全31件 (31件中 1-31件目)
1
カチンの森私:2010年4月10日、ポーランド政府専用機がスモレンスクの空港付近の森林地帯に墜落して大統領夫妻及び多数のポーランド政府高官が死亡する惨事が起きた。 大統領は、ポーランド主催によるカチンのポーランド人の集団虐殺墓地の追悼式典に参加の予定だった。 式典は中止された。A氏:追悼式典とはカチンの森事件による虐殺事件の犠牲者の追悼だね。私:カチンの森に関する本は、欧米ではたくさん発行されているそうだが、日本語訳は、この本で2冊目で少ないという。 書評で知って、そこで興味をもって図書館から予約待ちで借りた。 この集団虐殺事件は1943年3月、ナチスドイツがソ連戦の最中、カチンで集団墓穴を発見したことでクローズアップする。 ナチスドイツはこの虐殺事件は反ソ宣伝の材料になるとして世界的にクローズアップする。 しかし、スターリンは、それはナチスドイツの仕業であるとして反論する。 これをスターリンのウソと知りながら連合国のイギリスのチャーチルや、アメリカのルーズベルトもソ連に同調する。 ソ連側が正式に非を認めたのは、ゴルバチョフになってからだから、50年ほどの間、真実は意図的にごまかされていたことになる。 この辺の経過の概要は、ウィキペディアの「カチンの森事件」にまとめて載っているね。 この本は、公開されたソ連当時の膨大な記録をもとに詳細な事実を述べている。 この本の原書の題名は「階級浄化--カチンの虐殺」とあるように、著者は、カチンの虐殺は、ナチの「民族大虐殺・ジェノサイド」「民族浄化」と違い、マルクス・レーニン主義を基本イデオロギーとした全体主義政権によって実行された、「ひとつの社会階級全体」の計画的・系統的抹殺であるとして「階級浄化」としているね。 ポーランドの指導階級(ブルジョア階級)の浄化だが、カチンの森の犠牲者は、大部分は陸軍将校で、他に知識人、大学教授、学校教師、実業家、地主、警察官、国境警備隊員、神父らがいた。A氏:スターリンもヒットラーも大義名分はそれぞれだが、そのために平気で虐殺をするというのは全く同じだね。私:スターリン主義は、「階級浄化」だけでなく、ナチスの「民族浄化」に近い民族集団の「強制移住」があり、「強制浄化」とも言われたという。 ソ連によるポーランド人の「強制移住」がそうだね。A氏:アメリカも太平洋戦争のとき、日系アメリカ人を「強制移住」させたね。私:この本では、ゴルバチョフですら公開しなかった、1939年に独ソで締結した独ソ不可侵条約の「秘密附属議定書」もとりあげている。A氏:日本は、1939年の3年前の1936年に「日独防共協定」を締結し、日独共通の敵はソ連であると固く信じてきたのにね。 日本政府はドイツの裏切りに衝撃を受け、「ヨーロッパ情勢は複雑怪奇」と言って、当時の平沼騏一郎内閣が総辞職するね。私:その独ソ不可侵条約の裏に「秘密付属議定書があったんだね。 ヒットラーとスターリンは、密かにポーランド分割を約束していたという文書だ。 事実、この条約後、ヒットラーはポーランドに侵攻、遅れてソ連も侵攻し、約束通り、ちゃっかり相互にポーランドを分割所有し、ポーランド国家は消滅した。 カチンの虐殺は、このときのポーランドに侵攻したソ連によるものだね。A氏:ポーランド侵攻は国際的なスターリンとヒットラーの共同詐欺だね。私:この秘密文書はエリツィン時代にようやく公開されたという。A氏:ヒットラーもいろいろやっているが、スターリンも同様だね。 しかし、ヒットラーは、2年後の1941年6月に独ソ不可侵条約を破り、ソ連に突如侵攻する。 第2次世界大戦が始まるね。私:2010年4月、ロシアのプーチン首相はポーランドのトゥスク首相と共にカチンの森があるスモレンスク郊外の慰霊碑に揃って跪く。 そして、事件を「正当化できない全体主義による残虐行為」とソ連の責任を認めた。 ただし、ロシア国民に罪をかぶせるのは間違っていると主張し、謝罪はしなかったという。 スターリンは1953年に亡くなっているが、プーチンは1952年に生まれ。 ロシア国民もスターリン時代は粛清の犠牲者は多かった。 それは一刻の悪夢だったのだろうか。 しかし、悪夢の犠牲者は、悪夢でなく現実としてなかなか忘れない。 これはどこも同じようだね。
2010.10.31
コメント(2)
A氏:昨日まで続いた君のブログの「60年安保」に全学連のブント幹部の西部邁氏が登場するが、たまたま、朝日新聞土曜版b誌の「逆風満帆」欄に西部氏のことが3回にわたり毎週載っていたね。 1回目は「自らを生け贄に供したい」と題して生い立ちから、60年6月3日の首相官邸突入で逮捕まで。 2回目は、「戦線逃亡と放浪の日々」と題して逮捕後、釈放され、故郷に帰り、貧困の中、戦線を離脱し、学者の道を志し、東大教授になるまで。 3回目は、「迎合しない言論をめざして」と題して、東大教授を自ら辞めて、評論家としての活動だね。 「朝まで生テレビ」でも論客として活躍するね。 そこでは生なので、うそはつかない、誤解を恐れない、繰り返しは避ける、そして一番気をつけたのは「迎合しない」というきめごとをして出演したという。私:1ヶ月くらい前のBSのフジテレビのプライムニュースで西部氏と浜矩子氏がゲスト出演していた。 俺は途中からで後半しかみなかったが、西部氏は、日本の未来には絶望しているようで、自分の余生中には破滅はないだろうが、孫を持つ人は、孫のために破滅の時期を少しでも遅らすように努力してもらいたいと言っていた。 西部氏には孫はないそうだがね。A氏:朝日新聞のこの3回連載には、そんな話は出てこなかったね。私:俺が、この3回連載で、興味をもったのは、CS放送の番組で、尖閣諸島問題を扱ったとき、出席していた自民党議員が「(現政府)には国家観がない」と発言したら、西部氏はすかさず「民主党はとりわけひどいが、自民党の時代にすでにその種はまかれている」と返したという。 この朝日新聞の3回の記事で、やはり、一番興味を持ったのは、全学連ブントの「60年安保」のときの西部氏の行動だね。 国会突入の2ヶ月も前から、「滅び」の予感を覚えていて、それが確信になったという。 しかし、臆病風に吹かれまい、冷笑主義には陥るまいとしてデモの先頭に立ったという。 西部氏が「左翼が嫌になった要因」のひとつに、「滅びるときは女にすがる」男たちを多数目撃したことをあげるという。 だから西部氏はある女性と別れるが、ダメというのにその女性はついてきたという。 それが現在の妻の満智子さんだという。A氏:極左の学生は、連合赤軍となり、72年に仲間同士のリンチ事件で悲惨な結果を露呈するね。私:西部氏はこの事件を聞いて「自分の人生で唯一といっていいような、身の置きどころのない不安を覚えた」という。 満智子夫人はそのとき、「11年前に『わけもなく殺したり殺されたりする強い予感がするので左翼をやめる』と貴方がしゃべっていた意味がわかった」と言ったという。 今の西部氏の原点はやはり「60年安保」のときの苦い体験だと思ったね。
2010.10.30
コメント(0)
六〇年安保 私:安保新条約は、強行採決の1ヶ月後の6月19日午前零時、参議院の議決を得ないまま自然承認となる。 全学連など安保阻止勢力のデモ隊が首相官邸や国会の回りを埋め、岸首相らは首相官邸にとじこめられていた。 このときの国会デモ参加者は、国民会議発表では33万人、警視庁調べでは13万人。 しかし、この群衆は自然承認の時刻が過ぎ、空が白くあけるとともに「潮がひけるように散っていった」という。 6月22日、総評と中立労連は、大規模なストを行う。 翌23日、外相公邸で批准書交換式が行なわれ、新安保条約は発効した。A氏:23日のちょうど、その頃、岸首相は緊急臨時閣議で、新安保成立を機に人心一新のため、総辞職の決意を表明するね。私:「60年安保」とはなんであったのか。 全学連のブントの一幹部として反対運動に参加した西部邁氏は、後年 「ざっくりいって、60年安保闘争は『馬鹿騒ぎの一種』であったと言われても、私は反論しない」 「そこでは戦後思潮のかかえてきた矛盾が赤裸に明示される『一種の観念劇』である」 と書いているという。A氏:君のブログの「輿論と世論」にあるが、改定以前の安保条約はひどい不平等条約だったんだね。 アメリカは、改定したくないので、しぶしぶ応じている。 だから「安保改定反対」は「不平等の維持に賛成」するという変な活動になるね。私:57年4月28日の朝日新聞の社説で笠信太郎は「安保条約は改定さるべきである」として、「不平等な旧条約をできるかぎり早く、あるいは漸進的に改正していくよう」にと主張していた。 これが「輿論」であるべきだが、「世論」にならなかったね。 この不平等の改正論は、いざ、日米交渉がはじまると当時の東西冷戦の国際環境のもとで、ソ連は平和的で、アメリカは帝国主義の好戦国家だというイメージに基づく反対運動が起こり、岸首相が目指した対米自主=日米「対等」が逆の対米「従属」というイメージになったという。A氏:イメージ闘争だったのかね。 当時は、テレビより新聞がマスメディアの中心だから、新聞をうまく使ったほうが勝ちになるね。私:岸首相側は、安保改定成立で勝利したが、「声なき声」発言でかえって「世論」の反発を拡大させ、アイゼンハワー訪日中止、自らの退陣などを余儀なくされた。 「新聞だけが世論でない」と発言してマスコミ関係者の離反を招いたね。A氏:岸首相は「スポーツ新聞しか読まない」と言っていたそうだね。 マスメディア利用が下手だったんだろうね。 ヒットラーではないが、マスメディアの利用は政治では重要だね。私:一方、全学連のほうは、一時的にメディアをうまく使ったと言える。 しかし、かれらの暴力的な闘争手段と革命志向に対しては、最後まで大衆の支持は得られず、メディアも支援しなくなった。A氏:メディアの危険性は、「日本一早い平成史・1989~2009」で森達也氏が指摘しているね。私:政治のイメージ闘争は、政治の「劇場化」につながる。 小泉純一郎首相の「小泉劇場」。 その後、安倍晋三氏を首相に押し上げた「安倍人気」。 そして、民主党の政権交代の風。 皆、イメージ化、劇場化だと言えるね。 西部邁氏のいう「馬鹿騒ぎの一種」か「一種の観念劇」だね。 「60年安保」はその最初のケースだというわけだ。 しかし、イメージは皆裏切られてきたね。 この本では、岸首相が野球を観戦する観客を「声なき声」の例としてあげているのを批判して、その人達が野球の観戦後、デモに合流したかもしれないという。 しかし、「劇場化」という視点からすると、それはデモを観戦しに行ったのではないかとも言えるね。 だから、安保改定自然承認となると試合終了だとして「潮がひけるように散っていった」のだろう。
2010.10.29
コメント(0)
