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構造設計一級建築士
スケジュール
・講習日程
 札幌市 9/25・26
 仙台市 9/10・11
 東京都 9/26・27
 名古屋 9/19・20
 大阪府 9/12・13
 広島市 9/19・20
 福岡市 9/30・10/1



・合格発表 1/24(金)まで
重要ポイント
構造コメンタール
 1.1 力とつり合い
 1,2 静定構造物
 1.3 断面の性質と応力度
 1.4 部材の変形
 1.5 不静定構造物
 1.6 座 屈
 1.7 振 動
 1.8 骨組の塑性解析

 2.1 構造設計の基礎
 2.2 構造計画等
 2.3 鉄骨構造
 2.4 鉄筋コンクリート構造
 2.5 鉄骨鉄筋コンクリート構造
 2.6 壁構造
 2.7 木構造
 2.8 基礎構造
 2.9 その他の構造等

建築材料
 1. 木 材
 2. コンクリート
 3. 鋼 材
 4. アルミニウム
 5. その他の材料
カテゴリーアーカイブ

2024年08月28日

令和三年度修了考査 構造設計(記述式)問題1

構造設計(記述式)

問題1
図1(a)に示す、長方形断面をもつ鉄筋コンクリート造柱が、断面重心位置に作用する一定軸力N(圧縮を正とする)の下で終局曲げモーメントM u に達する場合を考える。終局曲げモーメントM u は、図1 (b)のひずみ分布に示すように、コンクリート圧縮縁ひずみが終局ひずみ ε cu に達したときの断面重心回りのモーメントとする。ひずみ分布として軸力の大きさに応じた典型的な分布 i 〜ivを考え、これらのひずみ分布間の領域を、それぞれ領域 (A)〜(E)とする。断面には平面保持の仮定が成立し、コンクリートは引張応力を負担しないものとする。圧縮コンクリートの応力は、図2に示す等価圧縮応力ブロックを用いる。なお、鉄筋の応カーひずみ関係は完全弾塑性のバイリニア形とする。図3に、断面のN-M u 相互作用図を示す。図中にはひずみ分布 i 〜iv、及びその間の領域(A)〜(E)を示す。

以下の[ No.1 ]〜[ No.3 ]の設問に解答せよ。

R3-2_問題1_図1_一定軸力の下で曲げ終局状態に達する柱.jpg
図1 一定軸力の下で曲げ終局状態に達する柱

R3-2_問題1_図2_コンクリートの等価圧縮応力ブロック.jpg
図2 コンクリートの等価圧縮応カブロック

R3-2_問題1_図3_断面のN-Mu相互作用図.jpg
図3 断面のN-Mu相互作用図


【記号一覧】
b:柱断面の幅
D:柱断面の全せい
a s :圧縮鉄筋、引張鉄筋それぞれの断面積
d c :圧縮縁または引張縁から圧縮鉄筋または引張鉄筋中心までの距離で d c = 0.1D
d:圧縮縁から引張鉄筋中心までの距離(有効せい)d = 0.9D
σ B :コンクリートの圧縮強度
σ y :鉄筋の降伏点
ε cu :コンクリートの曲げ圧縮縁ひずみ
ε y :鉄筋の降伏ひずみ
C c :コンクリートの圧縮合力(圧縮を正)
C s :圧縮鉄筋の圧縮合力(圧縮を正)
T s :引張鉄筋の引張合力(引張を正)
x n :圧縮縁から中立軸までの距離(中立軸深さ)


[ No.1 ]
下記の?@〜?Dの状態は、それぞれ図l(b)及び図3で表した領域(A)〜領域(E)のどの領域に相当するかを選び、解答欄に領域の記号(A〜E)を記入せよ。

?@ 引張鉄筋も圧縮鉄筋も引張降伏している状態。

?A 引張鉄筋は引張降伏していて、圧縮鉄筋は圧縮降伏している状態。

?B 引張鉄筋は引張降伏していて、圧縮鉄筋は弾性範囲の状態。

?C 全断面が圧縮の状態。中立軸は断面外にあり圧縮応カブロックは適用できない。

?D 引張鉄筋は弾性範囲で、圧縮鉄筋は圧縮降伏している状態。


答え


[ 解答解説 ]
?@引張鉄筋も圧縮鉄筋も引張降伏(引張領域)にあることから、 領域E

?A引張鉄筋はε y に到達し、圧縮鉄筋もε y に到達することから、 領域C

?B引張鉄筋はε y に到達するが、圧縮鉄筋は弾性範囲でε y に到達しないので、 領域D

?C全断面が圧縮領域なので、 領域A

?D引張鉄筋は弾性範囲でε y に至らず、圧縮鉄筋がε y に到達することから、 領域B




[ No.2 ]
軸力が図3の軸力Nb(圧縮を正)のとき、終局曲げモーメントMuを求める以下の記述につ いて、空欄?@〜?Iに入る適切な式または用語を、この設問末尾の選択肢(あ)〜(ひ)の中から選んで、解答欄にその記号(ひらがな)を記入せよ。ただし、同じ記号を複数回選択してもよい。

軸力がNbのとき、ひずみ分布は (ii)となる。各合力の大きさは、Cc = [ ?@ ]、Cs = [ ?A ]、Ts= [ ?B ]である。ひずみ分布が与えられているので、中立軸深さx n は幾何学的に求めることができる。

x n をε cu 、ε y 及びdで表すと、x n = [ ?C ]となる。軸力Nbは、この x n を用いて、下記の軸方向カの釣合い式から求めることができる。

N b = C s − T s + C c
  = [ ?D ]となる。

断面重心に関するM u は、以下のように求めることができる。

M u = C s ・(D/2 − d c ) + T s • (d − D/2) + C c •(D/2 − β 1 x n /2)
  = [ ?E ] + C c •(D/2 − β 1 x n /2)

ここで、C c •(D/2 − β 1 x n /2)はN b を含む式として[ ?F ] で表される。

得られた終局曲げモーメントは、?Eが鉄筋による曲げ抵抗、?Fが軸力による曲げ抵抗を表している。

軸力Nbは柱断面の曲げ破壊性状を左右する軸力で、[ ?G ]と呼ばれている。

軸力がN b より大きい場合は、[ ?H ] の [ ?I ] 現象が起らなくなる。

R3-2_問題1_No.2_選択肢.jpg


答え


[ 解答解説 ]
?@コンクリートの圧縮力
 C c = 0.85σ B × β 1 x n × b = 0.85β 1 σ B bx n ・・・(い)

R3-2_問題1_No.2_中立軸の深さ.jpg


?A 圧縮鉄筋の合力
 C s = a s σ y ・・・(か)

?B引張鉄筋の合力
 T s = a s σ y ・・・(か)

?C 中立軸深さx n
 ε cu : ε y = x n : d – x n より、
 ε y •x n = ε cu •(d – x n )
 (ε cu + ε y )•x n = ε cu •d
 x n = ε cu /(ε cu + ε y )•d・・・(け)


?D N b = C s – T s + C c
= 0.85β 1 σ B bx n = 0.85β 1 σ B b•ε cu /(ε cu + ε y )•d・・・(さ)
(∵ T s = C c = a s σ y

?E C s •(D/2 – d c ) +T s • (d – D/2) = a s σ y • (D/2 – d c + d – D/2) = a s σ y • (d – d c )
              = 0.8a s σ y D・・・(そ)
( ∵ d = D – d c よりd – d c = D – 2d c = 0.8D)


?F ?DよりC s = T s からN b = C c なので、
N b •(D/2 – β 1 x n /2) = N b /2・(D –β 1 •N b /0.85β 1 σ B b)
        = N b D/2•(1 – N b /0.85σ B bD)・・・(た)

?G 軸力N b は、 (と)釣合軸力と呼ばれる。

?H,?I 軸力がN b より大きい場合は、断面の圧縮性状が支配的となり、 (ね)引張鉄筋 (は)引張降伏現象が起こらなくなる。




[ No.3 ]
図4は同断面で、軸力比(作用軸力の断面圧縮耐力に対する比)のみが異なる鉄筋コンクリート造柱の断面のモーメントと曲率の関係を表している。通常の軸力の範囲であれば、軸力比が大きい場合は、最大モーメントは大きくなり、限界変形(抵抗モーメントが最大モーメントから95%に低下したときの変形)は小さくなる。その理由をそれぞれ記述せよ。

R3-2_問題1_No.3_図4_柱断面のモーメントと曲率の関係.jpg
図4 柱断面のモーメントと曲率の関係


答え



曲率が同じRC柱断面において、軸力比が大きい場合は、コンクリートの負担する圧縮合力の割合が大きくなる。その結果、最大モーメントは大きくなる。
R3-2_問題1_No.3_中立軸の位置.jpg

一方、圧縮縁から中立軸位置までの距離が長く、圧縮縁近傍における圧縮ひずみも大きくなる。よって、コンクリートの最大耐力以後の耐力低下の影響が変形の早い段階で顕著になるため、限界変形は小さくなる。



2024年08月27日

令和三年度修了考査 構造設計(記述式)問題2

構造設計(記述式)

問題2

図1に示すような長期鉛直荷重を受けるブレース付き鉄骨造門型骨組の柱の座屈等に関する次の設問に解答せよ。なお、圧縮材の座屈の長期許容応力度 fc は式(1)によるものとし、ブレースは圧縮力に対しても抵抗すると考える。柱及び梁は十分に横補剛されており、構面外座屈はしないものとする。各部材の断面形状及び材料特性は表1のとおりで、断面性能は表1の値を用いることとする。

R3-2_問題2_図1_ブレース付き門型骨組.jpg
図1 ブレース付き門型骨組

表1 各部材の断面形状・材料特性・断面性能
R3-2_問題2_表1_各部材の断面形状・材料特性・断面性能.jpg

R3-2_問題2_圧縮材の座屈の長期許容応力度fc.jpg

[ No.1 ]
本骨組において、柱が表1に示す角形鋼管、梁が剛体とみなせる場合について、以下の設問に解答せよ。

?@ 両端固定で節点の水平移動がないものとして、柱の座屈長さを求めよ。



答え


両端固定で接点の水平移動がない場合の柱の座屈長さは、
?k = 0.5 × ?c(柱の長さ) = 0.5 × 3.00m = 1.50m
となる。




?A 柱の長期許容圧縮応力度を求めよ。


答え


柱の長期許容圧縮度は
λ = 1500mm / 100mm(断面二次半径) = 15.0
Λ = 1500/ ( √325N/mm 2 (F値) / 1.5) = 102

λ ≦ Λより

長期許容圧縮応力度
fc = F × { 1 − 2/5 × (λ/ A) 2 } / {3/2 + 2/3 × (λ / Λ) 2 }
= 325× { 1 − 2/5 × (15/102) 2 }/{3/2 + 2/3 × (15/102) 2 }
= 213 N/mm 2
となる。

鋼材のF値:
基準強度 単位 N/mm 2
「降伏点の値と引張強さの70%のうち小さい方」と定義される設計用の数値であるが、通常の鋼材では降伏点の値となる。

鋼材の許容応力度:
 長期 引張・圧縮・曲げ F/1.5
    せん断     F/1.5√3
 短期 長期に対する値の1.5倍




?B 柱1本の長期許容圧縮力を求めよ。


答え


柱1本の長期許容圧縮力は
N ac = 12500mm 2 (断面積) × 213 N/mm 2 (長期許容圧縮応力度)
= 2660kN
となる。
※有効数字3桁とした




[ No.2 ]
本骨組において、柱が表1に示す角形鋼管、梁が表1に示すH形鋼の場合について、以下の設問に解答せよ。

R3-2_問題2_No.2_図2_座屈長さ係数Kの算定図.jpgR3-2_問題2_No.2_図2_門型鉄骨.jpg
図2 柱頭の水平移動が拘束される場合の座屈長さ係数Kの算定図
(引用:日本建築学会「鋼構造座屈設計指針」(一部編集))

?@ 図2を用いて座屈長さ係数 Kを求める場合のG A 値を求めよ。



答え


G A
( Ic /?c) / ( lg /?g)
= (120 × 10 6 mm 4 /3000mm) / (40X10 6 mm 4 /4000mm)
= 4.00
となる。




?A 図2を用いて座屈長さ係数 Kの値を求めよ。なお、G B = 1とする。



答え


座屈長さ係数 Kは、G A =4.00、G B =1.0より下図から 0.840となる。
R3-2_問題2_No.2_図2_座屈長さ係数Kの算定図GA,GB.jpg




?B 座屈長さ係数Kを用いた柱の座屈長さを求めよ。



答え


柱の座屈長さ?kは

?k = K × ?c = 0.840 x 3000mm = 2520mm
となる。




?C 柱の長期許容圧縮応力度を求めよ。



答え


柱の長期許容応力度は
λ = 2520mm/100mm(断面二次半径)=25.2
Λ = 102
λ ≦ Λ
より
長期許容圧縮応力度
fc = F × {1-2/5 × ( λ/Λ) 2 } / {3/2 + 2/3 × (λ/Λ) 2 }
 = 325× {1-2/5 × (25.2/102) 2 } / {3/2+ 2/3 × (25.2/102) 2 }
 = 206 N/mm 2
となる。




