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「編成局長がお呼びです」私にもついにきた、今までレーティングを取れる番組を作れとはいわれていたが、あくまで目標でそれほどキツイ命令はなかった。新しい経営陣は目標に達しない番組を打ち切り、スポット広告の売上を伸ばさない営業部員を片っ端から配置換えか首にしている。目つきの鋭い50代の男が私を睨む。「高山君、君はゴールデンを2つも担当しているね、よくて9パーひどいのは5パー、こんなんでエグゼプテブプロデュサーなんて肩書きが泣いているよ、1クール(3ヶ月)やるから13パー以上取るようにしてくれ、達成しない時は辞めてもらう、代わりはいくらでもいるよ」「あのう 予算の増額は」「こんなんでよくいうね、金のかからないスタジオもので勝負すればいいよ、話は終わりだ出て行ってくれ」現在の番組は顔ぶれが変わらない安いギャラのB級タレントを集め楽屋ネタやケナシ合い、○○自慢、出演者だけに受けるトーク番組、遣い回されたクイズものが中心となっている。安い製作費での新企画など無理な注文だ。行きつけのクラブで浴びるように飲みグテングテンに酔いつぶれる私。夢の中で知っているタレントと一緒に飲み口喧嘩から掴み合いとなり周りの客はゲラゲラ笑っていた。目がさめた私はすぐにキャスティングに入り企画書を作る。<芸能人 誰が一番の酒豪か? 決定戦>収録当日、18人(男13人女5人)のタレントを集める。バラエティーを中心に役者と歌手、アイドルタレントを入れたのはご愛敬で、酒が強く・・その上 酒癖が悪い連中ばかりだ。深夜クラブの雰囲気をセットして好みの酒をどんどん飲ませる。本物のホストとホステスを仕込み出演者の隣に座らせ、お酌やツマミを口に入れる。酒の量や会話なんてどうでもいいのだ、酔っぱらった芸能人が本音を出し、喧嘩になるように仕向けた。ぬかりはない、ホステスには前もってタレントを怒らせるように誘導する話題を仕組んでいる。1時間経ち役者の前田純一郎が大声で前にいるお笑いタレントを怒鳴りつけた。「なにーー俺が大根役者だとー テメーぬかしたなァ」ビール瓶を逆手に持ちタレントの頭に振り落とすと額から血がタラーり。やられた男も血だらけになり役者の顔にパンチを繰り出す。それがきっかけでテーブルを引っくり返し隣を張り倒す者、蹴りを入れる者、喚き散らし唾を飛ばす者、全員が目茶苦茶に暴れだした。女性も負けていない顔を引っ掻き、相手のカツラをむしり捕り、顔面パンチを繰り出す者、思う通りの展開になった。スタジオの隅に女を追い詰め抱きつく男、逆に男を押し倒す女もいる。いいぞ、服を剥がせろ、どうせオンエアはボカシで処理する。カメラはののしり合うタレントや笑いながらポコスカ殴る役者、男同士で抱きつきキスをしている姿を最後まで撮っていた。ようやく喧噪が静まり、8人が救急車で病院に運ばれた。2週間後、オンエアされた翌朝、視聴率表が届いた。21・3%、ついにやった、これで上層部も私の実力を認めざるを得まい。ざまーーみろ。それから1週間後 首になった。どうせ他局から誘いがくるのは間違いない、レーティングさえ取れば低俗といわれようが、視聴者をなめているのかと文句いわれても関係ない。下劣な番組を人々が求め、大笑いする間は私の番組はなくならないだろうよ。ついでにいうと、チャリティー番組で子供の貯金を吸い上げる局、しっかりとCM枠を増やし儲けているくせに、1日の売上を寄付しないのよ慈善に名前を借りて、偽善の匂いがすると感じるのは私だけかな。 おしまい かなり前に(2005年9月)書いたものなんで誰も読んで ないから掲載しました(?) テレビ局に勤める人が現在の番組づくりを批判していましたが たしかに年々つまらなく感じるのはどうしてでしょうかね。
2008/07/30
