2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
全10件 (10件中 1-10件目)
1
お世話になっているアネモネさんが、先日ブログでおすすめされていた作品です。さっそくDISCASでレンタルしてみました。この映画、良かったです。私的に好きな男優、トヨエツ&トオルコンビなのがツボだったし、なにより、初めて女優さんとして認識した小池栄子が、驚くほど存在感あるいい演技をしていました。 都内の会社に勤める遠藤京子(小池)は、家族とは疎遠で友達もいない、孤独な日々を送ってきた。ある日彼女は、無差別殺人を犯した男・坂口秋生(豊川)が、TVの生中継で逮捕される様子を偶然目にする。その表情に自分と同じ孤独と絶望感を見いだした京子は、仕事も辞めて、坂口に関する情報を集め、弁護士の長谷川(中村)に彼への差し入れを取り次いでほしいと依頼するのだったが―――。 「誰にも理解されない社会のはみ出し者で、損なことばかり押し付けられて、自殺でもしそうな陰気な人間に見られるの・・・」京子はそう言います。たしかに彼女や坂口は、誰にも理解されないで、愛されないで生きてきたかもしれない。けど、そういう人々がみんな、犯罪者になるわけではないし、結局は二人の利己に思えてしかたがなかった。はじめは、残忍な犯罪にも、情状酌量の余地があることを描いた作品なのかと思ったけれど、違ってた。間違いは間違い、罪は罪。理解できないものは理解できないのだ。公判を傍聴し、塀の外から差し入れを続け、病的なまでにその存在を求め続けた京子。少しずつ彼女の気持ちに応え始める坂口は、純粋に彼女を愛したのかもしれない。けれど結局は再生の未来を紡ぐことはできなかった、、。幸せな一家を惨殺した坂口の罪も、京子の犯す罪も、無意味な空しい暴力で終わってしまう。ふたりは、終いまで、その深い孤独を癒されることなく、歪んだ愛がかなしい。キーパーソンは、ふたりの間に立たされる弁護士の長谷川だ。彼は京子に静かに惹かれながら、坂口にのめりこんでいく彼女を心から心配する。徹底して黙秘を続ける坂口のことを、できる限り理解をしようと努力する。この誠実な男は、確実に犯罪者の心の岸辺近くまで、下りていくことができた。けれどその行く手を再び阻むのは、第二の犯罪。残酷なまでに救いは訪れない。犯罪者を描いた面も、犯罪者予備軍を描いた面も、倒錯した純愛を描いた面も、胸にクサリと刺さる、なにか痛みを伴う衝撃があって、良かった。できるならもう少し、長谷川と京子との間に瑞々しいエピソードがあればよかったな。そしたら、ラストの接吻が、もう少し意味あるものに見えたのかもしれない。あの接吻にどんな意味があったのか、正直私にははっきりと見えてこなかったのです。タイトルにもなった接吻の相手が、まさかの展開で、それがよかっただけに残念です。 ● ● ● ●監督 万田邦敏 脚本 万田珠実 万田邦敏 音楽 長嶌寛幸 出演 小池栄子 豊川悦司 仲村トオル (カラー/108分)
2009.04.28
コメント(10)
ただいま着々と、『三四郎はそれから門を出た』で紹介されていた本を読んでいます。いつまでつづくかはわかりませんが、、とりあえず今のところは、有栖川有栖を2冊。アリスはじめ登場人物が魅力的で、ぐんぐん進むおもしろさ。普段ほとんど読まないミステリーですが、最後までトリックも犯人もわからずに、楽しませてもらいました。次に図書館にみつけて手に取ったのは、このおかしなタイトル。クドカンことくんくこと宮藤官九郎の本です。脚本家であり、映画人だということは知っていたけれど、じつはこの人の携わった作品はどれも食指の動かないものばかりで、ことごとく見ていないのでした。