?D 柱1本の長期許容圧縮力を求めよ。



答え


柱1本の長期許容圧縮力は
N ae = 12500mm 2 (断面積) × 206N/mm 2 (長期許容圧縮応力度)
 = 2580kN
となる。
※有効数字3桁とした





[ No.3 ]
本骨組において、ブレースが表1に示す等辺山形鋼の場合について、以下の設問に解答せよ。

?@ ブレースの長期許容圧縮力を求めよ。



答え


ブレースの長期許容圧縮力は、両端ピンとして母材断面で求めると
ブレース長さ
 ?v = √ (3m 2 + 4m 2 )
   = 5.0mm→5000mm
ブレースの座屈長さ
 ?k = 1.0 × 5000mm = 5000mm(両端ヒ°ン)

λ= 5000mm/ 30mm(断面二次半径)=167
Λ = 1500 / (√ 235N/mm 2 (F値)/1.5) =120
λ> Λより
長期許容圧縮応力度 fc = (18/65)/(λ/Λ) 2 × F
= (18/65)/(167/120) 2 × 235 N/mm 2 = 33.6 N/mm 2

ブレースの長期許容圧縮力
N ac = A × fc = 4200 mm 2 × 33.6N/mm 2
  = 141kN
となる。




?A [ No.2 ]の場合について、ブレースが柱頭の水平移動を拘束できるか否かを検討せよ。なお、ブレースが負担する水平力は、柱2本の長期許容圧縮力の2%とする。



答え


ブレースが負担する水平力は、No.2における柱の長期許容圧縮力Nac=2580kNの2本分に対して2%となるため、
2580kN × 2 × 0.02 = 103kNとなる。
この際のブレースの軸力Nは、
N= 103kN × (5.0m/ 4.0m)= 129kNとなり、ブレースの長期許容圧縮力Nac = 141kN以内であるため、
ブレースは柱頭の水平移動を拘束可能である




?B [ No.2 ]の場合について、節点Cにおけるブレースと柱梁接合部の納まりをスケッチせよ。使用するボルトは、M20(F10T)とし、1本当たりの1面摩擦に対する長期許容せん断力は、46.2 kNとする。



答え


ブレースは柱頭の水平移動を拘束するためにのみ働くものとし、ブレースの長期許容圧縮力
N ac = 141kNに対して安全であるおさまりとする。
必要なボルト本数は、141kN/46.2kN= 3.05より4本とすると、収まりは以下となる。

R3-2_問題2_No.3_高力ボルト本数.jpg


2024年08月26日

令和三年度修了考査 構造設計(記述式)問題3

構造設計(記述式)

問題3

免震ピットの立上り壁に作用する偏土圧に関する設問 [ No.1 ]、及び建築物の直接基礎(べた基礎)の設計に関する設問[ No.2 ]に解答せよ。

[ No.1 ]
図1に示すような免震ピットの立上り壁に作用する土圧及び水圧に関する以下の?@及び?Aの設問に解答せよ。ただし、土の単位体積重量γは18 kN/m 3 、水の単位体積重量は10 kN/m 3 とし、地表面に作用する上載荷重 q は10kN/m 2 とする。

なお、地表面からの深さzの位置の土圧 p z は式(1)により求めるものとする。

p z = K (q + σ z ) (kN/m 2 ) 式(1)

ここに、
K:土圧係数
σ z :深さzの位置の上載荷重を除いた土圧で、σ z =γ•z(kN/m 2 )。
ただし、地下水位以深のγは水中単位体積重量を用いる。


R3-2_問題3_No.1_図1_土圧及び水圧が作用する免震ピットの立上り壁.jpg
図1 土圧及び水圧が作用する免震ピットの立上り壁

?@ 常時作用する土圧、水圧、及び「土圧と水圧の合計」を算定して、答案用紙のグラフ?@にそれぞれの深さ方向の分布を記入せよ。ただし、土圧は破線、水圧は一点鎖線、「土圧と水圧の合計」は実線で示すこと。それぞれの線には、深さ0m(地表面)、1.0m(地下水位点)及び2.5m(壁脚部)での土圧•水圧の値を記入すること。なお、常時作用する土圧は静止土圧で、静止土圧係数 Koは0.5とし、水圧は静水圧とする。

次に、立上り壁脚部の幅1mあたりに常時作用するせん断力Q L (kN/m)を求めよ。



答え


式(1) から土圧p z

p z = K( q + σ z
で示され、各項目は下記による。
K = K o = 0.5
q = 10 (kN/m 2 )
σ z = γ•z
(地下水位以深いの場合は水中単位体積重量 18 – 10 = 8 kN/m 3 を用いる)

(a) 土圧p z
(z=0.0m):
p z = Ko(q + γ•z )= 0.5(10kN/m 2 + 0 ) = 5 kN/m 2
(z=1.0m):
p z = Ko(q + γ•z )= 0.5(10kN/m 2 + 18 kN/m3 × 1m ) = 14 kN/m 2
(z=2.5m):
p z = Ko(q + γ•z )= 0.5(10kN/m 2 + 18 kN/m3 × 1m + 8 kN/m3 ×1.5m) = 20 kN/m 2
(地下水位以深いの場合は水中単位体積重量 18 – 10 = 8 kN/m 3 を用いる)

(b) 水圧p w
(z=0.0m):
 p w = 0 kN/m 2
(z=1.0m):
 p w = 0 kN/m 2
(z=2.5m):
 p w = 1.0 × 10kN/m 3 × 1.5m=15kN/m 2

(c) 土圧と水圧の合計 p z + p w
(z=0.0m):
p z +p w = 5 + 0 = 5kN/m 2
(z=1.0m):
p z +p w = 14 + 0 = 14kN/m 2
(z=2.5m):
p z +p w = 20+15 = 35kN/m 2

(a) 〜(c)より、グラフにすると下図に示す通りとなる。

常時作用する荷重(kN/m 2
R3-2_問題3_No.1_常時作用する荷重.jpg

立上り壁脚部の幅1m当たりに常時作用するせん断力Q L (kN/m)は下図に示すせん断力図より、
Q L = ( 5kN/m 2 + 14kN/m 2 ) × 1.0m/2+ (14kN/m 2 + 35kN/m 2 ) × 1.5m/2
= 9.5+ 36.75 = 46.25kN/m → 46.3kN/m

R3-2_問題3_No.1_立上り壁のせん断力図.jpg
立上り壁のせん断力図




?A 地震時に作用する土圧、水圧、及び「土圧と水圧の合計」を算定して、答案用紙のグラフ?Aにそれぞれの深さ方向の分布を記入せよ。ただし、土圧は破線、水圧は一点鎖線、「土圧と水圧の合計」は実線で示すこと。それぞれの線には、深さ0m(地表面)、1.0 m(地下水位点)及び2.5m(壁脚部)での土圧•水圧の値を記入すること。なお、地盤は液状化しないものとし、極めて稀に発生する地震動を想定して、地震時土圧係数 K EA は1.0とし、水圧は静水圧とする。

答え


式(1) から土圧P z
p z = K(q + σ z )で示され、各項は下記による。
K = K EA = 1.0
q = 10 (kN/m 2 )
σ z = γ•z
(地下水位以深の場合は水中単位体積重量 18 −10= 8kN/m 3 を用いる)

(a) 土圧 p z
(z = 0.0m):
p z = K EA ( q + γ’•z ) = 1.0 (10kN/m 2 + 0) = 10kN/m 2

(z = 1.0m):
p z = K EA ( q + γ’•z ) = 1.0 (10kN/m 2 + 18kN/m 3 × 1m) = 28kN/m 2

(z = 2.5m):
p z = K EA ( q + γ’•z ) = 1.0 (10kN/m 2 + 18kN/m 3 × 1m + 8kN/m 3 × 1.5m)
  = 40kN/m 2
(地下水位以深の場合は水中単位体積重量18-10 = 8kN/m 3 を用いる)


(b) 水圧P w
(z = 0.0m):
p w =0kN/m 2
(z = 1.0m):
p w =0kN/m 2
(z = 2.5m):
p w =1.0 × 10kN/m 3 × 1.5m = 15kN/m 2


(c) 土圧と水圧の合計 p z + p w
(z = 0.0m):
p z + p w = 10 + 0 = 10kN/m 2
(z = 1.0m):
p z + p w = 28 + 0 = 28kN/m 2
(z = 2.5m):
p z + p was = 40 +15 = 55kN/m 2

(a)〜(c)より、グラフにすると下図に示す通りとなる。

地震時に作用する荷重(kN/m 2 )
R3-2_問題3_No.1_地震時に作用する荷重.jpg




[ No.2 ]
建築物の基礎形式に直接基礎(べた基礎)を採用し、GL–2m以深に現れる砂質土層を支持層と想定して、以下のような条件を設定した。次の?@〜?Cの設問に解答せよ。

く基礎形式>
 直接基礎(べた基礎:基礎底面B × L = 10 m × 20 m)
 基礎の平均鉛直荷重度:50 kN/m 2

く基礎荷重状況と地盤概要> 図2参照

R3-2_問題3_No.2_図2_基礎荷重状況と地盤概要.jpg
図2 基礎荷重状況と地盤概要

?@ 基礎直下の砂質土層の長期許容鉛直支持力度q α1 を、式(2)を用いて求めよ。ただし、根入れ深さD f には埋土部分は含まれないものとする。

R3-2_問題3_No.2_式(2)長期許容鉛直支持力度.jpg

表 支持力係数
R3-2_問題3_No.2_表_支持力係数.jpg


答え


※数字の有効数字について、答えは3桁で表し、途中の計算も3桁で行った。最終桁の丸め方は四捨五入している。

基礎の形状係数:
 α= 1.0 + 0.2•B/L =1.0 + 0.2•10/20 = 1.1
基礎の形状係数:
 β = 0.5 – 0.2•B/L = 0.5 - 0.2•10/20 = 0.4
支持力係数(φ = 30°):
 N c = 30.1、N γ = 15.7、N q = 18.4
支持地盤の粘着力:
 c = 0
支持地盤の単位体積重量:
 γ 1 = 18 - 10 = 8 (kN/m 3 )
(地下水位以下のため水中単位体積重量)

根入れ部分の土の単位体積重量:
 γ 2 = 16 (kN/m 3 )
根入れ深さ:
 D f = 0(m) (埋土は考慮しないため)

以上より、基礎直下の砂質土層の長期許容鉛直支持力度q α1 は式(2)より以下となる。
q α1 = (α•c•N c + β•γ 1 •B•N γ + γ 2 •D f •N q ) /3
  = (1.1• 0• 30.1 + 0.4•8•10•15.7 + 16•0•18.4) = 167 (kN/m 2 )




?A 直接基礎底面(GL −2m) に作用する鉛直荷重が、分散角1/2で粘土層表面(GL-10m)に ( B + H )•( L + H )の大きさに均等に載荷されるものとして、直接基礎底面 ( GL–2m )に換算した粘土層の長期許容鉛直支持力度q α2 を、式(3)を用いて求めよ。ただし、根入れ深さD f は砂質土層厚Hとし、埋土部分は根入れ深さに含まれないものとする。

R3-2_問題3_No.2_式(3)長期許容鉛直支持力度.jpg



答え


基礎の形状係数:
 α= 1.0 + 0.2•(B + H)/(L + H) = 1.0 + 0.2•(10 + 8 )/( 20 + 8 ) = 1.13
基礎の形状係数:
 β= 0.5 − 0.2•(B + H)/(L + H) = 0.5 – 0.2•(10 + 8 )/( 20 + 8 ) = 0.371
支持力係数(φ =0°) :
 N c = 5.1、N γ = 0.0、N q = 1.0
粘土層の粘着力:
 c = 40 (kN/m 2 )

粘土層の単位体積重量:
 γ 1 = 16 – 10 = 6 (kN/m 3 )
(地下水位以下のため水中単位体積重量)
根入れ部分(砂質土) の土の単位体積重量:
 γ 2 =18 – 10 = 8 (kN/m 3 )
(地下水位以下のため水中単位体積重量)
根入れ深さ :
 D f = H = 8(m)
以上より、直接基礎底面(GL-2m)に換算した粘土層の長期許容支持力度q α2 は式(3)より以下となる。

q α2 =1/3 × (B + H)•(L + H)/B•L× { α•c•Nc + β•γ 1 •(B + H) •N γ + γ 2 •D f •N q }

  =1/3 × (10+8)•(20+8)/10•20 ×(1.13•40•5.1 + 0.371•6•(10 + 8)• 0.0 + 8 •8 •1.0)
  = 247 (kN/m 2 )