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サヨナラ京香ちゃんとママの家に居候して3ヶ月、ぼくは生まれて初めて幸せな時間を過ごさせてもらった。週1回のシャワータイム、飲み水以外の水恐怖症が気持ちよい匂いには勝てなかった。過度な贅沢は必要ないが毎日2回のキャットフード(ドライのみ、上等な缶詰は胃が受け付けない)うるさいくらい話し掛ける、親子の言葉(それが、悪くないのだ)猫だましの数多いおもちゃ(そんな歳でもないのに本気になりじゃれつくおのれが恥ずかしい)寒い明け方にそっと潜り込む、人肌の温かさ。(意味がチョット違うか)親子の膝の上でうたた寝する喜び。野良のぼくがありがたいのはゴミを漁る必要のない食事と、冬の寒い日に冷たい雨にあたらない暖かいネグラ。数えきれない穏やかで幸せな時間は、ぼくにとって至福のご馳走だった。(猫だって比喩を使うのだ)前の晩からの雪が薄っすらと積もり、汚いものを覆い隠すような寒い朝京香ちゃんは 長い眠りについた。病院から退院して、三日目の朝 ぼくがベッドに飛び乗り可愛い顔を軽くなめても瞳は閉じたまま、 でも美しい表情をしていたよ。ママがすぐに来て京ちゃんの頭を撫で それから 2時間抱いていた。京ちゃんがどうしても家に帰る、クロに会いたいとダダをこねたのを聞いたのは、お葬式から1週間経ってぼくを膝の上に乗せたママからだった。難しい病名は分からないが筋肉が成長するにつれ、萎縮し体をマヒさせる難病で免疫力が低下し急性肺炎をこじらせた らしい。それでも、がんばって がんばって12歳まで命の炎を灯し続けた。ベッドの上には大きな封筒から飛び出している、色鉛筆で描いた京ちゃんの顔、かお、カオ。明光院の子供たちの絵と、たどたどしい励ましの大きな字、自分たちの不幸な境遇より京ちゃんを思いやる心、たくさんある心の贈り物。スケッチブックから3枚のぼくの顔が見つかりママが丁寧に切り離し見せてくれた。獲物を狙う精悍な顔、無邪気に喜んでいる顔、そして最後の一枚は、 京香ちゃんと一緒に寝ている顔。今のママは多少やつれているが、表面は元気して仕事をしている。なんかインテリアデザイナーといって、有名、らしいよ。ぼくは週に2回は川向うに出張しテントのジイさんとこでいろいろと話しをして、仲間と遊び、残りの日はこっち側で優雅な生活というわけ。だからこっちに居る時はぼく、向こうでは俺と使い分けるのさ人と同じで猫も品格ってものを大事にしないとね。これからも、わがままして 甘えながら ママの膝を借りるよ。 京香ちゃん・・・・・・・ゴメンね。 猫の考え(クロの小さな冒険) おしまい。 この作品は2005年の9月、ブログ開設時に書いた野良猫の 正しい生き方シリーズを大幅修正したものです。 初心に帰り、稚拙ながらなにかを訴えるようなものが 書けるようこれからも隅から隅まで、よろしくで~す。
2008/07/26
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手をたたくクロ(後編)今日だけという約束で赤い首輪と赤い紐。別にいいけどさ、なんか犬と勘違いしていないかい。おそるおそる近づいた、おかっぱの子がぼくの頭を撫でた。怖がっていたのでただひとつの芸、床に横なって腹を見せる。これは大失敗、次々と小さな手が触り、撫でられ、叩かれ、最後には抱えられ、両足、ブーラ ブラ。笑い声、泣き声、叫び声、ゆったりと騒々しい時は流れる。疲れ果てウトウトしている時には、ママの手で車に運ばれていた。家に着くと親子が静かに話しをする。「よかった、あんなに喜んでもらって、マミちゃんなんか私から離れないのよ、今度いつ会えるかな」「春にしようよ 次は でも疲れたでしょう、あんたも 子供ってじっとしていないからね」「うん ちょっと 今日は寝るね」ママが京ちゃんを部屋に連れていき30分後には戻ってきた。