?T.指標予想要点
2017年8月17日21:30に米国景気指標「Phil連銀製造業景況指数」が発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。
同時刻に前週分新規失業保険申請件数が発表されます。少なくとも指標発表直後は、Phil連銀製造業景況指数の方が、前週分新規失業保険申請件数よりも、反応方向に結び付きやすいという印象があります(市場予想との差異次第だと思いますが)。
よって、以下の分析は、Phil連銀製造業景況指数についてのみ行います。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 指標結果の分析で、単月毎のNY連銀景況指数の良し悪しは、本指標結果の良し悪しと一致率が52%しかありません。NY連銀との対比はグラフ全体の傾向を見て行うべきで、単月毎に参考にすることは確率的に無意味です。
- 過去の初期反応は、市場予想に対する良し悪しに素直に反応しがちですが、平均的な反応は10pipsにも達していません。
- 反応は発表から1分を過ぎても伸びがちですが、どの時点かで反転するのでしょう。直後1分足終値に対し直後11分足終値が伸びていたことは50%を切っています。追撃を行うなら、早期参加・短期利確です。
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今回発表に対する調査・分析結果を以下に一覧します。
- 指標結果の予想分析は、わからない、が結論です。個別分析結論要点は以下の通りです。
(1) 最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で9pipsしかありません。反応は小さく、10pips以上反応したことは39%です。
(2) 本指標は現在、市場予想後追い型ではありません。
(3) 本指標のNY連銀景況指数との実態差異一致率は52%しかありません。これでは、先に発表されたNY連銀景況指数が前回より良かったか悪かったかを、Phil連銀景況指数が前回より良くなるか悪くなるかの予想論拠とすることができません。 - 過去のローソク足の特徴は以下の通りです。
(1) たまに(頻度13%)直前10-1分足均跳幅が10pips以上動くことがあります。がしかし、過去のこうした事例では、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
(2) 直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。跳幅がその2倍強の10pips以上だったことは過去にありません。10pipsも跳ねたら何か過去にない異常なことが起きています。そして、直前1分足は陰線率が高いものの、過去87%が数pipsの上ヒゲを持っています。
(3) そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は4pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率44%)です。直後11分足のそれは7pips(戻り比率44%)です。反応が小さく、戻り比率が大きいので、あまり追撃には適していません。 - 定型分析の結論は次の通りです。
(1) 指標一致性分析の結論は以下の通りです。
事後差異と直後1分足の方向一致率がそれぞれ74%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しには素直に反応しがちです。こうした傾向がなければ、指標分析の意味がありません。
(2) 反応一致性分析の結論は、以下の通りです。
直前1分足は陰線率が77%と、偏りが目立ちます。
直後1分足と直後11分足の方向一致率が81%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
(3) 反応性分析の結論は以下の通りです。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしがちなので、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。がしかし、早期追撃で得たポジションは発表から1分を過ぎたら早期利確すべきです。そしてその後の追撃にはあまり適していません。 - 以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
(1) 直前1分足は陰線と見込みます。がしかし、pipsが小さいため、無理に取引しません。
(2) 指標発表後は、反応方向を確認してから追撃を行います。発表から1分を過ぎたらいつ反転し始めるかがわからないため早期利確します。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。
?U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
フィラデルフィア連銀管轄のペンシルバニア州・ニュージャージー州・デラウエア州の製造業の景況感と現状を指数化した指標です。
具体的内容は、仕入価格・販売価格・新規受注・出荷・入荷遅延・在庫水準・受注残・雇用者数・週平均就業時間などの11項目を、1ヶ月前と比較した現状と6ヶ月後の期待を、「良い」「同じ」「悪い」から選択して指数化したものです。
数値は0を分岐点に景気改善(+)・悪化(−)と読みます。
製造業景気指数は、ニューヨーク連銀製造業景気指数→フィラデルフィア連銀製造業景気指数→リッチモンド連銀製造業景気指数→シカゴ購買部協会景気指数→ISM製造業景気指数があります。ISM製造業景気指数の先行指標がフィラデルフィア連銀製造業景気指数で、フィラデルフィア連銀製造業景気指数の先行指標がニューヨーク連銀製造業景気指数、という見方があります。
後述するように、これはアテにならない言い伝えです。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で9pipsしかありません。反応が小さな指標です。10pips以上反応したことは39%です。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
このグラフ推移は市場予想後追い型のようです。確認しておきます。
2015年2月以降前回までの30回の発表で、市場予想と発表結果の大小関係が入れ替わったことは15回です。入れ替わり率はほぼ50%で、市場予想後追い型ではありません。
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次に、関連指標であるNY連銀景況指数との相関有無について調べておきます。
相関の有無は、それぞれの指標の実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて調べます。事前差異・事後差異・実態差異のうち、市場予想が含まれないのは実態差異だけだからです。市場予想は、後で発表される指標が先に発表される指標結果によって影響されてしまいます。
結果は、2015年1月以降前回までの31回の発表で、実態差異の符号(プラス/マイナス)が一致したことは16回でした(52%)。
これでは、先に発表されたNY連銀景況指数が前回より良かったか悪かったかを、Phil連銀景況指数が前回より良くなるか悪くなるかの予想論拠とすることができません。
