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CF界の巨匠ロイ・アンダーソンが描く不条理ムービー。とある惑星のとある場所。サラリーマンは突然リストラされ泣きわめく。道に迷った男は訳もなく殴られる。マジシャンは人体切断のマジックに失敗して男を本当に切り刻んでしまう。そんな中、主人公は保険金目当てに自分の経営する家具屋に火を付けるが―――。 構想に20年、撮影に4年を費やしたというから、脚本はよく練られ、深い意味も込められているんでしょう。それに気づけないで傍観していると、けっきょく煮ても焼いても食えない作品だったなぁと、味気ない感想しか浮かばなくなってしまった。超ど級の不条理がいいたいことは、いったいなんだったか。デモをする人々であふれた街は、不穏な空気でいっぱい。どこまでも灰色に覆いつくされた街は、これから終焉を迎えるみたいに、逃げ惑い、あらゆる希望を失った人々で溢れかえっている。演じている人々はほとんどが素人で、脱力系の演技は自然でとてもよかった。そんな街で主人公は、絶望から保険金目当ての放火をする。ところが証書まで燃やしてしまって、保険金は支払われずに無一文、ただただ何もかも失ってしまう。タクシードライバーだった優しい長男は心を病んで入院。次男がその跡を継ぐも、彼もまた、延々と客がこぼす愚痴を聞く毎日に疲れ果てていく―――。 CFを手がけてきた監督らしく、デモ行進の徘徊するシーンや、少女を生け贄に捧げるシーンなど視覚的インパクトが多彩だった。血はよく流れるけれど、ブラックなユーモアが、痛みも苦しみも引き取ってくれて、あちら側の不幸に害されることはない。でもそれでいいのかといえば、もっと映画と一体になって楽しみたかった気もする。すっかり最後まで傍観するばかりだった。長回しや、固定されたアングルが印象的なカメラは、眠気を誘う。でもずっと灰色で不安だから、心地よい眠りに落ちれるわけもなく・・・悪夢のような夢うつつ。キリストの磔刑像が、この一大事になんの役にも立たないものとして放り出されるラストシーンが印象的だった。主人公を付け回す、アウシュビッツで命を落とした少年の亡霊や、たくさんの亡者たちにどんな意味があったのかわからなかったけれど、それを感じれる方には、なるほどだったのかもしれない。監督・脚本 ロイ・アンダーソン 製作 フィリップ・ボベール 音楽 ベニー・アンダーソン 出演 ラース・ノルド シュテファン・ラーソン ルチオ・ヴチーナ (カラー/98分/スウェーデン=フランス合作)
2009.02.26
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武者小路実篤(1885年~1976年)に思い入れがあるわけでなく、ただ先日小樽文学館にて、偶然見つけていただいてきた、60年以上前の古い本。年代を感じさせる、味のある装丁と表紙が気に入ったもの。中身をぱらぱらとめくってみたら、存外に肩の凝らない文体が読みやすくて、思いがけず最後まで読んでしまった。白樺派――聞いたことあるような。wikiによれば・・・人間の生命を高らかに歌い、理想主義・人道主義・個人主義的な作品を制作した人たち。昭和21年に発行された、戦後まもない名残をふんだんに感じる中身だった。人間肯定や理想主義や、たしかに今ではきれい事に聞こえてしまうような言葉が列挙されているけれど、こういうのが求められた時代もあったんだ、たぶん。武者小路氏が立ち上げたという新しき村は財団法人として、埼玉県に今でも存在しているそうな。精神に基いた世界――それがどんなものか想像もつかないけれど、ユートピアという言葉が似合うような村ではなさそうだ。だって、現代の日本が抱えている尽きない問題の数々は、この本なのかで語られている通りに、日本が発展しなかった証拠でもあるし、日本のここが素晴らしい!という賛美はいちいち行き過ぎて感じられた。読んでる方が恥ずかしくなてきた。近視眼的、といわれても仕方ないなぁ、これならと思う。時代に触れた感じは心地よかったが、最後のほうでは宗教のようであるなぁとも感じた、読みやすい本だった。
