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「内村部長行きつけの店のご主人が亡くなって、娘さんが常連さんにボトルを返そうとしましたが、一人だけ田中晶という人物が行方がつかめないので探せと特命に依頼してきました。まあいいですけど、携帯も使われてないし誰だか見当も……あれ、週刊誌の記事? 粉飾決算で逮捕された菅原という大手IT企業の記事ですが……おや、横に写ってるのは」
「奥村さんじゃん。配管工でたまたま耳にした盗まれた大金を横からかっさらおうとして、他に狙ってる奴らに危うく殺されかけた三馬鹿の一人。出所してたんだね。会いに行くと、なんと社長の菅原さんと幼馴染で、出た後に会社に入れてくれてしかも秘書程度の簡単な仕事で役員待遇という恵まれ過ぎな境遇。もっとも、社長逮捕されて大変なんだけどね今」
「三馬鹿の一人、池谷も訪れていたそうだよ。出所後一緒に会社作ろうと会いに来たが、社長裁判中に辞めれるわけがない。そしたらすねちゃって音信不通。と、思ってたら最近また会いに来た。なんでだろうなあ? 今喫茶店のオーナーやってるみたいだし、ちょっと会うか」
「しかし似合わん仕事してるなあこいつも。オーナーから是非と頼まれたそうだが、ドイツ産ソーセージを国産ソーセージと間違えて買ったり紅茶もサンドイッチもまずいし客もいない。常連の実業家である坂口さんが言うには、三年前ここに中国系外資のショッピングモールが作られる予定だったのだが中止になってしまったらしい。それで、池谷がしつこく奥村に会いに行くのは、菅原が企業に出資しているから自分もあやかりたいという最低の理由だった。こいつは……しかし、山崎は何故か電話も出ないし連絡してこないそうだがどうして……あれ、山崎だ」
「お前今まで何して……なに、田中晶を探しているだと? 池谷はしらばっくれたが田中晶を知っているようだな、いったい何者なんだ? どうも寺島という男と山崎はつるんでいるようだ、ちょっと調べてみるか」
「寺島は暴力団の構成員でした。三年前中国マフィアとの薬物取引で一斉検挙され組員全員逮捕されましたが、彼だけいち早く出所。刑務所で知り合った山崎と田中晶を探しているということでしょうが、なんでまた……え? 取引現場に三億円の現金が無かった? あり得ないでしょ。組員は全員逮捕されてるから隠しようがありませんが、金なしで取引なんて――」
「仮に、現金があったとしたら、何らかの方法で持ちだしてそれを田中晶に預けたということだよね? で、いち早く出所した寺島がそれを回収すると。でも、田中晶の顔も知らないみたい。そんで、その田中晶と池谷との関係はどうなんだろう?」
「なんだ? 奥村をえらい会社の社長と会わせてお礼状書いてくれとか。なんのつもりだ? 会社作りたいって気持ちはわかるけど……会わせてた社長はIT企業の大手で、菅原の会社を取り込もうとして断られてしまった。逮捕されたとはいえ菅原の才能は欲しいだろうな。しかし拘留中の人間をどうするってんだ?」
「その菅原さん、拘置所が相当嫌なようで参っているようだな。はて? それなら保釈すればいいと思うがなあ? 保釈金三億円て、払えるからそれだけの金額を請求されているんだろう?」
「いやいや、資産は企業に出資してたり未公開株だったり、現金としてはないんだろう。保釈金は一括現金払いだから不可能……あ、そうか保釈金か!」
「田中晶なる人物は、池谷を介して奥村に会いたがっていました。そして金持ちの社長などを集めて会わせています。その理由、恐らく保釈金集めでしょう。金のない菅原社長に代わり幼馴染で役員である奥村が保釈金を集めている。菅原に恩を売りたい人間は山のようにいますから保釈金集めは簡単です。問題は、どうしてそれを当事者である菅原と奥村が知らないのか」
「なに、まさか内緒で集めてびっくりさせようっての?」
「まさか。ひょっとしてだが、田中晶は保釈金を集めているふりをしているんじゃないか? 保釈金名目で金を集め、集まったらその現金を持ち逃げする。つまり保釈金詐欺とすれば、つじつまが合うけどね?」
「池谷が保釈金集めをしているのはやはり田中晶の提案だが、池谷は一度も会ったことが無くメールだけのやり取りだそうだ。怪しい……うん? パートのおばさんがメモしたソーセージはやっぱり徳用国産だった? なんだそれは」
「あの喫茶店を所有する会社だが、三年前に買ったのか。あのショッピングモールの計画の時期だな。どうもこの不動産取引用に作ったペーパーカンパニーの可能性が高いな。代表は……沢口? あの常連のか? てことはそいつが田中晶……」
「待って下さい、沢口さんがなんで薬物取引に関係してたり池谷と奥村さんの関係知ったりできたんです? あとあの不動産も……おや、幸子さんがまたおっちょこちょいをかましました。イノシシと間違えて中華街で豚肉買ってきちゃいました。まあ猪って中国語で豚って意味ですから気持ちわかりますがね。鮪だって中国じゃチョウザメのこと……あ」
「寺島は三億円を一人占めする気だったんだね。でも田中晶は行方不明。唯一の手掛かりは池谷だけ。そして、池谷を調べ上げた寺島は自分がいた刑務所に仲間の山崎がいたことを知り池谷を通して田中晶を見つけるため呼び寄せたんだ。でも、その三億円どこ?」
「あの喫茶店さ。正確には土地だけど。三億円を手に入れた田中晶はこの土地に中国系のショッピングモールができることを知り、発表前に土地を買えば大幅に高騰して利益を得られると思いペーパーカンパニーを作ってここを買った。ところが計画は白紙になり儲けるどころか買った時より大幅に下がる始末。もうすぐ出所する組の連中に金を返さなきゃ命が危ない。だから金を手に入れるため、保釈金詐欺を計画したってわけ。でも、沢口さんは名前を利用されただけさ。本物は別にいる」
「しかし、そいつはマフィアとの取引現場にいて中国系外資のショッピングモール計画の内部情報を知れて奥村と菅原の関係を把握できた人物だろ? そんな奴いるのか?」
「いるさ。通訳だ。三年前の取引で日本語中国語両方話せる奴はいなかった。つまり取引には通訳が必要だった。その中国系外資も、菅原社長も中国進出の際ある一人の通訳を使っていた。そいつは……なんとあのパートのおばさんだ」
「池谷さんが徳国と読んだメモ、あれは中国語でドイツのことです。仕事のクセでついやっちゃったんでしょうね。取引の時無理やり金を預けられて、欲が出てひと儲けしようと思ったらこんなことになっちゃいました。馬鹿ですねー。まあ横領だの詐欺未遂だの全部合わせても執行猶予がつくでしょう。ま、出所してくる組員に間違いなく報復されるでしょうが。自業自得です」
「で、結局池谷と山崎の会社作るための一攫千金計画はパァ。奥村も会社辞めちゃったし、もう真面目にコツコツやるしかないねえ」
「てかこいつら二回もひと儲け目指して酷い目に遭ってるんだから、いい加減学習せいと言いたいな。ま、元配管工だから働き場はあるだろうし、頑張れ」
現実VS虚構(ニッポンVSゴジラ) 2016.08.31
レビュー企画 相棒Legend12 2015.09.20
レビュー企画 相棒Legend11 2015.07.28
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