せいぜい『ピンポン』くらい。これを機に、ドラマは見ないけど、映画は借りようと思いました。すこし興味がでた。三浦しをんおすすめの言葉は、わけのわかんないダルさと緩さが充満。笑いながら読んでいると、ワインを飲んだときのような酩酊感と軽い頭痛が襲ってくる。ほんとうに、そうだぁ。最初はこのテンションについてけなさそうな気がしたけど、そのうち酔ったように終いまで一気に読み進んじゃって、後を引くおもしろさだった。しをんさんに言わせると、クドカンは含羞の人なのだそうだ。手がけた作品は、ハジけながらもはじらいが感じられるという。ロッカー魂が炸裂してても、今どき風でも、それなら私も楽しめるんじゃないかなぁ~という気がしてきました。とにかくロックが大好きな人なんですね。グループ魂は知ってます。歌ってるところも見たことある。 「なんじゃこりゃ?!」って思ったけど!でもこのメンバーには阿部サダヲさんも入ってますよね。好きな男優さんです。そうかぁ、、ロックの精神がわたしに乏しいのも、馴染めなかった理由なのかもしれないなぁ・・・。それにしても共通項も見つけましたよ。ドラマ『高校教師』が好き、とか(笑)以前読んだ『ガンジス河でバタフライ』の著者・たかのてるこさんとは同級生で、ドラマ化されたときの脚本はカンクが手がけていたらしいです。インドネタも多かったし。(そうでもないか)とびっきりユーモアがあって、常に謙遜姿勢で、含羞の人。たった一冊のエッセイですが好人物なのがわかりました。今度は映画を見せていただこうと思います。『少年メリケンサック』か『木更津キャッツアイ』あたりはどうだろう。
2009.04.26
コメント(2)

京大・滝川事件とゾルゲ事件をモデルに、左右に分かれた青年たちの運命と、反戦運動家を選んだ大学教授の一人娘・幸枝の苦悩を描く―――。 世界の黒澤もこんな映画を撮っていたんですね。くさい演出に驚いたりしながらも、楽しめました。女優原節子あってこその良作だと思います。開戦間近の日本で、左翼運動へと身を投じる野毛に、ついてゆくと決めた幸枝の抗えない強い思いが印象的。悲劇を迎えたあとも、刻々と変化していく原節子の表情は見事です。女性を描きながら、それでいて男性的な黒澤カメラは、幸枝をハンサムにさえ見せてしまう。なに不自由ないはずのお嬢様が選んだ道は、あまりに過酷でした。野毛の生き方、この時代に反戦を訴えることの意味、正義と信念を貫くすさまじさ――いかにも終戦後の作品らしくストレートに迫ってくるものがありました。野毛を演じているのは『姿三四郎』の藤田進。堅実な糸川を演じたのは河野秋武。 写真・左の男 優ですが、世界のナベアツに激似です(笑) 追: 新しいノートPCを買ったら、なにもかもが慣れなくて 時間がかかってしょうがありませんー。 せっかく書いた文章を消したり、、、(涙) 早く慣れなくちゃ。 そんなわけで、すこし前に見た映画の、ずいぶん短い感想ですが、これでお許しあれ。 ほんとにいい映画だったですよ。監督 黒澤明脚本 久板栄二郎 音楽 服部正出演 原節子 藤田進 大河内伝次郎 杉村春子 三好栄子 (モノクロ/110分)
2009.04.22
コメント(4)