2009.02.25
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1989年、ベルリンの壁崩壊直前の東ベルリン。アレックス(ブリュール)は建国40周年を祝う式典の夜、改革を求めるデモ行進に参加。その姿を目撃した愛国主義者の母クリスティアーネ(ザース)はショックで心臓発作を起こし、昏睡状態に陥ってしまう。彼女が奇跡的に意識を取り戻したのは8カ月後。医者の忠告どおり、再度ショックを与えないため、アレックスは母を自宅に引き取って、東ドイツの体制がずっと続いているふりを装うのだった…。 ドイツが西と東に分かれた理由さえよく知らないわたしでも、観終えた後は当時のことが少しはわかるようになっていた。知りたくもなっていた。とても良質な評判のよい作品。主人公アレックスの父親は、10年前、仕事で訪れた西側で愛人をつくりそのまま亡命してしまう。以来、母親のクリスティアーネは女手一つで長男長女を育て上げ、時代に翻弄されるかたちで愛国主義者となっていく。そんな母の、突然の心臓発作から8ヶ月――。ベルリンの壁は崩壊していた!奇跡的に意識を取り戻した母親にショックを与えないため、家族ぐるみの偽生活が始まるのだった。8mmカメラでウソのニュース番組を作ったり(これが面白い!)、瓶詰めの食料を東ドイツ御馴染みのパッケージに移し変えたり・・・・なにかと苦労は多い。東ドイツがまだ元のままに存在していると信じ込ませるため、アレックスのちょっと変わった日々がはじまる。 コミカルに勢いよく、統一前後の激動のドイツを舞台に、ひとつの家族の悲喜交々を描く。新しいドイツの幕開けなのに、母の為に過ぎ去った東ドイツを再現し続けるアレックスの姿は滑稽。でも、なにか大きな愛を感じていとおしくなる。ドイツの新鋭で、これが長編2作目というヴォルフガング・ベッカー監督の脚本がとてもいい。当時の映像を交えた背景の確かさと、肩の凝らないコメディによって、ラストまで一気に展開していった。人として魅力的な母も、なにかと行き過ぎのアレックスも、彼が恋する看護士ララも、十数年ぶりに再会する父親も、姉の再婚相手も、友達も、みんないい人たちばかりだから、微笑みながらとことんウソの生活を見守りたくなってしまう。なだれ込んで来た西ドイツを享受しつつ、母の為に創り上げたアレックスの理想の架空国家は、果たして母を幸せにするのか―――。母親がついていた大きなウソが一番のサプライズだ。監督 /ヴォルフガング・ベッカー 製作 /シュテファン・アルント 脚本 /ヴォルフガング・ベッカー ベルント・リヒテンベルグ 音楽 /ヤン・ティルセン 出演 /ダニエル・ブリュール カトリーン・ザース マリア・シモン チュルパン・ハマートヴァ (カラー/121分)
2009.02.18
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マネキンに“菜穂子”と名前をつけて、殺した女の肉片を中に詰める孤独な青年・誠、近親 相姦の兄弟・・・。“菜穂子”によって導かれた男女に、残酷な運命が待ち受ける―――。 アネモネさんにおすすめ?していただいた作品。カルト・ムービーゆえ、体調がよくない方にはおすすめできません。80年代にはこんな衝撃な作品があったこと、改めて面白いと思う。製作から20年、いまの映画にちょっとだけ疑問を感じた。