く参考>
2層地盤の検討を学会基礎指針2019(以下、基礎指針)に準拠して算出する。その概念図を下図に示す。

R3-2_問題3_No.2_2層地盤の概念図.jpg
2層地盤の概念図

粘土層の極限支持力q’ u2 は基礎指針(5.2.2)式に準拠して下記のように示される。
ここで、埋土の単位体積重量をγ (=16kN/m 3 )、埋土の高さをh(=2.0m)とした。

q' u2 = a•c•Nc+β•γ 1 • (B + H)•N γ + (γ•h + γ 2 •H)•N q
  = 1.13•40•5.1 + 0.371•6 •(10 + 8)•0.0 + (0 + γ2•H) •1.0
  = 230.5 + γ 2 •H (kN/m 2 )
(極限支持力算定時には安全側となるように埋土の根入れ効果分のγ•hは無視した。)

根入れ底面に作用する荷重増分(p – γ•h)により、粘土層表面に作用する荷重度 p' は基礎指針(5.2.22)式に準拠して下記で示される。

p’ = B•L/{(B+H)•(L+H)} × (p – γ• h) + γ•h + γ 2 •H

ここで、p'= q' u2 として、pを求める。

B•L/{(B+H)•(L+H)} × (p – γ• h) + γ•h + γ 2 •H = 230.5 + γ 2 •H

p = (B+H)•(L+H) /B•L × (230.5 − γ•h) + γ•h
 = (10+8)•(20+8)/10•20 × (230.5 − 16•2.0) + 16•2.0 = 532 (kN/m 2 )

以上より、q α2 =p/3で示されるため、q α2 は以下となる。

q α2 =p/3 = 532/3 = 177 (kN/m 2 )




?B 圧密沈下が発生するか否かを計算で求めよ。ただし、基礎の鉛直荷重度による粘土層の上面 ( GL-10m ) の中心軸上の伝達鉛直応力の最大値P max は、図2に示すように 0.62 × 50 kN/m 2 とする。圧密沈下の検討では埋土の重量も考慮するものとする。



答え


粘土層に作用する最大荷重 p d と粘土層の圧密降伏応力 p c の比較を以下に行う。

埋土の重量:
 w b = γ•2=16 × 2 = 32.0 (kN/m 2 )
砂質土層の重量 :
 w s = (γー10)•H = (18 – 10)• 8 = 64.0 (kN/m 2 )
伝達鉛直応力の最大値 :
 p max = 0.62 × (50 - 32) = 11.2 (kN/m 2 )

ここでは、基礎の平均鉛直荷重度 50 kN/m 2 は、接地圧(建物荷重)と考え、荷重増分は接地圧から埋土重量γ•hを減じている。また、粘土層にかかる最大荷重を求める際、周辺の粘土層からの影響係数が示されていないことからw b に最大値を採用する。

粘土層にかかる最大荷重:
p d = w b + w s + p max = 32.0 + 64.0 + 11.2 = 107 (kN/m 2 )
        < P c = 140 (kN/m 2 )

以上より、粘土層にかかる最大荷重 p d は107kN/m 2 であり、粘土層の圧密降伏応力 p c = 140kN/m 2 未満であるため、圧密沈下は発生しない。




?C 以上の?@〜?Bの検討より、図2に示すような直接基礎(べた基礎)で設計することが可能か否かを判断せよ。あわせて、その理由を述べよ。



答え


以下の理由により、基礎の構造安全性に問題はなく、直接基礎(べた基礎)で設計することは可能である。

・?@の結果より、基礎直下の砂質土層の長期許容鉛直支持力度q α1 は167kN/m 2 であり、基礎の平均鉛直荷重度50kN/m 2 は砂質土層の長期許容鉛直支持力度以下であるため。

・?Aの結果より、直接基礎底面(GL−2m)に換算した粘土層の長期許容支持力度q α2 は247kN/m 2 であり、基礎の平均鉛直荷重度50kN/m 2 は、粘土層の長期許容鉛直支持力度以下であるため。

・?Bの結果より、粘土層にかかる最大荷重 p d = 107kN/m 2 は、粘土層の圧密降伏応力p c =140kN/m 2 未満であり、圧密沈下は発生しないため。


2024年08月23日

令和三年度修了考査 法適合確認 No.1 - 10

令和3年度 構造設計ー級建築士講習

修了考査(法適合確認)

法適合確認
(選択理由記述式4肢択ー問題)

[ No. 1 ]
建築構造設計のあるべき姿に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 構造物の安全性に関する見解について、組織の上司の発言についておかしいと感じたため、付度することなく上司に対して自分の意見を述べた。


2. 保有水平耐力計算では、ごく稀に遭遇する地震動に対する応答変形は陽に表現されないが、地震後の損傷度に大きく影響するため、別の方法によって応答変形を評価し建築主に説明した。


3. 一貫構造計算プログラムにおいて、部材検定が合格となったとしても、自らが理解していない設計条件を設定してはならない。


4. 構造物の安全性に関する新たな知見により、建築基準法の構造関係規定の改正が公布されても、施行前である場合には、その改正内容を構造設計に反映させるべきではない。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。

2. 記述の通り。

3. 記述の通り。

4. 改正前であっても新たな知見を取り入れた規定を反映させることは望ましい。改正後に既存不適格になる可能性を避ける事にもなる。




[ No.2 ]
構造関係規定の位置づけにおける次の記述のうち、建築基準法及び建築士法上、 最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 建築基準法は、最低基準を定めており、建築士法では、建築士はより質の高い建築物の実現に努める必要があるとしている。


2. 延べ面積が 600 m2である建築基準法第20条第1項第三号の鉄筋コンクリート造の学校について、許容応力度等計算(ルート2-1)を採用した場合、構造設計ー級建築士の資格を保有する建築主事により確認審査が行われるときは、構造計算適合性判定及び構造設計ー級建築士の関与は不要となる。

3. 既存不適格建築物に対して増築を行う場合、一定条件下では、既存部分の現行基準の適用を緩和することができるが、建築物の所有者等には、常時適法な状態に維持するための努力義務がある。


4. 構造設計は行わず、法適合確認のみを行った構造設計ー級建築士は、その確認に係る建築物について、建築基準法上の設計者には含まれない。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。(建築士法第2条の2)

2. 記述の通り。(基準法施行令第9条の3)

3. 記述の通り。(基準法第8条)

4. 構造設計を行っていない場合でも法適合判定を行った場合は設計者に含まれる。(建築士法第20条の2第3項)




[ No. 3 ]
建築基準法における地震力に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 鉄骨造建築物を耐震計算ルート1-1により設計するに当たり、基礎の耐震計算について上部構造の耐力確保に影響しない部分については、標準せん断力係数を0.2とした。


2. 高さが25mの鉄筋コンクリート造建築物について、屋上部分から突出した冷却塔の地震力を特別な調査又は研究によらないで計算するに当たり、転倒、移動等による危害を防止する措置を講じることとし、水平震度kを1/2に減じて地震力を算定した。


3. 鉄筋コンクリート造建築物の地震力について、建築物の一次固有周期を固有値解析で算定するに当たり、部材のひび割れによる剛性低下を考慮した剛性を用いた。


4. 地震力の算定に当たり、特別な調査又は研究として、地盤種別の判定に用いる地盤周期を基礎底面位置の常時微動測定結果から求めた。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1. 記述の通りで問題ない。 (技術基準解説書P434, 15〜19行参照)

2. 記述の通り。 (平12建告第1389号)

3. 地震力を算定する際は構造耐力上主要な部分の初期剛性を用いるもとし、剛性低下は考慮してはならない。 (昭55建告1793号第3)

4. 記述内容で問題ない。 (技術基準解説書P. 305)




[ No. 4 ]
建築基準法における荷重及び外力に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 多雪区域以外の垂直積雪鍵が15 cm以上である区域における鉄骨造建築物の許容応力度計算に当たり、折板屋根の勾配が15度以下で、かつ、最上端から最下端までの水平投影長さが10m以上の場合、特定緩勾配屋根に該当するものとして、屋根部分に作用する積雪荷重を割り増す必要がある。


2. 構造骨組の風圧力算定用の速度圧を算定するための高さHは、建築物の屋根平均高さで与えられ、設計する建築物にとって一定の値であるが、外装材の風圧に対する設計用の平均速度圧等の算定に用いる高さHは、設計する外装材の各々の高さに応じて与えられる。


3. 床が吹き抜けていない部分の地下外壁に常時水平方向に作用する設計用土圧は、静止土圧を採用することができる。


4. 倉庫業を営む倉痺における床の積載荷重について、実況に応じて計算した数値が2,900 N/m2であっても、3,900 N/m2を採用しなければならない。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。 (平19国交告第594号第3ホ)

2. 外装材の設計用平均速度圧を求めるときの高さHは構造骨組の風圧力算定用の速度圧と同様に高さと軒高の平均寸法により与えられ一定の値となる。(平12建告第1458号)

3. 記述の通り。 (技術基準解説書P.308)

4. 記述の通り。 (施行令第85条)




[ No. 5 ]
建築基準法における鉄骨造の耐震計算に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 許容応力度計算(ルート1-2)において、水平力を負担する筋かいを保有耐力接合とする場合、原則として当該筋かい軸部の有効断面積より算出される降伏軸力まで接合部が破断しないことを確認すればよい。


2. 許容応力度等計算(ルート2)において、ラーメンと筋かい併用の混合構造で筋かいの水平力分担率が5/7以上の階では、当該階の地鹿時の部材応力を1.5倍に割り増して設計を行う必要がある。


3. 保有水平耐力計算(ルート3)において、冷間成形角形鋼管柱(BCP、BCR材)を用いた場合、損傷が集中する局部崩壊メカニズムか、損傷が分散する全体崩壊メカニズムかを各階床位置で判断し、局部崩壊の場合には当該床位置の柱耐力を低減して保有水平耐力を算定する必要がある。


4. 保有水平耐力計算(ルート3)において、伸び能力がないアンカーボルトを使用し、保有耐力接合の条件を満足しない露出柱脚を用いる場合は、当該階の柱及び梁の部材群としての種別はDとなる。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1. 有効断面積ではなく全断面積が降伏するまで破断しないことが求められ、炭素鋼の場合降伏軸力の1.2倍、ステンレス鋼の場合1.5倍以上必要。(技術基準解説書P.357)

2. 記述の通り。 (昭55建告第1791号)

3. 記述の通り。 (平12国交告第594号第4号三号)

4. 記述の通り。 (技術基準解説書P. 636)




[ No. 6 ]
鉄筋コンクリート造建築物の耐震計算ルート1において、下記の式(1)(平成19年国土交通省告示第593号)を適用する際、次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、下線部を正しく直せ。なお、式(1)の記号は平成19年国土交通省告示第593号による。

 Σ2.5αA w + Σ0.7αA c ≧ ZWA i   式(1)

1. 架構内の鉄筋コンクリート造無開口耐力壁において、壁板の断面積は A w として算定する。


2. 架構内の鉄筋コンクリート造無開口耐力壁において、側柱の断面積は A w として算定する。


3. 架構内の鉄筋コンクリート造そで壁付き柱において、所定の条件を満足するそで壁の断面積は A w として算定する。


4. 架構外の鉄筋コンクリート造壁において、所定の条件を満足する壁板の断面積は A c として算定する。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。

2. Aw→Ac

3. 記述の通り。

4. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 382)




[ No. 7 ]
木質材料及び木質構造に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 主に梁に用いる対称異等級構成集成材は、外層と内層のラミナの強度は同じである。


2. 建築基準法第20条第1項第四号の木造建築物の耐力壁の偏心の検討は、いわゆる「四分割法」で行うのが一般的であるが、偏心率の計算を行ってもよい。


3. 木材の長期許容応力度に対する短期許容応力度の比は、2/1.1 である。


4. 木質材料の梁のたわみ計算において、長期荷重に対する変形増大係数は、構造関係規定により2と定められている。



答え


[ 解答解説 ]
1. 対称異等級構成集成材は内層より外層の強度を高くすることにより曲げに対して効果的な組み合わせにしている。

2. 記述の通り。 (平12建告第1352号)

3. 記述の通り。長期許容応力度は1.1F/3、短期は2F/3である。 (施行令第89条)

4. 記述の通り。 (平12建告第1459号)




[ No. 8 ]
耐風設計に関する次の記述のうち、建築基準法上、 最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 建築物に作用する設計用の風圧力は、国土交通大臣が定める風速V o 、平均風速の高さ方向の分布を表す係数E r 、ガスト影響係数G f 及び風力係数C f などが考慮されて決められている。


2. 都市計画区域内で都市化が極めて著しいとして特定行政庁が規則で定める地表面粗度区分?Wの区域では、地表付近で建築物等による凹凸により風の乱れが大きくなることから、他の地表面粗度区分の場合に比べて速度圧は小さくなる。