弁護士アティカス(ペック)の子どもの目を通して人間模様=差別問題を描いた名作。30年代のアメリカの南部の町。弁護士が強 姦罪で訴えられた黒人(ピーターズ)の無罪を立証するが、評決は有罪となる―――。 褒めすぎかとも思うけれど、すべてにおいて素晴らしかったです。オープニングから、子役たちも、グレゴリー・ペックも、脚本も、映像も内容もすべて。人種差別というテーマを、子どもの目を通して描くことで、堅苦しくならずに、けれど真摯に描いた本作は、間違えなく傑作。母を亡くし、三人で暮らしている弁護士アティカスと子どもたち(兄妹)の人柄は、冒頭で十分に伝わってきました。彼が日頃から、子どもたちにどんな教育をしているのか、その仕方までもが素晴らしくて、同じ親として感じずにいれない場面が続きました。大きくなった娘が回想しながらナレーションをする形で、物語は進んでいきます。明らかに無罪である被告人が、有罪の判決を受けてしまう・・・・。あまりに理不尽な大人の社会を目撃した、この夏の彼らは悲しみに打ちのめされます。しかし子どもたちは将来、父親アティカスの血を引いた立派な大人になるはずなのでした。その希望の余韻が、暗い影を持った物語を救っています。 少年らしい腕白な遊びの数々や、小さな冒険。隣家の説教ばあさんや、怖ろしい男が住むというラドレー家など、郷愁がこころをくすぐります。ホラー屋敷ばりの噂轟くラドレー家の一件は、有罪判決が出た時点で THE END となっていてもおかしくなかった物語をひっぱっただけあって、すごく良かったです。一度も姿を現わしたことのないブー・ラドレーとの、初めての出会いと交流に、同じく希望の余韻をもらうことができるのでした。ブーを演じていたのは、あのロバート・デュヴァル。なんとデビュー作だそうです。若かりし姿が凛々しい。役柄に関係なくいい男でした。主演のグレゴリー・ペックは文句なしに素晴らしい! 余談ですが、オンラインレンタルを利用し始めてから、もう随分になります。予約リストは膨らむ一方。いまでは230本の作品がリストインしていますが、観たい映画は増殖中です。そして、いつも上位に挙げておくのは、本数の少ないもの、早くから予約しておかないと、いつまでも届かないだろう作品です。それがことごとく来ないのが現状で、上位を飛ばしてやってきたのが、この『アラバマ物語』と『サンセット大通り』の名作シリーズ二枚組みでした。届いたときには、すぐに観たい映画でもなんでもなくって、「なんだぁ」と少なからずガッカリしたわけですが、これがいざ蓋を開けてみてびっくり、両方とも物凄く面白かった!いい映画に続けざまに出会えた感激。(オチなし)● ● ● ●監督 ロバート・マリガン 原作 ハーパー・リー 『ものまね鳥を殺すには』脚本 ホートン・フート 音楽 エルマー・バーンスタイン 出演 グレゴリー・ペック メアリー・バダム フィリップ・アルフォード ジョン・メグナ (モノクロ/129分)
2009.04.16
コメント(5)
映画一本無料券と暇があって、パート2を見てきました。なにかと文句いいつつも、ミーハーなので気になっていたこちら。赤壁の戦い本番です。前作で曹操軍を撃退した劉備・孫権連合軍は、ついに赤壁での決戦のときを迎える。劉備軍の孔明、孫権軍の都督・周瑜、この二人による頭脳プレイによって、曹操80万の兵をいかにして破っていくかが見所。酷評をした前作より良くなっていたか、正直よくわからない。(前作をけっこう忘れている)ただしょうもない小喬シーンは減っていたし、終わり方はスマートだった。144分、無駄はいっぱいあったけど。内容に切り込んでいく元気があまり湧きませんが・・少しくらい良いことを書きたいのに、浮かんでこないのです。金城武が甘いマスク(ダンディーではない)の孔明に馴染みきっている感じ、それと曹操はよかったな。前作では序章ということもあって、もう少し念入りに人物を描いていたけれど、説明は済んだのであとはいざ出陣!という風になっている。もはや好みの問題であろうウー監督お得意のスローモーション演出は苦手だなぁやはり。平和の白いハトを飛ばしながらわっさわっさ人が死んでいく、いつもどおりのアクション映画は、もうなかなか手放しでは楽しめなくなってきた。ハリウッド大作不感症病、進行中。● ● ● ●監督 ジョン・ウー 脚本 ジョン・ウー チャン・カン コー・ジェン シン・ハーユ 音楽 岩代太郎 出演 トニー・レオン 金城武 チャン・フォンイー チャン・チェン ヴィッキー・チャオ フー・ジュン 中村獅童 (カラー/144分/アメリカ=中国=日本=台湾=韓国合作)