ぼくの体を持ち上げ膝の上に乗せてくれる。チラッと見たママの顔には大粒の涙がこぼれていた。どうしてなんだろう、こんなに楽しい一日を過ごしたのに。頭をやさしく撫でられ、不思議に思いながら浅い眠りにつく。断片的な夢の中、ぼくは明光院の広間で子供たちの輪の中にいた。あろうことか立ち上がり、手をたたいている。京ちゃんとママが手を取り合って踊っていた。みんなの顔が輝き放歌高吟だ。(猫でも四字熟語を知っているのを自慢したいのだ、意味はあたりかまわず大声で歌うこと)♪♪♪ 猫ちゃん 尻尾をピンと立て 腰をふりふり 踊りだす 周りの子供も手をたたき みんな一緒に 踊りだす 猫ちゃん 笑顔に誘われて 今夜は楽しい パーティーだ 今夜のパーティー うれしいな ♪♪♪猫にも思い出は必要だと 思う。できれば、今日のように楽しく、そして食べ物や見栄や遊びなんかどうでもいい、もっと大事なものがあるということを 思い出すためにも。ぼくの数少ない楽しい日を忘れないようにしようと、考えていたら いつの間にか 深い眠りに包まれていた。 つづく 次回は最終回です。
2008/07/25
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手をたたくクロ(前編)親子の愛に包まれ、ぼくは(俺は下品だからぼくにする、猫も環境に左右されるのだ)過去に考えられない幸せの時を甘受している。家の中にはいつも気分がよくなる雰囲気が満ち溢れ京ちゃん(京香ちゃん)が絵を描いている時にはママ(おばさんはやめた)のそばでゴロゴロして声を掛けられるのを待っていた。そんなある日、ママが京ちゃんに珍しくキツイ声で話しをしている。「今年はやめて家で過ごそうよ、お前も辛いだろうから」「だめよ 8月に約束したんだもの、あの子たちに必ず行くって」「こうしよう、ママが京香の書いた手紙とプレゼントを持っていくから約束を守ったことになるでしょう」「いや 絶対に行く、私なら大丈夫よ」「お願い ママに任せてくれない」「いやよ 行くの わたし あの子たちに会いたいの」ぼくにはなんのことやら、さっぱり分からずふたりの顔をオロオロしながら見上げていた。それから2日後の12月23日にその答えがでる。ママの運転するバンで約40分走った先は丘の中腹にある洒落た平屋の白い木造建築、洋館(古い)だった。細い道路の周りは生い茂った針葉樹の樹木が日光を遮り、陰気なムードが漂い、今にも・・なにも出ない。正面の観音開きになっている玄関に到着すると、急に冬の陽光が土の庭と建物に降り注ぎスポットライトのように光り輝いた。玄関口に18人のおちびちゃんが親子とぼくを迎えてくれる。みんな4歳から5歳くらいに見えて男女の比率は半々だ。京ちゃんに抱きつく子ママの足にすがりつき手を離さない子、ぴょんぴょん飛び跳ねる子、そして、ぼくには 誰も来ない。帰りの車内で親子が話したことを要約すると、施設(ひびきが悪いから家にする)にいる子供たちは親に捨てられた子、両親が亡くなり引き取り手がない子、親が子供を虐待し行政の指導で短期間預かっている子とみんな境遇に恵まれない子供ばかりの仮の家、だそうだ。心のどこかに大きな傷を持つ、子供たち。孤児院とはいわず明光院という建物のイメージとは、かけ離れたお寺のような名前。京ちゃんは偶然にこの家を知り、年に2回訪れるらしい。クリスマスには子供たちが欲しがっているオモチャや文房具、絵本をママからのおこずかいを貯めて買っていく(ママもかなり負担している)もちろんそんなに高いものは買えないからひとつひとつ丁寧に包装しリボンをつけ大きな字で名前を書く。今年も小さなクリスマスツリーの下にプレゼントを置いた。子供たちの目が一斉に自分の名を探す。