3. 屋根面及び壁面の風力係数 C f は、風洞実験の結果によらない場合、閉鎖型・開放型いずれの建築物でも、建築物の外圧係数 C pe (屋外から当該部分を垂直に押す方向を正)から内圧係数C pi (屋内から当該部分を垂直に押す方向を正)を引いて求める。


4. 建築基準法施行令第87条第2項に規定するEの数値は、平均風速の高さ方向の分布を表す係数E r にガスト影響係数G f を乗じて求める。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。 (施行令第87条、平12建告第1454号)

2. 記述の通り。 (平12建告第1454号)

3. 記述の通り。(平12建告第1454号)

4. E r ではなく、E r の2乗にG f を乗じて求める。(平12建告第1454号)




[ No. 9 ]
保有水平耐力計算に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 必要保有水平耐力の計算においては、地震力によって各階に生じる水平力Q udの大きさを、弾性応答1Gの水平力としている。


2. 静的荷重増分解析による保有水平耐力の計算は、地震時の応答変形を求めるものではなく、保有水平耐力に達する時点の変形は、地震時の応答変形とは必ずしも一致しない。


3. 構造特性係数D s は、建築物の塑性変形能力に応じて、建築物に確保すべき安全率である。


4. 地震動によって建築物に生じる力は、その分布が時々刻々変化し、地震力に対する建築物の強さを一義的に定義することはできないため、保有水平耐力は、あらかじめ決められた約束事に基づき計算することとしている。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。(技術基準解説書P. 341)

2. 記述の通り。(技術基準解説書P. 342)

3. D s は各階の構造特性を表すものとして、建築物の構造耐力上主要な構造方法に応じた減衰性及び各階の靱性に応じて決められた必要保有水平耐カの低減係数である。 (技術基準解説書P.349)

4. 記述の通り。 (技術基準解説書P. 344)




[ No. 10 ]
鉄筋コンクリート造の保有水平耐力計算に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 建築物に靱性を期待して設計する場合、建築物全体が保有水平耐力に達する以前にせん断破壊を生じさせないだけではなく、崩壊形に達するまでの段階でもせん断破壊を防止する必要がある。


2. 連層耐力壁の脚部が浮上りや沈み込みによる回転系の破壊形式となる場合、脚部の浮上りや沈み込みを考慮して耐力壁の部材種別を定め、D s の算定を行う。


3. A i 分布に基づく外力分布を用いた荷重増分解析によってD s 算定時に崩壊形を形成していない階の崩壊形を求める方法として、余耐力法(荷重増分解析により求まる部材応力と部材耐力をもとに崩壊形を求める方法)がある。


4. 地上部分について保有水平耐力を確認する場合であっても、基礎の二次設計は要求されていない。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。 (技術基準解説書P. 348)

2. 連層耐震壁の有無にかかわらず浮上りや沈み込みが無いものとしてDsを算定しなければならない。 (技術基準解説書P.402)

3. 記述の通り。(技術基準解説書P. 398)

4. 記述の通り。(技術基準解説書P. 434)



2024年08月21日

令和三年度修了考査 法適合確認(記述式)問題1

法適合確認(記述式)

問題1
一貫構造計算プログラムを用いたツインタワー状の建築物の構造計算に関する設問[ No.1 ]、一貫構造計算プログラムを用いた場合のRC造壁のモデル化に関する設問[ No.2 ]、1階が鉄筋コンクリート造で2階及び3階が木造の立面混構造建築物の構造計算に関する設問[ No.3 ]について解答せよ。

[ No.1 ]
図1に示すような地上階平面をもつ10階建ての建築物がある。1階は全体が一体となっているが、2階以上がツインタワー状になっている。3階床以上にはタワーAとタワーBをつなぐ渡り廊下(図中「つなぎ部」)があるが、タワーB側にExp.Jを設け、XY両方向のローラー支承とすることで、構造的に完全に切り離している。この建築物を、一貫構造計算プログラムで形状どおりにモデル化し、図1に示す説明文に従いプログラムを実行した。ここで、各タワー単独の一次固有周期は、X方向では両者が完全に一致しているが、Y方向では若千異なり、タワー Aで1.00秒、タワーBで1.05秒とする。以下の?@及び?Aの設問について解答せよ。

R03_1_問題1_No.1_3-R階床平面図.jpg
3〜R階床平面

R03_1_問題1_No.1_1,2階床平面図.jpg
1・2階床平面


くモデル化と地震力>
1、2階床を剛床、3階床以上をタワーA、Bの2剛床としてモデル化し、3階床以上のつなぎ部床の重量は、追加荷重として入力する。地震力は、2階以上ではそれぞれのタワーごとにA i 分布で計算し、X、Y方向別に、その階の重心位置に同方向に作用させる。
図1 略平面図と一貫構造計算プログラムの取扱い


?@ この一貫構造計算では、Y方向地震時におけるつなぎ部床の検討が不足しているため、以下の手順で検討を追加するものとする。空欄(あ)〜(え)に適切な数字または語旬を入れよ。

・この一貫構造計算では、主に[ (あ) ]階のつなぎ部床スラブに生じる[ (い) ]に対する検討が不足している。


・つなぎ部床スラプに生じうる最も厳しい応力を計算するため、タワーAとタワーBが[ (う) ]のある動きをする場合を想定する。


・時刻歴応答解析を実施せず、耐震計算ルート3の静的解析のみで構造計算することとしたため、安全側に最も厳しい状態を想定し、タワーAとタワーBに[ (え) ]の地震力を作用させる。


・Exp.Jのクリアランスは、それぞれのタワーの最大応答時の変形の和を想定して、十分余裕をもたせて設定するとともに、つなぎ部床の落下防止にも配慮する。



答え


 (あ):2
 (い):力および変形
 (う):位相差
 (え):逆向き もしくは逆位相




?A このような検討が必要となる理由を、タワーAとタワーBの一次固有周期の観点から述べよ。



答え


一次固有周期が、タワーA側1.00秒、タワーB側1.05秒の場合、1次固有周期で振動すると、21秒で1周期分違い、10.5秒で逆位相になる。そのため、時刻歴応答解析を実施せず、静的解析のみで設計する場合、比較的容易に逆位相になりうることを念頭に置く必要がある。




[ No.2 ]
図2は耐震計算ルート2-1により設計される中低層のRC造剛節架構の中に配置されたRC造壁で、両側に壁高さ分の縦開口があるために、耐霰壁として扱えない壁である。層の水平剛性を高めるとともに水平耐力の余力を確保するため、梁との間にスリットを設けないこととし、この壁を一貫構造計算プログラムでモデル化する際、方立壁(雑壁)として扱い、壁の重量は荷重計算に考慮した。方立壁の水平剛性は応力計算では無視し、剛性率及び偏心率の計算においてのみ考慮した。剛性率及び偏心率の計算に用いる方立壁の水平剛性は、 n倍法を用い、nの値としてデフォルト値の1.0を採用し設定した。ここで、n倍法とは、雑壁の水平剛性Dwを、代表的な中柱の水平剛性Dcをもとに、図中の式で評価する方法のことである。

R03_1_問題1_No.2_図2_両側に壁高さ分の縦開口のある壁.jpg
図2 両側に壁高さ分の縦開口のある壁

この壁の取扱いには不適切な点がある。壁の取扱いに関する以下の?@〜?Bの設問について解答せよ。


?@ この壁のnの値の設定が適切か否か、その理由も含めて述べよ。



答え

 否
方立壁の剛性は、断面積の比率だけでなく、上下の梁の拘束状況により剛性は変化する。また、方立壁の幅が広いほど上下の梁の変形拘束が大きく耐震壁並みの水平剛性を持つ場合もあり、 n=1とすると方立壁の水平剛性を過小評価する可能性があるため。




?A この壁を適切に取扱う方法を具体的に述べよ。ただし、この壁と梁との間にスリットは設けないものとする。



答え


・方立壁の左右両側に通り軸を設け、上下の梁に取り付く耐震壁としてモデル化し評価する。
・周辺架構を含めた部分モデル等により方立壁の水平剛性を評価し、nの値を適切に評価する。
など




?B 一貫構造計算以外に、追加検討すべき事項を一つ述べよ。



答え


・方立壁が取り付くことによる周辺柱梁の応力変動を別途検討し、適切にせん断設計を行う。
・縦開口(スリット)部のはりに生じるせん断力の評価とせん断設計(せん断破壊の防止)
・両側柱の変動軸力の評価とその影響を含めた断面算定
・両側柱の変動軸力等による基礎への影響の評価
などから一つ





[ No.3 ]
図3に示すような1階が鉄筋コンクリート造、2階及び3階が木造の立面混構造建築物の耐震設計に関する以下の?@及び?Aの設問について解答せよ。

R03_1_問題1_No.3_鉄筋コンクリート造と木造の立面混構造建築物.jpg
図3 鉄筋コンクリート造と木造の立面混構造建築物

?@ 本建築物の設計用一次固有周期Tを昭和55年建設省告示第1793号第2に規定されている下式により求めよ。

 T = h(0.02 + 0.01α)(秒)
 ここに、h:建築物の萬さ(m)
 α:木造部分の高さの合計のhに対する比



答え


α = (2.8 + 2.8 + 1.0 )/9.6 = 0.6875

設計用一次固有周期
T = h(0.02+0.01×α)= 9.6x(0.02+0.01x0.6875) = 0.258秒




?A 本建築物の地震力算定用重量を表に示す。この建築物のように2階、3階に比べて1階の重量が大幅に大きい場合には、Ai 分布の算定に当たり、昭和55年建設省告示第1793号第3ただし書きの規定に基づき、1階部分の地震力算定用重量ΣWi を小さくすることができる。これを適用した場合の1階部分の地震力算定用重量ΣWi’を求めよ。

表 地震力算定用重量(kN)
R03_1_問題1_No.3_表_地震力算定用重量.jpg


答え


緩和規定による地震力算定用重量(kN)
R03_1_問題1_No.3_緩和規定による地震力算定用重量.jpg



W 1 +W 2 +W 3 = 800+210+150
      = 1160kN > 2(W 2 +W 3 ) = 2(210+150) = 720 kN
より、
1階部分の地震力算定用重量を2階部分の地震力算定用重量の2倍とする。
1階部分の地震力算定用重量
ΣWi'= 2(W 2 + W 3 ) = 720kN



2024年08月19日

令和三年度修了考査 法適合確認(記述式)問題3

問題3

鉄筋コンクリート造建築物の耐震計算ルート3に関して、図1に示す耐力壁のない剛節架構に左側から水平力Pが作用した場合について、以下の設問に解答せよ。鉛直荷重及び軸方向力による影響は無視するものとし、塑性ヒンジが発生する可能性がある位置等を図2に示す。また、水平力Pによる曲げモーメント図の一例を図3に示す。

R03_1_問題3_図1_架構の軸組図.jpg
       図1 架構の軸組図(単位:mm)

R03_1_問題3_図2_塑性ヒンジの想定位置.jpg
       図2 塑性ヒンジの想定位置

R03_1_問題3_図3_曲げモーメント図の一例.jpg
       図3 曲げモーメント図の一例(単位:mm)

水平力Pにより架構の崩壊形が形成される場合、塑性ヒンジの発生は下記の<その他の諸条件>の(イ) に従って判定するものとする。また、部材の種別は<その他の諸条件>の(ロ)に従って判定するものとする。

<その他の諸条件>

(イ) 塑性ヒンジの発生は、節点位置における曲げモーメント(節点曲げモーメント)を用いて、式(1)、あるいは式(2)により判定する。なお、判定に用いる各部材の節点曲げモーメントは、部材のせん断力を一定として、図2に示す部材の両端部に塑性ヒンジを仮定して曲げ終局モーメント(M u )から算定してよい(図5参照)。ここで、 g M u は梁の節点曲げモーメント、Σ g M u は節点まわりの梁の節点曲げモーメントの和、 c M u は柱の節点曲げモーメントを示す。

・節点まわりの梁端部に塑性ヒンジ発生
 Σ g M u c M u   式(1)

・柱頭部に塑性ヒンジ発生
 Σ g M u > c M u   式(2)

(ロ) 部材の種別は、塑性ヒンジの発生状況に応じて、せん断終局耐力(Q su )が崩壊形形成時のせん断力(Q M )に対して、式(3)、あるいは式(4) を満足する場合にはFA、満足しない場合にはFDとする。なお、破壊形式を除き、各部材において昭和55年建設省告示第1792号第4の種別に関する諸数値は規定値を満足しているものとしてよい。

・部材の両端にヒンジが生じる状態
  Q su ≧ 1.10 Q M   式(3)

・上記以外の状態
  Q su ≧ 1.25 Q M   式(4)