古い映画を観ると、「現在ではふさわしくない言語ですが、本編のオリジナリティを尊重してそのままで放映します」というような字幕をたびたび観ることがある。それは今では使ってはいけなくなった差別用語で、たしかにいけない言葉ではあるけれど、使えなくなってからの映画は、おのずと軟くなりエグ味も頭を殴られるような衝撃も存在しなくなってしまったような気がする。もうこんな映画は生れてこないんだという寂寥感・・。1980年代にはまだ残っていた、そんな懐かしい意味でも、見る価値のある作品だと思った。 “菜穂子”と名づけたマネキンを偏愛し、若い女性を殺しては切り取った生殖器を“菜穂子”の中に詰め込んでいる青年・誠。彼は廃墟の屋上に住み、孤独で人でなしだが、寄せる愛だけは誠実だった。ある時“菜穂子”が妊娠し、新しい家族のために働こうと決心した誠は、小人症の兄妹が経営している下水道清掃の職に就く。その頃、同じ街で、近親 相姦の幼い兄妹ふたりは純粋に寄り添っていたが・・・。「カラスになるくらいなら、真っ白いハトでいたい」街ゆく女子高生は言う。この映画の人々は、愛はあっても欲望に負け真っ黒なカラスになってしまうのだけれど、果たして一生真っ白なハトでいることが正しいのか、それがわからない。たしかに、彼らのような堕ちる姿をみてしまえばカラスになるのは嫌だけど、目くらめっぽうに欲望に突き進む行為は本能的な望みでもある。ただ理性が歯止めとなっているだけ。愛のためには人殺しもいとわない誠。体の醜い痣と、成熟しても体は幼児のままであることを嫌悪する小人症の妹、そしてその兄。性欲を捨てきれない浮浪者。純粋に寄り添う幼い兄妹たち。愛によって生命を得た“菜穂子”に引き合わされ、誰もが欲望に憑り付かれ、残酷でむごい結末へとひた走る。唯一、ほんとうに美しかった兄妹さえ、導かれるようにして誠のねぐらに辿り着いた時、兄の欲望が目ざめ悲劇を迎えてしまう―――。兄妹を描いたシーンは本当に美しくて、少女の純白なイメージが、少なからず過酷な鑑賞を助けてくれた。過激な描写ばかりのなかで、これだけ美しく純粋なものを配置できるのは、審美に長けた監督さんならではのはず。マネキンの美しさもまた、対照としてとてもいい。これがモノクロ映画で本当に良かったと思う。カラーだったらと、想像しただけで身の毛もよだつから。監督がモノクロを選ぶのには、いろんな理由があるのだろうけれど、本作では過剰な刺激を避けるためにそうしたのでは?―なんて思えてくる。映像美が際立つことも、モノトーンならではだ。物乞いの負傷兵や、路地裏の猥雑さが、時代背景を曖昧にしているのは、幻想譚ならでは。幾度も登場する日立の広告塔が懐かしい感じで印象的だった。リバイバル上映時の解説。時代が映画においついた、究極のハードコア・ファンタジー監督・脚本 /松井良彦 製作 /安岡卓治 音楽 /菅沼重雄 出演 /佐野和宏 隅井士門 村田友紀子 大須賀勇(モノクロ/150分)
2009.02.17
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ゴールド・ラッシュに湧く西部劇を舞台に、土地の証文をめぐり、3兄弟と無法者たちが乱戦を繰り広げる。クライマックスの暴走列車の乱闘とギャグが見もの。 (「映画大全集」より) マルクス兄弟の映画ははじめて。ベタベタな始まりにどうなることかと思ったけれど、先へゆくほど面白くなってきて、終盤は爽快だった。次男ハーポが奏でるハープと、長男チコが演奏するピアノはとても聴き応えがあって素晴らしい。マルクス兄弟作品の見所のひとつなのだそうだ。これほどの技術があるなら、違った趣の作品が撮れそう。今回は西部劇ということで演奏シーンを挟むのが難しかったのかもしれないけれど、音楽をもっと取り込んだ作品があったらきっと楽しいだろうなぁと思った。