六〇年安保 私:5月19日、自民党は新安保条約の強行採決を行う。 これで、後は自然承認を待つだけとなった。 しかし、強行採決の悪いイメージが、安保闘争の大きなターニングポイントになった。 独断的な政権だとして「安保反対」が「岸を倒せ」となった。 岸首相が東条内閣の大臣であったこともクローズアップされる。A氏:君のブログの「輿論と世論・日本的民意の系譜学」では、強行採決直後に行った朝日新聞の世論調査では、強行採決反対50%、岸内閣退陣を望むもの58%となる。 世論が強行採決で硬化し、「よくわからない安保改定」から「岸退陣」という、わかりやすいイメージに潮の流れがすり変わったね。私:安保改定の中身よりも岸首相の政治姿勢は議会制度の危機だとして、反対の動きが急速に一般化し、新聞もその方向に動く。 5月19日の新安保条約の強行採決の翌日、都立大学の竹内好教授が「岸政府と自民党の暴挙で日本の議会政治は全く破壊された」として辞任する。 9日後に東工大助教授の鶴見俊輔氏も同じ趣旨で辞任する。A氏:岸首相は、この強行採決の後の記者会見で、有名な「声なき声」発言をするね。 デモの「声ある声」でなく、多くの国民の「声なき声」に耳を傾けているという。私:安保改定とは関係なく、アイゼンハワー米大統領訪日の日程打ち合わせのため、ハガチー米大統領新聞係秘書1行が6月10日に来日した。 これを日本共産党の影響下にあった全学連反主流派の学生が、空港から米大使館までの沿道でデモを行った。 ハガチー氏の車は途中の弁天橋で全学連の学生に取り囲まれ、車は揺さぶられ、学生が車の上に飛び乗って窓ガラスを破ろうとするなど、大混乱に陥る。 車は1時間余り立ち往生し、ハガチー氏らは米軍のヘリコプターで脱出した。 過激な全学連主流派に対して、おとなしいはずの反主流派が過激なデモをしたことは意外であった。 これは「反岸」より「反米」の共産党の指導が背景にあったと思われる。A氏:ハガチー事件で、岸首相はアイゼンハワーの来日時の警備に不安を持つね。私:アイゼンハワー大統領は、14日にアラスカを発ち、夕方、マニラに到着。 ところが、ここで、日本で大問題が起きる。 15日午後、「安保反対」「国会即時解散」を要求して国会周辺に集まった全学連主流派約2万人は、棍棒をもった右翼とも乱闘し、警官は警棒をふるっておそいかかったという。 今までになく激突した。 学生約5千人が国会構内を占領し抗議集会を開く。 この乱闘で多くの負傷者をだすが、ついに女子学生の樺美智子さんが死亡する。A氏:これを受けて、岸首相は、マニラまで来たアイゼンハワーの訪日を延期するね。 後に岸氏はその回想録で、退陣したのは、6月15日の10万人の国会デモでの樺美智子さんの死亡が引き金になったと言う。私:主要新聞7社は、「暴力を排し、議会主義を守れ」という共同宣言を出す。 これは、新聞が強行採決のとき、「議会主義を守れ」と火をつけた責任はあいまいになったと批判も出た。A氏:新聞が全学連などの暴走を大きく報道したことが、安保改定への一般の関心を高め、反対運動の高揚を後押しする効果を持ったのは間違いないが、それが左右の暴力を誘発しかねなかったからね。私:新聞は全学連の暴力革命的な発想や、共産党や社会党の一部にあった反米思想に基づく動きに賛成したことはなかったがね。 「60年安保」が思想の闘争であるよりも、イメージの闘争であった証拠に、新安保条約の「自然承認」の決着で、当事者さえも意外なほど、「安保反対」の動きは急速に退潮していくね。 明日は、「60年安保」で何が終わり、何が始まったかにふれよう。
2010.10.28
コメント(2)
六〇年安保 私:59年11月27日に起きた国会「乱入」デモで、逮捕しようとした東大学生2名は東大に篭城してしまう。 この当時の学生運動は、約10年後の連合赤軍などと違い、武器を一切持たない素手であり、捜査当局も鷹揚で「学問の府」の自治を尊重していた。 東大の対応が遅れているうちに、一般学生から2学生の学外への退去を求める声が高まり、2人が12月10日のデモに参加するために学外に出たところを逮捕する。A氏:たしか、当時は、全学連の「乳臭さ」を笑う声が多かったようだね。 一方で、大学生の就職の好調さは「戦後最高」という時期だね。 まだ、約10年後の全共闘時代と違い大学生の数も少ない時期だ。私:そういえば、1960年とはいろいろな事件が世界的にもあった年だね。 この本でもふれているが、韓国では同じ60年に「韓国四月革命」があり、戦後続いた李承晩政権が大学生デモをきっかけとして崩壊するね。 これが、日本の学生運動に多少の影響を与えたかもね。 逆に、1959年11月に「北朝鮮帰還」が開始されているね。A氏:この頃は、韓国は反日で李承晩の専制政治で暗いイメージの国だというのに対して、北朝鮮は社会主義の理想郷のようなイメージだったね。 今と逆だね。私:ところが、5月にソ連領内でのアメリカ∪ー2機撃墜事件が起きる。 アメリカのパイロットがソ連に捕まったことで、これがスパイ機であることがバレてしまい、折角、米ソが「雪解け」ムードになりつつあったのが崩壊する。 これは米ソのデタントで日米安保不要論があったのに影響与えるね。A氏:国内的には、砂川判決と三池闘争(59年末から60年夏まで)があったね。 安保闘争と並行しているね。 三池闘争では、60年3月29日、ピケットラインに暴力団がナイフで襲いかかり、三池労組員が殺害され、労使紛争は硬化するね。 60年は右翼の活動が目立ち、ついに、10月には社会党委員長の浅沼稲次郎氏が右翼の少年山口二矢に刺殺される。私:安保にもどるが、60年1月26日、岸首相らの訪米を阻止しようとして、全学連などが空港ビルに入り、座り込みをする。 警官隊が排除するが、これに右翼がまた登場する。 学生77名の逮捕者を出す。 この中には樺美智子さんの姿もあった。 一方、安保反対の運動にも内部分裂が起こる。 1月24日に民社党が結成され、安保は反対だが、国民会議には不参加となる。A氏:君のブログの「輿論と世論・日本的民意の系譜学」では、60年1月の朝日新聞世論調査では、「改定はよいことだ」25%、「よくないことだ」25%、無回答46%だった。 3ヶ月後の読売新聞世論調査でも、賛成21%、反対28%、わからない・他51%。 国民は「わからない」が圧倒的に多い。私:国会で安保改定審議中の4月26日、国民会議の第15次統一行動が行なわれ、約6万5千人の安保阻止の請願が平穏に終わる。 しかし、独自の国会デモを計画した全学連主流派約6千3百人は、警官隊のバリケードを強行突破して国会に向かった。 警官隊と激しい乱闘となり双方に負傷者を出す。 全学連17名、大日本愛国党5名が逮捕された。A氏:全学連に対抗する右翼がいたんだね。私:この時点で、安保反対闘争は、国民会議の温和な請願行動と全学連の過激な行動に分裂する。 ここでいよいよ、5月19日が来る。 この日から「60年安保」の流れが大きく変わる。 これは明日、ふれよう。
2010.10.27
コメント(0)
六〇年安保私:1960年というと、われわれは、就職したばかりでまだ一兵卒として、職場で多忙だった頃だね。 それだけに、同一時代を生きた者として、知りたいと思い図書館で大分待って借りたよ。 この本は、当時の「朝日」「読売」「毎日」の3紙の記事を中心に60年安保の流れを340ページにわたり詳細に説明している。 ところで、60年安保のときの全学連の過激な活動の裏に日本共産党の動きがあるね。 日本共産党は、当時、コミンフォルムの指導下にあった。 1950年にコミンフォルムは、戦後の日本共産党の平和革命は幻想であると批判する。 同年6月に朝鮮戦争が勃発して、GHQが共産党幹部を追放する。 共産党は、武装闘争方針を推進する。 ところが、1955年7月の「六全協(日本共産党第六回全国協議会)」で温厚路線に方針が変わる。A氏:たしか、俺の記憶では、共産党がそれまでとってきた武装闘争方針は誤りがあったとして自己批判して路線転換を決めたんだね。 それまで、中央の方針に従って、全国で火炎ビンが乱れ飛ぶ騒擾事件を起こしてきた党員たちは、突然の中央の方針転換となったため、党の権威は音を立てて崩れたというね。 「歌声喫茶」に行って「カチューシャの歌」を歌った記憶にあるね。 共産党の学生運動の指導もそれまでの過激な活動から「歌ってマルクス、踊ってレーニン」というレクリエーション活動になったというね。私:「青春のエネルギーのはけ口」を失ったということである意味「60年安保」はここから始まったという。 ところで、全学連は安保闘争直前までは、幹部はすべて共産党員。 当初から、共産党中央とは全学連とは対立があり、学生党員の共産党からの離反が始まる。 57年に日本革命的共産主義同盟(革共同)と58年に共産主義同盟(ブント:ドイツ語のBUNDで同盟の意味)という2つの元党員による党派組織が結成され、これに参加した人々が「60年安保」時の全学連主流派の主な担い手となる。 その主張は、労働運動即階級闘争であり、学生運動だという。 その急進性のために日共から除名され、ますます、極左傾向を強める。 一方、安保反対闘争は、社会党、共産党、総評、原水協などの約90団体が集まった国民会議(安保改定阻止国民会議)によって行なわれた。 最初は、総評指導下の賃上げのスローガンに安保改定反対を付け加えたものだという。 大きなデモとして新聞で報じられたのが、59年6月25日の第3次統一行動で1万人の中央集会が日比谷公園野外音楽堂で開かれた。A氏:皮肉にも、同じ日に後楽園でプロ野球の「天覧試合」があり、満塁の観客の中で長島の決勝ホームランが出るね。 こっちの人数の方が多い。私:59年は、4月10日に「皇太子御成婚」があり、世間のムードは和らいだものがあり、日本は社会的には明るいムードが出ていたね。A氏:高度成長の始まる頃で俺達はまだ貧しかったが、給与は上昇機運だったね。私:安保反対運動の当事者以外の社会の広い層の人々に、安保反対闘争が初めて強く印象づけられたのは、59年11月27日に起きた国会「乱入」デモだという。 全学連を先頭に2万人と言われる請願デモ隊が安保阻止を叫んで国会になだれ込む。 警官隊ともみあって、重軽傷者を多数出すという騒ぎになる。 28日朝、警視庁公安1課は条例違反容疑で全学連を捜査し、3名を逮捕。 ところが、2名は東大に篭城してしまう。 「東大篭城事件」だね。 69年の安田講堂篭城事件とは全く違うがね。 これは明日ふれよう。
2010.10.26
コメント(0)
A氏:環境のISO(アイ・エス・オー)のことなんだがーーー。 「環境側面」というのがあるんだが、これがよく分からない。私:あぁ、ISO14001のことか。 「環境側面」とは、平たく言えば企業活動などで、環境に影響を与える活動だね。 環境への影響(環境影響)というのは「エネルギー消費」「土壌汚染」「大気汚染」「水質汚濁」「騒音」などだから、その原因である「電力使用」「産業廃棄物の発生」「排気ガスの放出」「汚水の発生」「騒音の発生」などが代表的な「環境側面」だね。 企業活動をすると、副次的に環境に影響する側面が存在するということだね。 環境以外に、副次的に発生するものに従業員の安全、健康もあるが、これは別だね。A氏:製造業なら、「本業」は顧客の要求に従って製品を作り、提供することだが、その際に、製品以外にいろいろなものが、好むと好まざるとにかかわらず副次的に「自動的」に発生する。 そのうち、「産廃物の発生」「汚水の発生」「騒音の発生」など、環境影響に関係するものが「環境側面」か。 普段あまり気にしていないが、「環境影響」の目で現場を歩けば、すぐ目につくね。 ところで、俺の知っているY社は環境のISOをとっているんだが、今、もめているのが、「有害な環境側面」と「有益な環境側面」の関係らしい。私:なるほど、環境のISOでよくモメる問題だね。 「環境側面」が良い環境影響を与える場合「有益な環境側面」、悪い環境影響を与える場合、「有害な環境側面」と言うんだね。 企業活動のほとんどの「環境側面」は「有害な環境側面」だね。 産業廃棄物が出るし、汚水は流れ出すし、騒音も発生する。A氏:Y社でもめていた例は、具体的に「電気の使用」という「有害な環境側面」には、セットになって「省エネの実施」という「有益な環境側面」があるという説だよ。 極論を言えば、100の「有害な環境側面」があれば、セットで「それを減少する」とした100の「有益な環境側面」があるということになる。私:それは、大間違い。 Y社の「本業」の活動には、「電気の使用」は不可欠だろう。 