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「通り魔事件が発生。今のところ死者は出ておらず所轄だけの捜査ですが、既に三名もの若い女性が襲われ一人は意識不明という恐ろしいことに。おや、『鑑識・米沢守の事件簿』で米沢さんの相棒役だった相原さんじゃないですか。米沢さんに証拠品の鑑定して欲しいと訪ねてきましたがそりゃ無理が……おや、特命係に目を付けました」
「この人捜査本部から外されちゃったんだねえ。合同捜査本部作るまで待機って命令に納得いかず抗議したら追い出されたんだって。謹慎中なのに勝手に捜査して証拠品持ち出しまでして相変わらず無茶苦茶だねえ。なんでも例の事件以来腫れものに触る扱い受けてるそうだけど、だからってそれはちょっと」
「サイバー犯罪対策課が集めた掲示板の書き込みの中に、犯人を目撃したようなものがあったぞ。黒っぽい服を着た男……ん、引きこもり?」
「この書き込みをした真君は九年間も引きこもっているそうだ。高校に入ってから理由もなく急に引きこもるようになってしまった。原因不明か……とにかく、彼が事件を目撃したのは間違いない。話を聞かねばならんがこの有様では……って」
「馬鹿。相原さんが強引に聞き出そうとして隠れちゃったじゃないですか。これで聞きづらくなっちゃいましたね。ったく熱血馬鹿なんだから……捜一は真くんを疑っていますね。その時間出かけてのは事実ですけどさてどうだか。とにかく近所を聞きこみするしかないですね」
「近くの奥さんにも話聞いたけど、赤ん坊の世話が忙しくて自由時間はゴミ出しの時と午前様の夫が帰って来て世話する時しかないとかぼやきするばっか……はて、真くんのお父さんが役所勤めなのに深夜帰り? 役所は定時に帰ってるって言うし、何してるの?」
「お父さん、帰りたくないんだよ。惨めな息子の姿見せられるから。だから仕事終わった後も家に戻らないんだ。別に厳しくしたわけでも酷いことしたわけでもないのに責められる、親にしてみりゃ地獄だな。全然理由もわからず引きこもって九年間、辛いだろう。いっそ通り魔として捕まった方がマシかもしれない……なんて、言うほど追い詰められてしまってさあ」
「そんなこと思い悩んでしまって相原さんも酔い潰れる始末。そういえば米沢さん花の里の主人変わったの知らなかったんだな。おや、何か落語のテープくれたぞ、『火事息子』?」
「とうとう捜一に真くん引っ張られました。まあ証拠も何もないし大したものじゃなくその日のうちに帰されましたが、特命係と相原さんとで夕食がてら話すことに」
「とりあえず目撃したことを……なんて相原が聞くわけない。引きこもった理由を伺うが、へ? 志望の高校入れなかった? 九年も前だから良く覚えてないっておいおい……」
「特別何もなかったってこと? わけわかんない……はい? アンテナの問題? 何それ」
「いやまあ……本当に特別何かあったわけじゃないと思うよ? 親であれ教師であれ、何かしら発した一言、本人からすると別に悪意のない言葉でも、そこに何か自身の主観が混じるとそれを強く感じてしまい傷ついてしまう。親にとってみれば大したことのない、たとえば高校に落ちた時の励ましの言葉なんかでも、アンテナの感度で何かしらの気持ちを受信してしまえば彼は苦しんでしまう。そんなことの積み重ねが彼を次第に追い詰めていったんだろう。善意だけで喋れる奴なんかいないからな、俺もわかるわこの気持ち……しかし、もう真くんたち親子だけで解決できる問題じゃない。本人もそれはわかってるだろう。あれ、『火事息子』だ」
「親に迷惑をかけ続け刺青を入れ当時ヤクザな仕事だった火消しになった大店の息子。そのせいで親に勘当され見放された、息子はそう思っていた。しかし、両親の店が火事になり火消しの息子が駆けつけると」
「親は息子に会いたかった。だから大事な店に火をつけてまで……名前は知ってましたが、人情話だったんですね。たとえ息子がどんなでも、親は子を愛し続けるものじゃないでしょうか。私にはわかりませんがね」
「目撃した事件の絵描いてくれたぞ。おお、真くん絵上手いじゃないか。これで仕事できるんじゃ……いや、でも顔は見てないのか。これじゃあしょうが……はて、この服……」
「深夜、通りを歩いていた真くんに襲いかかった通り魔を捕まえ……あれ、この人近くの奥さん!? どういうこと?」
「でっかい服着て夜中だったし、上から見下ろしたから男と勘違いしたんだ。女性を狙って通り魔やる奴なんか警察だって男と思うからなあ。んで動機だけど、夫殺したかった?」
「なんか夫のしたこと色々が気に入らず殺してやりたかったそうだがちょっと待て、いくらなんでも一方的過ぎるじゃないか。ちゃんと火事も子育ても手伝ってやって、夫の勤めは果たしてるじゃないか」
「それがさっきのアンテナの話でしょ。出産後不安定で、夫の一挙一動一言一句全てが悪い方悪い方にしか感じられず、殺意にまで発展した。暴力も浮気もないから離婚もできない、殺しても保険金じゃ子供と二人生きてけない。そんなこと考えてる時、ふと幸せそうな女性見ると襲いたくなった……なんか自分で袋小路に飛び込んで行ったような人ですが、襲われた女性からすれば単に迷惑極まる話ですよねぇ」
「結局引きこもりは続いてるみたいだな。まあそんな簡単に解決できる問題じゃねえよなあ」
「でも、相原さんはまだ首突っ込んでるみたいだし、そのうちなんとかなるんじゃないかな? いつか、遠くない未来」
現実VS虚構(ニッポンVSゴジラ) 2016.08.31
レビュー企画 相棒Legend12 2015.09.20
レビュー企画 相棒Legend11 2015.07.28
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