?T.指標予想要点
2017年9月13日21:30に米国物価指標「PPI(生産者物価指数)」が発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 本指標は、指標時刻前後1分間のみ、過去傾向に応じた反応をします。それ以外の時間は、指標発表前も指標発表後も反応方向がどちらになるのかがわからない指標です。
- その1分間の反応方向を示唆する先行指標は次の通りです。
まず先に、本指標の直後1分足反応方向は、2?PPI前月比事後差異+1?PPI?前年比事後差異+2?コアPPI前月比事後差異+1?コアPPI前年比事後差異、という判別式に値を代入した解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)との方向一致率が81%です。なお、事後差異とは、発表結果ー市場予想、です。
上式係数から、PPI・コアPPIともに、前月比>前年比、で反応方向に寄与します。
次に、1・2か月前の集計分の輸入物価指数との実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率は60%に達していません。60%にも満たない根拠なら、その日のトレンドを読んだ方がマシかもしれません。
そして、前月集計分のISM製造業価格指数(景況指数と同時に発表)の実態差異とは62%の方向一致率があります。本指標今回の発表は8月集計分ですから、参考にするのは7月集計分のISM製造業価格指数、ということになります。それはプラスでした。
期待的中率62%で本指標今回の実態差異がプラスになると仮定し、そのとき本指標実態差異と直後1分足の方向一致率は71%です。よって、0.62?0.71=44%の確率で直後1分足は陽線です。
直後1分足が陽線となる場合は、他に本指標実態差異がマイナスとなって、ISM製造業価格指数実態差異と一致しなかったのに(38%)、直後1分足が陽線となる場合です。この場合は、0.38?0.29=11%です。
よって、分析が当たるにせよ、当たらないにせよ、直後1分足が陽線となる確率は、44%+11%=55%です。
面倒な計算の割にアテにならない数字ですね。 - 直前1分足は過去平均跳幅が4pipsしかありません。この跳幅がその2倍の8pips以上だったことは過去3回(10%)です。
この3回の直後1分足跳幅の平均は21pipsで、これは過去全平均16pipsより5pips大きく反応しています。直前1分足がいつもより大きく動いたときには、直後1分足もやや大きく反応している可能性があります。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は3回(100%)一致しています。
直前1分足が大きく跳ねるときは、直後1分足の方向と程度を示唆している可能性があります。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
- 直後1分足は、直前1分足が8pips以上跳ねたときに、同じ方向に指標発表直前にポジションを取ります。指標発表直後の跳ねで利確/損切します。
- 追撃をするなら、発表から1分以内です。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。
?U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
本指標の意義は、同月集計のCPI(消費者物価指数)との方向一致率が70%近くあることです。
PPI(生産者物価指数、Producer Price Index)は約10,000品目の販売価格(出荷時点価格)を調査・算出した物価指標です。1982年の平均物価を100として算出されています。PPIから、価格変動が大きい食糧・エネルギーを除いた指標がコアPPIです。
内訳には「品目別」「産業別」「製造段階別(原材料・中間財・完成財)」があり、「品目別」「産業別」を見て、結果(「コア指数」「総合指数」)の解釈を行います。
イメージ的には鉱工業・製造業企業の物価指数ですが、実際には輸送業・公益事業・金融業なども含まれています。CPIとの違いは、輸送費・税・補助金・小売業者粗利等が含まれていない点です。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で16pipsです。平均的な反応程度の指標です。
分布は、9-16pipsに過去52%が収まっています。たまに平均の2倍以上(33pips以上)反応していることが気になります。時期は2016年4・7・8・12月分の発表時で、7月分のみは市場予想が大きく外れたときですが、他の3回は原因がわかりません。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
PPI前年比・コアPPI前年比は、2015年10月分をボトムに上昇基調でしたが、2017年4・5月分頃をピークに下降に転じた可能性があります。今回の発表は、いずれも市場予想が高めになっています。
コアPPI前月比はやる気あるのか、という予想です。PPI前月比・コアPPI前月比ともに前回はマイナス転換していました。今回はプラス復帰の予想となっています。
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事後差異(発表結果ー市場予想)は、
2?PPI前月比の差異+1?PPI?前年比の差異+2?コアPPI前月比の差異+1?コアPPI前年比の差異
という判別式に値を代入した解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)とすると良いでしょう。すると、事後差異と直後1分足の方向一致率は81%となります。
判別式係数から明らかなように、PPI・コアPPIともに、前月比>前年比、で反応に寄与します。
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市場予想と発表結果の大小関係が前月と入れ替わった頻度を確認しておきます。
結果は、
- PPI前月比は14回(47%)
- PPI前年比は10回(33%)
- コアPPI前月比は14回(47%)
- コアPPI前年比は10回(33%)
となっており、いずれも「市場予想後追い型」ではありません。
適度に入れ替わりが起きており、これは市場予想が適切に予想されている、ということでもあります。やっぱりプロの予想はこうでなくっちゃ。
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さて、物価は上流から下流へと波及すると、かつてよく解説されていました。がしかし、これは供給側の論理が消費側の論理よりも強く、企業購買部門や海外販売部門の力量が足りずに貿易を商社に頼っていた時代の話です。