小柄ながらその分、横幅の厚みでカバーしている温和で微笑みを浮かべる園長のフサエ先生は楽しそうに親子と談笑していた。子供たちはいっときもじっとしていない、はしゃぎ、走り、5人の若い先生たちと童謡を歌っている。ツリーには金銀のリボン、赤、青、黄色の豆電球、手作りの飾りがぶら下がっていた。室内が暗くなり 豆電球がキラキラと輝く。チカ チカ チカと電飾が子供の顔に反射して輝いている。ツリーのそばに集まり床に座り早く包みの中を見たくてうずうずしている かわいい表情。園長と京ちゃんが、各自へのプレゼントを手渡し始めた。プレゼントは先生たちや園長からのもたくさん含まれている。部屋中が笑顔と歓声に包まれ手をたたく子、小さなぬいぐるみに頬ずりする子、12本の色鉛筆と画用紙を取り出し、しゃがみ込み絵を描きだす子。マミちゃんという子だけは京ちゃんから離れずに、ずうっと手を握っていた。その間 ぼくは部屋の隅からその様子を見つめている。 つづく 次は{手をたたくクロ}の後編をお送りします。
2008/07/24
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見つめる鳩「なによ、わたしは飼いたいなんて言っていないのにママは先走りしておかしいよ」「娘の考えは、ピーーと来るのよ、今、絶対、思ったね、このままこれをって、当たり~ 本気で思った」「まったく この子は野良で家にじっとしているタイプではないわ、見てよこの顔、人にゴマをすって生きていくなんて許さないのよ気品があるし例え喧嘩や病気でふせても後悔しない猫なの、それで命を落としても」俺の猫生でこれほど誉められたのは初めてで、なんか照れくさいようなコソバユイ妙な気持ち、それを感情で表現できないまま懸命に洗顔し続けた。「そこまでいうか、今、会ったはかりの猫を 確かに認めるよキリッとした顔、食べる前の態度、でもね家に入れば普通の飼い猫と変わらないと思うよ、京香は買いかぶり過ぎるの」「ママ、なにをむきになっているの、ここでサヨナラする猫なのに」「大昔あんたの年頃に実は飼っていたの、それとこいつが、どことなく似ているのよ、ある日家出して、それっきり、急に思い出してさだから・・・」「だから、なに」「京香、持って帰ろうか この猫」このまま走り出せば、この親子とも オサラバになる。なにか見えない力がこの状況を楽しみ、どうなるか見極めろといっていた。「ダメよ犬のケンタで動物を飼うのはおしまいって、ママが宣言したのよわたしも賛成したのに、今はいいけど今度入院したら・・だから、ダメ家に誰も居ない時どうするの、この子のためにも、ダメよ」「そう 無理だよね お前の言うとおりだ、それじゃあ、こうしようよもう帰る時間だから、私があそこの階段であんたを上に運ぶ それで」「それで」「この子がついて来て車に乗ったら、飼う、どう このプランは」「冗談でしょう 犬と違うのよ 猫はそんなの有り得ない」「だから確率はほとんどないから、それならいいでしょう」おばさんは大きなビニール袋に空の弁当箱を入れ、周りに落ちているゴミまでも拾いきれいにすると車椅子の後ろに括りつけ京香ちゃんを運び上げて行く。一段一段ストッパーを押し急勾配を苦労しながら持ち上げる。ようやく土手の上に着いたらしくドアを開ける音、車椅子を中に入れる機械音。 そして静寂。ふと見上げると高い木の上から白い鳩が一羽、俺を睨んでいた。なんだよ、こんなちっぽけな脳みその生物に、大事な猫生を賭けろってか、ズルイよ、キタナイよ、犬と違うから人にはなつかないって、犬ほど頭がよくないから餌を貰っても気にせず、去って行くのよ、そんなこと、わざわざ口に出すなよな。 いいよどうせ猫は薄情な生き物さ、誰が行くか、 早く車を動かせ。まだ、静かだ。 