Laub🍃

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2018.01.21
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カテゴリ: 🌾7種2次表
→1
→2  『わけがわからない』
→3  『話せない』
→4  『置いておけない』
→5  『収拾がつかない』
→6  『違えない』
→7  『手段を選ばない』
→8  『知らない』
→9  『受け止めきれない』
→10
→11  『訊けない』
→12  『救われない』
→13  『そつがない』

あらすじ:
・外伝後安居・涼・まつりタイムスリップIF二次創作小説

・安居(過去)を拉致し、夏B村(過去)で暮らす涼(未来)
・涼(過去)を説得し、混合村(過去)で暮らす安居(未来)とまつり(未来)



**************

カイコ         14

**************



「……涼。やっと戻ってきたのか。何でお前はいつも勝手な事ばかりするんだ」

「目的はともかく、手段がおかしいんだよ。ろくに交渉もせず過去の俺一人を連れ去るのは強引すぎるだろう。こっちは、過去のお前が切れて俺に殴りかかってきて大変だったんだが」
「……それでもこうして一緒に行動しているということは、説得はできたんだろう」
「……相当疑わし気だったがな……お前が残っていればよりスムーズに話が進んだと思うが……お前達が戻ってくるまでの間、まつりと一緒にこの村で暮らすという話になった。他の奴等には事情はばれてない……そうだ、まつりだ、お前ら恋人同士なんだろう、どうして置いていくんだ」
「流石に二人運んでは逃げきれないからな。まつりがいつ目覚めるかも分からなかった。この村で暮らすなら、少なくともお前らの生命は保障されるだろうと思った」
「過去の涼によってまつりともども俺が追放されたり、拘束されたり、最悪殺される可能性は考えなかったのか」

「お前は、俺の為に誰かを殺そうとしたことが何度ある。
 俺が狂う前にハルを殺しかけ、俺が殺す前に花を殺しかけ、俺を殺す前にかな」
「あのなあ。流石に、いくら洗脳されても、いくら怪しくても、お前と同じ姿で同じことを言う奴は、殺せねえよ。追放もない。俺とお前とまつりが合流したら、過去のお前ひとりが人質に取られている事になる。逃げそうになくて仕事に協力的な奴なら、拘束して飼い殺しにするのも時間と食料と労力の無駄だ」
「……」
「今の俺なら、過去のお前をあの村や、先生達の狂気から引き剥がせると思った」
「……」
「今のお前なら、過去の俺の暴走を止められると思った」
「……」
「事実そうして相方としてやっているだろう」
「……『安居なのに安居じゃない』と何度も言われたが」
「それでもだ」

 溜息を吐く俺に、涼は憮然とした表情で返す。
 もう何を言ってもこいつの暴走を止められる気がしない。
 捻くれ者で、相手を試すような事もする奴だが、根は善意で動いている。
 だからこそ手に負えない。

 なるほど、いつかこいつが言っていたように俺達は似ているのかもしれない。


 相手の為と言って独善的な事をする。
 多大な自信と決断力と、そして使命感で、大抵のことはできてしまう。
 その結果に犠牲が付き纏っても、成果が大きければそれでいいと思ってしまう。


 そしてそれは先生達と要さんの教育の賜物なんだろう。



「……分かった、お前が過去の俺を連れて行ったのは正解に近いんだろう。
 だが一つ訊いていいか」
「何だ」
「……過去の俺は妙に楽しそうだが、何があった」
「……」

 涼は一瞬口を開いて、また閉じた。
 どういうことだ。
 嫌な予感がする。

「おい、答えろ。嵐と競泳をしたからか?ナツに食べられる物や縫物のやり方を教えたからか?船の救出とメンテナンスの仕事が完了したからか?それとも螢の手相占いで童心に返ったのか」
「……悪い報告がある、貴士先生の子供のことを、過去のお前に話せなかった」
「説明になってない。どういう事だ!涼、ちゃんと説明しろ」

「大丈夫だったのか安居」
「大丈夫だ。そっちはどうなっている。村に異常はなかったか」
「大きな異常はない。今の所な」

 突如。
 涼に食って掛かる俺の耳に、後ろで会話している過去の俺と涼の声が入ってきた。

「……安居、お前の方こそ、今までどこに行っていた」
「夏のBチームが居る海岸だ。そうだ、涼!




 そこに要先輩が居たんだ!」
「……」
「……」
「……」

 嬉しそうに語る過去の俺。
 固まる俺。
 俺に視線を向けている未来の涼。
 会話の止まった俺達に気付く事無く、話を聞き続ける過去の涼。

「……要さんは、元気そうだったか」
「かなり老けていたが、健康そうだったな。夏のBチームはサバイバル能力に欠けた奴が多すぎるから、要先輩が先生みたいになってサバイバル術や船の操作方法を指揮してた」
「…そりゃ、頼れる同行者だな。要さん要さんって、昔のお前らにされてたみたいに質問責めにされてたか?」
「……そうだな。何か危機に陥るとすぐに頼られてたみたいだ。といっても、もうあそこには居ないんだがな。春のチームは洪水でばらばらになって、未だ数名行方不明な事を告げたら、要先輩は探索救助しに行くと言って姿を消してしまったんだ」
「そうか。あの人らしいな。……所で安居、夏Bのメンバーに、『百舌』という奴は居たか」


 あ。


「ああ。要さんのことだろ。苗字が百舌戸だから、簡潔に百舌と呼ばせているらしい」
「……そうか……」


 やってしまった。

「……悪いな、こうなるとは」
「……仕方ない。
 こっちも悪い報告がある、涼。過去のお前にまずいことを教えてしまった」
「何をだ」
「百舌が、危険分子の俺を殺しかけたことをだ」
「……おい」


 未だによく分かっていない顔の過去の俺は、呑気に「混合チームの中で要さんと接触した奴なんて居たか?」と言っている。
 過去の涼はそれを無視して、こちらに振り返る。


 氷のように表情も血の気も失せた顔。


「……お前ら、詳しく話を聞かせろ」




【続】





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最終更新日  2018.11.25 09:11:09
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