2009.04.14
コメント(4)

よく耳にするタイトルで、ほのぼのとした古き良きハリウッド名画かと思っていた『サンセット大通り』が、、まさかサスペンス張りのドラマだったとは!このコミカルさとテンポの良さ、流石はビリー・ワイルダー監督です。 (あらすじ)ある日、脚本家のジョーは借金とりに追われ、サンセット大通りに建つ寂れた邸宅に逃げ込む。そこは、サイレント映画時代の伝説的女優ノーマ・デズモンドの住まいだった。かつての栄光を取り戻すべく復帰を目指す彼女は、ジョーに主演作品の脚本を住み込みで執筆することを依頼、彼は引き受けるのだが―――。ハリウッドの光と闇を描いた、本当に見事な作品でした。物語は、ある邸宅のプールに若い男の死体が浮かんでいるシーンから始まります。死んでいるのは、もちろん主人公のジョー。過去を遡って、事件の顛末を、彼の独白と共に描く。ジョーを愛し始めたノーマの、尋常でない嫉妬と束縛がデッドエンドの結末へと向ってひた走ります。その怖いこと!過去の栄光にすがるノーマは、鬼気迫る人物で、その惨めなこと甚だしい。けれど、悲劇の結末を導くのはジョーでもあるのです。狂気に怖れながらも、再び貧乏生活へ戻ることを嫌って、大富豪のノーマを利用していたのは彼。その狡さが、冒頭の死体と繋がっているからこそ面白い。 ハリウッドの夢と希望に輝いた一面を描いたり、撮影現場や、往年のスター・監督の名が登場したり、約2時間盛りだくさんです。なかでも、友人の婚約者である脚本家の卵ベティとジョーが、顔を会わせるうち次第に惹かれあっていく件は素晴らしい。しかし、彼女に対する恋心さえ、ジゴロでいられることの価値には負けてしまう・・・!そしてベティに対するノーマの嫉妬は、ますます狂気をエスカレートさせていく―――。終盤あたりでは、私にはもうノーマが、エド・ウッド作品のヴァンパイラにしか見えなくなっていたのですが、、皆様はいかがでしょうか。怖すぎますね~(笑) 邸宅には、無数の若かりし頃の女優の写真。広い邸だというのにものすごい閉塞感。なんとも言えない怖さ不気味さが続く。そんな中で、ジョーの仲間たちが集うパーティーや、ベティとのシーンは、まさにホッとするもので、下界へ降りてきた♪気分。いかに邸宅に異様な空気が充満していることか!ハリウッドという一大ビジネスを底辺に、絶妙なバランスを持った傑作でありました。● ● ● ●監督 ビリー・ワイルダー 製作 チャールズ・ブラケット 脚本 ビリー・ワイルダー チャールズ・ブラケット D・M・マーシュマン・Jr 音楽 フランツ・ワックスマン 出演 グロリア・スワンソン ウィリアム・ホールデン エリッヒ・フォン・シュトロハイム (モノクロ/110分)
2009.04.12
コメント(2)
もう、ずっと以前に『むかしのはなし』で初めて知ってから、気になり続けているしをんさん。エッセイはあまり食指が動かず、そうしてる間に次を読むまで間隔があき過ぎたけれど、それでも次があったのは、よほど気になる人だった証拠です。この本、図書館で借りたのだけど、ほんとにおもしろい!!手元に置いておきたくて、結局買ってしまいました。家に本が溢れることを怖れるなかれ。物語にのめり込む事も然り。これほどどっぷりいっちゃってる人がいるのだと、安心すらしてしまうのだ。三浦しをんの思考回路には、自分が子どものころから通ってきた回路も含まれていて、それが心底嬉しかったりした。