車の中での親子の会話<予想>「もういいよ、ママ、行こう」「もう少しだけ 来ないのは分かっているけど、もうちょっとだけ」「なによ、ただの野良猫よ もう他に行ってメスでも追い掛けているよしょせん野良なの」こういうのを、妄想、空想、精神錯乱、なんでもいい どうせ小さな頭なんだから。 まだ白鳩が俺を見つめている。なんだよ、その目はなにを訴えているの。はっきりいってその後は、よく覚えていない。足が勝手に動き、階段を昇りわずかに開いていたドアから中に入り込み京香ちゃんの足もとに座り込む。おばさんが横目でウインクをした。少女がひとこと「なに この猫は」 右手が伸びて首をやさしく撫でた。俺の旅はひとまず終わった。それにしても短い旅だ。川をはさんであっちとこっち。弁解だけはしておく、人生も猫生も旅の長さは時間の長短ではない。生きがいや行動は 充実している時が 大切 だと思う。猫なんかがいうと生意気だが、つくづく そう 思う。 つづく 次回は{手をたたくクロ}をお送りします。
2008/07/23
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出逢い10代前半に見える少女が優しい声を掛けてくれた。小さな顔に知的で大きな眼、細く長い手足、歩いたら素敵なプロポーションで仲間と笑い遊び歩く年頃だろう。引き込まれるような目を見つめ小さく「ミャア」(居てもいい?)返事の前に車椅子の横に行って座り込む。そおっと少女の右手が伸び俺の頭に触れる。「初めて、猫に触るのは 飼っていた犬のケンタが2年前に死んでから飼えないの どこから来たの 私は車で10分のところよ、今ねママがお弁当を持って来るわよ」ほんわかした空気が漂い思わずアクビをしてウトウトとなり目をつぶった。「わたしね京香っていうの ずうっと車椅子の生活なの でもそれほど辛くはないのよ、行きたいところに車で運んでもらえるしなにかあれば携帯もあるから心配ないの スケッチしたら家で大きなキャンパスに移し色をつけるんだ、でもね、本当に描きたいのは人の顔、それも歳をとりその人の人生が刻まれている顔、 ゴメンね うるさくして寝ているのにいつもひとりだから・・迷惑だね」「ニャアアァ ミャアー」(構わないよ、寝ていないから)久しぶりに聞く 若い声。心地よい気持ちになるのはなぜだろう。身体をなでる爽やかな風。「猫らしい いい顔しているね、なついてもウチでは飼えないから、だってわたしの世話だけでいっぱいだもの、このまま一緒に帰りお風呂に入れ、いいなあ、でも、ゴメンね」これで2回目、ゴメンを言い過ぎるよ、猫なんかにいちいち謝るなよな猫生では謝った経験はない、なぜなら頭を下げて卑屈になれば一生他の猫に苛められるからさ。大丈夫、家まではついて行かないからね。土手の上で車が止まる音がして中年の女性が降りてくる。少女の母親に違いない。40代で品がありフアッションにも気を遣っているスラリとした人だ。「ゴメンたまには揚げ物ではなく幕の内にしようと思ったら、この辺にはないのよ、あれ 」ようやく俺に気がついた。この親子はゴメンが口癖なんだと、納得。「なに その猫 汚いよ触るのは」「いいの 手を拭けば おとなしいのよ、さっきからわたしの独り言を聞いてもらってるの」「どうせママの悪口でしょう、汚い猫だけど割とハンサムは顔をしているのね あんたオスなの」「ミャアァ アァ~」(メスに見えるかよ)「鳴いたよヤダア 分かるの さあお弁当食べるよ 魔法瓶にコーヒーがあるからね」気さくな雰囲気が俺は好きだ。ふたりは消毒紙で手を拭くと弁当を静かに食べ始める。並みの野良はここで食い物を寄こせと鳴くか恨めしそうに睨むが俺は違う。くれれば食べるがわざとそっぽを向く。 俺のプライド。 少女が弁当のふたにご飯と昆布巻きの一部、卵焼きのかけら、数種類のオカズを混ぜて下に置いた。犬とは違う、猫の仁義 黙ってそれを見ている 腹は減っていた。