?T.指標予想要点
2017年10月12日21:30に米国物価指標「PPI(生産者物価指数)」が発表されます。今回発表は2017年9月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点(10月9日)の値です。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 本指標は、指標時刻前後1分間のみ、過去傾向に応じた反応をします。それ以外の時間は、指標発表前も指標発表後も反応方向がどちらになるのかがわからない指標です。
先行発表されたISM製造業景況指数の価格指数は、本指標結果の良し悪しや反応方向を示唆していません。 - まず先に、本指標の直後1分足反応方向は、1?PPI前月比事後差異+3?PPI?前年比事後差異+2?コアPPI前月比事後差異+1?コアPPI前年比事後差異、という判別式の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)との方向一致率が90%です。なお、事後差異とは、発表結果ー市場予想、です。係数から、PPI前年比>コアPP前月比>その他、の順に反応方向に寄与します。
- 直前1分足は過去平均跳幅が4pipsしかありません。この跳幅がその2倍の8pips以上だったことは過去3回(9%)です。
この3回の直後1分足跳幅の平均は21pipsで、これは過去全平均16pipsより5pips大きく反応しています。直前1分足がいつもより大きく動いたときには、直後1分足もやや大きく反応している可能性があります。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は3回(100%)一致しています。
直前1分足が大きく跳ねるときは、直後1分足の方向と程度を示唆している可能性があります。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
論拠は、直前1分足の陰線率が85%と、異常な偏りがあることです。但し、直前1分足は、過去平均で跳幅が4pips、値幅が2pipsしかありません。そして陽線側へのヒゲが目立ちます。よって、陽線側に跳ねるのを待って逆張りで陰線側へのポジション(売ポジション)が取れる機会を待ちます。そうした機会が無ければ、取引を諦めます。 - 直後1分足は、直前1分足が8pips以上跳ねたときに、同じ方向に指標発表直前にポジションを取ります。指標発表直後の跳ねで利確/損切します。
過去の実績が僅か3回しかないものの、直前1分足が8pips以上跳ねた3回は全て、その跳ねた方向に直後1分足が反応しています。 - 追撃をするなら、指標発表後に早期開始し、発表から1分ぐらいで利確です。
直後1分足と直後11分足の方向一致率が68%で、その68%の方向一致時に両者跳幅を比べて反応を伸ばしていたことが76%あります。これが早期追撃開始の論拠です。一方、発表から1分を過ぎると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が反応を伸ばしていたことは48%しかありません。よって、発表から1分ぐらいで利確です。 - もしPPI・コアPPIの前年比が直近ピークを上回っていた場合に、追撃を徹底します。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。
?U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
本指標の意義は、同月集計のCPI(消費者物価指数)との方向一致率が70%近くあることです。
PPI(生産者物価指数、Producer Price Index)は約10,000品目の販売価格(出荷時点価格)を調査・算出した物価指標です。1982年の平均物価を100として算出されています。PPIから、価格変動が大きい食糧・エネルギーを除いた指標がコアPPIです。
内訳には「品目別」「産業別」「製造段階別(原材料・中間財・完成財)」があり、「品目別」「産業別」を見て、結果(「コア指数」「総合指数」)の解釈を行います。
イメージ的には鉱工業・製造業企業の物価指数ですが、実際には輸送業・公益事業・金融業なども含まれています。CPIとの違いは、輸送費・税・補助金・小売業者粗利等が含まれていない点です。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で16pipsです。平均的な反応程度の指標です。
分布は、9-16pipsに過去53%が収まっています。
たまに(頻度13%)平均の2倍以上(33pips以上)反応していることが気になります。時期は2016年4・7・8・12月分の発表時で、7月分のみは市場予想が大きく外れたときですが、他の3回は原因がわかりません。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
PPI前年比・コアPPI前年比は、2015年10月分をボトムに上昇基調でしたが、2017年4・5月分頃をピークに一旦下降に転じています。その後、再上昇中のところで今回発表を迎えています。
直近のピークは、PPI前年比が+2.5%、コアPPI前年比が+2.1%です。これらを上抜ければ、翌日のCPIへの期待が高まり、それは12月利上げを後押しすることになります。
コアPPI前月比は、いつもながら、やる気あるのかという予想です。PPI前月比は6月分がマイナス、3月分が0だったものの、2017年に入って他は全てプラスです。
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項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきます。
上表の上4行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から5行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から6行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段7行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
事前差異は、1?PPI前月比事前差異+1?PPI前年比事前差異ー1?コアPPI前月比事前差異、という判別式を用いると、この判別式の解の符号と直前10-1分足の方向一致率が56%となりました。あまり、一致率が高くありません。
事後差異は、1?PPI前月比事後差異+3?PPI前年比事後差異+2?コアPPI前月比事後差異+1?コアPPI前年比事後差異、という判別式を用いると、この判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率が90%となりました。
一致率が非常に高く、指標結果に応じて素直に反応する指標だとわかります。また、係数を見比べることで、PPI前年比>コアPPI前月比>その他、の順に反応方向に寄与していることがわかります。
実態差異は、ー1?PPI前月比実態差異+2?PPI前年比実態差異+2?コアPPI前月比実態差異+2?コアPPI前年比実態差異、という判別式を用いると、この判別式の解の符号と直後11分足の方向一致率が68%となりました。
実態差異よりも事後差異の方が直後11分足との方向一致率が高いので、本指標は前回結果が反応結果にあまり影響せずに、市場予想との大小関係だけを見ていれば良いことがわかります。
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市場予想と発表結果の大小関係が前月と入れ替わった頻度を確認しておきます。
結果は、
- PPI前月比は14回(44%)
- PPI前年比は10回(31%)
- コアPPI前月比は14回(44%)
- コアPPI前年比は10回(31%)