次回はこちらも手元にある『マルクス兄弟オペラは踊る』を見てみよう。ギャグは古いというか寒いというか(笑)どうにも笑えないものが多いけど、これが時代というものか。サイレントのほうがよほど笑えてしまうことを考えると、時代や技術が進むほど、笑いは難しくなっていくということなのかもしれない。サイレントでの笑いは普遍でも、トーキーのギャグには、かなしいかなシビアに反応してしまう。 監督 /エドワード・バゼル 脚本 /アーヴィング・ブレッチャー 音楽 /ジョージ・ストール 出演 /グルーチョ・マルクス ハーポ・マルクス チコ・マルクス ジョン・キャロル (モノクロ/81分)
2009.02.16
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エリート兵士のミカエルは、美しい妻サラと2人のかわいい娘に囲まれ幸せな日々を送っていた。良き夫であり良き父でもあるミカエルは、両親にとっても自慢の息子。一方、独り身の弟ヤニックは定職もなく罪を犯して服役までした厄介者。そんなある日、ミカエルは愛する家族を残して、戦禍のアフガニスタンへと派遣されることに。間もなく、彼の乗ったヘリコプターがアルカイダに撃墜されたとの訃報が届くのだが―――。 物語のシチュエーションは、よくあるものだと思う。ただ、これほど観客を惹き付けておける作品は、最近の映画ではなかなか珍しい。先日観た『アフター・ウェディング』にしても、ビア監督の才気を感じるところだ。愛する夫ミカエルの死を受け入れられない妻サラ、その優しさと人柄に触れ心を入れ替えていく弟のヤニック。一組の兄弟の絆と、一人の女性サラの愛が見事に描かれている。任務中に撃墜されたミカエルは、奇跡的に一命を取り留め敵の捕虜となる。救い出すはずの味方兵士とともに、過酷な状況でなんとか生きていたが、ある時、これまでの彼の人生を一変させてしまう事件が起こる。国連軍に救い出され、無事帰還したあとも、その出来事は彼を別人のように変えてしまうのだった・・・。 父親は、自慢の長男が死んでから、出来損ないの弟ヤニックに対して、ますます暴言を吐くようになる。彼のやりきれない悲しみが、定石どおりとはいえよく描かれていた。それでも、兄の妻である美しいサラに惹かれ、心を開き始めた彼は、敬遠していた姪っ子たちとも仲良くなって、立直り、真っ当に暮らし始める。サラにとっては、酒飲みで最低な弟が、軽口を叩いて自分を笑わせてくれることで元気を取り戻し、次第に救われるようになるのだ。互いに異性として意識し始めた頃、死んだと思っていた夫が帰還する――。戦場での怖ろしい出来事を知った上で、変わり果てたミカエルが痛々しい。怒鳴り、暴力を振るうようになったミカエルに、家族は怯えるばかり。この辺りの描写はかなりハード。戦場で犯した罪によって、まるで聖人だったミカエルは偽善者に、悪人だったはずのヤニックは善人に見えてくるのだから、人なんてわからない。ラスト近くにミカエルは、罪を犯した理由を愛のせいだというけれど、その言葉のズレが哀しかった。なにもかも新しいというわけではないのに、とにかく見事な展開とカメラワークと役者たちの演技で、作品にのめりこんでしまう。人生はその人のものだけじゃなく、沢山の人々と繋がっていると、ひしと実感した物語。それぞれの人生は重く、死を描くからこそなお更に衝撃だ。ただ、これは非日常であることに変わりはくて、特殊な環境下にある物語なのだ。普通の人を演じるのが難しいみたいに、日常を描いたら、はたしてこの監督さんはどんな作品を生むのだろうとふと考えてしまった。すごく良くできているけれど、悪く言えばあざとい。好きになるにはぬけめがなさすぎた。監督 /スザンネ・ビア 脚本 /アナス・トーマス・イェンセン 音楽 /ヨハン・セーデルクヴィスト 出演 /コニー・ニールセン ウルリク・トムセン ニコライ・リー・コス (カラー/117分)
