Laub🍃

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2017.11.12
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カテゴリ: 🌾7種2次表
→1
→2  『わけがわからない』
→3  『話せない』
→4  『置いておけない』
→5  『収拾がつかない』
→6  『違えない』
→7  『手段を選ばない』
→8  『知らない』
→9  『受け止めきれない』
→10
→11  『訊けない』
→12  『救われない』
→13  『そつがない』
→14  『聞き捨てならない』


・タイムスリップIF二次創作小説

あらすじ:
・外伝後安居・涼・まつりが海で暴風雨に巻き込まれたと思ったらタイムスリップしていた
・混合村で暮らす未来安居・未来まつり
・夏B村で過去要と遭遇する未来涼・過去安居



***************

カイコ          15






嘘は吐く者を窒息させる。
背負う者を圧し潰す。



俺達に先生達は特別な教育を施し生まれてから17年間箱庭で管理していた。

先生側の中でも特に要さんは管理計画や教育方針のブレーンを担っていた。

俺達にとって要さんは神であり化け物だ。



・・
あれは、理解してはいけない存在だ。




嘘を吐き慣れて、非情な覚悟を背負い慣れたそれは、とうに人の形でなくなっている。









 過去の涼は静かに、けれど猛禽類のようにこちらを見つめてくる。
 その詰問の目からは、到底事実など誤魔化せそうにない。

「安居」
「涼。お前はそっちの俺を話の聞こえないところまで連れて行ってくれ」

 そして、依然静かに威圧してくる過去の涼と向き合う。

「嘘は吐かない。…もう、誤魔化しもしないから、聞きたいことがあるなら訊け」
「……今度こそ、本当の事を言えよ。……百舌は、要さんなのか。死神なのか」
「ああ、そうだ」

 肯定する。涼はわずかに目を眇め、また口を開く。

「要さんは、お前を殺しかけるのか」
「ああ。理由の方は、もう話した通りだ」
「……卯浪と十六夜の殺害に、花殺害未遂か」
「加えて、夏Bを殺そうと画策していると容疑も掛けられていた」
「殺そうとしてたのか?」
「そんなつもりは全くなかったが、要さんにはそう見えたようだ」
「……周りの奴等は止めなかったのか?」
「その時要さんは一人で動いてたし、実際俺に刃を向けるまで、誰にも俺を処刑するなんて漏らさなかった。止めようがない」
「……一応訊くが、浜辺であいつが要さんに殺される可能性もあったのか?」
「いや。要さんと『俺』の接触は、現時点で問題はない。現時点では要さんは『俺』と、過去と同じように接するつもりだろう。
 『俺』も、現時点であの人に疑心は抱いていない。だから、下手に何か言うより、要さんと過去の俺を少しずつ引き離した方がいい」
「……殺し合いに発展しないと言い切れるのか?」
「……過去の俺が罪を重ねるのを防げば、要さんが俺を殺そうとする可能性は低くなる。
 だからお前はそれに協力してくれ」
「お前が花に憎悪をぶつけた動機は、花と貴士先生のコネだろ?」
「……それが主だな。あとは、花を要さんが『普通』に育てていた事。もともと性格が合わなかった事が原因だ」
「……あいつがずっとそれに気付かないようにするってのは難しいと思うが。早い内に教えておかねえと、後々爆弾を抱えこむことになるぞ」
「……」
「安居よ。未来のお前はもう既に、要さんに疑心を抱いているんだろう?先輩として尊敬できなくなったから、要『さん』なんて呼んでる。違うか」
「……そうだな。要さんも、人間だった。人間らしく感情に振り回されて、人間らしく失敗もしていた。だから俺はあの人に縋るのをやめた」
「だが、長い間信頼していたからこそ、傷がより深くなって、今も要さんのことを思い出すだけでそんな苦々しい表情をしている」
「……」
「長い間信頼してるからこそ、裏切られたら大きな傷になる。なら早いところカミングアウトしておいた方がいいだろう」
「…それでも、駄目だ」
「……頑固だな。あのなあ、お前達はよく分かんねえ条件でこっちに来たんだろうが、いつ俺達の目の前から消えるかも分からない、そうなった時に安居が真相を知っちまったらどうするんだ。
 対処しきれねえだろうが」
「それは…」
「なら今のうちに教えて、可能な限りガス抜きしておいたほうがいいんじゃねえのか」
「そんな事を知ったら、心が折れる。奴等にぶつけてしまう。きっと、俺は無様な事をする」
「俺が止める」
「お前だって四六時中俺と一緒じゃないだろ」
「夜中にふらふらしてるお前を何度見付けたと思ってんだ、いいから俺に任せろ」
「……」