だって、なかなか人は肯定してくれそうもない事柄だったりして、言えなかったことでもあって、、、。数年に渡って、雑誌などに連載していたコラムをまとめた必笑の一冊。本を食べて生きてるような三浦しをんおすすめの本は、盲目的に信頼できるなぁ。読みたい本がいっきに何十冊も増えちゃったけど、今年はほぼこのおすすめされた本だけ読むことになってもいいな~なんて思える。さっそく今は、お初の有栖川有栖を読んでいます。おすすめしていたのは『虹果て村の秘密』『46番目の密室』なのだけど、知人からお借りした『孤島パズル』から手始めに♪面白いです。なんか、読みたい本の世界が広がったなぁ、生活意識まで変わったなぁというくらい、感化されました。しかも紹介文が巧すぎる。とってもいい生き方をしてる人だからこそ書ける、エッセイではない物語も、ぜひとも近く読んでみたと思います。 ■紹介本をすこし紹介■ 『リアルワールド』桐野夏生、 『廃用身』久坂部羊、 『おぬしの体からワインが出て来るがよかろう』宮藤官九郎 『とんまつりJapan』みうらじゅん、 『深淵』大西巨人、 『ねこのばば』畠中恵 『綺譚集』津原泰水、 『戦中派動乱日記』山田風太郎、 『ジェローム神父』サド・・・ ・・・などなど、以上はほんの一例なり
2009.04.11
コメント(6)

イスラエルの辺境で迷子になった、エジプトの警察音楽隊の、ほのぼの緩~い一夜の物語。行き先を間違えて、とんでもない田舎町に辿り着いてしまった音楽隊一同は、女主人ディナの経営する食堂に行き着くのでした。店に集う常連の面々に、食事と一夜の宿を提供してもらい、不器用でユーモラスな夜が更けていくのです―――。 人間交差点では、みんながなにかを拾うでしょう。ギクシャクした家族も、恋も、老いも若きも。皆温かい。壮年の隊長トゥフィークが、プレイボーイの若き隊員に対する気持ちだって、嫉妬よりも、若かりし日の自分を重ねているだけ。いい雰囲気になったディナとの夜を、彼にバトンタッチしてしまうのも、優しさだったりする。過去の過ちをほんのちょっと引きずりながら、、、。 この映画にあるテーマは、ずっと以前から幾度も語られ続けてきた。その中には秀でた作品がたくさんあって、たとえば秀作『バグダッド・カフェ』に、似た匂いがあると思う。それでもこの映画でしか出会えない、製作国の毛色の珍しさは、一見の価値がある。昼と夜の気温差まで感じる、乾燥したイスラエルの魅力が収められた一本です。● ● ● ●監督・脚本 エラン・コリリン 音楽 ハビブ・シェハーデ・ハンナ 出演 サッソン・ガーベイ ロニ・エルカベッツ サーレフ・バクリ カリファ・ナトゥール (カラー/87分/イスラエル=フランス)
2009.04.10
コメント(2)

ハンガリーに生きる親子三世代にわたるドラマを、ブラックでアートに綴る。祖父、父、孫、それぞれが繰り広げる人間の欲望と命の極限を巡る数奇な物語。物語は、祖父モロジュゴバーニが生きた第二次大戦中に始まります。人里離れた寒村で、中尉にこき使われるモロジュゴバーニの唯一の愉しみは、倒錯した性の妄想に耽ること。その子どもである父カールマンは、共産主義政権の下でスポーツ大食いの選手となり、孫ラヨシュは、肥満で身動きさえできない父を世話しながら剥製師となるのでした―――。強烈な視覚的刺激をもって欲望を描くに留まり、あえてなにかに迫ったとはいえないけれど、おぞましくて、目を背けたくなるなるような三人の男たちが頭に焼きついてなかなか離れません。陰部やら吐瀉物やら臓物やら、、、嫌悪感でいっぱいになるけれど、良く言えばシュヴァンクマイエル作品のような雰囲気で、手作り感に溢れています。