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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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2023年04月26日

【短編小説】『彩、凜として空、彩(かざ)る』1

【MMD】Novel Sai Sora Kazaru SamuneSmall1.png

<登場人物>

水月 彩凜空(みなづき ありあ)
 主人公
 大企業の社長令嬢
 会社の跡継ぎとして厳しく教育されるが
 親友の影響でモデルになる夢を抱く

姫川 理愛(ひめかわ りあん)
 主人公の幼なじみで親友
 両親に内緒でモデルを目指す主人公を支える、唯一の理解者
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第1話 夢との出逢い】



私は 水月 彩凜空(みなづき ありあ)
同年代より少しだけ背が高い、小学5年生。

どこにでもいる少女…と言いたいところだけど、
たぶんそうでもない。

私の父は大企業の社長。母は父の会社の経営幹部。
仕事のことはよくわからないけど、とてもえらい人なんだろう。

父も母も、とにかく厳しい。

私は幼い頃から、
「お前は将来、私の会社を継ぐのだ」
と言われてきた。

そのために、勉強漬けの毎日。
友達と外で遊ぶことも、あまりできなかった。

携帯は持たせてもらってるけど、
GPS情報で居場所が把握されていた。


門限を1秒でも過ぎると
親から怒りの電話がかかってきた。

私の成績が良いときと、親の機嫌が良いとき、
家に友達を連れてきていいと言ってもらえた。

友達が遊びに来ると、

「彩凜空(ありあ)の家、すごーい!お城みたい!」
そう言って、目をキラキラさせた。

友達は、お手伝いさんが出してくれるお菓子や料理を見て、

「いいの?こんなに高そうなお菓子…見たことない!」
そう言って、目を丸くした。

私は友達のそんな反応から、わかっていた。
私は一般的な家庭から見れば、とても恵まれている。

食べ物にも、お金にも困らない。
望むものは、何でも用意してもらえる。

私の人生、イージーモード?とんでもない。
私にとって、ここは鳥カゴ。


ここには自由なんてない。
自分の人生を自分で選べない。
私は息が詰まるような毎日を、鬱々と過ごしていた。



ーーーーー



そんな私の人生を変えるきっかけは、
ありふれた日常の中からやってきた。

ある日の、学校の昼休み。
親友の 姫川 理愛(ひめかわ りあん) が、
私に1冊のファッション雑誌を見せてくれた。

理愛(りあん)
『彩凜空(ありあ)は背が高いから、こういう服着たら似合いそう!』


私は今までファッションに無頓着で、
親が用意した地味な服を着ていた。

けど、ページを見た瞬間、
私の目にかかっていたモヤが、パッと晴れた。

そこにはかわいい服を着こなした
モデルさんたちが紙面を彩っていた。

彩凜空(ありあ)
「……きれい……!!」


私は運命の出逢いなんて信じていなかった。

たった1度の出逢いで自分の人生が180度変わる?
そんな救世主なんていない。

…私は、間違っていた。

彩凜空(ありあ)
「私も……こうなりたい!!」
「きれいな服を着て…ここに載りたい!!」


たまたま親友に見せてもらった、1冊のファッション雑誌。
それが、私がモデルを目指すきっかけになった。



ーー


私は、読む本まで厳しく制限されていた。

当然、家にはファッション雑誌なんてない。
まして、モデルになりたいなんて、親には絶対に言えない。

だから私は、親に内緒で目指すことにした。

親友の理愛(りあん)に頼んで、
彼女が持っている他のファッション雑誌を見せてもらった。

学校が終わってから、門限までの時間に、
公園や河川敷でひたすら読み込んだ。

川の水を鏡の代わりにして、
モデルさんがとっているポーズを真似してみた。

理愛(りあん)はきっと、無理してくれたんだろう。

小学生の限られたお小遣いを、
私に見せたいファッション雑誌に費やしていたんだと思う…。




ーーーーー



秘密の特訓の日々が続き、私は6年生になった。

彩凜空(ありあ)
「ファッションショー?」


理愛(りあん)
『うん。一緒に観に行かない?参考になると思うよ。』


他の場所なら、断っていた。
親が許可していない場所へ行くと、後で厳しく?られるから。

事情を知る理愛(りあん)は、それを承知で誘っていた。