2009.02.13
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小津監督のサイレント期の名作。郊外に引っ越してきたサラリーマン一家の小学生兄弟は、いじめっ子たちをやっつけ早々にガキ大将になるが。一番偉いと思っていた父親が、会社の重役=友達の親にペコペコするところを見て理解できずに憤慨してしまうのだった――――。 子どもの社会と大人の社会が、並んで描かれるところがおもしろい。子どもの目線から見た大人たちの世界は、理不尽で理解しがたいものがあるんだろうなぁ。いつも威厳ある父の、まさかの場面を目撃してしまった兄弟は、情けなくてなかなか怒りはおさまらない。子どもたちは体を張って上下関係を変えていくのに、お父さんにはそれができない。彼らにすれば情けなくて仕方がない。けれど両親は、いまは怒っている我が子だって、いつかはそのルールに従う大人になることを知っているから、情けなくても、哀しくても、どこか微笑ましいのだ。 童話のように親しみやすい語り口でありながら、ことの真理をしっかりついた作品だった。可笑しくもじんわりと心に沁みる。上役の趣味が活動写真だというのもいい。撮ったフィルムの上映会を開けば、そこに登場するはユーモア。はじめは‘厳格な父’として登場したお父さんの、おどけてヘン顔をしまくっている姿には笑いを禁じえない。子どもたちにはショックな姿なんだけれど、これは面白すぎ。 純粋なサイレント映画を久しぶりに観た気がした。当時は音楽伴奏や活弁がついていたのかもしれないけれど、DVDでみる今では本当に無音。鑑賞環境によっては、映画の外の音がうるさくて仕方ない。音をイメージして、味のある字幕をたのしんで、それでも音楽のありがたみをしみじみ感じた古典の名作だった。監督 /小津安二郎 原案 / ゼェームス・槇 (小津安二郎) 出演 /斎藤達雄 吉川満子 菅原秀雄 突貫小僧 坂本武 (モノクロ/無声/91分)
2009.02.11
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1月30日(金)からの『佐々木丸美展』に行ってきた。丸美展に足を向けるのは紀伊国屋書店 札幌本店ギャラリーと、えりも町 風の館に続いて三度目。これで今のところは最後になる予定とのこと。丸美展を制覇したい気持ちと、市立小樽文学館は以前から行ってみたかったこともあり、念願叶ってうれしい。小樽は歴史的建造物がほんとうにたくさん街に残っているのだけど、文学館もそのひとつで、どこをとってみてもステキな場所だった。古びて味わいの増した調度品の数々がすごくいい感じで、落ち着いた雰囲気のなか、館の一画にある無人カフェで珈琲を飲んだり、気持ちだけ支払って、古本をひとり5冊まで持ち帰ることもできる。こんなベストな環境で丸美展が開催されているなんてほんとうにうれしくて、しかも文学館という最も相応しい場所にとうとう着いた感じで、しっくりその場に馴染んでいたのが一番印象的だった。これまで二度の展示では見られなかったものもあって、内容にも感激。直筆原稿の端に描かれた走り書きの絵にも人柄を感じる。 『市立小樽文学館』。リピーターになりそうな気がする。近くに住んだら間違いなく通う自分が見えた(笑)ちなみに、わたしが選んでもらってきた本がこちら。すごく古く、褪せていてボロい。飾るかもしれないし、読むかもしれないし。 ・時間:9:30~17:00(入館は16:30まで/月曜休館) ・場所:市立小樽文学館 2階展示室 ・入場料:一般 300円/高校生・市内の高齢者 150円/中学生以下 無料 (丸美展は3月1日まで!)
