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2018.01.05

カイコ　５　　『収拾がつかない』　　　（７種２次SS／タイムスリップIF）

テーマ：二次創作小説(1165)

カテゴリ： 🌾7種2次表

→１
→２　『わけがわからない』
→３　『話せない』
→４　『置いておけない』
→５　『収拾がつかない』
→６　『違えない』
→７　『誘えない』
→８　『知らない』
→９　『受け止めきれない』
→１０
→１１　『訊けない』
→１２　『救われない』
→１３　『そつがない』
あらすじ：
・外伝後安居・涼・まつりのタイムスリップIF二次創作小説
・未来涼・過去安居退場

＊＊＊＊＊

カイコ　５

＊＊＊＊＊

　俺達は過去にやってきた。
　未来にやってくる想像ならいくらでもしていたが、過去に戻れることなんて思いもしなかった。

　混乱する頭を整理しながら、涼のナイフをかわす。５度目。

「涼」
「黙れ」

　目の前にはぜえぜえと肩で息をする涼。結局涼は、撃つと言いながら、俺の事もまつりの事も撃てなかった。代わりに持ち替えたナイフを俺は躱しているが、涼の顔には焦燥とともに、俺を『安居』として認めるかのような笑みが浮かんでいる。

「必要ない」
「はっ…余裕かよ」
「涼」
「何だ」
「未来の涼は、過去の俺を殺したりしない。少し落ち着ける場所に連れていくだけだ」

　確証はないが、恐らく夏のBチームが滞在していた浜辺にでも行くつもりだろう。
　確かこの時期には既に、夏Bの船は座礁していた筈だ。
　７度目。
　涼にわずかなふらつきを狙い、ナイフを持った手を掴み、涼の体を木に押し付ける。

「くそっ……」
「……過去の俺が落ち着いたら、戻ってくるだろう。だからそれまで待っているべきだ」
「…聞き分けのいい、俺達以外を信用してる安居っつーのも気持ち悪いな…」
「変わったからな」

　暗示が解けた。
　仲間が出来た。
　代わりに泣いた奴が居た。

「……くそ……埒が明かねえ、……分かった、信じれば良いんだろうが」
「涼」

　涼がナイフを手放す。
　涼の手を離れたナイフは叢に落ち、一瞬そちらに意識を取られる。

「なんてな」
「っ！？」

　反撃。涼の体が裏返り、逆にこちらが振り回される。
　涼の左手を掴んでいた俺の手は捩じり上げられ、抵抗した俺と涼は土の上に倒れこんだ。

「……諦め悪いな涼」
「お互い様だろ」

　柔道の寝技で締め上げられる。

「大体、お前が未来のお前だとして、染まりやすいお前が新たな爆弾を抱えてねえと何故言える」
「染まりやすくないだろ」
「染まりやすくて騙されやすいだろうが。今だって油断するからこうなった」
「お前なあ…！」

　折角話がついたと思ったのに。
　懸命に締め上げる腕に隙間を作って抵抗するが、段々意識がぼやけてくる。
　このままだと、落ちる。

「……何やってんの…？」
「小瑠璃！」
「チッ」

　突如かけられた声、若干腕が緩む。その隙に全力で抜け出す。
　咳き込む俺、ぶすくれた涼、心配そうな小瑠璃。
　その後ろにもう一つ影が現れる。

「小瑠璃、突然どうし……アンタら何やってんの？仲間割れ？相方じゃなかったの？」
「……ハル、お前には関係ない」
「放っておけ。あと小瑠璃に近付くなって安居に言われてたよなお前」

　小瑠璃にやたら近しい男。
　こんな時だけ妙に涼と息が合う。
　「兄貴かよ」とハルが零す。意味が分からない。

「……この二人、昔よく方針の違いで喧嘩してたんだよ。今はなくなったと思ってたんだけど…」
「へー」
「小瑠璃、ちょうどよかった。この阿呆を説得しろ」
「涼！？お前話す気じゃ」

　俺達が過去にやってきているという事は出来るだけ秘密にしたい。
　…経緯をあまり話したくないから、というのもあるが。

「小瑠璃ならいいだろ」
「よくない」
「……ねえ、安居、涼くん。そこに倒れてる女の子は？」
「……ああ…」

　過去の涼に引きずり出されても、眠り続けているまつりを横目に見る。
　唐突に閃く。
　そうだ、これだ。

「……ああ、そうだ、そいつのことだ。洪水か何かで流されてきたみたいだからそいつもこの村で面倒を見るべきだと言ったんだが、涼が」
「違うだろうが！お前らが」
「あーあーあー聞こえない」
「ガキかてめえ！」

　涼と距離を取り、まつりの傍に庇うように立つ俺と、苛立ちを隠そうともしない涼。
　どうしようもない。
　それもこれも、未来の涼が過去の俺を気絶させて連れていくから……

「「！！」」

　また掴みかかってきた涼と、応戦する構えの俺の足に、何かが絡みつく。
　同時に吊り上げられる、そういえばここらへんには恐竜用の新しい罠、が……

「……何これ？」
「…………喧嘩両成敗…？」

　同時に逆さづりになった俺達を、小瑠璃とハルは呆れた目で見ていた。

【続】

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