「電気の使用」が本命で、「省エネ」を本命で商売にしているわけではない。 環境影響を減少するのが企業の「本業」なら、「本業(仕事)をやめてしまえば一番いい」という本末転倒論に行き着くね。 顧客満足の「本業」をしながら、できるだけ「省エネ」をするのであって、「省エネ」は別に「環境目的・目標達成」という環境影響減少活動でやる。 そっちのテーマだよ。A氏:そうか、例えば「騒音の発生」は企業の「本業」の活動から「自動的に」出るものだが、「騒音の減少」は「本業」の活動から「自動的に」発生するものではなく、別に新しく追加して努力する活動だね。 「本業」に「自動的に」付随して発生するものかどうかの違いだね。 次元が違うものを一緒にしている。私:ある企業で、「設計課の電灯の昼休みの消灯(節電)」を設計課の「有益な環境側面」としていたが、これは間違い。 「昼休みの消灯」は設計業務の「本業」に不可欠な活動ではないね。 その証拠に、「昼休みの消灯をしなく」ても、立派に設計の「本業」はできる。 「設計課の電灯の昼休みの消灯」は「設計課の有益な環境側面」でなく、「設計課の節電という設計課の環境目的・目標」だね。 低騒音の設備提供を「本業」としている企業なら、設計の低騒音設計活動は「本業」だから騒音減という「有益な環境側面」を持つがね。 しかし、その設備を現場で作るとき、産廃物の発生など、「有害な環境側面」だけを持つ。A氏:そうか、「それをしなくても、『本業』は可能か」を問えば、間違った「有益な環境側面」の呪縛から脱することができるね。私:「電力使用」と「省エネ」が「環境側面」として裏腹でセットだという人は、「本業」と「環境側面」との「初歩的な関係の理解不足」を自ら露呈しているね。 シロートの論議だね。 この変な「有益な環境側面」がクローズアップしてきた理由は、毎年、「環境目的・目標」で環境影響の減少目標を立てるんだが、継続していると次第に環境影響を減らす「ネタ」がなくなる。 中小企業のように「環境目的・目標」が俗に言う「紙、ゴミ、電気の減少」だけだとそうなりやすい。 そこで無理に「有益な環境側面」を登場させ、「ここにもネタがあるよ」となった。 研修セミナーまで開催され、企業はムダな研修費用をかけ、研修機関はそれで儲けた。 結果的に「有益な環境側面」の致命的な誤解と企業側にムダなペーパーワークを発生させたね。 「知的体力」の欠如だね。 同じ目標でもいいんだよ。 環境のPDCAが定着し、システムが崩れないで、継続維持する体質になることも重要なんだから。
2010.10.25
コメント(0)
ポケットの中のレワニワ(下)ポケットの中のレワニワ(上) 私:図書館には、朝日新聞の縮刷版がある。 だから、昨年の6月の縮刷版を借りて、6月30日の「文芸時評」欄だけ、10円でコピーした。 俺の直前にコピーしていたオジサンは、「駅前なら5円でコピー出来るところがありますよ」と言っていた。 文芸評論家の斎藤美奈子氏が今月(09年6月)の3点として、宮本輝「骸骨ビルの庭」(上・下)、伊井直行「ポケットの中のレワニワ」(上・下)、村上春樹「1Q84」(1部・2部)をあげている。A氏:「骸骨ビルの庭」の上巻はこのブログに読後感想があるね。私:下巻は、長い図書館予約待ちになった。 話の構成は上巻で大体わかったので待たないでキャンセルしたよ。 だから、下巻は読んでいない。 斉藤氏は、「骸骨ビルの庭」は戦争直後からの過去、「ポケットの中のレワニワ」も過去のへの旅があり、共通点があるという。 しかし、あまり意味のある共通点だと思われないね。A氏:人は皆、過去があって、現在があるからね。 現在を語ることは、過去を語ることでもある、なんてね。私:「ポケットの中のレワニワ」の主人公である男女は小学校の同級生だが、「1Q84」の主人公も小学校同級の男女だという。 これもあまり意味がある共通点だとは思わないね。 もっとも「1Q84」は読んでいないがね。 斉藤氏は「1Q84」は、サービス満点の超娯楽大作だが、女性の描き方が単純だとして、男の子目線の小説だという。 「未知なるものを求めて旅立つ僕ら」とは少年小説、換言すれば男性文学の典型パターンだという。A氏:「ポケットの中のレワニワ」はどうなんかね。私:拍子抜けするような結末にもかかわらず、「ポケットの中のレワニワ」に救いがあるのは女性主人公が、自分の論理を生きているためかもしれないとしているね。 「1Q84」より好意的な批評だね。 まぁ、「1Q84」は読むことはないだろうから、この知的街道はこれで終わりだね。
2010.10.24
コメント(0)
ポケットの中のレワニワ(下)ポケットの中のレワニワ(上)私:この小説を読みたいと思った動機は、「村上春樹『1Q84』をどう読むか」にあった佐々木敦氏の書評からだ。 佐々木氏の書評では、「『1Q84』は面白く読んだが、その直前に出た伊井直行氏の書下ろしの長編『ポケットの中のレワニワ』のほうがずっと感動した」とコメントしていたからだね。 作者の伊井氏は東海大学文学部の教授だという。 「1Q48」は図書館予約待ち3000人というのに、この本は予約ゼロですぐ借りられた。A氏:レワニワというのはなんだい?私:主人公の父親が高校の理科の教師で、ときどきふざけてウソを言う。 レワニワとは、その父親が考え出した架空の生物らしい。 インドシナ半島の奥地に生息するトカゲとカエルに似通った生物だが、言葉を教え込むと理解し願い事を叶えてくれる。 ところが願い事を叶えたレワニワは人間もどきになり、今度は人間を食うようになると言われる。 主人公は団地で育つが、途中、ベトナム難民が団地に来る。 それとともにレワニワも来たのではないかという。 団地の子供たちは、近くの川などでレワニワ探検をやる。A氏:ハリーポッターのような話かね。私:まったく違うね。 主人公は、派遣社員でコールセンターの単純な仕事をしている。 学校でもそんなに努力もせず、三流大学をなんとか卒業するが、就職できない。 自己責任から言ったら、筋書き通りの人生ルートだね。 まさに筋書き通り、派遣社員となる。 給与も少ないし、仕事も安定しない。 将来、結婚して家庭を持つということはできそうにない。 一時、正社員への登用の話も出るが、正社員も厳しさを見ているので断る。 人生を諦観したような感じだね。 その主人公の話だね。 2チャンネルも、ヒキコモリの義理の甥も登場する。 正社員との関係も出てくる。 コールセンターはある会社の子会社だ。 親会社との下請け的関係も出てくる。A氏:厳しい現実の話だね。 そこになんで幻想的なレワニワが関係するのかね。私:子どもの頃、団地に来たベトナム難民のある女性(小学校の同級)がコールセンターの管理者をしているのに再会する。 もちろん、女性は正社員だね。 主人公は好きになるが、「貧乏人は嫌いだ」と相手にされない。 これをスタートにいろいろ話が複雑に絡む。 主人公が悩むところでレワニワが登場する。 そしてそれなりの方向が導きだされる。 女性は急に会社をやめ、サイゴンに行く。 主人公はレワニワの言葉でサイゴンまで追いかけていく。A氏:レワニワのせいか行動的になるようだね。私:最後はまた女性は日本に帰ってきて再会する。 これで二人の間は親密になり、ハッピーエンドが期待できそうなところでこの小説は終わる。 今の日本の現実をとらえているし、ストーリーも面白いので、一気に、上下2巻を読んだね。 そして、派遣という明日が見えない若者の心理が理解できるような気がしたね。 もっともこの本では明日が見えるような雰囲気で終わっているがね。 小説としては、やはり、幻のレワニワが登場したほうが深みを増すね。A氏:村上春樹の「1Q84」との関係はどうなのかね。私:インターネットの検索をしたら、俺と同じ動機で佐々木敦氏のコメントから、この「ポケットの中のレワニワ」を読んだ人の感想が載っていた。 その人は、「1Q84」を読んでいて、その読書後、「ポケットの中のレワニワ」を読んだら、「何か癒しになった」というようなことを書いていたね。 さらに、インターネットの検索で、昨年6月30日の朝日新聞の文芸時評で村上春樹の「1Q48」、宮本輝の「骸骨ビルの庭」、「ポケットの中のレワニワ」に構成上の共通点があると指摘しているというので、図書館で新聞の縮刷版を探した。明日は、それにふれよう。
2010.10.23
コメント(0)
習近平の正体私:今度の党大会で党軍事委副主席になったからと言って、2年後の党大会で確実に習近平が国家主席になるとは限らない。 これから2年の間に、大きな変化がないという条件だね。A氏:中国政府にも、「政治とカネ」の問題はあるのかね。私:マスコミ嫌いだと言われている習近兵はあるインタビューで「政治の道に入ったら、財をなすことを考えてはならない。 私利私欲を捨て、役得を得ようなどとは絶対に考えてはいけない」と明言しているという。 また、「自分は人民の公僕であることを一瞬も忘れず、常に人民大衆の衣食や環境に気を使わなくてはならない」としているという。A氏:父親から受けた徹底した共産主義の理念がしみついているようだね。私:不安なのは、「習近平ファミリー」の存在だね。 弟の習遠平は、正式の職業を持たず、ニートのような生活をしているという。 怪しげな輩との共同事業など、かなりダーティな面があるという。 姉夫婦が不動産事業であくどい商売をしているといううわさがあるという。 一部では、ファミリーの腐敗が習近平の将来に影を落とす可能性さえ取りざたしているという。 しかし、中国では、最高指導部の威光を借りて、親族が商売に走り、莫大な利益をせしめるケースが後を絶たないという。A氏:胡錦濤や温家宝は清廉潔白で商売に疎い印象が強いがね。私:胡錦濤の娘婿の茅道臨は、中国の大手インターネットのCEOをしていて長者番付で国内11位になったこともあるという。 胡錦濤の長男は、エックス線検査装置の会社を経営しており、政府機関、中国民航総局から一括受注をしているという。 中国全土の147空港すべてに設置するため、総額で100億元は下らないビッグビジネスだという。 後ろに胡錦濤の威光があるという通説だ。A氏:温家宝はどうかね。私:長男は、香港最大の財閥と組んで企業を創設し株時引きで巨利を得ているという。 温家宝の妻は、英国宝石鑑定士の資格を取り、宝石業者との関係で汚職にまみれているという。 そのため、温家宝は06年10月に妻と離婚したという。 日本のような週刊誌がない中国だから、クローズアップはしていないようだがね。 習近平もファミリーに気をつけないと、出世コースから脱落する可能性がある。 一時、習近平と主席争いのライバル視されている李克強副首相は、胡錦濤主席と同じく「共青団」の出身で、胡錦濤のバックで、12年には行政の長である首相になるだろうという。 また、胡錦濤は、習近平の次の主席候補を育てつつあるという。 「とう小平」が胡錦濤を、江沢民が習近平を育てたように。 それは胡春華といい、63年生まれの47歳。 胡錦濤に見出され、最高指導部の登龍門の入口に立っているという。 12年後の「次の次の」国家主席だ。 これで3代続けて、2代前の最高主導者から内々に指名されるということが半ば慣例化しつつあるという。 もう10年ほどたったら、今度は習近平に代わって、胡春華という名前が新聞に登場するようになるだろう。 なお、現在、胡錦濤は習近平が主席となっても軍事を把握したいためか、軍と武装警察を「胡錦濤派」に固めつつあるという。 地方人事でも露骨なまでに「胡錦濤派」が台頭しているという。 2012年の党大会で、習近平は予定通り、国家主席の座につくか。 今後の中国のトップ層の人事は目が離せないね。
2010.10.22
コメント(0)