[ No.1 ]
R階のA梁は両側スラブ付き梁(T形梁)であり、スラブが引張側になる曲げ終局モーメントは、有効幅内のスラブ筋により大きく影響される。A梁の曲げ終局モーメント及び種別に関する次の?@〜?Bの設問に解答せよ。その際、A梁の曲げ終局モーメントM u は式(5) によるものとする。ここでは、T形梁の有効せいは長方形梁の有効せいと等しいものとしてよい。A梁の引張側主筋、A梁のM u に考慮する引張側スラブ筋を図4に示す。断面1 では片側約 1m幅のスラブ筋、断面2では片側スパンの約半分に相当する幅のスラブ筋を有効とする。また、A梁及びA柱の両端部に塑性ヒンジが発生した場合の曲げモーメント図を図5に示す。

 M u = 0.9(a t + a s ) ・ s σ y ・d  式(5)

ここに、
 M u :梁の曲げ終局モーメント(N・mm)
 a t :梁の引張側主筋の断面積(mm 2 )
 a s :有効幅内の引張側スラプ筋の断面積(mm 2 )
s σ y :主筋及びスラブ筋の材料強度(N/mm2)で、325 N/mm2としてよい。
 d:長方形梁及びT形梁の有効せい(mm)で、920mmとしてよい。

R03_1_問題3_No.1_R階A梁断面1.jpg
(a) 断面1

R03_1_問題3_No.1_R階A梁断面2.jpg
(b) 断面2

共通事項:
主筋(D25)1本の断面積:507mm 2
スラブ筋(D10)1本の断面積:71 mm 2
図4 A梁の引張側主筋及び有効幅内の引張側スラブ筋


R03_1_問題3_No.1_図5_部材両端部に塑性ヒンジが発生した場合の曲げモーメントA梁.jpg
図5 部材両端部に塑性ヒンジが発生した場合の曲げモーメント

?@ スラブが引張側になる場合、長方形梁としてのM u (M uo )に対する断面1のT形梁のM u (M u1 )の比率(M u1 /M uo )を求めよ。なお、長方形梁の引張側主筋は図4に示すA梁の引張側主筋である。



答え


曲げ終局モーメントは式(5)を用いてそれぞれ以下のように求める。
長方形梁としての曲げ終局モーメントは、
 M u (M uo ) = 0.9 × (4 × 507)・ s σ y ・d
断面1のT形梁の曲げ終局モーメントは、
 M u (M u1 ) =0.9 × (4 × 507 + 10 × 71)・ s σ y ・d
よって、
M u1 /M uo = (4 × 507+10 × 71)/ (4 × 507)
    = 1.35
となる。




?A スラブが引張側になる場合、断面1のT形梁のM u (M u1 )に対する断面2のT形梁のM u (M u2 )の比率(M u2 /M u1 )を求めよ。



答え


同様に断面2のT形梁の曲げ終局モーメントは、
M u (M u2 ) = 0.9 × (4 × 507 + 30 × 71)・ s σ y ・d
よって、
M u2 /M u1 = (4 × 507 + 30 × 71)/(4 × 507 + 10 × 71)
     = 1.52
となる。




?B A梁の両端部に塑性ヒンジが発生した場合(図5 (a))について、A梁の種別を判定し、種別判定の根拠を簡潔に記述せよ。ここで、A梁両端部の塑性ヒンジの曲げ終局モーメントM u は a(kN・m)、A梁のせん断終局耐力Q su は0.60 a(kN)とする。



答え


A梁の両端に塑性ヒンジが生じた時のせん断力は、A梁の内法長さが 5mなので、
 Q M = 2 × a/5 = 0.40a (kN)
A梁の種別は、両端に塑性ヒンジが生じているので式(3)により判定すると、
 Q su = 0.60a (kN) ≧ 1.10Q M = 1.10 × 0.40a = 0.44a (kN)
よって、式(3)を満足しているので A梁の種別はFAである

なお、ここでは問題文に「鉛直荷重及び軸方向力による影響は無視する」とあるので、A梁の常時の鉛直荷重によるせん断力は無視している。




[ No.2 ]
水平力Pの増大により、架構の崩壊形が形成される。各部材の耐力が表1に示す値となるケース?T について、保有水平耐力及び構造特性係数等に関する次の?@〜?Bの設問に解答せよ。

表1 部材の耐力(ケース?T )
R03_1_問題3_No.2_表1_部材の耐力(ケース1).jpg


?@ 架構の崩壊形について、塑性ヒンジの発生位置を解答用紙のフレーム図に●で示せ。その際、図5を参考に、塑性ヒンジが発生している部材の端部に●を表記せよ。



答え



【解答(例)】
水平力Pの増大により、A梁端またはA・B・C柱柱頭のどちらに塑性ヒンジが生じるかは、節点位置における曲げモーメントの釣り合いから判断する。従って、柱頭部及び梁端部の危険断面位置に塑性ヒンジを仮定して、その場合の部材のせん断力から節点曲げモーメントを算出する。次に柱及び梁毎の節点曲げモーメントの総和の小さい方の部材(柱又は梁)に塑性ヒンジを設定して、塑性ヒンジが生じない部材の節点曲げモーメントを修正し、その値から部材のせん断力を修正する(<その他の諸条件>(イ)による)。

作成した崩壊形形成時の曲げモーメント・せん断力図を以下に記載する。
R03_1_問題3_No.2_崩壊形形成時の曲げモーメント・せん断力図.jpg

架構の崩壊形は以下の図となる。
R03_1_問題3_No.2_架構の崩壊形.jpg




?A 架構の保有水平耐力(崩壊形形成時の水平力P ?T )を表1に示すaを用いて答えよ。



答え


架構の保有水平耐力P1は崩壊形形成時の柱のせん断力の合計となるので、
 P ?T = 0.85a + 1.25a + 0.85a = 2.95a (kN)




?B 1階が上記の崩壊形を形成するA柱、B柱及びC柱から構成される場合、1階の構造特性係数 Dsを昭和55年建設省告示第1792号第4に従って求め、その根拠を簡潔に記述せよ。



答え


先ずA梁、A柱、B柱及びC柱の種別を判定する。ここで、A梁には両端にヒンジが生じているので式(3)、A柱、B柱及びC柱は柱頭にヒンジが生じていないので式(4)にて判定する。なお、ここでは問題文に「破壊形式を除き、各部材において昭和55年建設省告示第1792号第4の種別に関する諸数値は規定値を満足しているものとしてよい。」とあるので、式(3)及び式(4)による破壊形式のみにて種別を判定する。

A梁:
 Q su = 0.60a (kN) ≧ 1.10Q M
         = 1.10 x 0.40a = 0.44a (kN)
 ∴ FA

A柱及びC柱:
 Q su = 1.36a (kN) ≧ 1.25Q M
         = 1.25 × 0.85a
         = 1.06a (kN)
 ∴ FA

B柱 :Q su = 1.60a (kN) ≧ 1.25Q M
            = 1.25 × 1.25a
            = 1.56a (kN)
 ∴ FA

上記よりA柱、B柱及びC柱の水平耐力は全て種別FAである柱の耐力となるので、1階の部材群としての種別はAとなる。従って、 1階の構造特性係数 Dsは0.30となる。




[ No.3 ]
架構の変形によりT形梁のスラブの有効幅が増大すると、スラブが引張側となるA梁の右端のM u が増大する。各部材の耐力が表2に示す値となるケースII(A梁右端以外はケース I と同じ)について、保有水平耐力及び部材種別に関する次の?@及び?Aの設問に解答せよ。

表2 部材の耐力(ケースII)
R03_1_問題3_No.3_表2_部材の耐力(ケース2).jpg

?@ 架構の保有水平耐力(崩壊形形成時の水平力P ?U )を表2に示すaを用いて答えよ。



答え


設問[No.2]と同様の方法にて作成した崩壊形形成時の曲げモーメント せん断力図を以下に記載する。なお、崩壊形形成時の塑性ヒンジ発生位置は設問[No.2]の結果と同じである。

R03_1_問題3_No.3_崩壊形形成時の曲げモーメント・せん断力図.jpg

架構の保有水平耐力はP?Uは崩壊形形成時の柱のせん断力の合計となるので、
 P ?U = 0.86a + 1.40a + 0.99a
   = 3.25a (kN)




?A B柱の種別を判定し、種別判定の根拠を簡潔に記述せよ。



答え


B柱の種別は柱頭にヒンジが生じていないので式(4)にて判定する。
 Q su = 1.60a (kN) < 1.25Q M
         = 1.25 × 1.40a
         = 1.75a (kN)
よって、式(4)を満足していないので、せん断破壊形式の部材となり、
種別はFDと判定する。


2024年08月17日

2.1 構造設計の基礎

重要ポイント


1. 荷重・外力

 固定荷重 G(長期荷重)
 積載荷重 P(  〃  )
 ※多雪区域では積雪荷重も長期荷重
 積雪荷重 S(短期荷重)
 風荷重  W(  〃  )
 地震力  K (  〃  )
  ※長期荷重と組み合わせる。
  多雪区域では積雪荷重と風荷重、積雪荷重
  と地震力の組み合わせも考える

?@積載荷重
 床設計用 > 骨組(大梁・柱・基礎)設計用 > 地震力算定用

?A積載荷重
 単位荷重(単位重量)
 一般の地域:積雪 1cm当たり 20N/m 2 以上
 屋根勾配による低減
  屋根形状係数 μb = √(cos(1.5β) β:勾配 [ ° ]

?B風荷重
 風圧力 = 速度圧 q × 風圧係数 Cf
    q = 0.6 E V o 2
    E = Er 2 Gf
    Er:平均風速の高さ方向の分布を表す係数
    Gf:ガスト影響係数
      突風などによる揺れを考慮した割増係数
     V o :基準風速 [ m/s ]
      地上10mの10分間平均風速
 風圧係数 Cf = Cpe – Cpi
    Cpe:建築物の外圧係数
    Cpi:建築物の内圧係数

 地表面粗度区分
    ?T ( 極めて平坦で障害物がない区域)〜
   ?W( 都市化が極めて著しい区域)
  地表面粗度区分によるErの大小関係
    ?T > ?U > ?V > ?W

?C地震力

 地震層せん断力 Qi = Ci × Wi
  Ci:i 層の地震層せん断力係数
  Wi:i層が支える部分の固定荷重及び積載荷重の和

 地震層せん断力係数
  Ci = Z・Rt・Ai・Co

  Z:地震地域係数
   (地域による地震力の低減係数 1.0〜0.7)
  Rt:振動特性係数
   (固有周期と地盤の振動特性とによる低減係数
    Tが長くなるほど、地盤が硬いほど小さくなる)
  Ai:高さ方向の分布係数
   (上階ほど、Tが長いほど、大きな値となる
    地上部分最下層は Ai=1)
  Co:標準せん断力係数
    一次設計 Co ≧ 0.2
     (鉄骨造 ルート1では Co ≧ 0.3)
    保有水平耐力計算時 Co ≧ 1.0

 設計用一次固有周期 T (秒)
   T = h ( 0.02 + 0.01α )

 地下部分の水平震度 k
   k ≧ 0.1( 1 − H/40 ) Z
   ※Hが20mを超えるときは、20

2. 許容応力度計算、許容応力度等計算、保有水平耐力計算

応力の組合せ(施行令第82条)
 想定する状態と応力の組合せ
想定する状態と応力の組合せ1.jpg
 G:固定荷重により生じる力
 P:積載荷重により生じる力
 S:積雪荷重により生じる力
 W:風圧力により生じる力
 K:地震力により生じる力

耐震計算の流れ
耐震計算の流れ.jpeg

・層間変形角 ≦ 1/200(1/120)の確認

・高さ31m以下の建築物(耐震計算ルート2)
 剛性率 ≧ 0.6(Rs:Rate of stiffnes)
 偏心率 ≦ 0.15(Re:Rate of eccentricity)
 塔状比 ≦ 4
 耐力壁、袖壁、腰壁、垂れ壁などの剛性は、弾性剛性に基づいた値とする。

・保有水平耐力の確認(耐震計算ルート3)
  保有水平耐力 Qu ≧ 必要保有水平耐力 Qun

・必要保有水平耐力
  Qun = Ds・Fes・Qud
  Ds:構造特性係数
   (構造に応じた減衰性及び靱性を考慮した低減係数)
    大きい値の方が安全側
    RC造    Ds ≧ 0.3
    SRC造,S造 Ds ≧ 0.25
  Fes:形状係数(= Fs・Fe)
   (剛性率に応じたFsと偏心率に応じたFe
    の積で表される割増し係数)
  Qud:大地震を想定し、Co ≧ 1.0 とした地震層せん断力

3. 限界耐力計算
限界耐力計算.jpeg

2024年08月16日

令和二年度修了考査 構造設計(4肢択一式)No.1 〜 No.20


[ No.1 ]

建築物の耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1. 事業継続計画(BCP)のために、地震時においても、建築物に財産保全と機能維持が要求される場合が増えている。


2. 建築基準法は、過去の地震災害等から得られた教訓及び最新の学術的知見によって改正されてきたことから、設計者はたとえ施行される前であっても、改正を先取りした構造設計を行うことが望ましい。