物語を作り出したというよりは、凝ったカメラや映像によるビジュアル映画。血の繋がった親子であっても、遺伝子的繋がりがあまり感じられなかったのは残念なところ。 祖父と父の欲望の種類を、性欲、食欲という言葉で表すなら、息子ラヨシュにはどんな欲があったのだろう。彼が求めていたのは永遠?それとも不変。せっかくインパクトのある人物だったのに、ラストで成し遂げる恐るべき顛末に、彼らしい哲学が感じられなかったのはもったいない気がしています。感情に届くのは視覚による作用ばかりで、内容的にはいまひとつ。グロイこと覚悟しつつ、世の中にはこんなに醜いこともあるのだ!と実感したいときにはおすすめです。(なかなかないと思うが、、)監督 パールフィ・ジョルジ 原作 パルティ・ナジ・ラヨシュ 脚本 ルットカイ・ジョーフィア パールフィ・ジョルジ 音楽 アモン・トビン 出演 ツェネ・チャバ トローチャーニ・ゲルゲイ マルク・ビシュショフ コッパーニ・ゾルターン (カラー/91分/ハンガリ=オーストリア=フランス合作)
2009.04.09
コメント(4)
ちいさい家人たちが暫く居なかった春休みの一週間、いつもより多く寄り道して、久しぶりに映画館へも行って、ひとりを満喫していました。とても貴重な6日間だったので、なるべく誰にも会わないように、お出掛けも必要最低限にして(ちょっと病的)独りの時間を愉しみました。趣味に関する寄り道以外はしなかったので、伸びすぎた前髪もそのまんま。やっと今日、美容室に行って前髪だけカット。スッキリです。映画の日に観にいったのは北欧発のこの映画。シアターキノにて。● ● ● ● 前向きさがステキな、おもしろい映画でした。小鳥と一緒に倹しく暮らす真面目なホルテンさんは、鉄道マンとして勤続40年、ついに定年を迎えることになりました。大切な勤務最後の朝、なんとひょんなことから寝坊をしてしまい、最後の運転に大遅刻するのです。スタコラサッサ!逃げ出したホルテンさんを待ち受けているのは、第二の人生と向き合うために必要な出会いの数々。可笑しくて、ちょっぴり悲しい、ユーモラスな人々が贈る心温まる物語。行きつけのバー、行きつけの宿、行きつけのタバコ屋、行きつけのプール―――。ずっと続いてきたらしい、ホルテンさんの生活スタイルは、終止符が不発でも、なんとなく元通り続いていきます。しかし、そう思えていたのに何処かが違ってる。ちょっとずついつも通りにいかなくなったホルテンさんの日常は、滑稽な非日常を引き寄せながら、各駅停車で進んでいくのでした。どんなに平凡に見えても、苦い過去があったり、密かに恋をしていたり、人は意外な一面も持っているもの。主人公を魅力的に描くことに成功していて、ホルテンさんから目が離せなくなります。認知症の母がいること、その母を失望させた過去があること、通いなれた宿の女主人に恋をしていること―――ホルテンさんが真面目であればあるほど、可笑しな出来事に巻き込まれていく様は、まるで銀河鉄道に乗ってしまったみたいに柔らかく不思議。客席にいる私まで、不思議な一夜を過ごした気分で、そしていくつになっても、人生が素晴らしい方に回りだすことがあるんだという希望を、胸いっぱい受け取って帰ってきました。映画の日とはいえ、まばらな客席では度々笑いがおこっていました。日本に関する小ネタも登場するので、お見逃しなく。ホルテンさんがキラキラした夜の静寂に飛び出したみたいに、なんだか動き出したくなってしまった。哀愁と幸福感。消えない余韻。● ● ● ●監督・脚本 ベント・ハーメル 音楽 コーダ 出演 ボード・オーヴェ ギタ・ナービュ ビョルン・フローバルグ (カラー/90分)
2009.04.06
コメント(4)
全10件 (10件中 1-10件目)
1

![]()
