2017年6月1日21:15に米国雇用指標「ADP民間雇用者数」が発表されます。今回発表は2017年5月分の集計結果です。
本指標の要点は下表に整理しておきました。
次に、本指標発表前後にポジションを持つときのポイントを整理しておきます。
本指標で取引する上での注意点です。
- 本指標は翌6月2日雇用統計のNFPの先行指標です。
- 直後1分足と直後11分足の方向一致率が78%です。そして方向一致時に、跳値同士で反応が伸びた事例は76%、終値同士で反応が伸びた事例は71%となっています。
本指標は追撃に適した指標だと言えます。
指標については次の通りです。
- 直前1分足は事後差異との方向一致率が26%(不一致率74%)です。発表結果が市場予想を上回るなら直前1分足は陰線、下回るなら陽線となりがちです。直前1分足の方向は、発表結果と市場予想の大小関係を示唆していることになります。
- また事後差異は、直後1分足・直後11分足との方向一致率が各85%・93%です。発表後の反応方向は素直になりがちです。
- 実態差異は、直後11分足との方向一致率が70%となっています。
シナリオは次の通りです。
- 直前1分足は陰線率が89%です。
- 直後1分足は陽線率が74%です。そして直前1分足との方向一致率が30%(不一致率70%)です。また、直前1分足が事後差異との方向一致率26%(不一致率74%)となっています。
つまり、直前1分足が陰線になりそうなとき直後1分足が陽線となる可能性が高い一方、直前1分足が陽線となりそうなとき直後1分足が陰線となる可能性はそれほど高くありません。
直前1分足が陰線のとき、指標発表直前に買ポジションとします。 - 本指標は過去実績に依れば追撃に適しています。反応方向確認次第、追撃をできれば複数回行いたいと思っています。
?T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。
【1. 指標概要】
本指標は、米国「雇用統計」を二日後に控え、NFP(非農業部門雇用者数)の直前先行指標としての重要度・注目度が高いものです。
本指標についてはおもしろい話があります。
確か「前月結果に対する増減を無視し、市場予想に対する増減だけに着目します。このとき、ADP発表結果に沿ってポジションを持つと、ほぼ3勝2敗で2日後のNFPの増減方向と一致する」と言われています。そして、「本指標発表後にポジションを取得し、雇用統計直前に解消するポジションの持ち方をADP手法という」のだそうです。ADP手法の勝率は60%付近だそうです。
これらについては、まことしやかに語られていたものの、調査期間や実際にポジションを持って継続的に取引を行ったという記録が見当たりませんでした。当会では真偽を調べたことがないので、責任を負いかねます。が、もし成立するのなら何となく納得できそうな話ですね。
但し、2日に亘ってポジションを持ち続けることになるため、このブログでは扱いません。ポジション保有時間が長くなるリスクの割に期待的中率が低すぎます。
また、本指標は雇用統計のNFPの先行指標としてアテになります。
ADPの発表結果と雇用統計のNFPとの関係を下表に示します。下表は前回まで28回分の両指標発表を遡って調べた結果です。
直前1分足の方向は、両指標発表時の一致率が高いことがわかります。
そして、事後差異の方向が、両指標発表結果の一致率が高いことがわかります。
なお、本指標は「ADP雇用統計」「ADP雇用者数」とも言われ、大手給与計算アウトソーシング会社であるADP(Automatic Data Processing)社が公表しています。対象は全米約50万社と言われ、2006年5月から雇用動向を発表しています。
以下の調査分析範囲は、2015年1月分以降前回までの28回分のデータに基づいています。
(2-1. 過去情報)
下図に過去の市場予想と発表結果を示します。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しておきます。
【3. 定型分析】
(3-1. 反応性分析)
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
直後11分足は、直後1分足との方向一致率が78%です。方向一致時に、跳値同士で反応が伸びた事例は76%、終値同士で反応が伸びた事例は71%です。追撃に適した指標と言えます。
(3-2. 反応一致性分析)
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
直前1分足は陰線率が89%です。
直後1分足は陽線率が74%です。そして直前1分足との方向一致率が30%(不一致率70%)です。
(3-3. 指標一致性分析)
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
事後差異は、直前1分足・直後1分足・直後11分足との方向一致率が各26%・85%・93%です。発表後の反応方向は素直です。
実態差異は、直後11分足との方向一致率が70%となっています。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年6月1日21:15発表
以下は2017年6月1日22:05頃に追記しています。
?U. 結果・検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
発表結果は前回結果・市場予想を上回り、反応は陽線でした。
民間雇用者数は+25.3万人(前回結果17.4万人・市場予想18.5万人)でした。
部門別内訳は、財生産部門が+4.6万人(前回結果+0.6万人)で、うち建設業が+3.7万人、製造業が+0.8万人です。サービス業は+20.5万人(前回結果16.7万人)で、この数字は昨年11月以来の大幅な伸びとなっています。
規模別内訳は、大企業(従業員500人以上)が+5.7万人、中企業(同50−499人)が+11.3万人、小企業(同49人以下)が+8.3万人です。
一部解説記事に依れば、直近の雇用増のペースが早すぎる結果、このままでは人手不足の問題が生じかねない、との指摘もありました。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を、以下に検証します
本指標が追撃に適している、との事前分析を記していました。
がしかし、実際には発表後1分以内に高値を付けると、次は5-6分後に再び高値を付けて、その後はゆっくりと値を下げていきました。
前回までの結果では、直後1分足と直後11分足の跳値反応伸長率が跳値同士で76%・終値同士で71%でしたが、今回の結果によって来月には終値同士が70%未満に低下してしまいます。次回の発表では「追撃にやや適した指標」ということになるでしょう。
今回の反応は、直後1分足跳幅が37pipsに達しています。これは、過去反応平均値の2倍(33pips)を超えており、2015年1月以降では最大の反応値でした。
明日の雇用統計への期待の高まりとともに、次週のFOMCでの利上げに繋がることが、過去2年強で最大の反応に繋がったと思われます。
発表直後の反応が大きかったにも関わらず、発表後1分以内と5-6分後に高値を付けて後、少しずつ値を下げたのは、23:00発表予定のISM製造業景況指数の市場予想が前回結果よりやや低くなっているためと考えられます。
(6-2. シナリオ検証)
シナリオには問題ありません。
できれば「複数回の追撃」と考えていたものの、これは諦めました。
発表後1分以内と5-6分後に高値を付けて後、少しずつ値を下げており、これを追撃することが逆張りになるためです。111.25付近が本指標発表の直前直後の跳幅半値となるため、この付近まで一旦戻さないと、指標発表結果に対する順張りでの再ポジションが危うくて取れません。
指標発表後10分間にそのような機会はなかったので、複数回追撃を諦めました。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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