3. 地震を受ける構造物の挙動は動的なものであるが、動的解析は高度で繁雑であることから、耐震設計は動的効果を考慮した等価な静的荷重を用いる方法が認められている。


4. 鉄筋コンクリート造純ラーメン構造は、壁式構造とは異なり、柔軟で大きな塑性変形能力を有していることにより、中程度の地震動(稀に発生する地震動)に対して塑性変形を考慮した設計を行うことができる。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。

2.◯
記述のとおり。

3.◯
記述のとおり。

4.×
中程度の地震動に対しては許容応力度設計が求められており、塑性変形は許容されていないため、誤り。
(テキスト第3章 2-2(1)稀に発生する地震動に対する許容応力度設計)




[ No. 2 ]
図A〜Dに示す鉄骨柱の座屈耐力Pの大小関係として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、全ての柱は等質等断面であり、柱及び梁の重最は無視し、柱頭の面外方向の移動は拘束され、柱と梁は剛接されているものとする。また、ブレースは柱頭の水平移動を拘束し、ブレースの座屈は考えないものとする。

R02-2_No.02_鉄骨柱の座屈_A.jpgR02-2_No.02_鉄骨柱の座屈_B.jpgR02-2_No.02_鉄骨柱の座屈_C.jpgR02-2_No.02_鉄骨柱の座屈_D.jpg

1. A = D < B = C

2. A < D < C < B

3. D < A < B < C

4. D < A < C < B


答え

 4
[ 解答解説 ]
オイラーの座屈荷重は下式で示される。
R02-2_No.02_オイラーの座屈荷重.jpg

よって、座屈耐力Pは座屈長さLkの2乗に反比例する。
それぞれの架構の座屈長さは下記のとおりとなる。
A:下部固定端、上部固定端 、上部横拘束なし → Lk = 1.0?
B:下部固定端、上部固定端 、上部横拘束あり → Lk = 0.5?
C:下部固定端、上部ラーメン、上部横拘束あり
  梁の長さや梁の断面についての記載がないため、
  正確な座屈長さはわからない。
  梁の剛性が無限に小さい場合は、
  Lk = 0.7?から 0.5?< Lk < 0.7? となる
D:下部固定端、上部ラーメン、上部横拘束あり
  Cと同様の拘束条件のため
  0.5(2?) < Lk < 0.7 (2?) から
   1.0?< Lk < 1.4?
以上より、各パターンの座屈長さ Lk は
B < C < A < D となるため、座屈耐力Pは
D < A < C < Bとなる。




[ No.3 ]
図のような2つの静定平面トラスがあり、トラス I はA点に、トラス ?U はB点に、それぞれ2Pの鉛直荷重を受けている。それぞれの載荷点の鉛直変位δAとδBの組合せとして、正しいものは、次のうちどれか。なお、全ての部材について断面積をA、ヤング係数をEとする。

R02-2_No.3_トラス1.jpgR02-2_No.3_トラス2.jpg

R02-2_No.3_トラスの鉛直変位選択肢.jpg


答え

 3
[ 解答解説 ]
テキスト(第2章 1-3仮想仕事の原理とトラスの解析)にある仮想仕事の原理の単位仮想荷重法の式は次の通り。
R02-2_No.03_仮想仕事の原理の単位仮想荷重法.jpg

この問題はトラスのため、各材において曲げモーメント、せん断力の項は0であり、軸力は材軸にわたって一定である。よって
R02-2_No.03_軸力は材軸にわたって一定である。.jpg
となる。

トラス I
トラスの軸力の解(引張を正とする)
     実際の軸力N o
R02-2_No.03_トラス?T_実際の軸力N0.jpg

     単位荷重による軸力N
R02-2_No.03_トラス?T_単位荷重による軸力N.jpg

R02-2_No.03_トラス?Tのたわみ量.jpg

トラスII
トラスの軸力の解(引張を正とする)
     実際の軸力N o
R02-2_No.03_トラス?U_実際の軸力N0.jpg

     単位荷重による軸力N
R02-2_No.03_トラス?U_単位荷重による軸力N.jpg

R02-2_No.03_トラス?Uのたわみ量.jpg




[ No.4 ]
構造材料に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.コンクリートの圧縮強度時のひずみは、強度の高いコンクリートほど大きくなり、その値は、およそ0.015〜0.03%程度である。


2. 建築構造用鋼材の一軸載荷試験において、降伏点以上の応力度で正負交番繰返し荷重を作用させると、第1サイクル目の引張時には、弾性→降伏→降伏棚→ひずみ硬化という履歴特性が見られるが、それ以降の履歴には降伏棚は見られなくなる。


3. 耐火鋼は、SN材に耐熱性を高めるモリブデンなどの合金元素を添加して、高温域での耐火性能を高め、許容温度600℃(鋼材の長期許容応力度を600℃まで保持すること)を保証するように製造された鋼材である。


4. 木質構造においては、一般に、主要部材には含水率20%以下のものを使用するが、クリープ変形などを考慮して、含水率15%程度以下の材料を使用することが望ましい。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1.コンクリートの圧縮強度時のひずみはおよそ0.15%〜0.3%で、0.015%〜0.03%ではない。
(テキスト第2章 2-2(3)コンクリートの強度と材料定数)テキスト4章(テキスト第4章 3-1コンクリートの材料特性)では圧縮強度時のひずみは強度にも依存しないと記載されているが、2章に示されている実験結果からある程度強度が高いほど歪も大きくなっていると考えられる。

2. 記述の通り。
(テキスト第2章 2-1 (1)鋼材の機械的性質 )

3. 記述の通り。
(テキスト第2章 2-1(3)新しい建築構造用鋼材 )

4. 記述の通り。
(テキスト第2章 2-3(3)木材の含水率および耐久性」では、多くとも20%以下と記載している。「テキスト第4章 1-2(6)含水率」では、できるだけ乾燥材を使用しなければならないと記載している。また、含水率の表示で最も厳しいのが「D15」で15%以下であるから、記述は正しいと考えられる。)




[ No. 5 ]
建築物の構造計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地震力に対する抵抗メカニズムが強度型の構造は、鉄筋コンクリート造の耐震壁や鉄骨造のブレースなど、強度の大きい耐震要素を用いるものであり、塑性化の効果はほとんど期待していない。


2. 昭和46年建設省告示第109号に「高さ31mを超える建築物の屋外に面する帳壁は、1/100の層間変位に対して脱落しないこと」と規定されている。


3. 耐震要素の偏在により偏心が大きくなる場合には、直交方向のフレームの水平剛性を大きくし、地震時のねじり剛性を高めることで、偏心の影響を低減することができる。


4. 一般的な高層多スパンラーメン構造の場合、外柱の水平荷重時負担せん断力は、柱軸変形を考慮した場合のほうが考慮しない場合よりも小さくなる。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第3章 2-2(2)極めて稀に発生する地震動に対する保有水平耐力計算)

2. 1/150となっており、誤り。
(テキスト第2章 3-5(2)主に風荷重のみを受ける部材)

3. 記述の通り。
(テキスト第2章 3-4(2)水平荷重に対する計画)

4. 記述の通り。
(柱の軸方向変形を考慮した場合、梁に部材角が生じることにより梁部材端回転角が減少し曲げモーメントが小さくなる。)




[ No. 6 ]
建築物の構造解析に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.耐震壁のモデル化において、耐震壁とその付帯柱を一体の柱とみなし、梁の部材に壁幅分の剛域を設ける「線材置換法」は、耐震壁が不規則に配置されている架構に対しても、精度よく解析できるモデル化である。


2. 建築物と地盤の力のやり取りを解析する場合、建築物の地下部分が深い場合などの特殊な条件での精算値を求めるには、地盤・建築物一体型解析モデルを用いる。


3. 一般に、動的解析における剛性比例型の減衰特性は、高次モードの影響が応答に表れにくいため、注意が必要である。


4. 等価せん断型の質点系振動モデルにおいては、ある層のせん断力は当該階のみの層間変形に依存し、他の層の変形の影響を受けないものと考え、質点をせん断バネで直列につないだ系としてモデル化している。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1.耐震壁が不規則に置換されるとき、剛域の考え方が難しく、精度が悪い(テキスト第2章 図4-2耐震壁のモデル化)、線材置換法は応力が小さい耐震壁に適用すべき(テキスト第4章 3-4部材のモデル化)とされており、誤り。

2. 記述の通り。
(テキスト第2章 4-2(3)動的解析c.建築物と地盤の相互作用)

3. 記述の通り。
(テキスト第3章 2-3(2)建築物の振動系モデル)

4. 記述の通り。
(テキスト第2章 4-2(3)動的解析)




[ No.7 ]
荷重・外力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.建築基準法は最低基準を規定しているという理由から、耐震規定には重要度係数や用途係数は規定されていない。


2. 通常、地震時に建築物が弾塑性挙動をすると仮定すると、建築物の最大応答加速度は入力地震動のおおむね3倍から5倍程度の値となる。


3. 昭和56(1981)年施行のいわゆる新耐震基準では、稀に発生する地震動に対する設計と、極めて稀に発生する地震動に対する設計の2段階の耐震設計が導入された。


4. 限界耐力計算の耐震計算における地震力は、まず建設地域の工学的基盤の標準地震動スペクトルを設定し、次に建設地点の表層地盤の増幅特性係数を用いて上部構造物の設計用応答スペクトルを設定して、算定する。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第3章 1-3(1)設計用荷重および外力に対する建築物の要求性能)

2. 建築物の最大応答加速度は、2.5倍〜3倍となるので、誤り。
(テキスト第3章 1-3(2)設計用荷重および外力の考え方)

3. いわゆる新耐震基準には、「稀に発生する地震動」や「極めて稀に発生する地震動」という言葉は書かれていないが、テキストにはそのように記載されているため、記述の通り。
(テキスト第3章 2-2(2)極めて稀に発生する地震動に対する保有水平耐力計算)

4. 記述の通り。
テキスト(第3章 1-3 (2)設計用荷重および外力の考え方)には限界耐力計算の地震力が工学的基盤のスペクトルで表現されていることが書かれている。設計では記述の通り、表層地盤の増幅特性係数を用いて設計用応答スペクトルを設定する。




[ No. 8 ]
耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地震波にはいろいろな周期成分が含まれており、一般に、伝搬する過程において短周期成分は比較的早く減衰し、震源の遠い地震では相対的に長周期成分が多くなる。


2. 許容応力度設計では、終局時に構造物のどのような性能を保証しているかは明確ではない。


3. 限界耐力計算は構造物の地震動による応答が1次モードで近似できると仮定しているので、高さ方向に剛性あるいは質量分布が不均等となるような構造物には適用が難しい。


4. 時刻歴応答解析において内部粘性減衰に剛性比例型を用いると、高次モードの減衰は振動数に反比例して小さくなる。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第3章 2-1(1)地震と地震動)

2.記述の通り。
(テキスト第3章 2-2(1)稀に発生する地震動に対する許容応力度計算)

3.記述の通り。
(テキスト第3章 2-2(3)限界耐力計算)

4.×
剛性比例型の減衰では高次モードになる(振動数が大きいなる)ほど、減衰は大きくなるため。誤り。
(テキスト第3章 2-3(2)建築物の振動系モデル、テキスト第2章 4-2(3)動的解析)




[ No. 9 ]
耐風設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地表付近の風の性状は、建築物や樹木など地表面の粗さによって影響され、海岸付近や田園地帯など地表面が滑らかなほど、上層の風が地表付近でもそれほど弱まらず、乱れの少ない強風が吹く。


2. 平成12年建設省告示第1454号に定める基準風速Voは、平坦で開けた田園地帯などにおける高さ10mでの、再現期間50年の暴風の最大瞬間風速に相当する値である。


3. 風によって建築物に生じる振動については、通常の低層・中高層建築物では風方向振動を考慮すればよいが、超高層建築物ではそれに加えて、建築物の後流に発生する渦による風直交方向振動やねじれ振動の影響を考慮する必要がある。


4. 風によって生じる振動に対する居住性については法令上の規定はないが、建築物の用途によっては重要な課題であり、一般には、再現期間1年の風速による応答加速度により評価されることが多い。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第3章 3-3(2)地表面粗度区分の判定)

2. 基準風速V0は10分間平均風速に相当する値であり、誤り。
(テキスト第3章 3-3(2)地表面粗度区分の判定)

3.記述の通り。
(テキスト第3章 3-2(4)風により建築物等に生じる振動現象)

4.記述の通り。
(テキスト第3章 3-3(9)居住性の評価)




[ No. 10 ]
木質材料及び木質構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1. 木材は荷重継続の影響が大きいため、積雪荷重に対して「中長期」、「中短期」という概念を取り入れている。