2009.02.08
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ひさしぶりに筒井康隆作品を読む。この方の皮肉は超ど級で、下ネタ全開で、しばらくは手にとっていなかったのだけれど、これはすごくおもしろかった。大学の内部をそうとうシニカルに描きつつ、主人公が合間に、大学で文学について講義するという形式。その講義が淡々とした、ちょっとおバカを交えつつの語り口調で綴られるので、肩の凝るところのないのがいい。ただ、だんだんと講義の内容も口調もまじめになっていくので、ポスト構造主義まできたあたりではマジ講義に・・・わからない。それ以上にわからないのはやはり現象学というものだった。文学批評についてとはいえ、映画批評にも同じことがいえそうに思えてきた。批評する者、される者。はじめに言葉ありきなのか・・・作家ありきなのか・・・難しいことはわからないけれど、生むほうの側と批評する方の側のせめぎあいみたいなものがおもしろい。著者はもちろん生むほうだから、そっちの立場としての本音も見え隠れする。教授たちが繰り広げるアナーキーな世界は一読の価値あり。?メタフィクションというらしい、‘ウソ’とまではいかなくても過言気味な内容はついつい笑ってしまうこと請け合いだと思う。 (あらすじ) 唯野仁は早治大学英米文学科の名物教授にして、実は隠れて小説を発表している新進作家。グロテスクな日常を乗り切りながら、講義では印象批評からポスト構造主義まで壮観な文学理論を展開して行くのであったが…。「大学」と「文学」という二つの制度=権力に挑んだ衝撃の長篇小説。
2009.02.07
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ABBAのヒットナンバーで構成され、世界中でロングランとなった傑作ミュージカルを映画化したロマンティック・コメディ。ギリシャ、カロカイリ島。小さなホテルを営む母ドナと2人暮らしのソフィは、結婚式を明日に控え、大きな秘密があった。それは、母の昔の日記で知った父親候補の男性を結婚式に招待していることだった・・・! 笑って泣けてハッピーになれる、とっても楽しい映画だ!往年のABBAの名曲に乗せて、ギリシャの美しい景観のなか繰り広げられるミュージカル。世代を越えて聴かれ続ける音楽の魅力でいっぱいだ。結婚を控えたソフィは、偶然見つけた母親の昔の日記から、父親であろう男性の名前をみつける。母親にも婚約者にも内緒で、結婚式の招待状を送ったソフィだったが・・・父親候補が三人もいたからさぁタイヘン。 冒頭からさっそくソフィの歌が飛び出して「え、もう?!」とノリについていけるか心配になるも(笑)杞憂に終わる。次々飛び出すABBAの歌が楽しくて、貫禄あるメリル・ストリープに魅せられて、あっという間の上演だった。ソフィの結婚で集結したドナの親友たちが、熟女3人でパワフルなステージを演じるシーンは最高。幾つになっても人生楽しんで生きてこう。 つくづく思った。だってすごく楽しそうなんだもの。現地の人たちも、娘の友達も、花婿も、父親候補のオジサマーズも、歌う踊る歌う!能天気で、おばかでも、結婚式の日はジーンとさえてくれた。女手ひとつで育てあげたソフィの結婚式の前日、突然むかしの恋人たちがホテルに現れて、ドナはもちろん大混乱する。父親候補のおじ様たちも、自分に娘がいたかもしれないと知って、動揺してしまう。誰が本物かは、ドナが知っている。そして父親自身も知ってる。複雑な想いを抱えた2人は、明日に控えた結婚式の慌しさのなか、果たして過去を乗り越えられるのか・・・。懐かしさも、捨てられた怒りも、なにもかもひっくるめて、ドナは過去を乗り越え素直になる。そしてソフィの父親もまた、ドナとの過去を振り返り愛を再確認する。どんでん返しが微笑ましい。冒険家ビルにステラン・スカルスガルド、銀行員ハリーにコリン・ファース、そして建築家のサムにはピアース・ブロスナン。この映画はおじさまおばさま世代が熱い。みんながそれぞれにステキに歳をとっていて、人生指南とでもいうような(笑)飾らない姿がいいのだ。ちなみに、オジサマーズのなかで一番タイプなのは、ハリー役のコリン・ファース。ギター弾き語りが上手い。フェルメールを演じた『真珠の耳飾りの少女』でも彼はセクシーだった。本作でのオチは、笑える。まるでギリシャ喜劇だ!