?T.指標予想要点
2017年10月6日21:30に米国雇用指標「雇用統計」が発表されます。今回発表は2017年9月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点(10月4日)の値です。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 指標発表から1分間の反応は極めて大きいため注意が必要です。その間の反応方向は、本指標取引に多くのプロが参加するため、個別項目の良し悪しだけでなく総合的な解釈によって決まります。一見すると素直とは言えない場合も散見されます。
1?NFP増減事後差異[万人]ー10?失業率事後差異[%]+30?平均時給事後差異[%]、という判別式で求めた解の符号は、直後1分足との方向一致率が88%です。事後差異とは(発表結果ー市場予想)のことです。 - 発表から1分を過ぎると、それ以前のポジションは一旦利確の機会を探った方が良さそうです。そして、発表から10分を過ぎた頃に、再度の追撃可否をチャートと相談すると良いでしょう。やみくもに追撃ポジションを長持ちしたり、追撃を繰り返したりするやり方には向いていない指標です。動きが早く大きくなりがちなので、反転に即応できないやり方には向いていません。
- 指標解説記事でよく引用されるのは、先に発表されたISMの雇用指数やADP民間雇用者数の結果です。がしかし、これらは雇用統計発表直後の反応方向を当てるための判断材料としてアテになりません。
本指標NFP増減は、ISM製造業景況指数の雇用指数の前月との増減との方向一致率が45%、ISM非製造業景況指数の雇用指数のそれは52%、ADP民間雇用者数とのそれは56%です。前月と当月の増減方向すら一致李が偶然と区別できない程度です。
他人の間違った論拠に基づいて自分のポジション方向を決めるぐらいなら、自分で探した論拠に基づく取引を繰り返す方が、きっと先々に役立ちます。忘れないで欲しいのは「わからない」という結論も有効なので、「わかる」とは「どの程度(%)わかる・アテにできるのか」を、自分で決めることです。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陰線と見込みます。
論拠は、指標一致性分析で事前差異(指標予想ー前回結果)との方向一致率が77%あるため、です。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
論拠は、反応一致性分析の結果、過去の陰線率が81%と高いことです。
直前1分足の過去平均跳幅は16pipsもあるので、他の平均的な指標の発表直後と同じぐらい動きます。このローソク足で20pipsも取れたら、もう指標発表後は取引を止めても良いかも知れません。 - もし、直前1分足跳幅が20pipsを超えた(超えそう)なら、指標発表直前にその跳ねと逆方向にポジションを取ります。指標発表直後の跳ねで利確(損切)です。
過去事例では、直前1分足が20pips以上跳ねたことが22%あります。この22%の事例では、直前1分足と直後1分足の方向が一致したことは29%しかありません(逆方向に反応したことが71%)。 - 指標発表後の追撃は早期開始し、発表から1分をを過ぎたら決済のタイミングを計ります。
論拠は、反応性分析の結果に依ります。 - 指標発表から10分経過した頃、再度追撃を行うか否かを決めます。直後1分足跳幅が50pips以上の場合は再追撃です。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。
?U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
米国雇用統計は、市場の関心が最も高い経済指標として有名です。
過去に最も反応したのはNFP(非農業部門雇用者数)ですが、最近は平均時給への注目が高まっています。これは、以前にFRB幹部が注目していると発言したからです。現在、米国経済は成長とインフレが持続しています。インフレが進むのに賃金が上昇しなければ、いずれ成長が腰折れしてしまいます。だから、FRBは平均時給の上昇に関心があるのです。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で50pipsにも達しています。反応が非常に大きいため、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重でなければいけません。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
次に、見るべきポイントを絞り込むため、主要項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、1?NFP増減事前差異[万人]+15?失業率事前差異[%]ー2?平均時給事前差異[%]、という判別式で求めた解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)は、直前10-1分足との方向一致率が76%です。
同様に、1?NFP増減事後差異[万人]ー10?失業率事後差異[%]+30?平均時給事後差異[%]、という判別式で求めた解の符号は、直後1分足との方向一致率が87%です。
実態差異判別式も高い一致率を示していますが、事後差異よりも一致率が低いので用いることはないでしょう。
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最も市場の関心を集めるだけに、雇用統計の結果を事前分析した記事は、毎月数多く見受けられます。
例えば、ISM製造業景況指数や同非製造業景況指数の内訳には、雇用指数というのがあります。また、ADP民間雇用者数も有名です。同月のこれら指数・指標結果に絡めて当月の雇用統計の結果を論じる記事は、かなり多く見受けられます。
代表的な先行指標に、ISM製造業景況指数の雇用指数、ISM非製造業景況指数の雇用指数、ADP民間雇用者数、が挙げられます。2015年1月集計分以降のNFP増減数との方向一致率を調べておきました。
上図からわかるように、どの指標も先行していてもアテになりません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pipsです。跳幅がその1.5倍の10pips以上だったことは過去8回(頻度25%)あります。
この8回の直後1分足跳幅は46pipsで、これは直後1分足の過去全平均50pipsとほぼ同じです。また、この8回の直前10-1分足と直後1分足の方向が一致したことは3回(一致率38%)です。
つまり、直前10-1分足の反応がいつもより大きくても、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は16pipsです。16pipsという数字は、多くの指標の発表直後反応と同じぐらい動いています。
この跳幅が20pips以上だったことは過去7回(頻度22%)です。
この7回の直後1分足跳幅の平均は53pipsで、これは過去全平均50pipsとほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向が一致したことは2回(一致率29%)です。
つまり、直前1分足の反応が20pips以上に達しても、それが直後1分足の反応が大きいとは言えません。但し、こうした場合には、直後1分足が直前1分足と逆方向に反応することが多いようです(71%)。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は13pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率26%)です。直後11分足のそれは19pips(戻り比率31%)です。反応が大きい指標だけに戻りのpipsも大きいので、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