2. 厚さ30mm前後の挽き板を1層ごとに繊維方向を直交させて積層接着したパネルを、CLT(Cross Laminated Timber)という。


3. 木造のいわゆる「四号建築物」の場合、構造計算を行えば、「壁量計算」を行う必要はない。


4. 1階が鉄筋コンクリート造で、2階及び3階が木造の混構造の場合、Aiを求める際の地震カ算定用重量の扱いが単一構造形式の場合と異なるので注意する必要がある。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第4章 1-2(7)荷重継続の影響)

2.記述の通り。
(テキスト第4章 1-4(8)集成材・合板・LVL・OSB等)

3.木造の場合、「壁量計算」は他の構造でいう「仕様規定」にあたるもので、構造計算を行った場合でも「壁量計算」を満足する必要があり、誤り。
(テキスト第4章 1.1(2)構造計算のルート)

4.記述の通り。
(テキスト第4章 1.1(3)構造のモデル化)




[ No. 11 ]

木質構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.軸組構法の「耐力壁形式」の建築物では、一般に、柱と梁桁からなる軸組で鉛直荷重を支え、耐力壁が水平力を負担するものとしている。


2. 実験から耐力壁の許容せん断耐力を算定する際には、ばらつきを考慮して、複数の試験体を用いて実験を行い、それらの実験値の下限値を用いなければならない。


3. 性能表示制度の単位床面積当たりの必要壁率には、部分2階建てにおける地震力の違いが考慮されている。


4. 釘やボルト、ドリフトピンなどは、一般に、せん断に働くように用いる。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第4章 1-1(3)構造のモデル化)

2.実験の結果は3体の試験体の平均値にばらつき係数を乗じた値とするため、誤り。
(テキスト第4章 1-4(3)実験による壁の許容値の求め方)

3.記述の通り。
(テキスト第4章 1-7(6)性能表示の壁量計算)

4.記述の通り。
(テキスト第4章 1-5(6)「接合具」の強度評価)




[ No. 12 ]
鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1. 鋼材は、温度が高くなると靱性が低下するので、鋼材の靱性を表す値として、シャルピー衝撃試験による0℃のときの吸収エネルギーが用いられる。


2. 鋼管柱の曲げ降伏耐力は、圧縮軸力の増大にともない低下する。


3. 根巻型柱脚では、鉄筋コンクリート部分で曲げモーメントを負担するので、塑性変形能力に優れたアンカーボルトを使用する必要はない。


4. 柱梁接合部の設計において、接合部パネルは幅厚比が大きくても塑性変形能力に優れていることが実験的に確認されていることから、柱の軸耐力に余裕がある場合、接合部パネル崩壊形を避けなくてもよい。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1.温度が低くなると靱性が低下するため、誤り。
(テキスト第4章 2-1(2)靱性)

2.記述の通り。
(テキスト第4章 2-2(3)曲げ圧縮材)

3.記述の通り。(誤りではないが、根巻き柱脚脚部の曲げ変形に応じてアンカーボルトにも大きな軸応力が生じ、かつせん断力を伝達する必要があるため、塑性変形能力が高いことが望ましい)

4.記述の通り。
(テキスト第4章 2-2(4)柱梁接合部パネル)




[ No. 13 ]
鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1. 日本建築学会「鋼構造設計規準」では、鋼材の基準強度Fは、降伏点又は引張強さの70%のいずれか小さいほうの値を採用することが示されている。


2. 鋼材の応力ーひずみ関係において、一般に、温度が高くなると降伏点は低下し、ひずみ速度が速くなると降伏点が増大する特性を持つ。


3. 露出型柱脚を有する架構のモデル化では、アンカーボルトの配置に対応した回転剛性を評価したばねを柱脚部に設けるのが一般的である。


4. 限界細長比を超えた圧縮材の曲げ座屈耐力は、鋼材の降伏強度を大きくすることで増大させることができる。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第2章 2-1(2)鋼材の種類)

2.記述の通り。
(テキスト第4章 2-1(1)応力-ひずみ関係)

3.記述の通り。

4.圧縮材の曲げ座屈耐力は座屈長さと断面形状で決まる。よって鋼材の降伏強度を大きくしても座屈耐力は大きくならないため、誤り。




[ No.14 ]
図は、鉄筋コンクリート造2層多スパン均等平面骨組に水平力が作用したときの一部架構を切り出して示したものである。1階柱、2階柱梁接合部、及び2階柱にひび割れが発生する場合、ひび割れの方向を示す図として、最も適当なものは、次のうちどれか。

R02-2_No.14_水平力を受けるRC造2層多スパン均等平面骨組.jpg
水平力を受ける鉄筋コンクリート造2層多スパン均等平面骨組
(一部架構を切り出して表示)

R02-2_No.14_RC造2層柱のひび割れ_1.jpgR02-2_No.14_RC造2層柱のひび割れ_2.jpgR02-2_No.14_RC造2層柱のひび割れ_3.jpgR02-2_No.14_RC造2層柱のひび割れ_4.jpg


答え

 3
[ 解答解説 ]
2階の柱は曲げ変形は主体となり、曲げモーメントの引張側にひび割れた発生する。1階柱は腰壁によりせん断変形が主体となり、変形する平行四辺形で延びる対角線の反対にひび割れが生じる。

柱梁接合部は左上-右下方向に引張られる(右上-左下方向に圧縮される)せん断変形となるので、右上-左下方向にせん断ひび割れが発生する。




[ No.15 ]
鉄筋コンクリート構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.コンクリートのヤング係数は、圧縮強度が増大すると、ほぼ圧縮強度の平方根又は立方根に比例して増大するので、構造解析における部材剛性算定では、設計基準強度に対応したヤング係数を用いなければならない。


2. 鉄筋コンクリート造の柱では、鉛直荷重によってコンクリートに圧縮クリープが生じ、主筋の圧縮応力が徐々に増大していく。


3. 十分な量かつ適正な形状のせん断補強筋を用いれば、コア部分のコンクリートが拘束され、応カーひずみ関係が改善されることから、大地震時の1階柱脚断面での中立軸位置は、せん断補強筋量が少ない場合に比べて、断面中心に近くなる。


4. 付着割裂破壊の検討において、割裂面を横切る横補強筋櫨が多いほど付着割裂強度は上昇するが、横補強筋の降伏点を上げても付着割裂強度の上昇にはつながらない。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(テキスト第2章 2-2(3)コンクリートの強度と材料定数、
 テキスト第4章 3-1コンクリートの材料特性)

2. 記述の通り。
(テキスト第4章 3-1コンクリートの材料特性、3-2鉄筋の材料特性)

3. コア部分のコンクリートが拘束された場合、ひずみが大きい領域での耐力低下が小さくなり、結果として中立軸の位置は断面中心から遠くなる。その結果、断面の応力中心間距離は大きくなり、より大きな抵抗モーメントが期待できる。よって誤り。
(テキスト4章3-8部材の変形性能)

4. 記述の通り。




[ No. 16 ]
免震構造・制振構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1. 免震構造の設計において、免震層に変形を集中させるためには、上部構造の層せん断剛性を大きくすることが効果的である。


2. 建築基準法上、制振建築物の設計は時刻歴応答解析(令第81条)によるほか、鋼材ダンパーに関しては、告示エネルギー法(平成17年国土交通省告示第631号)により行うことができる。


3. 制振建築物の設計において、主架構の応答加速度を低減するためには、できる限り多くのダンパーを用いることが効果的である。


4. 中高層の制振建築物の設計において、軸剛性及び軸耐力の高い制振部材を連層配置する場合、主架構の柱の軸剛性が十分に高くないと、制振部材周りの架構の曲げ変形成分が卓越し、層のせん断変形比率が下がり、ダンパーの効果が低下する。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第4章 6-1(1)免震構造の原理)

2. 記述の通り。
(テキスト第4章 6-2(3)制振部材による地震応答低減効果)

3. 入力する地震動にもよるが、設計用地震動のスペクトルが速度一定領域のあるスペクトルであるとすると、ダンパーを付加していくと、建物周期が短くなり、変位応答は小さくなるが、ある一定以上の剛性となると加速度低減効果が小さくなる特徴がある。そのため、ダンパー量が多すぎると加速度応答はかえって増加してしまうことがあるため、誤り。
(テキスト4章6-2(3)制振部材による地震応答低減効果)

4. 記述の通り。
(テキスト第4章 6-2(4)設計上の留意点)




[ No. 17 ]
地盤・基礎に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1. 標準貫入試験を実施すると対象地盤のN値が求められるが、同時にサンプラーにより採取した土を分析して、その土質と粒度分布などの物理特性を求めることができる。


2. 擁壁が背面の土に対して離れる方向に動くときに、擁壁に働く土圧は比較的小さな変位で極限釣合い状態(主働土圧状態)になる。


3. 直接基礎下に粘性土がある場合、建築物の自重によって圧密沈下が発生するかどうかの予測は、圧密試験を行い地盤自体の応力と建築物からの荷重による増加応力の合計が圧密降伏応力を超 えるかどうかで判断する。


4. 地震時に建築物からの水平力が杭に作用する場合に、杭体に発生する曲げモーメントの算定には、杭先端部付近の地盤の水平地盤反力係数の評価が重要である。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(テキスト第4章 7-3(2)地盤調査法)

2. 記述の通り。
(テキスト第4章 7-2(5)土圧・水圧)

3. 記述の通り。
(テキスト第4章 7-5(3)直接基礎)

4. テキスト(7-7)、(7-8)式にて算定する杭の曲げモーメントは杭頭部が大きく、杭頭部付近の水平地盤反力係数の影響が最も大きいため、誤り。
(テキスト第4章 7-5(4) d.杭の水平抵抗)




[ No. 18 ]
地盤・基礎に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地下水位より以深の飽和した緩い砂質土は、地震などの繰り返しせん断応力の作用により間隙水圧が上昇し、有効応力が消失すると、液状化現象が発生する。


2. 土のせん断強さを求めるときには粘着力と内部摩擦角を決めることが必要であり、砂質土の場合は粘着力が、粘性土の場合は内部摩擦角が支配的となる。


3. 直接基礎と杭基礎を併用した異種基礎を採用する場合には、異種基礎の境界部に発生することが想定される障害等を見極め、設計上の配慮を行う。


4. 杭の種類は、既製杭と場所打ちコンクリート杭に大別されるが、杭先端部付近を掘削時に杭径以上に拡大して、セメントミルクと土砂を撹拌混合する工法があるのは既製杭である。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(テキスト第4章 7-2(2)液状化)

2. 砂質土の場合は内部摩擦角、粘性土の場合は粘着力が支配的であり、誤り。
(テキスト第4章 7-2(4)せん断強さ)

3. 記述の通り。
(テキスト第4章 7-5(5)併用基礎)

4. 記述の通り。




[ No. 19 ]
建築物の非構造部材の設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.外装材は建築物を構成する重要な要素であり、その耐風設計においては、構造骨組設計用と同じ風荷重を用いて、外装材の破損や飛散に対する安全性を検討する必要がある。


2. カーテンウォールの層間変位に対する追従性能を確保する方法としては、?@固定方式、?A 面内変形追従方式、?Bスウェイ方式(スライド方式)、?Cロッキング方式の4つの考え方があり、この中ではロッキング方式が最も高い層間変位追従性能を期待できる。


3. エキスパンションジョイントは中小地震時に構造体どうしが衝突しないクリアランス寸法を確保するとともに、当該ジョイント部が避難経路となる場合などでは大地震時においても可動部分の部品やカバー等が脱落しないように配慮する必要がある。


4. 特定天井とは、吊り天井であって、高さが6mを超える天井の部分で水平投影面積が200m 2 を超え、天井面構成部材等の単位面積質量が2kg/m 2 を超え、かつ、人が日常立ち入る場所に設置されているものをいう。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1.構造骨組み設計用の風荷重は平成12年建設省告示第1454号で算出するが、外装用は平成12年建設省告示第1458号によるため、誤り。
(テキスト第3章 3-3(5)構造骨組設計用と外装材等設計用の速度圧と風力係数)

2. 記述の通り。
(テキスト第4章 9-2変形追従型の耐震設計)

3. 記述の通り。
(テキスト第4章 9非構造部材)

4. 記述の通り。




[ No. 20 ]
既存建築物の耐震診断・耐震補強に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1. 1995年に阪神・淡路地域を襲った兵庫県南部地震では、1981年以前に設計 施工された建築物に甚大な被害が生じ、耐震補強の重要性が強く再認識された。


2. 鉄筋コンクリート造の耐震診断において第3次診断は、梁よりも先に、柱・壁などの鉛直部材が破壊する柱崩壊型建築物の耐震性能を簡略的に評価することを目的として開発された診断手法である。


3. 鋼構造では構造体の耐力が接合部耐力によって決定される場合が多く、その製作・施工状況により大きく影響を受けるため、鋼構造の耐震診断を精度よく行うためには構造体の接合部の現地調査が不可欠である。