習近平の正体私:習近平の父・習仲勲は、党の大幹部だった。 しかし、日本の2世議員とまったく違う育ち方をしているね。 習近平氏が2年後に予定通り国家主席になったとすれば、59歳だね。 しかし、日本の小泉、安倍、福田、麻生、鳩山と続いた、2世、3世総理とはまったく、鍛えられ方が違うね。 子供時代には、徹底的に倹約と革命思想を父親から教えこまれる。 しかし、父親の革命の闘士仲勲は、戦争が終わってから政治的な権力闘争に巻き込まれ、文化大革命で14年間の獄中生活をすることになる。A氏:そうなると子どもも「悪党の子どもたち」ということになるね。私:一家はバラバラになり、16歳の習近平は「下放」で延安郊外の洞窟住まいの小さな集落に送り込まれ、農作業の重労働をする。 ノミ、シラミに悩まされる。 一旦、北京に逃げ帰るが、覚悟を決めて再び、村へ帰る。 心を入れ替え、延安訛りを覚え、労動も率先して行なった。 どんどん農民と交わるようになり、彼の部屋は村のセンターのようになった。 村人から徐々に信頼されるようになったので、共産党の下部組織の共青団への加入を申請したが最初は「腐敗分子・習仲勲の息子」だとして許可されない。 しかし、村で頭角を現し、村の幹部も認めるようになり、8回目の申請で入団が許可された。A氏:共産党への入党ではなかったんだね。私:共産党への入党はもっと難しい。 11回目の申請で許可になった。 20歳の時であった。 そして75年、文化大革命で、閉鎖されていた大学教育が開始され、精華大学の化学工程科に入学できた。 村を離れるとき、別れを惜しんで多くの村人が送ってきたという。 彼は7年間の陜西での生活で、現場の重要性、自分に自信を持つことを学んだという。 1976年、文化大革命が終わり、父も復権した。 82年に秘書生活をやめ、河北省正定県の党委員会副書記として赴任した。A氏:幹部子弟なのだから、中央の当政府機関に勤めて着実な中央官僚の道を歩むか、あるいは幹部の特権を利用して米国など海外で留学生活を送るという選択肢もあったのではないの?私:父・仲勲が同年代の最高幹部(おそらく『とう小平』)に近平の将来を相談したところ、「地方での経験を積み、1つ1つ段階を踏んで上がって行けば、将来、大きな器になる」との助言を得て、それに従ったという。 河北省を皮切りに、07年10月までの25年間、福建省、浙江省、上海の地方幹部として過ごす。 特に福建省には18年間勤務し、政治的な基礎を形成した。 また、上海での活躍で江沢民の評価を得る。A氏:日本の世襲議員とは比較にならないね。 それどころか、徹底的な底辺からの叩き上げの政治経験だね。 徹底した現場からのエリート教育だね。 日本で言えば、いろいろな県の長い知事経験をして中央にくるようなものだね。私:そして最高指導者の主席になれば、任期は10年だ。 コロコロ変わる日本の最高指導者とは違うね。 明日は、習近平の今後にふれてみよう。
2010.10.21
コメント(0)
習近平の正体私:習近平は、昨日のニュースで党軍事委副主席に選ばれたことで、5年に1回開かれる2012年の秋の第18回中国共産党大会で、10年の任期が終わる現在の胡錦濤・総書記(国家主席)に代わって主席に選ばれる最有力者になった。 昨日のこのニュースで日本人には身近になった人物だ。 折から中国の内陸地での反日デモが暴徒化するなどで、特に今後の日中関係がどうなるかで関心を呼ぶ人事だね。 もっとも、最有力候補ということで、後2年あるから、どう転ぶかはわからないがね。A氏:習近平は、日本では例の「1ヶ月ルール」でもめた昨年の事件で知られたね。私:実は、昨年10月初めに中国政府関係者から習副主席が12月に訪日し、天皇陛下と会見したいとの打診があった。 日本外務省は「1ヶ月ルール」を説明し、早急に訪日予定を知らせるように要請した。 しかし、中国側は他の国内会議の日程がきまらないので、後で連絡するということで遅れていた。 有力な次期最高主導者が日本に行くのだから「1ヶ月ルール」なんてどうにかなるだろうという態度が見え見えだったという。A氏:中国側が日本の外務省に「訪日日程は12月14日から16日」と正式に通知したのは11月19日だから、「1ヶ月」を切ったね。私:外務省はそれからさらに1週間も経った11月26日になって宮内庁に陛下との会見を打診する。 宮内庁は当然、拒否。 外務省が中国側に正式に「会見は無理」と通知したのは30日。A氏:なんだか、外務省もテキパキした動きでないね。私:外務省に無理と言われたので、中国側は事の重大性を認識し、崔駐日中国大使はあらゆるルートを使って、なりふりかまわず政界工作をする。 まず、山岡民主党国対委員長、平野博文官房長官、岡田克也外相に働きかけたが、鳩山首相が拒否。 11月3日に中国外務次官が宮本駐中日本大使を呼んで圧力をかけ、宮本大使は岡田外相に働きかけたが拒否。 崔大使は、7日に中曽根康弘元首相に協力を依頼し、中曽根氏は官房長官に電話するも拒否。 崔大使が最後に頼ったのが当時の民主党の小沢一郎幹事長だ。 小沢氏が崔大使と会ったのは総勢600人以上を率いて訪中する前日の9日。 崔大使は、中国外務省をバックに、交換条件として「胡錦濤・主席が訪中した国会議員143人の一人一人と握手し、写真撮影もする」ともちかける。 小沢氏は、鳩山首相に電話して、一喝し、10日に平野官房長官が羽毛田信吾・宮内庁長官に再度電話して、宮内庁が折れる。A氏:ここでも鳩山首相はブレたね。 それにしても、中国はすごい政界工作だね。 それほど、習・副主席の天皇会見は重要なのかね。私:現主席の胡錦濤氏が副主席のとき、日本訪問の際、天皇と会見しているという前例があり、この前例を守れなかったら中国外務省の怠慢とみなされる。 裏には、次期最高指導者の座をめぐり、習近平氏にハクをつけようとする中国内での権力闘争がある。A氏:この「特例会見」の裏事情を習・副主席の来日の前に、宮内庁長官が異例の公表をするね。私:それは「天皇陛下の政治利用」として天皇陛下と習・副主席の会見を実現させた自らの責任回避のためだという。 というのは、1ヶ月前の11月に習・副主席の妻・彭麗媛が中国人民解放軍政治部歌舞団を率いて来日したとき、東京で行なわれたそのオペラ公演に皇太子殿下がおでましになり、彭麗媛の隣席で観劇し、公演が終わった後も、控え室を訪れたという。 これが「中国による皇室の政治利用」として、宮内庁の軽率さが批判され、国会議員からも非難があり、右翼団体からも宮内庁は「非国民」と批難されたという。 長官は身の危険すら感じたという。A氏:それで、また、「1ヶ月ルール」を破って天皇陛下と、しかも彭麗媛の夫である習・副主席との天皇との会見をセッテングしたとなると、宮内庁長官は袋叩きになりかねないね。私:そこで、早めに、これは宮内庁独自の判断ではないとしたという責任回避の説明になったという見方があるね。 天皇との「特別会見」は、12月15日に行なわれた。 それだけ中国側が力を入れる日本にはあまりなじみのない習・副主席とはどういう人か。 明日、その生い立ちからふれてみよう。
2010.10.20
コメント(0)
習近平の正体A氏:今朝の朝日新聞一面トップは「習近平氏、胡主席後継へ」と大きく見出しを掲げているね。 国家主席に決定したような書き方だね。私:正確には党軍事委副主席になったということだね。 丁度、タイミングよく、6月26日に図書館に予約したこの本が2、3日前に借りられて、昨日読み終わったところだ。 だから、新聞やテレビの解説を聞いてよく理解できたね。 身長180センチ、体重100kgの巨漢だとこの本にはあるが、テレビの映像を見ると温和な風貌だね。 妻は、彭麗媛で中国人民解放軍総政治部歌舞団の専属歌手で、国民的なスターであるという。 だから、習近平は最初、彭麗媛の夫として紹介された時期もあったという。A氏:石原慎太郎氏が、都知事選で「石原裕次郎の弟です」と言っていたようなものだね。私:この本では、実は、昨年の党中央委員会で、習近平が党軍事委副主席に選ばれると期待されたが、選ばれなかったことを問題にしているね。 というのは、現在の主席の胡錦濤は、主席になる3年前の党大会で党軍事委副主席に選ばれている。A氏:だから、先例によると昨年が3年前だから、習近平は本来、昨年に党軍事委副主席に選ばれるべきだったということか。私:習近平は、江沢民のバックアップがあるというが、昨年、選ばれなかったということを聞いた江沢民は驚いて、怒りを側近にぶつけたという。A氏:習近平と江沢民とは関係があるのかね。私:習近平は中国政府指導部の第5世代にあたる。 第1世代が毛沢東。 第2世代がとう小平。 第3世代が江沢民。 第4世代が胡錦濤。 そして、とう小平の頃から、将来の若手を早くから育てるというシステムが定着したようで、胡錦濤はとう小平のバックアップで主席にまでなった。 同様に、江沢民は習近平に目をつけて育ててきた。 江沢民は、上海閥だね。 だから、昨年の党大会では、当然、党軍事委副主席に選ぶように、江沢民は胡錦濤初め、当幹部とは先に話しあって確約をしていたという。 これが逆転されたわけだ。A氏:なぜだろう?私:一種の派閥による権力闘争だという見方もあるね。 習近平は高級幹部子弟の太子党閥のリーダーだ。 それに対して、胡錦濤は共産党青年団閥の出身だ。。 だから、軍部にまで太子党の権力基盤を渡したくないという見方もあった。 それに習近平のライバルの李克強・副首相は胡錦濤の子飼いだしね。 一応、大義名分は、当時、「ウイグル暴動」があり、治安を担当している習近平がそれに専念してもらいたいとの胡錦濤の考えで、党軍事委副主席には選ばなかったという。A氏:しかし、そんなに党軍事委副主席というポジションは、重要なのかね。私:中国で政権を握るものは軍を把握していないと、安定して動けない。A氏:「銃口から政権が生まれる」と言われるからね。私:国家主席の任期は最大10年だが、軍委主席に定年はない。 江沢民は13年に国家主席を胡錦濤に譲っても、中央軍事委員会主席の地位に更に2年間居座っていた。 いまだに軍との関係があり、四川地震のときは、政府を差し置いて自ら軍を救援に差し向けたという。 しかし、今度の習近平の党軍事委副主席任命によって、胡錦濤は屈した形になったね。 明日は、日本では有名な天皇との「特例会見」の背景についてふれよう。
2010.10.19
コメント(0)