というシーンがいい。ギリシャを舞台に、まるでそのとおりなんだもの。ひとつ残念どころをいえば、ある意味大役のピアース・ブロスナンの歌が下手なこと。これにはガックリくると思う。逆に、ヒロインのアマンダ・セイフライドは予想以上に歌が上手で、エンドロールの『THANK YOU FOR THE MUSIC』にじんわり感動した。音楽っていい!監督/ フィリダ・ロイド 脚本/ キャサリン・ジョンソン 撮影/ ハリス・ザンバーラウコス 音楽/ ベニー・アンダーソン ビョルン・ウルヴァース 音楽監督/ マーティン・ロウ 音楽監修/ ベッキー・ベンサム 出演/ メリル・ストリープ ジュリー・ウォルターズ ステラン・スカルスガルド コリン・ファース ドミニク・クーパー ピアース・ブロスナン アマンダ・セイフライド(カラー/108分/アメリカ=イギリス合作)
2009.02.06
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インドで孤児たちの救援事業に従事するデンマーク人、ヤコブのもとに、デンマークの実業家ヨルゲンから巨額の資金援助の申し出が舞い込む。求めに応じて、久々に故郷へと戻ったヤコブは、ヨルゲンとの面談の後、週末に行われる娘アナの結婚式に強引に招待されてしまう。ところが、そこに待っていたのは思いがけない人との再会、そしてさらなる衝撃的な事実だった―――。 すごく面白かった!はじめて出会う表情をした映画で、ぐんぐん惹きつけられた。デンマークといえばラース・フォン・トリアー監督で、真摯な映画のイメージが大きい。こちらもたしかに真摯だけれど、なにとも違っている、こんな映画を作る女流監督がいたなんて知らなくて嬉しい。主人公たちを演じる役者がとにかく素晴らしい。ヤコブ、ヨルゲン、その妻ヘレネ、娘のアナ、みんながすごくいいのだ。物語はインドから始まり、そこで生きる人々や、ヤコブの表情にすっかり心掴まれてしまって、サスペンスチックに展開していく翻弄される運命に、最後まで釘付けになった。再会に翻弄されるヘレネとヤコブヤコブは久しぶりに戻ったデンマークで、実業家ヨルゲンに強引に誘われ、彼の娘アナの結婚式に出席することになる。翌日、会場で目にしたのは、20年も前に別れ、いまではヨルゲンの妻となっているヘレネだった。突然の再会に驚くヘレネ・・・。それ以上に、アナが自分の子だという事実を知ったヤコブは、信じられない状況に動揺を隠せない。インドでの救援事業に多額の資金援助を持ちかけるヨルゲンの企みが、次第に明らかになっていく―――。どんな理由があるにせよ、ヨルゲンのしたことは沢山の人の人生を変えてしまう。それは資産家だからこそできることで、金でヤコブを買うような真似も含めて、インドの貧しい人々との対比がとても痛かった。さんざん家族を翻弄し、男ひとりの運命を変えたヨルゲンには、絶望という名の苦しみがあった。だけど、例えそうだとしても、人生においてそこまでする(あえて言うなら)我儘を赦されていることに、驚きや疑問を抱かずにいれない。はたやインドでは、名も知れぬ子どもたちが毎日のように飢えや病気でただ死んでいるのに・・・。ひとつの命の終わりが、同じものとは思えぬほどに違うことに戸惑ってしまう・・・。とにもかくにも、運命が激動していく展開の力は見所のひとつだ。救いは、昔はひどい男だったというヤコブの、いまの姿。演じているマッツ・ミケルセンの魅力と相まって、いい表情の彼が、インドという国やヘレネやアナとの出会いによって、さらに変わっていく様が素晴らしい!アナ役のスティーネ・フィッシャー・クリステンセンをはじめ、女優たちの魅力も忘れがたい。とにかく巧くできていて、アップの多いカメラも、思いがけないほど深くまで広がって胸をざわめかす物語りも、映画としてとてもいいと思った。久しぶりに時を忘れて没頭した映画だった。 監督 スザンネ・ビア 製作 シセ・グラム・ヨルゲンセン 脚本 アナス・トーマス・イェンセン 撮影 モーテン・ソーボー 音楽 ヨハン・セーデルクヴィスト 出演 マッツ・ミケルセン ロルフ・ラッセゴード シセ・バベット・クヌッセン スティーネ・フィッシャー・クリステンセン (カラー/119分/デンマーク=スウェーデン合作)
2009.02.04
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