何度目だろう。
判断を投げ出したくなるのは。

何度目だろう。
それに抗って下した決断が、間違っていたことは。


「……分かった。だけどもう少しだけ、時間をくれないか」
「……あんまり待てねえからな」
「分かってる。過去の俺がもう少し、あいつら…いや要さんじゃなくて夏Bだ、あいつらによって変化するまで待ってくれ」
「……変化ねえ……夏Bとやらとお前は、今んとこあんまり相性が悪いようだが」
「……」

 過去の涼がちらりと見た先で、過去の俺は、夏Bのだらしなさ、計画性の無さ、特に蝉丸がまじめに話を聞かず茶化したりナツにちょっかいを出したりしていることについて憤りを垂れ流し、改善策を真面目に考えていた。

「……初めの内はそうなんだ。その内、船旅中にトラブルが起きたり、あいつらと一緒に巨船…大きな閉鎖空間から脱出する事になる。そうしてあいつらを見直すんだ」
「今の調子で同じ筋書で事が進むと思うか?本来会っていない時に遭遇する事で、本来は良くなっていた筈の仲が悪くなるとかありえるんじゃねえのか」
「そうならないように、……未来のお前が、調整する筈だ」
「どうだかな」

 要さんと再会させるくらいだ、テストから時間が経ったせいで危機感が薄れてんじゃねえのかと過去の涼は毒づく。

「未来のお前も俺も、過去の…現在のお前や俺より賢いって保障がどこにある?」
「……今のところはうまくいってるだろうが」
「やばいと思った時はもう遅いかもしれない」

 過去の涼の冷たい目が痛い。
 そうだ。この道が正解とは限らない。
 俺達は、過去痛い目を見た場所を避けて歩いているだけだ。
 痛い目を見た事で得た経験も、痛みと引き換えに手に入れたものも、置き去りにしたままで。

「……俺達が、これは食えると教えた物は、今は食える。日々を生き延びるのに使える。だが、蓄積毒の可能性もある」
「……餓えてたら、食うしかねえな」
「ああ。食って生き延びて、その内にもっと安全な食べ方や他の食べ物を見付けるかもしれない。
 ……お前が、あいつの最期を俺に言わなかったのも、現時点なら正解だったのかもしれない。この先お前があいつの最期の行動を、あいつがあいつの人生で主役になった事を、『認めてやれよ』って言った事を、あの時だったからこそ受け入れられたのかもしれない」
「…………?」

 茂の事と、分かるだろうか。
 今はまだ、分からなくていい。
 いつかきっと分かる時が来る。
 その時、過去の俺の前に立っていてくれれば、それでいい。

「……その場で必要な事と、長期的な目で見て必要な事は違う。
 この場で必要なのは、俺達の経験だ。この集団生活を乗り切ることだ。
 長期的な目で見て必要なのは、お前達だ。お前達が憎悪を処理して、あいつらと暴力を挟まずに接していけるようになる事だ」
「まだ総取りするつもりでいるのか?……二兎を追う者は一兎をも得ずって言うぜ、…安居」
「一石二鳥とも言うな」

 今こうして考えている俺は、この世界の異物だ。
 だが、まだ、失敗と挫折を知り、手を汚して後悔した分だけ、まだ必要だろう。

「……口が減らなくなったなお前。夏Bの影響か?」
「どうだろうな」
「妙に前向きで、憎悪も押し殺して…今の俺からすれば、お前の方が気味が悪い。
 お前らからすれば俺達なんざ未熟に見えるのかも知らんが」
「そうだろうな」

 それでも本来過去のこの村に居るべき過去の俺こそが、過去の涼にとって必要だ。
 不要な憎しみも意味のない暴力性も行き場のない嘆きも抱えて、そして、まだ、仲間達に見放される前の俺が。
 まだ、折れる前の、手を汚す前の俺が必要だ。

 どうして。

 あれはトラブルの元になるのに。

 どうして、災いの種を庇う。

 どうして、その先が破滅と知る俺が拒まれる。

『似てる』

『昔のお前と』

 何故かかつての涼の言葉が、頭を過る。

「お前らからして未来の俺とお前は、確かに、その内居なくなるかもしれない存在だ。
 その場しのぎの存在だ。
 だけど、その場をしのいで、新たな道が現れるのを待ってもいいんじゃないのか」

 第一に、この場に元々居たこいつらの道。
 第二に、未来からやってきた俺達の道。
 第三に、力を合わせて見付ける道。

「……どうしようもなく阿呆な所は変わってねえな。むしろテスト前に退化したか?」


 過去の涼が少し笑った。
 俺も少し笑うと、何笑ってんだとそいつは俺をどついた。



【続】





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最終更新日  2018.12.01 07:38:27
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