私:先週の月曜日にふれた「プロセスアプローチ」による改善例を示そう。 IBMクレジットは、改善前は顧客の信用調査依頼(顧客インプット)から顧客への回答(顧客へのアウトプット)までにかかる期間が平均6日、ときには2週間かかり、「長すぎる」という顧客からの苦情が多かった。 IBMクレジットの業務は、下のような5つ職能部門からなり、それぞれにプロセスがあり、インプットとアウトプットがリンクしている。 顧客要求→ 1.受付書類記入→2.信用度調査→3.ローン契約書作成→4.金利決定→5.信用状作成→顧客提供 最初、5つの部門ごとに、それぞれプロセスを分析し、IT 化の促進など個別のプロセスの改善を行ってきた。A氏:親会社はIBMだから、コンピュータの活用などでそれぞれの処理プロセスを速くしたのでないかね。私:しかし、効果がなく、むしろ顧客の待ちが増えて悪化した。 そこで、見方(アプローチ)を変えた。 すなわち、「プロセスアプローチ」の観点から、伝統的な職能部門の壁を越えて、試しにマネージャーがある物件を持ち歩き、最優先で5部門の業務プロセスを連続的に縦断的に処理してみた。 なんと5つの部門の仕事が90分で全部処理された。A氏:そうか。 「職能的アプローチ」でもプロセスにはインプット、アウトプットがあり、お互いにリンクしているのは同じだね。 そのプロセスのリンクに対する視点が違うんだね。 各職能組織を縦断するという視点なんだね。 その90分以外の時間は何にとられていたのかね? 私:その原因は、5つの部門別分業のため、その間の書類移動のための部門間の「手渡し」、「停滞」時間、また、部門間の書類の山のための書類の探しや整理などのプロセスに時間に多くがとられていたことだね。 A氏:なにか、5つの部門の間の書類の山は、製造業で言うと、仕掛品在庫の山を連想するね。 場所をとるし、保管の手間も増えるね。私:製造業では部門間で在庫を多く持つと、それぞれの部門内プロセスの処理効率はあがるかもしれない。 しかし、全体の流れは遅くなる。 顧客を待たせる。A氏:そこでIBMクレジットはどういう改善をしたのかね?私:IBM クレジットでは、部門の壁を取っ払い、顧客の依頼1件に対し、基本的に1人で5つの職能プロセスをこなすようにした。 この方向でのプロセス改善、IT化などを促進した。 結局、顧客の信用調査依頼から顧客への回答までの時間は平均6日間から4時間に激減。 書類を整理したり、さがしたりする手間もなくなり、扱う件数は100倍に増加したという。A氏:1人で全工程を行うというのは、「セル(cell)方式」と言って、「在庫ゼロ」のトヨタ生産方式で開発した方法ではないの?私:実は、この例は10年ほど前に、アメリカのビジネス書でベストセラーになった「リエンジニアリング革命」に載っているものだ。 この本は、当時、和訳されて、日本でもブームになったが、訳者である当時の野中郁次郎一橋大学教授は解説で「この本の手法はすでに日本でやってきたことであるが、日本ではこのような体系化が遅れた」と言っていたね。 当時の年末の「朝まで生テレビ」で、当時自民党の福島県選出の衆議院議員荒井広幸氏が、日本経済の行き詰まりを打開するために、ヨーロッパで成果を出している「セル方式」を導入すべきであると言っていたね。A氏:「セル方式」は日本が生みの親なのにね。私:ISO9001の「プロセスアプローチ」が正確に理解出来ないということも自分の国のことをよく知らないのと同じだね。
2010.10.18
コメント(0)
上の孫は小学校2年生。 昨日、16日(土)は秋日和の運動会となった。 9時半頃、学校の校庭に行く。 小学生とは言え、高学年になると身長が異なり、個性が出てくるが、小学2年生では、まだ、遠くからは孫をすぐに見分けるのは困難だ。 低学年の玉割りのゲームに家族や地域の人も自由に参加していいというので、孫の白組に参加する。 ボールを投げるが、大きな玉になかなか当たらない。 若い時は、コントロール自慢のピッチャーだったのが、情けない有様だ。 赤組の玉が先に割れた。 そうしたら、校長が来て、割れない白組のボールの分け目にナイフで裂け目を入れて、白組だけ再開。 ところがあっという間に割れた。 小学生は「なーんだ、すぐ割れてつまんない」と言っていた。 集団にいた孫と目を交わした。 大人の参加者には、どんぐりの玩具みたいのをくれた。 生き生きした活発な動きと歓声で、こっちも元気になったような気分だ。 昼近く、2年生のマスゲームを見る。 終わって、席にもどる孫とすれ違い、ハイタッチをする。 校庭を出たら、タイミングよくバスがきた。 12時には家に帰った。
2010.10.17
コメント(0)
街場のメディア論私:ところで、内田氏は、毎月10万円ほど本を買っているという。A氏:専門家は俺達と違うね。 そうすると、本棚はかなりの本になるだろうね。私:ところが、哲学書などは、8割は読んでいないという。 「積ん読本」だが、その書棚が「いつか読まねば」という切迫感になっているという。 それと来訪者が書棚を見ることによって、一種の自己紹介になるという。 書棚のない電子図書に対する批判だね。 「積ん読本」を売り払い、本棚をガラガラにした俺とは逆だね。A氏:俺は大学生のとき、親戚の家に下宿していた。 あるとき、よく来る電気屋の旦那が、偶然、俺の部屋に入って、本棚を見て「A君は、俺達と人種が違うね」と言ったことがある。 書棚は一種の自己紹介とはこのことかね。私:昔、独身寮にいた頃は、同僚の部屋に遠慮無く行くことがあったが、書棚でその人の関心事がすぐわかったね。 しかし、一般の人の家で、書棚がある部屋に初めての他人が入るというのは、日常あるケースではないね。A氏:そう言えば、10月11日の朝日新聞に国内有数の考古学の専門書群5万6千冊余りの処理が問題になっていたね。 この蔵書の受け入れ先を公募した結果、英国の研究所に寄贈がきまったという。 これに国内の関係者から反発が出ているという。 あまり利用されないのに、膨大な蔵書の保管料が年間100万円だという。 こういうものは、電子化すれば場所も食わないし、誰でも容易にアクセス出来る。 もっとも電子化の費用がまた問題になるだろうが。私:そういう図書の電子化の効用は、内田氏は認めているがね。 しかし、どうも「本を書くのは読者に『贈り物』をすることである」という説明は、分かりにくかったね。 要するに、本の真の価値を理解できる読者に渡ることで、その読者は書いた人から「贈り物」を得たということらしい。A氏:それは本だけでなく、美術品を含めたすべての作品に言えることではないの? 画家ポール・ゴーギャンの絵は売れず、貧乏のうちに死亡するが、死後、絵画は高い評価を受けるね。 それはゴーギャンへの「贈り物」かね。私:そういうわかり易い例なら理解しやすいがね。 その説明のために、マオリ族が登場し、タオンガというマオリ族の単語が出たりする。 「本はそれを真に理解できる読者を得て価値が生まれる」だけでいいのにね。 以前から内田氏の本を読んでいて、「内田文体」みたいなものがあるのに気がついたね。 内田氏のブログには毎日平均約1万5千のアクセスがあるそうで、このブログの内容が本になるらしい。 出版社は、そのブログをまとめて本にしているとのこと。A氏:そうすると、「推敲なしの文章」が婉曲な表現の原因になっているのではないかね。 それが分かりにくい「内田文体」になっているのではないかね。私:このブログで引用している「1Q84」の読者評で、「村上春樹作品を読むと、頭のなかがぐちゃぐちゃになるのですが、その感覚を味わうのも醍醐味ですね」というのがあったが、内田氏のこの本を読むと同様に「頭のなかがぐちゃぐちゃになりそう」だね。 文学作品はそれでもいいが、論理的な主張をする書籍ではどうかね。A氏:「ケンカ読法」が必要だね。私:この本の「メディアの不調は日本人の知性の不調と同期している」という宣伝文句に偽りありだと思ったね。 こういう偽りをしているから、メディアが不調になるのではないの。 まぁ、マスコミは不祥事が出ると、前から常識的に予測できるのに、あわてて大事に報じるのはおかしいと言っているのは理解できるね。A氏:例の大阪地検のFD改ざんもあり得ることだね。 問題は、組織チェックが甘かったことで、体質だから予測は出来たね。 今朝の朝日新聞の「私の視点」欄で、松川事件の弁護士だった今井敬彌氏が、松川事件でも検察の証拠隠しが多発し、結局、無罪になった例をあげ、その組織体質を反省をしないまま、今日まできていると指摘しているね。私:アメリカ映画を観ると、取調べは、日本と大きく違うね。 その点も追求すべきだね。
2010.10.16
コメント(0)
街場のメディア論私:この本は以前のブログでふれた通り購入した。 今回、購入した「デフレの分析」はプラスになったが、「街場のメディア論」は期待ハズレだったね。A氏:たしか、内田氏は、日本のマスメディアビジネスが凋落の一途をたどっている原因は、読者の問題でなく、情報を発信する側の「知的劣化」だとしているというね。私:ところが、はじめは、本題と関係のない「キャリア教育」からはじまっている。 今の行政のキャリア教育が、「自己決定論」・「自己責任論」・「自己探し論」であることを反論しているね。 「自分ひとりのため」に努力する人間のほうが「人のため」に働く人よりも、競争的な環境では勝ち抜くチャンスが高いという教育観が支配的だと反論している。A氏:それはおかしいね。 人は社会的な生物だから「人のため」に働くから、収入を得て生活できる。 イチローだって、「自分ひとりのために」努力していない。 努力することにより、観客に感動を与えることができるからだ。 それにより、観客の入場料やTV放映料やキャラクターグッヅの収入で生活できる。私:自己責任というのは「人のため」に働くための努力についての話だね。A氏:知性劣化によるメディアの凋落はどうなの?私:氏のところに取材に来るメディアの担当者が「私は個人的にこういうことを見聞したのですが、先生はどう思いますか?」と疑問を向ける人はまずいないという。 「----と世間で言われていますけれど、先生はどうお考えになりますか?」と例外なく訊くそうだ。 これが、メディアの「知的劣化」の現象例だという。A氏:しかし、それはメディアだけの問題でなく、日本人的な特徴ではないの? 欧米の学校では、「君自身の意見はどうか?」と聞かれて日本の学生が戸惑うことが多いという話をよく聞くね。 このブログの「まず、ISO 70問の克服から・経済危機克服に必要な『知的体力』は貴社にあるか」でもふれているが、イギリスでは小学校の算数の問題は「A+B=5」だそうだね。 正解は多様で、自分で考えるという訓練だね。 ところが日本型は基本的に「2+3=?」だね。 正解は1つだね。 正解を出した生徒は優秀だというわけだ。 それは基本的に考えるテストでなく暗記力のテストだね。 フィンランド教育でも、読書の宿題が多いが、要約だけでなく、必ず、自分の感想文を書かなくてはならない。私:だから、最近、急に日本のメディアの知性が劣化してきたともいえないと思うね。 昔からそうだったのかもしれないし、他のビジネスでも起きているかもね。 ISO(アイ・エス・オー)をとった企業にも、日本的な「知的劣化」が見られるとしているからね。 「デフレの分析」でも説明されていたが、国内の書籍・雑誌の合計売上が96年をピークに、販売部数は97年をピークに減っているという。A氏:そうするとメディアの凋落は「知的劣化」でなく、「人口オーナス」現象の一つかも知れないね。私:メディアの発信者は個人責任の意識がなく、その無責任さも内田氏は指摘しているが、大体、日本はメディアだけでなく、無責任の人が多いのではないのかね。 冤罪をでっち上げた警察も無責任。 でたらめな箱物を作って膨大な年金損失を出した厚労省官僚も無責任。 個人が出てこない。 もっとも新聞記事は、最近は署名記事が増えているような気がするがね。A氏:丸山真男氏の「日本人無責任論」は有名だね。 丸山氏は、難波大助の虎ノ門事件での責任のとり方を例に上げ、内閣総辞職、関係の無い沿道の警官まで処罰、大助の育った村も謹慎、かって、小学校の先生だった教師も謹慎だと指摘している。 要するに「一億総懺悔」で同時に「一億総無責任」と同じパターンを指摘しているね。私:メディアだけの問題ではないね。 明日は、書物についてふれよう。
2010.10.15
コメント(0)