「いいのよ、食べて」その声でゆっくりと起き上がり口をつける。うまい・・・・幸せ。「へエー 行儀がいい猫だ 野良にしては育ちがいいのね」おばさん、野良に育ちはないだろう、それをいうなら生まれの良さだよでも うまいな、残さず平らげた。すぐに食べた後の儀式、顔洗い、唾液を手につけ顔に塗り、舐める、なめる。「なんか いいね猫も ほっとする」「ダメ ダメよ京香、変なこと考えていないよね、ママは反対よ」少女が大声で笑った。動物に元気をくれる透き通った笑い声。ママもつられて笑い出す。俺まで一緒に笑いだす(それは、ない)煙の嫌な臭いも新しい生活の不安感なんて、どこかに飛んでいた。 つづく 次回は{見つめる鳩}をお送りします。
2008/07/22
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旅に出る猫俺は旅に出る。 ふと感じることがあり旅に出る。土手の上から川を眺めていたら小さな流木が右から左にゆっくりと漂っていた。流れにそって動いているが俺には生きているように見えたのだ。上流の激しい流れから今の穏やかな場所に来るまで大きな石や浮遊物と何回もぶつかり、格闘し長い時間を経てたどり着き新たな出発に備えているのだろう。行く着く先は薄汚れた港を抜け水平線しか見えない大海原そこが流木の終着駅、 いや、始発駅かも知れない。なんてね、猫だってこの程度の感傷に浸れるのよ。特に理由はないが取りあえず旅に出る。仲間連中との毛づくろいで簡単な別れの儀式を済ませ、まだ寝ていたおっさんの顔を3度舐めてテントから出ようとした。後ろからボソボソと声がする。「・・・・また・・ 会おうな」全部の言葉は聞こえないが人間にしとくのは、もったいない。俺は振り返らずに外に出る。車と自転車、歩行者がひっきりなしに通行している大きな橋。そこへ猫が歩けば飛んで火にいる夏の猫、違うな、とりあえず様子を見よう。8時過ぎに交通量が急に落ちたので歩行者専用道路をまっしぐらに走って対岸の土手に着き下に降りた。川向うに見える今までの居場所が遠くに見えた。大げさに表現するとあちらの岸が過去の時間、こちら側が予測できない未来の生活。ゴミが散乱している川辺には猫や犬の気配は感じない、今のところ安心だ。遠くに見える工場の煙が風下のこの辺まで漂い鼻孔を刺激する。犬や猫が人より数十倍も嗅覚が優れているというが、3割は外れている。動物も個人差があり敏感なものから俺のように鈍感なのもいるよ。その俺が匂いを嗅ぎ取るほどだから人間にも不快感を与えているのは間違いない。常日頃感じるのは人が霊長類の王として地球を支配しているのにその地球を汚し他の生き物を絶滅に追い込み自然界のバランスを崩し続け自分たちだけが生き延びると本気で思っているのかしら。猫族が毛嫌いする音や匂いも人間は無頓着過ぎる。街に溢れる耳を塞ぎたくなる騒音、誰もが聞きたくない宣伝車の音、興味のない者には騒音としか聞こえない、はた迷惑に音楽をたれ流す奴、自然界では考えられないゴミの山、自分たちさえよければ他はどうでもいいという思い上がった考え方。これが生物界でトップだと自惚れている人間の正体さ。 なんか最近歳のせいかボヤキが多い。(まだ6歳だけどね)ん? 人の匂いがほのかにする。 それも嫌な匂いではない。周辺は背の高い雑草でよく見えないから、ゆっくりと近づいた。髪を肩までたらした女の子が車椅子に座りスケッチブックを広げ色鉛筆を動かしている。薄いピンク色のカーディガンが風に揺れ髪の毛がサラサラとそよいでいた。いくら水かさが少なくても数メートル先には川が流れている。誰か他の人に運んでもらわないとここに降りるのは不可能だ。3メートルの距離まで近寄ると女の子が俺に気がついた。「あら こんにちは 食べ物は持っていないの ゴメンね」 つづく 次回は{出逢い}編です。 クロの小さな冒険はまだまだ続きますが、水分はこまめに摂る ようにしましょうね。