後ろめたさが伝わってきた。

けど、これだけは譲れない。
後で親から何を言われてもいい。
私は夢に近づくため、彼女の誘いを受けた。


ーー


会場の雰囲気は、
雑誌で想像するそれとはまったく違った。

盛り上がりの中に、ときたま緊張感が走った。
私は場違いな感じがして、いたたまれなくなった。

けどショーが始まると、
そんな私のいたたまれなさなんて、一瞬で吹き飛んだ。

舞台の袖に、誰かが立った。
まだ姿が見えていないのに、私は気圧(けお)された。

ステージの中央に向かって、モデルさんが歩いてきた。
姿が見えた瞬間、私は倒れるくらいの衝撃に見舞われた。

会場中の空気を一変させる、圧倒的な存在感。
所作の1つ1つに華と、目を奪って離さない引力があった。


理愛(りあん)
『…きれいだったね…!』


彩凜空(ありあ)
「…うん…きれいだった!」


感動で語彙力が吹き飛んだ私たちは、
ショーが終わってからも、会場に立ち尽くした。

彩凜空(ありあ)
「私も…いつか、あの舞台に立ちたい!」


理愛(りあん)
『彩凜空(ありあ)ならできるよ!私が応援するんだから!』


私が目指す場所が、確かに決まった。



ーーーーー



父親
「イベント会場へ行くなど許可していない。」
「しかも何を観に行ったかと思えば…ファッションショーだと?!」


私の携帯のGPS情報から、
どこへ行っていたのかが親にバレた。

私は覚悟の上で行ったんだ。
こっぴどく?られることも。

(………。)

数十分後。

父からの?責の雨に、私は折れていた。
私は最後の力を振り絞り、涙を拭いて叫んだ。

彩凜空(ありあ)
「お父さん!私、いつかあの場所に立ってみたいの!」


それは、ずっと親に従ってきた私が、
初めて自分の意志を伝えた瞬間。

しかし…。

父親
「ふざけるな!お前は私の会社の跡取りだ。」
「まして芸能界などという不安定な仕事は絶対に許さん。」
「いずれお前には、然るべき身分の許婚を用意する。」


部屋の隅で、私を見下ろしていた母が、口を開いた。

母親
「ウチみたいな財閥の娘がモデルですって?!」
「ダメよ!世間様に合わせる顔がないわ!」


とどめを刺された私は、床にへたり込んだ。
両親は、私に冷たい視線を浴びせ、部屋を出ていった。

このとき私は、子ども心に悟った。
この人たちは、どこまでも自分のことしか考えていない。

・他人から自分がどう見られるか
・賞賛される肩書きや財産を持っているか

外側からの評価でしか自分を肯定できない、
残念な人たちなんだ、と。


私の心は、両親を見捨てた。

「親の心は決して、私に向けられていない。」
「私の存在価値は、親の価値を高めるアクセサリー…。」


私の夢に、味方はいない…。
なら、1人で叶えてやる…!



ーー


翌日の放課後。
理愛(りあん)が私の練習を手伝いたいと申し出てくれた。
曰く、今日の私はゾンビよりも生気がなかったそうだ。

理愛(りあん)
『ごめんね…。こっぴどく?られたんでしょ?』


彩凜空(ありあ)
「まぁね。でも謝らないで!」
「理愛(りあん)のおかげで私、覚悟が決まったから!」
「連れて行ってくれて、ほんとにありがと!」


練習スタジオの河川敷に着いた。

今まで川を鏡にしていたが、
今日から理愛(りあん)が撮影してくれた。

ポージングやウォーキングの写真や動画を撮り、
雑誌と見比べ、動きの修正を繰り返した。

彩凜空(ありあ)
「理愛(りあん)…本当にありがとう。」


理愛(りあん)
『どうしたの?改まって。』


彩凜空(ありあ)
「私の夢に、何も言わずに協力してくれて。」


理愛(りあん)
『親友なんだから当然でしょ?』


彩凜空(ありあ)
「当然なんかじゃない。本当に感謝してる。」
「けど、この練習は親に見つかったら止めさせられちゃう。」
「そしたら、これまでの時間をムダにしちゃうかもしれないよ?」


理愛(りあん)
『今さら何を水くさいこと言ってるの!』
『私が好きで協力してるんだからムダじゃないよ!』
『私、彩凜空(ありあ)がここに載るところ見たいもん!』


彩凜空(ありあ)
「理愛(りあん)…。」


理愛(りあん)
『それに、あなたを焚きつけたのは私だからね。』
『責任くらい取らせてよ(笑)』


彩凜空(ありあ)
「…ありがと!私、がんばるね!」


彼女は特別な用事がない限り、
ほぼ毎日、私の練習に付き合ってくれた。

小学校卒業までの1年間、中学校の3年間。
私たちは二人三脚で過ごした。



PART2 へ続く

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