村上春樹『1Q84』をどう読むか私:それから宗教学者の島田裕巳氏の感想もあったね。A氏:例のオウム真理教で問題になった人だね。私:「1Q84」は、カルト集団を扱っているからなのだろうね。 島田氏によると、ヤマギシ会やオウム真理教のような実在の集団がモデルになっているという。 氏は、結論がまだ、あいまいなので、続編を期待しているね。 それから、佐々木敦氏の読書感は面白いね。 渋谷の書店で一心不乱に「1Q84」を立ち読みしているオジサンを見かけたという話から始まる。 すでに2部作の1冊目を読み終え、BOOK2に入ろうとしていたという。 おそらく立ち読みで、2部作を読了しただろうという。 すごい集中力だね。 逆に、読むには抵抗感がないのだろうね。A氏:もっとも熱心な読者かもしれないね。私:このオジサンと逆に「買う」ということだけで「読む」をしない読者がいるのではないかと佐々木氏はいうね。 「1Q84」にチェーホフの「サハリン島」という著作が出てくるらしいが、そのためにそのチェーホフの本まで売れ出したという。 チェーホフのあまり知られていない「サハリン島」をストーリーに出すのは、村上春樹の特徴である衒学的な書き方の例だね。 それに読者が引っ張りまわされる。A氏:君が扱っていた2010.05.26「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という言わば青春小説から、ドラッカーの経営専門書までブームで売れるようになり、この青春小説の売上は100万部を超えているという。 似ているね。 この本の書評で、この本を出版企画した出版社や筆者はまさにドラッカーのマネジメントを地で行って成功したと半ば皮肉っていたね。私:佐々木氏は、「1Q84」を面白く読んだが、その直前に出た伊井直行氏の書下ろしの長編「ポケットの中のレワニワ」のほうがずっと感動したという。 しかし、この本は余り売れていない。 図書館で検索したら、予約待ちはゼロ。 市の図書館でも全部で6冊しかない。 A氏:「1Q84」は100冊くらいあり、それで、かつ、予約待ち3000だというのにね。私:佐々木中氏の場合は、「この小説は間違っています」とあるね。 死の物語を反復強化しているという意味で、この小説は文学的に間違っているという。 そして、BOOK3で麻原的・原理主義的・ナチス的な死の物語を転覆する真の小説を完成することを信じており期待しているとある。 この書評集は「1Q84」BOOK1、BOOK2までの読後感だね。 多くの書評が、これで終わるのは結末があいまいだとしていて、後編のBOOK3で答えを期待しているものが多かったね。A氏:BOOK3は今年の4月に出たね。私:結末はどうなったのかね。 その書評をまた期待したいね。 ところで、アマゾンの読者レビューは面白いね。 BOOK1は303のレビュー、BOOK2は212、BOOK3は184あるね。 総じて高い評価(星5、4)が多かったが、酷評(星2つ、1つ)のものも1割くらいあるね。 高い評価の読者のレビューに「村上春樹作品を読むと、頭のなかがぐちゃぐちゃになるのですが、その感覚を味わうのも醍醐味ですね」というのがあった。 これはうまいコメントだね。 「ぐちゃぐちゃになる」のを酷評する人と、反対に快感を覚える人がいるんだね。 俺は本を読んで「ぐちゃぐちゃになる」のは嫌だがね。
2010.10.14
コメント(0)
村上春樹『1Q84』をどう読むか私:俺が村上春樹に興味をもったのは、チャンドラーからだね。 村上春樹がチャンドラーファンだということからだ。 そして、チャンドラーを知ったのは、その短編「待っている」が「新宿鮫」の大沢在昌氏の愛読書である、というのを新聞で読んでからだ。 大沢在昌→チャンドラー→村上春樹というリンクの知的街道だね。A氏:君がこのブログを開始した06年から07年の頃には、結構、村上春樹に関する記事が多く、村上街道になっているね。 「チャンドラーと村上春樹」を皮切りに、村上春樹とリンクした「国家の品格」、村上春樹著「アフターダーク」、村上春樹訳「グレート・ギャツビー」中央公論新社刊・比較読み、フィツジェラルド作・野崎孝訳「グレート・ギャツビー」、チャンドラー「ロング・グッドバイ」村上春樹訳 そして、この後、09年7月までの1年半以上、ゼロだね。私:どうも、彼の文章にちょっとついていけないところがあったようで、この知的街道は消えたね。A氏:しかし、村上春樹の「1Q84」ブーム、で再度登場だね。 次に最近では、「横浜市立図書館借り出し待ち数トップ50点」で、図書館の「予約の多い本50」のトップに「1Q84」があり、待ちはダントツの3097とあるね。 そろそろ、2ヶ月がたつが、待ちはどうかね。私:「1Q84」はBOOK1、2、3と3分冊だが、3097というのは、BOOK1だね。 今、図書館のHPを開くと、2995だね。 減ってはいるが、余り変わらないね。 BOOK2は待ち数1784、BOOK3は待ち数1833だ。 BOOK2以下になると急に千くらい予約数が大きく減るのは何故だろうかね。A氏:君は結局、「1Q84」は読まないのかね。私:どうも村上春樹の「1Q84」ブームに書いたように村上春樹の文章がなじまない。 そこで、図書館から「村上春樹『1Q84』をどう読むか」を借りたよ。 予約待ちなしで借りられたよ。 36人のそれぞれ名のある人が読書感を書いているが、「1Q84」を褒めている人、あまり評価していない人と色々だね。 そのうちで竹内真氏の村上春樹の文章にふれた感想が俺に一番ピンときたね。 氏は、村上春樹の小説を友人から読むようにすすめられたが、読み始めると、ビックリするほど文章が頭に入ってこないので、早々に投げ出してしまっていたという。 俺と同じ経験をしているのに驚いたね。 俺が読んだのは「アフターダーク」1冊で、後は翻訳本だね。 読み易いが、翻訳本を読んでいるような気がしたね。 「村上文体」というのだそうだ。 それが簡単に作成できるイタズラ作文ソフトがあるそうだ。 「村上文体」は英訳が楽にできるらしい。A氏:村上春樹は昨年、エルサレム賞を受賞したね。 授賞式では有名な「卵と壁」の挨拶をしているね。私:竹内氏は、これにも批判的だね。 日本では「よくぞイスラエルを堂々と批判した」などと盛り上がった連中がいるが、その実態は受け取る側によっていかようにでも解釈できる玉虫色の内容だと批判的だね。 ところで、竹内氏は「1Q84」の書評を編集部から求められ、送ってきた本を読んだら、娯楽小説としては面白く、楽しい読書体験となったという。 しかし、なじめない文章スタイルは同じだったようだね。 竹内氏は「村上春樹は、社会に揉まれて生きてきた経験を持つ作家でない」という。 生活感覚が希薄だという。 要するに、社会的、政治的な主題をあまり扱わなかった村上春樹が、「1Q84」でそれに挑戦したということかね。 竹内氏は、出版不況の中で異常な売上を記録している「1Q84」は、文学という特殊な文化が日本社会の中で突き当たっている限界を示しているという。 明日も、批判的な書評にふれよう。
2010.10.13
コメント(0)
私:昨日は、幼稚園年少組の下の孫の運動会なので、昼頃、幼稚園に行ったが、午前中に出番があったようで間に合わなかったよ。 A氏:快晴だったね。 カラッとして、まさに秋日和だったね。 体育の日にぴったりの天候だったね私:運動会は最初の予定では、10日の日曜日だったんだが、すでに雨が確実になったので、早めに11日に変更になった。 かえって、そのほうが快晴に恵まれてよかったね。 幼稚園から帰って、いい天気がもったいないので、午後3時頃、近所の自然公園にウオーキングに出かけた。 気温は30度くらいあるので、夏のウオーキングスタイルだ。 真夏なら、休日でも、森の小道をすれ違う人は、せいぜい2、3人だが、昨日は、延20人くらいすれ違ったね。 やはり、秋だね。 中高年の夫婦連れ、ジョギングする人、家族連れ、俺のように独り歩きする人などいろいろだね。A氏:今朝の新聞は休みだが、昨日の朝日新聞の朝刊では、体育の日にちなんでか「シニア体力 右肩上がり」という記事が一面にデカデカ出ていたね。 「ジム盛況 スポーツ市場も牽引」とあるね。私:団塊の世代が定年退職で、スポーツジムに通う人が増加していると報じているね。 健康ブームだね。 俺の通うスポーツクラブも、朝から常連のシニアの男性連中が来ているね。 熱心な人は1日中ジムにいる人もいるし、毎日来ている人もいるようだ。 俺は今のところ、週1回のヨガだけだが、そのうち、増やしたいと思っている。 もっとも、スポーツクラブのメンバーのメインは以前からシニア女性だね。 これは変わらないだろうがね。A氏:今後、定年退職する元気なシニア男性が増えるだろうね。 そうすると、この市場はもっと伸びるだろうかね。私:「高齢者人口ボーナス」かね。 高齢者が、福利厚生施設に行くより、ジムに行く人のほうが増えることを期待したいね。
2010.10.12
コメント(0)
A氏:ISO(アイ・エス・オー)をとっている会社の知人から、今頃になって、「ISO9001の規格にある『プロセスアプローチ』の意味がよく分からない」と質問されたよ。 俺も、規格を読んだけれどもよくわからないね。私:これは規格の表現が悪いね。 「プロセス」と「アプローチ」を分けて考えないと理解出来ない。 まず、「プロセス」だ。 要するに、企業などの組織活動は、いろいろなプロセスがあり、そのプロセスは連結している。 そして、プロセスにはインプットがあり、アウトプットがあって、アウトプットが次のプロセスのインプットになり、つながっていく。 営業は、客の注文というインプットを受けて確認するプロセスがある。 これを設計に伝票というアウトプットで伝える。 設計はこれをインプットとして、設計のプロセスをして、アウトプットとして図面を書き、生産管理に送る。 生産管理は購買や製造に指示書というアウトプットを出す。A氏:なんだ。 今やっている実態そのものではないの。 特に目新しいことはないのではないの。私:すべて、「活動しているものにはプロセスがある」。 君が会社に行くとする。 朝起きて、歯を磨き、顔を洗う。 皆プロセスだ。 その間、奥さんは朝食を用意する。 これもプロセスだ。 そのアウトプットの朝食を君はインプットして朝食をする。 アウトプットとインプットの関係だ。A氏:そういうことか。 家庭の行動を単にプロセスの単語で表現しただけか。 その場合、「プロセス」を「行動」にしたらどうかね。私:いい提案だね。 次に「アプローチ」だ。 広辞苑でひけば「学問・研究への接近の仕方」とあるように、研究対象への接近方法だね。 今、研究対象は企業などの組織の「行動(プロセス)」だから、「プロセスアプローチ」とは正しく言うと「組織内の行動(プロセス)に対する『プロセスアプローチ』」となるね。 「研究対象」と「アプローチ」という次元が違うものにプロセスをダブって使っているので理解困難になるから、研究対象の時は「行動」を使うと混同しないね。 以下、それで説明するよ。 登山で言うと、登山行動が頂上への行動「プロセス」で「アプローチ」は登山道の選択だね。 どの道で頂上へ「接近する」かの選択だね。A氏:富士登山で言うと「アプローチ」は富士宮口か、須走口か、吉田口かだね。私:そうだよ。 だから、「プロセスアプローチ」というとき、別の登山口である「他のアプローチ」を示したほうが理解しやすい。 規格にはその説明が欠落しているね。 2001年1/2月号の「ISOニュース」記事に次のようなことが書いてある。 「多くの組織は、未だに、職能的な、階層的な構造によって、管理されているが、製品やサービスは、職能を縦断するビジネスプロセスにより、生み出され、売られ、提供される。」 「プロセスアプローチ」に対するものが「職能的、階層的アプローチ」だね。 両者とも対象は「組織の行動(プロセス)」で共通だが、「アプローチ」が違う。 だから、「組織の行動(プロセス)に対する『プロセスアプローチ』」と「組織の行動(プロセス)に対する『職能的アプローチ』」と言えば、ズバリ明快だね。A氏:要するに、営業、設計、生産管理、購買、製造などの職能の分類での「プロセス」を見るのでなく、「プロセスアプローチ」は顧客の注文から始まり、営業から製造、顧客への納入までの「一貫の流れ」というアプローチで組織行動(プロセス)を見るということだね。私:そうだ。 俺は「職能的アプローチ」を「横方向のアプローチ」、「プロセスアプローチ」を「縦方向のアプローチ」と呼んでいるよ。 ところで「良いアプローチ」で研究対象に向かうとノーベル賞をもらえる可能性が高い。 同じように、「プロセスアプローチ」も「職能的アプローチ」よりも「ある良い効果」を期待している。 来週の月曜日には、IBMクレジットが従来の「職能的アプローチ」による改善から「プロセスアプローチ」による改善に切り替えて、お客の待ちを1週間から4時間にし、かつ、大幅なコストダウンをした例を説明しよう。 そうするとよく理解できるよ。 もっとも、これは「ISOマネジメントシステムの崩壊は、何故起きたか」の本の受け売りだがね。 ISOマネジメントシステムの崩壊は、何故起きたか