直後1分足の過去平均跳幅は50pipsです。
過去平均の50pipsを超えたことは14回(頻度44%)です。この14回の事例では、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えたことが9回(64%)です。終値同士を比較した場合、反応が伸びたことは6回(43%)です。
直後1分足が大きく跳ねても、その後に反応を伸ばし続けるとは言えません。
この結果は過去の経験に反しています。
雇用統計の初期反応が大きい場合、反応が長時間に亘って一方向に継続することが多いのです。よって、そうした大きく反応するときには、発表から11分経過した頃に戻りが起きやすいと理解した方がしっくりきます。
ならば、直後1分足が50pips以上跳ねたときには、この頃(直後11分足終値がつく頃)に再追撃を行うか否か、再びチャートと相談すれば良いのです。
この項は、定量データによる裏付けがなく、過去の感触に基づくことにご注意ください。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異と直前10-1分足の方向一致率は77%です。今回の事前差異はマイナスなので、直前10-1分足が陰線となる期待的中率が77%ということです。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ88%・81%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下図に示します。
直前1分足は陰線率が81%と、偏りが目立ちます。他のローソク足には、そういった単純で極端な偏りは見受けられません。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率は88%です。反転リスクはあまり考えなくても良いものの、とはいえ、直後11分足が直後1分足の値幅を削ることもあります。直後1分足の反応が大きい指標だけに、その点は注意が必要です。
その他、先に形成されたローソク足が、後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下図に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は88%です。そして、その88%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは82%です。指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びたことは47%です。早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら早めに利確した方が良さそうです。
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過去の経験から言えば、この分析に現れていない「騙し」が過去に散見されます。ここで言う「騙し」とは、発表と同時もしくは発表から3秒ぐらい、その後と逆方向に反応が生じることが多いのです。もちろん、3秒を過ぎて反転したこともあったでしょうから、これは特に記憶に残っている感触です。
追撃方向をあまり拙速に決めると、痛い目に遭うことも多いので、この点はご注意ください。
そして、発表から1分経過時点での関心は、いつ利確(損切)するかと、更に追撃を行うか、です。
直後1分足終値に対し直後11分足終値が伸びていたことは、意外に小さく50%未満しかありません。よって、発表から1分以内に取得した追撃ポジションは、発表から1分を過ぎたら利確のタイミングを見つけた方が良いでしょう。
複数回の追撃を行うなら、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
通常の反応程度の指標では、15分足と1時間足のチャートでレジスタンスやサポートを事前に手元にメモしておくだけで、追撃の成功率がだいぶ改善できます。がしかし、雇用統計は非常に大きく反応する指標です。4時間足と日足のチャートで、事前にレジスタンスやサポートをメモして手元に置いて取引した方が良いでしょう。
たったこれだけの習慣で、追撃の収益率は2倍(成功率はもっと)になるものです。2倍というのは感触で、定量的な裏付けはありません。
そして、経済指標発表時の取引で追撃の収益率が倍になるということは、指標発表時以外の取引の1日分の収益を時間圧縮して確保できるということです。1日分というのは感触で、これも定量的な裏付けはありません。
何かいちいち但し書きが面倒ですが、だいたいそういうことです。
【4. シナリオ作成】
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陰線と見込みます。
論拠は、指標一致性分析で事前差異(指標予想ー前回結果)との方向一致率が77%あるため、です。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
論拠は、反応一致性分析の結果、過去の陰線率が81%と高いことです。
直前1分足の過去平均跳幅は16pipsもあるので、他の平均的な指標の発表直後と同じぐらい動きます。このローソク足で20pipsも取れたら、もう指標発表後は取引を止めても良いかも知れません。 - もし、直前1分足跳幅が20pipsを超えた(超えそう)なら、指標発表直前にその跳ねと逆方向にポジションを取ります。指標発表直後の跳ねで利確(損切)です。
過去事例では、直前1分足が20pips以上跳ねたことが22%あります。この22%の事例では、直前1分足と直後1分足の方向が一致したことは29%しかありません(逆方向に反応したことが71%)。 - 指標発表後の追撃は早期開始し、発表から1分をを過ぎたら決済のタイミングを計ります。
論拠は、反応性分析の結果に依ります。 - 指標発表から10分経過した頃、再度追撃を行うか否かを決めます。直後1分足跳幅が50pips以上の場合は再追撃です。
以上
2017年10月6日21:30発表
以下は2017年10月6日23:10頃に追記しています。
?V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
NFP増減はマイナスでした。調査期間(2015年以降)においてマイナスは初めてです。がしかし、失業率は4.2%、平均時給は+0.5%で、かなり良い数字となりました。失業率4.2%も調査期間で最も良い数字で、平均時給は2016年1月以来の数字でした。
その結果、反応は陽線となったものの、NFPがこれほど悪いことについて馴れていないため、上昇はゆっくりとしたものでした。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
直前1分足の取引中止は、分析に挙げた20pipsの跳ねが怖かったためです。直前10-1分足がほとんど動かず、指標発表前に113円付近まで上昇していたこともあり、どちらかに大きく跳ねるのが嫌だったためです。
発表時刻を跨いだ取引を中止したのは、シナリオにより直前1分足に大きな跳ねがなかったため、です。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
今回はいつもの分析方法だと当たらないケースだったかも知れません。
NFPがこれほど悪くても折込み済とされることなど、記憶にありません。陽線での反応は当然のことにせよ、失業率4.2%・平均時給+0.5%という良い数字はどこで反応が伸びるのを止めるのかがわかりません。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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