2008/07/21
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鬱(うつ)になった猫ここにきて鬱状態で参っている。夏の暑さがようやく遠のいた10月になってなにをやっても面白くないのはなぜだろう。メスを追いかけるのも飽きたし小さな生き物をオモチャ替わりにじゃれつくのもバカらしくなりゴミを漁る食い物も必要最低限になってこれはいけないなと、思っていても今更胸の奥から湧き出る生への探究心、違うな、生をエンジョイする気迫が日毎なくなっていくのは、いったいどういう訳だろう。ぼんやりと空に漂う雲を見たり樹木の葉が風にそよぐのを無心になり長い間見続けるのは、やはり可笑しいだろう。猫にも躁鬱(そううつ)なんてあるのかな、結局自分で解決するしかないよね。 70過ぎのお婆さんがゆっくりとやって来た。毎日ほぼ同じ時間に来て猫缶を3つ開けプラスチックの容器に移し奥まった垣根の下に置いてくれるのさ。3日前には通りかかった40代の男に「ダメだよ婆ちゃん 餌をやったら野良が増え町が汚れて近所迷惑になるからね 明日からはやってはダメだよ」と、大声で注意されていた。けれど次の日も餌を持って来てくれたのは、偉い。足がやや不自由なのか左足を引きずっていつもの場所に容器を置いて下がりながら見つめていると4匹の野良がすぐに出て来て食べ始める。「だめよミーちゃんは意地悪しないで ブチはちゃんと食べているの、もっと大きくなるのよ、あらクロは食べないのかい」食べたいけど、お婆ちゃんその4匹は俺の舎弟分でそいつらに食わせるのが先なのよ、それより文句を言ったらバチが当たるが量が少ないのね、まあ、しょうがないけれど。スーパーの袋に空き缶と容器を入れトコトコ去っていく婆ちゃんの後ろ姿はなぜか、俺たちよりも寂しそうだった。仲間がそばに来て軽い毛づくろいをして挨拶を済ませるとめいめい散って行く。陽が陰り各家の明りが灯り家族の団らんが始まる頃、土手下にある俺の仮住まいに向かう。小柄で長い髪を後ろで束ねどこからが髭なのか伸ばし放題、薄汚れた肌を持っているおっさんがそこの主。奇妙なのはその細い眼で優しい光を放出しているのだ。もともと野良は通常、人が近寄ると逃げる、遺伝子にそう組み込まれているから理屈ではない。だがこのおっさん(爺さんか?)がそばに来て「よお どうだ調子は」なんて声を掛けられると俺はすり寄り「まあ まあ だなあ」と応えてしまうから恐ろしい。人にはただニャアアアァーーアア~とだけしか聞こえないがね。人は人を見るし猫は猫を観察するのが当然だが、この人を見ても警戒心や緊張感は湧いてこない。自然体で付き合えるから一緒に居てもとても楽なんだ(異性との関係もこうなるとベストだと思う、男と女が歳を取り私たちは空気みたいねと、言うけど、言わないか)汚れたテントに入り欠けた九谷焼の皿に入っている水を飲んでいると文庫本を読んでいるおっさんはちらっと見ただけで知らんぷり。明かりは外にある小さな発電機からの電気で十分な明るさで冷蔵庫まであるから吃驚仰天(びっくりぎょうてんは現在あまり使わないニャ)せんべい布団(これも死語ニャン)の上に横になると声を掛けられた。「どうした 元気ないな、猫オーラが薄くなっているぞ、あまり考えるな人間も考え過ぎるといい結果にはならないよ」あんたは占い師かいんちきオーラの泉か、なんで猫の心が読めるのだ、最近の様子を見て心理状態をぴったし当てられた。「グルル ニャアーーミャアァーーー」翻訳:「脱力感とも違うこの喪失感はなんだろう」「お前が言っているのは分からない、無責任な言い方で悪いが気楽に生きろ、好みのメスがいたら仲良くなれ、気に入らない奴と遭遇したら引っ掻いて噛みつけ、考えるな本能で行動しろ、人には許されないが猫は関係ない、 本能だ」そう言って俺の頭を軽く撫で本を読みだすおっさんの身体から温かいオーラが出ていた。久しぶりにその夜は熟睡でき、次の朝、さわやかな空気を腹いっぱい詰め込んだ。人間の間違った認識をひとつ教える、猫がすべて夜行性だと思うなよ、例外的に俺のような昼型もいるんだニャン。 つづく 俺は 旅にでる、ふと感じることがあり自分探しの旅にでる 次回は{旅にでる猫}をお送りします。