2010.10.11
コメント(0)
【入荷予約】 デフレの正体私:すでに述べて来たように「GDP を維持ないし成長させることができれば、いくら生産年齢人口が減少しようとも、個人所得や個人消費、企業業績もよくなる」という対策はだめだね。A氏:水野和夫氏が「成長神話の崩壊」で 「経済指標としては、GDPは見ず、見るのは、国際収支と雇用関係だけだ」 というのが分かるような気がするね。私:公共工事も「生産年齢人口」の長期的な大減少の下でも本当に必要な工事と、人口増加を前提とした工事の区別を明確にして、後者の工事はやめるべきだね。 「規制緩和」も同じだね。 「雇用の規制緩和」によって、消費をする「若い世代の給与の抑制」が深刻化して、かえって、内需拡大から遠ざかっている。 相対的に給与の高い中高年やOBの処遇こそ流動化すべきという。A氏:「インフレ誘導」はどうだね。私:高齢富裕層の貯金が、インフレで目減りする前に消費に回そうというものだが、高齢富裕層が消費するものはあまり無いので、効果は疑わしい。 個人所得の大幅な増加が起きた04年-07年でも一向にインフレ傾向にならず、所得が高齢者の貯蓄に回ってしまった。 「金融緩和」でのデフレ脱却も効果はない。 「モノづくり技術の革新」も資源のない日本が外資を稼ぐのには重要だが、今、問題になっているのは、稼いだ外貨を国内でどのように内需につなげるかだね。A氏:出世率向上はどうだろうかね。私:問題は母親の絶対数だね。 出生率をあげても、生む母親の数がすくなければ、絶対数の増加は期待できないね。 奇跡的に出生率が大きく向上しても、その子どもたちが、「生産年齢人口」に加わるのは、20年ほど先になり、その間、「生産年齢人口」は減少を続ける。A氏:移民はどうかね。私:これも絶対数が問題だね。 1億3千万人近くが住む日本で、ゆくゆく数千万人に達する「生産年齢人口減少」を補えるだけの外国人流入はありえないだろうという。 それに、これとは、無関係に高齢者の数はドンドン増加する。 中国も2030年くらいから「人口ボーナス」は下降し「人口オーナス」が始まる。 急速に高齢者社会になる。 外国に人を出す余裕は次第になくなるかもしれない。 これはアジア圏は同じで「人口オーナス」が始まる。 とにかく、原因が「生産年齢人口の減少」にあるから、効果的な対策は次の3つとしてあげている。 第1--生産年齢人口が減るペースの緩和 第2--生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額の維持・増加 第3--(生産年齢人口+高齢者)個人消費の総額を維持・増加 「非ケインズ効果」と言って、強い社会保障があると将来についての不安が消えるため、国民は安心して現在の消費を増やすということが、デンマークとアイルランドで実績があるというが、これは第3の一つのやり方だね。A氏:君が「社会保障で経済強めるには」でふれているね。私:カネのある高齢者の将来不安が減少するので個人消費を増加させるだろうというわけだ。 しかし、そうかといってわれわれ年寄りには、現役のときのように消費するものはあまりないがね。A氏:カネがある高齢者は子や孫のためには、カネを惜しまないことが多いね。 だから、「振り込め詐欺」はその高齢者のカネの使い方に目をつけたんだね。 これは、犯人の若い世代への一種の所得配分だね。 第2の方法だね。私:もっとも犯人が貯金しないで必要な消費に使うことが条件だがね。 この本では、上記の3つにそっていろいろな具体策が掲げられており、納得はできるが、今の政治状況で実行できるだろうか、それが問題だね。
2010.10.10
コメント(3)
【入荷予約】 デフレの正体私:著者の視点は「人口ボーナス」を理解しているとわかりやすいね。A氏:これは、このブログでは、「老いてゆくアジア・繁栄の構図が変わるとき」6回シリーズの1、2、3、4、5、6で詳しくふれているね。 そのブログで次のような説明がある。 「日本の『人口ボーナス』の終点は1990年から95年。 国内貯蓄率も低下し、高齢者の医療・年金問題が大きな課題として登場する。 しかし、日本を除くアジア諸国は「人口ボーナス」を享受できる真っ只中。」私:この本でも「戦後一貫して日本を祝福してくれていた『人口ボーナス』が1995年頃に尽き、以降は『人口オーナス』の時代が始まった」とある。 その影響に対しては、従来型の景気振興策は無力だという。 「人口オーナス」の波は、国内新車販売台数減、国内貨物総輸送量減、自家用車による旅客輸送量減、蛋白質や脂肪摂取量減、国内酒類販売量減、一人当たり水道使用量減などのデータに直接表れているという。A氏:君も「我慢するより需要を作れ・なぜ雇用創出か」で書いているように、普通の高齢者世帯は「清貧」だからね。 高齢者増で、消費は減る。私:日本の江戸時代の人口は3千万人台と言われているが、1940年頃は7千万人超へと倍増している。A氏:戦争中の「一億一心」というのは朝鮮や台湾も含めている人口だね。 日本本国は7千万人だね。私:だから、戦後半世紀で1億3千万人近くへと倍増に近い増加だ。 ところで、戦争中も「産めよ増やせよ」で人口も増えていたが、47年から49年までに起きたベビーブームで子どもが急増する。 日本史上最大の乳幼児集団が出現したことになる。 これが「団塊の世代」だね。 この世代が学校を卒業して就職する65年-70年頃は、日本は「人口ボーナス」を最大限に受け取った。 高度成長だね。 著者は、雇用の増減の原因は、景気でなく、生産年齢人口の増減そのものだという。 ところで、高度成長期に出生者数のほうが、明治維新以降初めて構造的に減り出す。 一時的に64-74年に出生者数は再び増加するが、これは「団塊の世代」が結婚して生んだ「団塊ジュニア」だね。 しかし、その後は少子化の傾向はまた続く。A氏:俺たちは「団塊の世代」のちょっと先を走っていたが、地方から首都圏に出て結婚したときは家族寮。 結婚して子どもが2人目のときには、団地。 子どもが大きくなるとローンで持ち家と移ったね。私:それは「団塊の世代」も同様だね。 しかし、俺達の世代とは数が違うね。 子ども部屋もほしいということで、首都圏や関西圏を中心に日本史上空前の住宅需要が発生する。 俺の住んでいた団地の近くにあった大きな丘は、最初、畑や森林だったのが、きれになくなり、戸建住宅に置き換わったね。 津波の跡のような変化だったね。 だから、「団塊の世代」が住宅を買い終わってしまえば、住宅需要は減る。 それを「住宅市場の活況」は「人口の波」なのに「景気の波」と勘違いして、住宅供給を適当なところでやめられず、バブル崩壊となる。A氏:「『景気』さえよければ不動産価格は上昇する」とか、「不動産価格が上昇すれば、景気が良くなる」はウソだね。私:俺の今住む住宅地は、「団塊の世代」のための一戸建てが中心だが、すでに老夫婦だけや老婆一人だけ住んでいるケースが多く過疎化しているね。 一戸建てを売りに出して、マンションに移っている夫婦もいる。 住宅の「人口オーナス」現象が始まっているね。 今、100年に1度の不況と言っているが、「生産年齢人口減」という「人口オーナス」は日本史上2000年に1度の波だね。 未経験の荒波に対応せざるを得ない。 だから、従来発想の景気対策では焼け石に水となる。 明日は、その視点からの対応方法についてふれよう。
2010.10.09
コメント(0)
【入荷予約】 デフレの正体私:青森県を例にとると、00-05年に就業者が減り、消費も減った。 何故、就業者数が減ったのか。 総人口でなく、「生産年齢人口」(15~64歳人口)が減ったんだね。 著者は、これを「消費年齢人口」と呼ぶ方がいいという。 内需=消費をする人口層だからだね。 青森県の人口は00-05年に3万9千人減ったが、「生産年齢人口」は5万4千人減っている。 総人口の減少より多い。A氏:急激に減少しているのは何故だろう。 子どもが増えたのだろうか。私:いや、子どもは少子化で2万4千人減っている。 逆に、65歳以上が00-05年に3万9千人も増加している。 これが主な原因だね。A氏:総人口が増えている首都圏1都3県ではどうかね。私:首都圏は00-05年に人口は106万人の増加。 ところが、同じ期間に65歳以上が118万人増加している。 だから、首都圏も「消費年齢人口」は減少している。 「高齢者の激増」「子どもの減少」「現役世代の減少」が首都圏の真ん中で起きている。A氏:だから、伊勢丹と三越が統合する。 車の売れ行きが落ちるというわけか。私:高齢者は、所得があっても、消費が減る。 消費年齢ではない。 だから、消費が落ちる。 内需は増えないで時とともに減少していく。 不景気でもデフレでもない。 これは、他の県でも言える傾向だ。 しかし、沖縄だけは例外で現役世代が増加している。 だから沖縄だけは経済は好調だ。A氏:沖縄は30年代後半生まれの人々が沖縄戦で多く亡くなられたからだね。 だから00-05年に65歳を超えた人が県人口に対して他県より相対的に少ない。私:日本の中で首都圏が日本最大の高齢者激増地帯となっているのは、30年代後半生まれの人達が、高度成長期の前期に中卒の「金の卵」として大量に流れ込んだからだね。 この人達が加齢とともに首都圏の高齢者の激増につながっている。 俺も君も「金の卵」ではないが、地方出身で首都圏に住むようになって高齢者となったようにね。 確かに現役時代のようにモノは買わないね。 孫に買ってやる程度だね。A氏:しかし、日本で一番数が多いのは、30年代後半生まれでなく、40年代後半の「団塊の世代」だね。 そうなると首都圏は、「団塊の世代」の加齢で、高齢者はさらに増加することになるね。 そして、少子化だから「現役世代=生産年齢人口=消費年齢人口=内需年齢人口」は、さらに減少することになる。私:05-15年の10年間で、予測は63%増の154万人。 首都圏の高齢者福祉現場は大変なことになるね。 今でも大変なのにね。 1990年代半ばを境に「生産年齢人口の波」の減少局面に突入した日本。 定年退職者の増加→就職者数の減少→内需の構造的減少だね。A氏:昨日の朝日新聞の「リレーおぴにおん」欄で、ビル・トッテン氏のインタビュー記事が載っていたね。 氏は日本経済は今後、縮小するとしているね。 GDPは半分になるかもしれないという。 給料も半分になるが、労働時間も半分になるという。 そして「晴耕雨読」を奨励し、自ら家庭菜園を持ち実行しているという。私:明日は日本の人口の流れを歴史的に振り返ってみよう。
2010.10.08
コメント(2)
