2017年7月14日22:15に米国実態指標「鉱工業生産」「製造業生産」「設備稼働率」が発表されます。今回発表は2017年6月分の集計結果です。
本指標の過去傾向は、
- 反応は小さく、個々の指標結果と反応方向の関係もあまり強くなく、
- 追撃もチャンスを待って慎重に行う必要があり、
- 取引にはあまり向いていません。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事投稿時点の値です。
定型分析結果を以下図表に纏めておきました。図表の細かな文字が見えにくければクリックしてください。
調査・分析の結論は以下の通りです。
- 結論は前述の通り、あまり取引に向いていません。
理由は、反応程度が小さく、個々の項目毎の結果と反応方向の関係があまり強くなく、反応伸長率が低いので追撃も慎重に行う必要があります。 - 反応方向に影響を与えるのは、製造業生産>設備稼働率>鉱工業生産、の順です。但し、これら個々の項目の良し悪しは、反応方向との一致率が高くありません。
- 反応方向の偏りは、直前1分足の陰線率が71%となっています。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率が79%と高いことを除けば、あるローソク足が他のローソク足の方向を示唆している兆しはありません。 - 個々の項目毎の発表結果を見ても、各項目毎の結果を合成して見ても、発表結果の良し悪しと直後1分足の方向一致率は64%しかありません。
指標結果の良し悪しは、直後11分足との方向一致率で71%となっています。事後差異と実態差異の方向が一致したときにのみ追撃する、とした方が良さそうです。 - 以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
(1) 事後差異と実態差異の方向が一致したときにのみ追撃します。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。
?T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
設備稼働率は、生産能力に対する実際の生産量の比率を表した指標です。基準年の平均稼働率を100として、製造業・鉱業・公共事業(電気・ガス)の生産能力に対する生産実績の比率から算出します。本指標は、設備投資とインフレの先行指標とされていて、80%を超えると投資が活発化する、と言われています。
がしかし、最近では設備稼働率が高くなっても、設備投資を行う経営者は少数派です。
以前ほどではないにせよ、米国では組合や地域のマスコミの力が強く、経営者が思い描くような自動化が設備投資でなかなか図れないのです。そんなところに投資する人は、米国人経営者でなくても少数派です。
だから、米国企業の設備投資判断は、PCやタブレット端末普及時の工程管理・サプライチェーン革新や、シェールガス採掘の技術革新があったときのように、圧倒的生産性向上が図れるときに・ところで行われます。
設備稼働率と設備投資の相関がなくなったとまでは言いませんが、以前よりも両者の相関は弱くなっています。但し、設備稼働率が高いときには受注量が多いという点では、先行指標としての意義があります。
以下の調査分析範囲は、2015年1月分以降前回までの29回分のデータに基づいています。
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
上図は、発表結果と市場予想をプロットしています。そして、発表結果は後に修正値が発表されても、このグラフでは修正していません。
各項目ごとの反応への影響を求めておきます。
個々の項目の良し悪しでは、反応方向がはっきり決まらないようです。各項目に、
1?鉱工業生産の差異[%]
+3?製造業生産の差異[%]
+2?設備稼働率の差異[%]
+3?製造業生産の差異[%]
+2?設備稼働率の差異[%]
と重み付け係数を掛けると、指標結果と反応方向の関係が70%を超えることがわかりました。つまり、反応への影響は、製造業生産>設備稼働率>鉱工業生産、の順です。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
反応一致性分析の結果を下図に示します。
指標一致性分析の結果を下図に示します。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年7月14日22:15発表
以下は2017年7月14日23:22頃に追記しています。
?U. 結果・検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は改善でしたが、反応は陰線でした。
4本足のいずれもヒゲが大きく、この反応は、21:30に発表された小売売上高とCPIの結果が悪く大きく下げていたため、と思われます。その余波で、この程度の指標結果がどうあれ、あまり値動きに関係なかったといったところでしょう。
21:30に発表された小売売上高とCPIへの反応は、2015年以降で最大となる50pips超の直後1分足となっていました。
(5-2. 取引結果)
取引は行いませんでした。
というより、上図直前10-1分足の上下ヒゲをご覧ください。これからどっちに動くにせよ、そのきっかけとして本指標では影響力が小さすぎます。つまり、事前分析なんて関係ない。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査・分析と実際の結果を、以下に対比します。
- 本指標の特徴に関し、反応程度が小さく、個々の項目毎の結果と反応方向の関係があまり強くなく、反応伸長率が低いので追撃も慎重に行う必要がある、と考えていました。
結果は、本指標がどうあれ関係ないほど、21:30の小売売上高とCPIへの反応が大きくなっていました。 - 反応方向に影響を与えるのは、製造業生産>設備稼働率>鉱工業生産、の順で、これら個々の項目の良し悪しは、反応方向との一致率が高くない、と捉えていました。
今回の反応は、指標の結果と関係ない動きだと思われるため、この分析是非を論じることにも意味が余りません。
(6-2. シナリオ検証)
取引しなかったので、今回は集計しません。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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