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「特命係がこじゃれたレストランで食事……まあ実際は、拳銃密輸現場を押さえる手伝いなんだけどね。あとは暴力団との関係を探るだけ……はて、なんか自殺で処理された案件に杉下さん引っかかったよ。なんだろこれ」
「死亡したのは真壁って産廃工場の工場長。首吊って自殺したのを、自殺めいた社長からのメールがきたので第一発見者の瀬野があわてて家に行ったら発見された。工場の反対運動が起こって資金繰りにも困っていたらしい。追い詰められていたのは事実か。ん、社長の家になんかあるぞ。風呂敷か? 縁って書かれてある。写真もあるぞ。なんかの小屋か?」
「工場の人間によると、それは草木染め工房の縁というところで作られた風呂敷だそうだ。工場の反対運動に参加しているところで……はて、さっきの瀬野って人は知らないと言ってなかったか? それに、草木染め?」
「化学染料ではなく、草木など植物から煮出して色を出し染めるやり方です。その工房を一人で切り盛りしている彩乃さんに会ってきました。なんでも五年前夫を亡くしてから一人でこの山を管理しているそうです。あの風呂敷は真壁さんに作ったもので間違いないですって。草木染めは作るごとに成分が変わるから同じ色は一つとしてあり得ないからとか。反対運動しているけど、別に真壁さんに悪意を持っているわけではないとして作ったそうです。そんで写真の小屋ですが、工房の物置小屋でした。何のために使っているかは教えてもらえませんでしたが……なんでこんな写真撮ったんでしょう」
「反対運動の人たちに会ってきた。市議会議員まで参加して反対運動を行ってきたが、結局工場は止められず今は工場の運営に違法性がないかとか陳情書を出したりしてるとか。あと川を汚染している疑いもあるとさ。そんで彩乃さんは勢力的に反対運動行っていたが、三か月前に突然止めてしまった。後継ぎの一人息子が半年前家を飛び出したせいとか言われてるな。厳しく当たり過ぎたとか」
「それで再び調べた結果、真壁さんを殺した凶器はウコンなどが混入された布上の物、つまり草木染めだと判明。まあこれだけで怪しいとは言えないけど。そして反対運動辞めちゃった理由は、後継ぎがいなくなって工房も自分の代で無くなるとすれば、もう自然を守ろうって気がなくなっちゃったんだって。面倒で手間のかかる伝統なんか誰も継ぎたくない……まあわからなくないけど。あれ、一課?」
「あの小屋を調べたいだと? どうして……なに、草木染めでも汚染される? 錫とかかなりの染色廃液が出るとしたら、まさか川の汚染の原因て……って、それでもまだ拒否するのかよ、怪しまれるぞ。そこまで何を隠したいんだ……?」
「真壁は杖を使っていたはずが、自宅からは発見されなかった。そもそもどうして、犯人は瀬野に偽装メールなんか送ったんだ? 遺書は現場に書いてあるし、発見を早めたって意味あるまい」
「なんだかきな臭くなってきましたねえ。工場の従業員の労働環境と産廃の量などデータ調べてみますか……あ、冒頭の暴力団捕まったんですか。あれ、この人は……」
「瀬野の正体は、暴力団の組員だった。あの工場では一人当たりの作業量をはるかに超える量の産廃が運ばれてきている。なんとあそこは人身売買で買い取ったカンボジア人を不法就労させる暴力団のフロント企業だったのだ。で、瀬野が殺された社長を発見したのだが、捜査の手が及ぶことを恐れて自殺に見せかけろと命令されて実行した。しかしこいつは凶器の草木染めを見ていない……なに、彩乃さんが真壁に金を渡していた?」
「いよいよこれは小屋を調べないと……あ、あった廃液! それじゃ、やっぱり……」
「工房を潰したくないが、一人で山の手入れをしたり切り盛りするのは体力的に難しく、廃液の処理にまで手が回らなかった。それを真壁に知られ脅されていた。このままでは一生脅され続けると思い、首に巻いてたスカーフで……凶器も発見され、逮捕されたな」
「押収されたスカーフは、残されていた繊維とほぼ一致。多少の違いはあるがそれは誤差の範囲……ほぼ? しかし草木染めって同じものは絶対ないんだよな? すると……」
「同じ成分で作られた別物ってことになります。それでも自分が殺したと断固として譲りません。何を守ろうとしているんでしょう。はて、不法就労させていたカンボジア人達が騒いでますよ。クロマーという、カンボジアで作られる草木染めのスカーフが一週間ぐらい前に盗まれたそうです。草木染め……? あれ、小屋に誰かいますよ!」
「考えてみれば変だよね、工場のデータ反対運動の団体から貰ったんでしょ? あれだけのものがあって不法就労全然気付かなかったの? え? 初めから知ってた?」
「あの市議会議員、最初から真壁に脅されていたのさ。浮気の現場を撮られて、反対運動のリーダーになることで、反対運動を大きくならないようコントロールする役目を負わされていた。が、さすがに限界が来て、真壁を殺し、それを盗んだクロマーを使うことで不法就労者の仕業に見せかけようとした。脅されたのは哀れだが、同情はできんなあ」
「というわけで真犯人が捕まったので彩乃さんに報告……あれ、びっくりしてるぞ。たしかに彩乃さんにあの男を守る理由はないが、だったらどうして嘘をついていたんだ?」
「その答えはあの小屋にある。実はあそこに彩乃さん、工場から逃げ出したソパートという不法就労者をかくまっていたんだ。なんとその人カンボジアでクロマー作ってた職人で、自分の代で途絶えてしまう縁の伝統を誰かに伝えたくて、違法と知りながら小屋に隠れ住まわせて教えてたんだ。しかし、それを真壁に知られて脅された。金を渡しに行ったら、真壁が殺されていてクロマーが。てっきりソパートが殺したと思い、クロマーを回収した。調べが入ると悟り、ソパートに金を渡して逃がしクロマーを始末して、偽物のクロマーと廃液を用意した。たとえ自分が捕まっても、遠く離れた場所で縁が継がれるのなら――」
「しかし、ソパートは帰ってきちゃいました。自分のせいで彩乃さんに何かあったんじゃないかと思ったらとても逃げれなかったんです。彼は強制送還されますが、そこで、彩乃さんに習ったことからクロマーに縁の文字を入れさせてもいいかとお願いしてきました。彩乃さんは、まだまだ伝えたいことがあるから、きっとソパートの故郷に行くと約束します。いい話ですねえ」
「遠く受け継がれる……けどきっと、日本にも草木染めを継ぎたい若者はきっといるさ。で、次回なんだけど……え、誰これ」
「いやまったく覚えてない……誰だこいつ」
現実VS虚構(ニッポンVSゴジラ) 2016.08.31
レビュー企画 相棒Legend12 2015.09.20
レビュー企画 相棒Legend11 2015.07.28
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