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母は自宅で3泊し、病院に戻った。2週間に1度の「強制退院」は、移動が負担であることを除けば、気分転換にはなったかもしれない。当初は2泊の予定だったが、新しいベッドで熟睡できたのがよほど嬉しかったとみえ1泊「延長」した。一日目は2週間ぶりの自宅に感情が高ぶったのか、一昨年他界した父への恨みつらみを聞かされることになった。弟を出産するとき、父は病院まかせで不在だったらしい。そのときの心細さは、半世紀近くたちその本人がいなくなっても許せないということのようだ。そんなトラウマがあったとは知らなかった。初めての一時帰宅に備えて、車椅子やベッドを買ったり、段差をなくすちょっとした工作をした。家を作るときは、玄関にせよ室内にせよ、フラットにするかスロープにしてできるだけ段差がないようにすべきということが痛いほどわかった。痛む股関節をかばいながら歯を磨いたりうがいをしたりしている母を姿を見ると、まるで生後まもなくの子猫の邪心のない仕草のように、かわいいなあと感じることがある。母を背負って3歩歩けなかった石川啄木の気持ちがよくわかる。3泊というのは、ちょうどいい期間だと思う。旅行のときも、3泊すると、中二日あるせいか、その街の記憶が自分の体にしみこむように定着することが多い。2泊しかしなかった街の記憶はぼんやりと薄い。わずか30分しかいなかった山の頂上の記憶よりはるかに薄いのだから人間の記憶というのは不思議だ。
March 25, 2006
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母は一日だけ家に戻り、翌日には別の病院に移った。いままでの病院ではもう見きれないということか、ベッドが満床なのを理由に別の病院を紹介された。ターミナルケアでは日本でも草分けの病院。しかし、長期入院はできない。2週間に一度、3日間退院してくれと言われた。厚生労働省の長期入院=社会的入院を根絶させる意志はかなり強固のようだ。制度が大きく変わるときは、日本人の悪い面が強く出る。官僚制のいい面が悪く作用する。つまり、杓子定規な法律の適用が行われる。そして問題が起きてやっと少しずつ改善されるという道筋をたどる。バブル崩壊後の間違った金融・財政政策で失われたおカネをあらためて思う。ムダな公共事業につぎ込むくらいなら、病院に補助金をばらまき、最新鋭の設備を投入した、高級ホテルより立派な病院を作りまくるべきだった。世界一高度な社会福祉国家を作り、そのせいで財政破たんするのなら、世界の尊敬を集めることもできたにちがいない。ターミナルケアでは先駆者であるこの病院も、古くて狭い。6人部屋の天井の一部ははげ落ちているし、看護師の数も少ない。こんな病院で死なせるわけにはいかない。これなら、築38年の我が家の方がましだ。
March 7, 2006
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吝嗇(りんしょく)=ひどく物惜しみする・こと(さま)。けち。(大辞林)8年前、山口組系暴力団準構成員に700万詐取されたナースと久しぶりに会った。結局、回収できた金額は約2割。債務者には逃げられてしまった。この間、彼女は勤務医ながら歯科医師と知り合い結婚。家も買った。仕事や副業も順調で慶賀の至り。25歳で500万貯めていた貯蓄家ぶりもすごいと思うが、この人、ただの倹約家というより吝嗇家なのを今回知った。自宅から勤務先まで、だいたい4~5キロはある。交通費をケチって厳冬期の吹雪の日でも歩いて通勤しているのだそうだ。帰りには待ち合わせて帰宅することもあるらしい。そのときは1時間無料のヤフーカフェで落ち合う。帰り道は札幌の都心を通る。デパ地下の試食をつまみ、ほぼ満腹になって家に帰る。夕食はほとんど作る必要がない。夫婦揃って吝嗇家なのだが、似たもの夫婦とはよく言った。想像してみよう。40代歯科医師と30代ナースが試食コーナーのはしごを連日のように行っている図を。心の中にさむーい風が吹く。子どももいず、家はほぼキャッシュで買ったこの夫婦のキャッシュフローは年1000万のプラスだろう。あと5年もすれば億に達するにちがいない。しかし吝嗇家は絶対に金持ちにはなれない。高金利の金融商品に手を出したり、前回騙されたようにうまい儲け話に騙されて資産を失うかのどちらかだ。あるいは、残高の数字が増えることが自己目的化してしまい、長い年月のうちには「おカネをつかう」こと自体を忌避するようになってしまう。浪費家と吝嗇家。どちらも末路は哀れだ。
March 6, 2006
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確定申告を出してきた。今年はちょっと苦労した。去年、うかつなことにまとめて年金保険を解約してしまったので、思わぬ一時所得が発生。為替の利益も雑所得として申告しなければならず往生した。いろいろ苦心してやってみてわかったのは、500万までの収入なら所得をゼロにするのは比較的容易。一方、1000万を超えるとゼロにするのはかなりきつくなるような気がする。バイオリンを教えている大学時代の後輩は1000万弱の収入があるのに所得税は1円も払ったことがない。何だかんだと経費を計上していつもゼロかマイナスにしているらしい。手口を教えてもらいたいくらいだ。個人事業主で「粉飾申告」していない人など数%にも満たないと思う。ほとんどの人は売上を過少申告し経費を水増しして利益を隠している(はずだ)。ライブドアよりはるかに「悪質」な粉飾といえる。いつも不思議に思うのは、勤め人はなぜ税金を取り戻そうとしないのかということだ。何か事業を興してそれが赤字だということにすれば、損益通算して所得を減らし、税金の還付が受けられる。ゼロにしてもよかったのだが、仏心が出て、60万円ほど所得があるという申告にした。タイ旅行一回分くらいの税金を払うことになる。株式の申告は計算が面倒なのでやめた。あんなものきちんと調べないに決まっているので、大損したことにして今後の儲けに備えた(笑)そのかわり、配当の源泉の還付分だけはしっかり計上した。「暮らし」という言葉の語源は「灯台下暗し」の「くらし」である。つまり権力や国家から見えないようにくらくするのが生活だ。古代ギリシャの哲学者エピクロスは「隠れて生きよ」と言った。何億も儲けたと言ってテレビに出たり有名になったりすると、ある日突然、税務調査が入る。ホリエモンのように<無実の罪>で逮捕されることさえある。そういう災いを避けるには、なるべく目立たず生きることだ
March 1, 2006
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