この件は、 2017年7月13日発表時の事前分析 で確かめています。
以下、その引用です。見直しは四半期に1回やれば十分でしょう。
PPIに先行するのは輸入物価指数です。もし輸入物価指数が前月より上昇したらPPIも前月より上昇するのなら、輸入物価は生産者物価を先行示唆することになります。
下図は、輸入物価指数とPPIの増減方向が一致した率をプロットしています。横軸でPPIと比較する輸入物価指数を時期ずれさせています。
結果は、PPI集計月よりも1・2か月前の輸入物価指数が、PPI(の総合的な判別式の増減符号)と一致傾向が高いようです。
但し、その一致率は1か月前が58%、2か月前と56%です。単月毎の一致率をアテにして取引できるほど、確率が高くありません。
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次に、本指標に先立って8月集計結果が発表されているISM製造業景況指数の価格指数(以下、ISM製造業価格指数と略記)との対比を行います。対比は、それぞれ実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて行います。そして、PPIの実態差異は、先述の判別式で求めています。
結果、下図の通り、ISM製造業価格指数結果を前月結果を比べた良し悪しが、同月集計の本指標の前月結果との良し悪しと、方向一致率が40%となっています。
がしかし、集計月が同じでも調査時期が同じかがわかりません。そこで、ISM製造業価格指数の翌月集計分や前月集計分との対比も行いました。結果、PPIはISMの前月集計分との一致率だけ明らかに高くなっていました(一致率62%)。
PPI(関連の判別式結果)は、前月集計のISM製造業価格指数との相関がある可能性があります(仮説)。
もし、この仮説が正しいならば、7月分ISM製造業価格指数の実態差異はプラスです。よって、今回のPPI(関連の判別式結果)は、前回結果を上回る期待的中率が62%、ということになります。
後述する指標一致性分析に依れば、実態差異と直後1分足の方向一致率は71%です。よって、前月分ISM製造業価格指数とPPIの実態差異の方向一致率62%と、PPIの実態差異と直後1分足の方向一致率71%が両立する確率は44%です。
あまりアテになる数字ではありませんね。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。跳幅がその2倍の12pips以上だったことは過去一度もありません。もし直前10-1分足の反応が12pips以上に達したら、過去にない異常なことが起きている可能性があります。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。この跳幅がその2倍の8pips以上だったことは過去3回(10%)です。
この3回の直後1分足跳幅の平均は21pipsで、これは過去全平均16pipsより5pips大きく反応しています。直前1分足がいつもより大きく動いたときには、直後1分足もやや大きく反応している可能性があります。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は3回(100%)一致しています。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は5pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率31%)です。直後11分足のそれは8pips(戻り比率35%)です。戻り比率が30%台は他の指標と比べて平均的な数値です。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
各差異に50%を大きく離れた偏りは見出せません。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ81%・70%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
実態差異と直後1分足の方向一致率が71%となっています。がしかし、直後1分足は、事後差異との一致率の方が高いので、そちらの方が参考になるでしょう。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足の陰線率が83%と、異常な偏りが見受けられます。その他には、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は60%しかありません。そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは50%です。
本指標は、指標時刻前後1分間のみ、素直に反応します。それ以外の時間は、指標発表前も指標発表後も反応方向がどちらになるのかはわかりません。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
- 直後1分足は、直前1分足が8pips以上跳ねたときに、同じ方向に指標発表直前にポジションを取ります。指標発表直後の跳ねで利確/損切します。
- 追撃をするなら、発表から1分以内です。
以上
2017年9月13日21:30発表
以下は2017年9月13日22:00頃に追記しています。
?V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、全項目が前回結果を上回り、市場予想を下回りました。反応は陰線でした。
PPI・コアPPIのグラフ推移は、直近ピークである2017年4月分に迫る上昇となりました。よって、上図の通り、直後1分足・直後11分足は陰線となっているものの、その後は上昇に転じているようです。
これは明日発表予定のCPIを睨んでの動きと推察されます。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
シナリオ条件を満たさなかったため、発表時刻を跨いだポジションは取りませんでした。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査・分析内容には問題ありません。
直前1分足について外していますが、これは確率上の問題です。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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