となっており、いずれも「市場予想後追い型」ではありません。
適度に入れ替わりが起きており、これは市場予想が適切に予想されている、ということでもあります。やっぱりプロの予想はこうでなくっちゃ。
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次に、本指標に先立って9月集計結果が発表されているISM製造業景況指数の価格指数(以下、ISM製造業価格指数と略記)との対比を行います。対比は、それぞれ実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて行います。そして、PPIの実態差異は、先述の判別式で求めています。
結果、下図の通り、ISM製造業価格指数結果を前月結果を比べた良し悪しが、同月集計の本指標の前月結果との良し悪しと、方向一致率が38%しかありません。
がしかし、集計月が同じでも調査時期が同じかがわかりません。そこで、ISM製造業価格指数の翌月集計分や前月集計分との対比も行いました。結果、PPIはISMの前月集計分との一致率だけ明らかに高くなっていました。それでも一致率が52%しかありません。
つまり、本指標を先行示唆する対象として、ISM製造業価格指数はアテになりません。
後述する指標一致性分析に依れば、実態差異と直後1分足の方向一致率は68%です。よって、前月分ISM製造業価格指数とPPIの実態差異の方向一致率52%と、PPIの実態差異と直後1分足の方向一致率68%が両立する確率(陽線となる確率)は35%です。
と同時に、前月分ISM製造業価格指数と今月発表分PPIとが不一致だったにも関わらず(つまり、今回PPIの結果がマイナス)、陽線となる確率は、(1−0.52)?(1−0.68)=15%です。
よって、この分析が当たるにせよ外れるにせよ、過去実績から今回の直後1分足が陽線となる確率は、35%+15%=50%です。
ISMを参考にして取引する訳にはいきません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。跳幅がその2倍の12pips以上だったことは過去一度もありません。もし直前10-1分足の反応が12pips以上に達したら、過去にない異常なことが起きている可能性があります。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。この跳幅がその2倍の8pips以上だったことは過去3回(頻度9%)です。
この3回の直後1分足跳幅の平均は21pipsで、これは過去全平均16pipsより5pips大きく反応しています。直前1分足がいつもより大きく動いたときには、直後1分足もやや大きく反応している可能性があります。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は3回(100%)一致しています。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は5pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率31%)です。直後11分足のそれは8pips(戻り比率36%)です。戻り比率が30%台は他の指標と比べて平均的な数値です。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
各差異に50%を大きく離れた偏りは見出せません。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ90%・70%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
実態差異と直後1分足の方向一致率が72%となっています。がしかし、直後1分足は、事後差異との一致率の方が高いので、そちらの方が参考になるでしょう。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足の陰線率が85%と、異常な偏りが見受けられます。その他には、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は68%しかありません。そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは76%です。
指標発表直後の段階で、直後1分足と直後11分足が方向一致するか否かはわかりません。両者が一致するのは68%で、その68%の方向一致時に直後11分足跳幅が直後1分足跳幅を超えていた確率が76%です。
追撃は早期開始し、指標発表から1分を過ぎたら利確した方が良いでしょう。
本指標は、指標時刻前後1分間のみ、素直に反応します。それ以外の時間は、指標発表前も指標発表後も反応方向がどちらになるのかはわかりません。
【4. シナリオ作成】
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
論拠は、直前1分足の陰線率が85%と、異常な偏りがあることです。但し、直前1分足は、過去平均で跳幅が4pips、値幅が2pipsしかありません。そして陽線側へのヒゲが目立ちます。よって、陽線側に跳ねるのを待って逆張りで陰線側へのポジション(売ポジション)が取れる機会を待ちます。そうした機会が無ければ、取引を諦めます。 - 直後1分足は、直前1分足が8pips以上跳ねたときに、同じ方向に指標発表直前にポジションを取ります。指標発表直後の跳ねで利確/損切します。
過去の実績が僅か3回しかないものの、直前1分足が8pips以上跳ねた3回は全て、その跳ねた方向に直後1分足が反応しています。 - 追撃をするなら、指標発表後に早期開始し、発表から1分ぐらいで利確です。
直後1分足と直後11分足の方向一致率が68%で、その68%の方向一致時に両者跳幅を比べて反応を伸ばしていたことが76%あります。これが早期追撃開始の論拠です。一方、発表から1分を過ぎると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が反応を伸ばしていたことは48%しかありません。よって、発表から1分ぐらいで利確です。 - もしPPI・コアPPIの前年比が直近ピークを上回っていた場合に、追撃を徹底します。
以上
2017年10月12日21:30発表
以下は2017年10月12日22:30頃に追記しています。
?V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は全般的に改善し、反応は陽線でした。
PPI前月比こそ予想と同値だったものの、PPI前年比・コアPPI前月比・コアPPI前年比は前回と予想を上回りました。
特に、前年比はPPI・コアPPIともに直近ピークを上回りました。
それにも関わらず、反応は112.45付近で反転し、22:10過ぎには指標発表前までほぼ値を戻しました(112.3)。ちなみに、112.45は1時間足一目均衡表の雲上端のレジスタンスでした。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
直前1分足が陽線側に跳ねたのは21:29:40過ぎです。これでは、ポジションが取れません。
また、直後1分足は、直前1分足の跳ねが8pipsに達していないので、事前シナリオに従って取引を止めました。
追撃はかなりしつこく行ったものの、1時間足一目均衡表の雲上端のレジスタンスを抜けることができませんでした。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容に問題はありません。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオに問題はありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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