4. 木造住宅の耐窟診断法における専門家向けの「一般診断法」は、耐震補強の必要性を判定することを主目的としており、診断は「地盤・基礎」と「上部構造」についてそれぞれ行うこととしている。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第5章 1-2既存建築物に対する耐震化対策)

2. 記述の内容は第2次診断についてもので、第3次診断は梁先行降伏が評価できる診断方法となっているため、誤り。
(テキスト第5章 2-2耐震性の判定)

3. 記述の通り。
(テキスト第5章 3鋼 耐震診断・耐震補強)

4. 記述の通り。
(テキスト第5章 4-2 一般診断法)


2024年08月14日

令和二年度修了考査 構造設計(記述式)問題1

(記 述 式)

問題1
図1は、鉄筋コンクリート造の耐力壁とスラブで構成され、スラブの重心位置で水平力2Qを受け、脚部が固定支持されている1層1スパンの架構モデルを表す。耐力壁は厚さ t、スラブは厚さ2tで、いずれも面外変形は拘束され、面内せん断力によるせん断変形のみが生じると仮定する。スラブと耐力壁の接合部は剛結されているものとする。

R02-2_問題1_図1_立面図.jpg
立面図(寸法単位mm)

R02-2_問題1_図1_側面図及び耐力壁の変形図.jpg
側面図及び耐力壁の変形図(寸法単位mm)

R02-2_問題1_図1_平面図.jpg
平面図及び加力点位置の変形図

R02-2_問題1_図1_架構モデル.jpg
図1 架構モデル

スラブ及び耐力壁とも、十分なせん断補強筋が配置されており、面内せん断力によるせん断応力度τとせん断変形角θの関係は図2のようなバイリニア関係に理想化できるものとする。なお、スラブ及び耐力壁のせん断応力度τは、せん断力を断面積で除したものとする。

図2において第1折れ点は、せん断ひび割れが生じて剛性が低下することを示す。この時のせん断応力度τは 0.05Fc(コンクリートの短期許容せん断力相当、Fc はコンクリートの設計基準強度)とし、せん断変形角θは 0.25 × 10 -3 rad. とする。第2折れ点はせん断破壊が生じ、耐力を消失することを示す。この時のせん断応力度τは 0.20Fcとし、せん断変形角θは 4 × 10 -3 rad.とする。

R02-2_問題1_図2_スラブ及び耐力壁のせん断応力度-せん断変形角の関係.jpg
図2 スラブ及び耐力壁のせん断応力度τ-せん断変形角θ関係

この架構に関する以下の設問に解答せよ。
ただし、h = ?= 4,000mmとする。

[ No.1 ]
耐力壁がせん断破壊するときの、耐力壁のせん断変形量δ w 、スラブのせん断応力度τ s 、スラブのせん断変形量δ s 、及び架構の加力点位置の水平変位量δ f1 (= δ s + δ w )を求めよ。



答え


[ 解答解説 ]
・耐力壁がせん断破壊するときのせん断変形量δwは、そのときのせん断変形角をθwとすると、

δ w =θ w ・h = 4 × 10 -3 × 4,000 = 16.0mm

・スラブのせん断応力度τ s は、耐力壁のせん断応力度をτ w (=0.20Fc)とすると、
τw = Q/( I o ・t) であることから、

τ s = Q/( I o ・2t) = Q/( I o ・t)/2 =τ w /2 = 0.20Fc/2 = 0.10Fc

・スラブのせん断変形量δ s については、
スラブのせん断応力度τ s = 0.10 Fcの時のせん断変形角θ s は図2より

θ s = 0.25 × 10 -3 + (4.0 – 0.25) × 10 -3 /(0.20 – 0.05) × (0.10 – 0.05) =1.5 × 10 -3 rad.

従って、δ s = θ s ・? =1.5 × 10 -3 × 4,000 = 6.0mm

・架構の加力点位置の水平変位量δ f1
δ f1 = δ s + δ w = 6.0 + 16.0 = 22.0mm




[ No.2 ]
スラブの厚さを2tから半分のtに低減した場合について、耐力壁がせん断破壊するときの架構の加力点位置の水平変位量δ f2 を求めよ。また、この水平変位量は、設問 [ No.1 ]で求めた水平変位量δ f1 の何倍になるか、小数点以下2桁で示せ。



答え


[ 解答解説 ]
スラブ厚さが t のときのスラブのせん断応力度τ s2 は、耐力壁がせん断破壊するときのせん断応力度τ w と等しくなり、

τ s2 = Q/( Io・t) = τ w = 0.20Fc

そのときのスラブのせん断変形角θ s2

θ s2 = 4 × 10 -3 rad.

従って、δ f2 = δ s2 + δ w
      = θ s2 ・?+ δ w
      = 4 ×10 -3 × 4,000 +16.0=32.0mm

δ f2 f1 = 32.0/22.0 ≒ 1.45




[ No.3 ]
耐力壁がせん断破壊するときでも、スラブのせん断変形を弾性範囲内(図2の第1折れ点以前)に収めるためには、スラブの厚さを耐力壁の厚さの何倍以上にすればよいか答えよ。



答え


[ 解答解説 ]
必要なスラブ厚さをn・tとすると、スラブのせん断応力度τ sn は、
τ sn = Q/(I o ・n ・t) = Q/(I o ・t)/n = τ w /n
ここで、耐力壁がせん断破壊するときの τ w = 0.20Fcで、
τ sn ≦ 0.05Fc となるためには、
τ sn = 0.20Fc/n ≦ 0.05Fc

従って、 n ≧ 0.20Fc/0.05Fc = 4倍

となり、スラブの厚さを耐力壁の厚さの 4倍以上にすればよい。




[ No.4 ]
耐力壁を有する一般的な鉄筋コンクリート造建築物の設計を行うに当たり、耐力壁に確実にせん断力を伝達するために、スラブに生じる面内せん断応力度をどの程度に抑えればよいと思うか、その理由も含めて構造設計者としての考えを述べよ。



答え


[ 解答解説 ]
各荷重レベルに応じて、スラブに生じる面内せん断応力度のレベルを以下に記載するように抑えるべきと考える。

1) 土圧などの長期荷重時には、スラブに確実にせん断ひび割れを生じさせないために、コンクリートの長期許容せん断応力度以内とすべきである。

2) 短期荷重時(地震荷重時)、及び極めて稀に発生する風荷重時には、弾性剛性に基づいた応力解析によって層せん断力の配分を行なっていることから、スラブの剛性低下が生じないレベルとしてコンクリートの短期許容せん断応力度以内にすべきと考える。

3) 保有水平耐力時、又は極めて稀に発生する地震時には、スラブにせん断ひび割れが生じても大きな剛性低下が生じず、かつせん断破壊を生じさせないで剛床仮定を成立させなければならない。その為には、スラブのせん断応力度をFc/10程度以内に抑えるべきと考える。

近年では、スラブのせん断応力度を「鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針・同解説」による面内せん断ひび割れ応力度としての 0.33√ (σ B )以内とする場合が多い。


2024年08月13日

令和二年度修了考査 構造設計(記述式)問題2

(記 述 式)

問題2

図に示すように水平力が作用する筋かい付き鉄骨架構に関する以下の設間に解答せよ。なお、筋かいは、断面積 A = 4,000mm 2 、弱軸回りの断面二次半径 i y = 40mmとし、引張、圧縮ともに働くものとする。鋼材はすべてSN400材(基準強度F=短期許容引張応力度σ y = 235N/mm 2 )である。また、柱は引張、圧縮いずれに対しても十分な耐力を有しているものとする。

R02-2_問題2_水平力が作用する筋かい付き鉄骨架構.jpg


[ No.1 ]
本架構の引張筋かいの終局引張軸耐力を求めよ。なお、終局引張軸耐力は母材の短期許容引張軸力 N y ( = A・σ y ) とする。解答は単位をkNとし、小数点以下を切上げて整数で示すこと。



答え


[ 解答解説 ]
終局引張軸耐力は、
終局引張軸耐力 = N y = A・σ y
       = 4,000mm 2 × 235N/mm 2 = 940,000N → 940kN
となる。
(問題文に「終局引張軸耐力は母材の短期許容引張軸力 N y (=A・σ y )とする」および
「基準強度F=短期許容引張応力度 σ y = 235N/mm 2
との記載があるため、材料強度用の1.1倍したF値は用いず、σ y の値をそのまま用いた。)




[ No.2 ]
圧縮材の座屈時の材料強度 f c は式(1) で表される。本架構の圧縮筋かいについて、式(1) のf c に断面積Aを乗じた値を座屈時圧縮軸耐力 N c とする場合の N c を求めよ。解答は単位をkNとし、小数点以下を切上げて整数で示すこと。

R02-2_問題2_No.2_圧縮材の座屈時の材料強度fc.jpg


答え


[ 解答解説 ]
圧縮筋かいの長さLは
L=√ (4,000mm 2 + 4,000mm 2 ) = 5,657mm
圧縮筋かいの両端部は面内並びに面外方向にも材軸直行方向の移動が拘束されたピン固定とすると、
細長比λは λ= L/i y = 5,657mm/40mm = 141
となる。
限界細長比Λ は問題文の式より
Λ = 1,500/√(235N/mm 2 /1.5) =120
となる。
以上より
λ=141 > Λ=120であるため、
f c は式(1)の下に示された式を用いて
f c = { (3/5)/(141/120) 2 } × 235N/mm 2 ×1.0= 102 N/mm 2
よって、座屈時圧縮軸耐力応 N c
N c = 4,000mm 2 × 102 N/mm 2
  = 408,000N → 408kN
となる。

(問題文に材料強度 f c との記載があるが、
「基準強度F=短期許容引張応力度 σ y = 235N/mm 2
とあることから材料強度用の1.1倍したF値は用いず、σ y の値をそのまま用いた。通常は、材料強度の基準強度F値はJIS材であるため1.1倍とした値を用いている。)




[ No.3 ]
本架構の圧縮筋かいについて、終局圧縮軸耐力を座屈後安定耐力N u とする場合の終局圧縮軸耐力を求めよ。なお、筋かいの座屈後安定耐力は、式(2)で評価できるものとする。解答は単位をkNとし、小数点以下を切上げて整数で示すこと。

R02-2_問題2_No.3_筋かいの座屈後安定耐力_式(2).jpg
(日本建築学会:建築耐震設計における保有耐力と変形性能(1990)より)


答え


[ 解答解説 ]
筋かいの座屈後安定耐力
N u = 940kN/√(1 + 0.005 × 141 2 ) = 94KN
となる。




[ No.4 ]
水平力を増加させ、引張筋かいが終局引張軸耐力N y に達し、圧縮筋かいが座屈を生じた後、座屈後安定耐力N u となったときの梁の最大曲げモーメントM max を求めよ。また、そのときの曲げモーメント図を描け。ただし、梁は十分な曲げ耐力を有するものとする。曲げモーメン卜図は引張側に描き、M max は単位をkN・mとし、小数点以下を切上げて整数で示すこと。



答え


[ 解答解説 ]
筋かいに生じる軸力は、下図のようになる。
R02-2_問題2_No.4_筋かいに生じる軸力.jpg

引張筋かいにより梁中央に生じる鉛直力P1ならびに、圧縮筋かいにより梁中央に生じる鉛直力P2はそれぞれ
P1 = 940kN × (4,000mm/5,657mm) = 665kN
P2 = 94kN × 同上=67kN
以上より、梁中央には軸力の変動により
P(下向き) = P1 − P2 = 665 − 67 = 598kN
の鉛直力が働く。
大梁は両端ピン支持の単純梁であるため、この鉛直力に応力は
両端部 Q = 598kN/2 = 299kN
梁の中央に生じる最大曲げモーメントは
M max = 299kN × 4.0m = 1,196 kN・m

R02-2_問題2_No.4_曲げモーメント図.jpg
曲げモーメント図




[ No.5 ]
軸力による変動を考慮した梁の全塑性モーメントM p を1,000kN・mとしたときの崩壊メカニズム形成時の保有水平耐力P u を求めよ。なお、圧縮筋かいの軸力は座屈後安定耐力N u とする。解答は単位をkNとし、小数点以下を切上げて整数で示すこと。



答え


[ 解答解説 ]
梁の中央に生じる最大曲げモーメントM p が 1,000kN・mとなる際に、梁中央に加わる鉛直力Pは
P = 1,000kN・m/4.0m × 2 = 500kN

圧縮筋かいの座屈後安定耐力N u から梁中央に加わる鉛直力P2は全問のように
P2 = 67kNであるため
引張筋かいから梁中央に加わる鉛直力P1は
P1 = P + P2 = 500kN + 67kN = 567kN
となり、引張筋かいに生じている軸力は
N = 567kN × (5,657mm/ 4,000mm) = 802kN
となる。

崩壊メカニズム形成時の保有水平耐力 P u は、引張・圧縮筋かいの負担軸力の水平成分の合計であるため
P u = (802kN + 94kN) × (4,000mm/5,657mm) = 634kN
となる。



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