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以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で9pipsしかありません。反応は小さく、10pips以上反応したことは39%です。
(2) 本指標は現在、市場予想後追い型ではありません。
(3) 本指標のNY連銀景況指数との実態差異一致率は52%しかありません。これでは、先に発表されたNY連銀景況指数が前回より良かったか悪かったかを、Phil連銀景況指数が前回より良くなるか悪くなるかの予想論拠とすることができません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pipsです。跳幅が10pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。この4回の直後1分足跳幅は12pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsよりやや大きい程度です。そして、この4回の直前10-1分足と直後1分足の方向は2回(50%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が10pips以上動いたからと言って、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。跳幅がその2倍強の10pips以上だったことは過去にありません。直前1分足は陰線率が高いものの、過去87%が数pipsの上ヒゲを持っています。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は4pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率44%)です。直後11分足のそれは7pips(戻り比率44%)です。反応が小さく、戻り比率が大きいので、あまり追撃には適していません。
これらの詳細分析は、ローソク足観察よりも他の分析を参照する方が良いでしょう。
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過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) たまに(頻度13%)直前10-1分足均跳幅が10pips以上動くことがあります。がしかし、過去のこうした事例では、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
(2) 直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。跳幅がその2倍強の10pips以上だったことは過去にありません。10pipsも跳ねたら何か過去にない異常なことが起きています。そして、直前1分足は陰線率が高いものの、過去87%が数pipsの上ヒゲを持っています。
(3) そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は4pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率44%)です。直後11分足のそれは7pips(戻り比率44%)です。反応が小さく、戻り比率が大きいので、あまり追撃には適していません。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は81%です。そして、その81%の方向一致時だけに注目すると、直後11分足跳幅が直後1分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが82%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは41%しかありません。直後1分足と直後11分足とが反転したことは19%しかないものの、直後11分足は直後1分足の値幅を削ったことが41%もあります。
早期追撃で得たポジションは発表から1分を過ぎたら早期利確すべきであり、そしてその後の追撃にはあまり適していません。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が77%と、偏りが目立ちます。
直後1分足と直後11分足の方向一致率が81%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異と直後1分足の方向一致率がそれぞれ74%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しには素直に反応しがちです。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年8月17日21:30発表
以下は2017年8月19日に追記しています。
?V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は+18.9(前回+19.5、予想+18.5)で、反応は陽線でした。
市場予想を上回ったものの、前回結果を下回り、調査対象外期間ですが、その後は陰線側に転じています。
内訳で見るべき大きな変化は、新規受注が大きく伸びています。この原因のひとつは、4月以降にUSDJPYを除く多くのドルストレート通貨ペアで、ドル安が進行しているため、と推察されます。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を以下に検証します。
- 指標結果の分析で、単月毎のNY連銀景況指数の良し悪しは、本指標結果の良し悪しと一致率が52%しかありません。NY連銀との対比はグラフ全体の傾向を見て行うべきで、単月毎に参考にすることは確率的に無意味です。
これは実態差異の一致率について述べています。 それを書き加える必要があります 。 - 過去の初期反応は、市場予想に対する良し悪しに素直に反応しがちですが、平均的な反応は10pipsにも達していません。
今回の事後差異はプラスで初期反応は陽線、10pipsに達していません。 - 反応は発表から1分を過ぎても伸びがちですが、どの時点かで反転するのでしょう。直後1分足終値に対し直後11分足終値が伸びていたことは50%を切っています。追撃を行うなら、早期参加・短期利確です。
これは分析を外しています。 「どの時点かで反転する可能性が高い」と来月から直します 。
今回は、直後1分足跳幅・値幅を直後11分足跳幅・値幅が超えて反応を伸ばしました。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは次の通りです。
- 直前1分足は陰線と見込みました。がしかし、pipsが小さいため、無理に取引しないつもりでした。結果は陽線で、取引しませんでした。
- 指標発表後は、反応方向を確認してから追撃を行うことにしていました。発表から1分を過ぎたらいつ反転し始めるかがわからないため早期利確するつもりでした。結果は追撃成功で、ポジション保有時間は29秒でした。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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