2008/07/20
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注意:猫や犬、動物たちが嫌いな人、地球や人間を大切にしない人はこの先に進まないでください。(即刻 退場)この連載を最後まで読んだ方には、小さな感動を差し上げる(かな?) (野良猫クロ)猫の考え(1)半径500m程度が野良猫の行動範囲だと人は言う。他にも3~4年が平均寿命で飼い猫に比べ短命で、餌はやらない方が本人たちのためになるなんて・・・かってなことをほざくな。俺たちが野良になった原因を忘れるなよ 全て人間たちのせいだろうが。小さいころは可愛いからミーちゃん、なんて猫撫で声で飼って大きくなると家や子供の都合で棄てるのは誰なんだ。花壇にフンでもすれば石を投げられ、サカリで甲高い声を上げればうるさいって水をぶっかけられ、ガキどもには追っかけられるし俺たちよりも飼い猫を棄てたりペットショップの売れ残りやブリーダーと称する一部の奴、生き物を金儲けにしている悪質な業者や無責任にペットを飼うバカ者を取り締まるのが先だろうが。(俺たちが殺されると器物破壊って、あれはなんだ?生ものだぞ)ある時期には観光客誘致の目的で餌付けし増え過ぎると殺される猿や鹿、結局は口の聞けない弱い生き物がいつの世でも犠牲になるのさ。人間は自分たちだけの幸せを追求する愚かな動物で、地球を汚し温暖化にして首を絞めているし、宗教や民族、国の名のもと殺し合いを絶対にやめない一番下等な動物だね。なにが人類の平和と繁栄のためにだ、オマエラだけの地球と思いあがっているんじゃネエ、他の動物や植物を忘れるな、ありえないけど人類がいなくなるとこの星は公害もなく静かになって素晴らしいと、思う。こんなことを言うと猫の分際で生意気いうなって声が聞こえて来るね。そこのあんた、人として恥ずかしくない生活を送っていると断言できる?まあ俺も大きいことは言えないがね、野良猫として正しい生き方はしていないだろからな。今日も小さな縄張りを探索していたら近頃顔を見る権助と遭遇した。猫悶着あってね、相手が逃げたから良かったがそうでない時はどちらかが傷を負ったかもしれない。言っとくが名前なんか俺たちにはあまり関係ないよ、俺はここでは晴彦、拓哉、いやかっこ良すぎるからクロでいいや。全身黒いけど一部がグレーになって単純明快でいいよ。権助は5歳ぐらいだろうな、眉間に傷をつくり貫禄はあるしあまり相手にするタイプではない。誤解するな、俺は無用のトラブルを避けただけさ。そいつが俺の縄張りに頻繁に出入りしているのは喧嘩を売っているのと同じだ。だから、すいません、ここは黙って去ってくれませんかと・・・言うか、こっちにもプライドがあらあな、先住権は猫の世界にもあって尊重されるべきだな。今日はダラダラと書いたが次からは面白い話しでスピードアップするよ。 つづく 夏休みだね~ 子供は外で元気で遊べよ、なんて今は言わないな 紫外線も怖いしね、暑さで脳がふやけたので子供向けのクロの 小さな冒険をお届します。 大きくなった(成り過ぎた?)みんなは子供の気持ちになって 読みましょうね。 暑さなんかに負けないで元気で暮らしましょう。 (お前もな・・ハーーーーーーイ)
2008/07/19
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