」
 思わず眉をひそめてしまう。
「はい? どうかしました?」
「……なんか変なメール来た」
 歯切れの悪い様子を、変と思った麻紀が画面を横からのぞいてみると、やはりこちらも首をかしげた。
 メールには、こう記されていた。

『現実に飽きてはいませんか?
 くだらないと思っていませんか?
 どこかもっと楽しい、自分の才能が生かせる場所に行きたいと思いませんか?
 貴方を、楽園にご招待しましょうか?
 YES or NO』

「……変な宗教のお誘い?」
「いや、これサーバから来たのだから」
「でも、こんな内容はそうとしか思えませんよ。ただでさえオンラインゲームは最近風当たり悪いんだから、おかしなことされちゃ一プレイヤーとして迷惑ですね」
「風当たり悪いって、あれか? 鉄伝のプレイヤーが突然姿を消したとか? よせよせ、そんな与太話信じる方が馬鹿なんだ。いいから、今日はもう帰るんだろ?」
「ええ。ちょっと明日葬儀か入ってましてね、人出足りないって呼び出されちゃいました」
 麻紀の家は葬儀屋だ。一機と麻紀が在住する群雲市、特にこの周辺には葬儀屋が何故か『間陀羅葬祭会館』一件しかなく、実質的に独占市場らしい。
「商売繁盛結構だな」
「でもないですよ。ボッタクリ同然の商売してたから最近仕事なくて暇だったんです。おかけで弓道部の練習ができるできる」
「……おまえんとこ、定員割れして大会とか行けないんだろ? だいいち時期外れだし」
 あら? なんてわざととぼけながら早々と身支度をして帰っていく麻紀を、視線も手も振らず一機は画面を注視した。
「……楽園へご招待、ねえ」
 ふと、一機は視界の端に映った学生カバンを、何の気なしに手にとり中から一枚の紙切れを取りだした。
『進路希望調査書』印刷された原稿には、手書きの文字は何一つない。
「あー……」
 呻きながら、やたら高い天井をしばらく見上げていると、椅子の上であぐらをかいてキーボードを叩いた。
 奇怪なメールの返信、それに対して一機――鉄伝の中でジョン・ドゥと称する少年は一言、
「……私を飲んで、か」
そう呟くと、本文に『YES』とだけ記した。





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最終更新日  2010.03.26 20:18:24
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