【入荷予約】 デフレの正体私:まず、「日本の国際競争力は落ちた」という評論に対する反論だね。 日本の貿易黒字を見ると世界同時不況でも継続している。A氏:しかし、「生産性が下がっていて、国際競争力が落ちている」という議論もあるね。私:これは生産性(労働生産性)の定義が重要で、分子=付加価値額の主要部分の内部留保と人件費が構造的に低水準になっているためだね。 分母=労働者数の過剰のためではないという。 つまり、「コストダウンを重ね利益の低下を甘受して体力勝負で低価格大量生産を続ける」という得意技が染み付いているので、いくら生産性が低くても、国際的なコスト競争力は失っておらず、国内業者はコストダウンで苦しんでいるが、輸出が減っていくという状況にはならない。A氏:それに加工貿易国な上に内需不振なので、製品が売れないと原材料も輸入しないという構造だから、逆に貿易赤字になるのは構造的に難しいということか。 円高でも、外に売る方は不利だが、外から買う方は有利という両面が同時に発生するね。私:問題はこの黒字で稼いだカネの行く先だね。 多くは輸出企業と、その株主になっているような高齢富裕層の財布に集中していて、庶民の懐には無関係のまま海外に再投資されている。 それが外国から金利配当を呼ぶ。 この毎年の所得黒字がバブル期の4倍の10兆円台となっている。 このカネは国の借金である国債にまわっているし、国債の金利は、また、1400兆円の資産を持っている日本人個人と日本企業の収入になるから、国際収支に関係ない。 経常収支は01年から08年の8年間だけで、累計138兆円の経常収支黒字が日本に流れ込んでいるという。A氏:日本が黒字になっている相手国は、中国、韓国、台湾などだね。 逆に、フランス、イタリア、スイスなどに対しては赤字だね。 ここからは高級品を買うからだろうね。私:中国、韓国、台湾とはいつまでも黒字というわけにはいかないだろうね。 それには、先進国として高級な品物やサービスの提供が必要だろうね。A氏:今朝のマスコミは、日本のノーベル化学賞で大騒ぎだが、こういう方面の成長が重要だね。私:日本経済の停滞が国際競争力に負けた結果でないとすれば、それと無関係に進む「内需の縮小」が日本経済の大問題ということになるね。A氏:君の言う需要・消費増→経済成長→雇用増の流れのトップを走る内需だね。私:この本では「地域間格差」などないという論を展開している。 元になるデータは、県民の個人所得と小売販売高だね。 これを見ると、「地域間格差」など見られない。 むしろ、時期の差のほうが大きい。 90年からの日本は3つの時期に分かれる。 第1期が90-96年のバブル崩壊期で、全国的に個人所得も小売上高が増加していた。 第2期が98-03年の全国的な「平成不況」期で、個人所得も小売上高も減少に転ずる。 第3期が03-06年の輸出主導で好景気になった時期で、全国的に個人所得は少し上がるが、小売上高は低迷。A氏:データによると、「地域間格差」よりもそれぞれの時期に特有の要因の方の影響が大きいということになる。私:その要因は明日ふれよう。
2010.10.07
コメント(0)
【入荷予約】 デフレの正体私:どうもマスコミで 「デフレだ、デフレだ。 雇用増だ。 経済成長だ。 GDP上昇だ 金融緩和だ」 という政治家、経済学者、エコノミストたちの言うことが、常識的な理屈や生活実感にピンとこない。 それが、頭の中に疑問としてずっと「澱」のように残っていたねA氏:この問題のブログの知的街道は「雇用問題の素朴な疑問」ではじまっているね。 その後、街道は続く。 「減税でiPadは生まれるのか」、「社会保障で経済強めるには」、「雇用の常識『本当に見えるウソ』・数字で突く労働問題の核心」、「絶対こうなる!日本経済・この国は破産なんかしない!?」、「下り坂社会を生きる」、「1ドル50円台を覚悟せよ」、「我慢するより需要を作れ・なぜ雇用創出か」と続くね。私:「雇用の常識『本当に見えるウソ』」で、雇用問題の背景に日本の人口構成の変化が関係していることが分かってきたんだが、まだ、内需の変化の方がピントこない。 一昨日、1泊の同窓会に行くために、列車の中で読む手軽な本を探すために、途中、本屋で新書版をさがしていたら、すばり、俺の疑問にふれた題名の新書を店頭で発見したね。 それが、この「デフレの正体」だね。 本の帯の宣伝がすごいね。 池上彰氏が「目からウロコ。 具体的な数字で現実を斬る爽快さ」と評している。 俺もまさに「目からウロコ」だったね。 書評家の小飼弾氏は「この本が上半期新書ナンバーワン」と激賞とある。 俺は、需要増→雇用増→経済成長という単純な理屈を考えていたが、まさに、その需 要の減退に人口構成の変化から分析しているんだね。 この本の初版は6月で、俺が書店で買ったのが9月の5版だから、かなり売れているんだね。 列車の中で熱中して読んだね。 今日ようやく、読了した。 明日から、そのまとめにはいろう。
2010.10.06
コメント(0)
昨夜は、東海地方の温泉地で一泊の大学のときの同期会。 同期会のメンバーは26名だったが、途中、30歳台でなくなった物故者が1名あっただけで、毎年、集まっていた。 もっとも企業の中堅になった年齢の時は仕事で集まりが悪かったが、定年を迎えて次第に集まりがよくなった。 ところが、皆、70歳代になると、今度は病気や体調不良での不参加者が増えてきた。 年には勝てない。 昨年は、22名集まったが、今年は15名となった。 今年は、同窓会直前に、1名が急死したという連絡があった。 小学、中学、高校の同窓会では、かなり物故者がいるという。 それに比較して大学の同窓会メンバーの物故者が少ないのは、多くは大企業に就職したので、楽をしたのではないかと誰か言っていた。 中卒、高卒で独立した人は、やはり苦労が大きいのだろうという話であった。 夜10時くらいまでガヤガヤ話して、今朝は宿の朝食を終わって散会。 昼には家に帰った。
2010.10.05
コメント(0)
A氏:俺の知っている機械加工をしているY社では、測定機器の管理で悩んでいることがあるんだよ。 加工が高い精度を要求されるので、現場では毎朝、測定機器を点検してから使っているんだね。 ISO9001をとっているので、その記録のペーパーが膨大で大変らしい。私:点検と校正は違うんだよ。 校正というのは、測定機器が正しい精度を得るため、国家標準までつながる記録が必要なんだね。 これを専門用語で、測定機器のトレサビリティと言っているね。A氏:そういえば、商店街の肉屋の計量器も検定ラベルが貼ってあってそういう管理がうるさいね。私:校正には元になる「原器」というのがあって、これと比較チェックをするんだね。 Y社ではどうなんだね。A氏:社内「原器」があって、これと毎朝、比較チェックしているから、そうすると点検でなく校正だね。 現場の加工品質が室温の変化などの影響を受けるらしく、毎朝、校正が必要らしい。私:ところで、ISO9001で記録を要求している測定機器というのは、限定されているんだよ。 測定機器全てでないね。 校正や点検には手間がかかるから、よく測定機器の使用目的を考えよという指摘がISO本部のガイドラインに書いてあるよ。 要するに、製品の合否の判定に使用する測定機器に限定されているんだね。 対象となるのは検査用の測定機器だね。A氏:そうすると、現場の測定機器はどうなるんだね。私:例えば、現場では機械加工を始める前に、段取りをするね。 そのとき、段取りが正しいか、1個目の測定をするね。 これは検査目的の測定でなく、段取りが正しいかを確認するための測定だね。 これを「品質確認」といって「検査」と区別する方法は以前からISO9001ではやられているよ。 こういう目的の測定機器を「目安計器」ということがあるね。 検査というのは関所みたいなもので、加工完了後、次の工程に行く時とか、出荷前に行うものだね。A氏:そうすると現場の測定はISO9001のいう検査ではないこともあるのか。 検査でないなら、ISO9001のいう測定機器でなくなるから、校正や点検記録が不必要になるということか。 「目安計器」の記録は不要ということか。 しかし、それでは、いい加減な管理にならないかね。私:それは別に記録を取らなくても、品質確保の必要上、測定機器の厳しいチェックが定着しているのだから問題ないね。 但し、現場の加工の後、出荷するときに検査があるかどうかだね。 そういう検査がないと審査員ときちんと議論できないね。A氏:Y社では、それは検査部で別に出荷検査をちゃんとやっているよ。私:それなら問題ないね。 もちろん、その検査部で使っている測定機器は校正や点検の記録は必要だね。A氏:その記録量はたいしたことはないらしい。 なるほど、ガイドラインや規格の趣旨をよく読んで理解すべきだね。私:それが企業の「知的体力」の問題だね。 「知的体力」があれば、無意味なペイパーワークを避けることができるね。 ムダなペイパーワークは、その企業の「知的体力」の劣化を反映しているね。 「まず、ISO 70問の克服から・経済危機克服に必要な『知的体力』は貴社にあるか」を参考にしてよ。
2010.10.04
コメント(0)
農民国家中国の限界私:著者は中国爆食論のウソとして、農地1ヘクタール当たりの人口を比較して、中国は十分の農地があるとしている。 また、農産物の輸入は国内の農民の保護にならないとしている。 近年、中国の大豆の輸入が増えたのは、大豆の国内生産が少量であり、国内生産者と競合することはなかったからであるという。 政治の安定のために農民の経済状況を改善しなければならない中国では、穀物の大量輸入はないだろうと予測している。A氏:生活が向上すると、食肉消費が増加して、それが飼料である穀物の不足につながるのではないの?私:確かに、中国の食肉消費は増えているが、1人50kgぐらいで横ばっている。 日本も高度成長期から、食肉消費量は伸びてきたが、1人40kgくらいで横ばっている。 日本の食肉消費量が中国より少ないのは魚を多く食するからだろうという。 日本人の食肉消費量が増加しないのは、日本人の体格や食文化の関係があるだろうという。 現在、米国は1人当り124.6kgだというから、桁違いだ。A氏:食料生産と水質汚染の関係はどうかね?私:人口が多く、降雨量が少なく、食糧を自給していることから、中国の水質汚染問題の解決は容易でないという。A氏:中国が農民国家でありながら、農民が蔑視されているというのは、政権上も不安定ではないかね。私:そのために、2006年に農民税を撤廃したり、農民が薄型テレビを購入するときは13%の資金を援助したりする制度もあるという。 大体、中国の共産党政府は農民の反乱をもとにできたのだから、中国共産党の中央は農村の貧困は重要問題として捉えざるを得ないだろう。 中国の最大の問題は、土地を公有制としながら市場経済に転換したために、土地の売却に関連した巨額の利益が地方政府やその周辺に蓄積されてしまったことだという。 これが汚職の温床になっているという。 したがって、中央政府より地方政府のほうが強いことがあるという。 土地取引の改革はそのため容易にできないようだね。A氏:共産党にかかわる人々が、汚職社会の恩恵を享受し、格差社会の頂点に立つようになっているため、政権が自ら改革を行うことはきわめて難しいということかね。私:著者は、中国を「田舎臭い成金」に見えるとしている。 中国は一党独裁体制により驚異の経済成長を成し遂げたが、その力で国際社会で尊敬される地位を築こうと思うと、強引な一党独裁体制を崩さなければならない。 最良のシナリオは民主化であると著者は言う。 しかし、そうなると、多様な文化と歴史を持つ中国国内を一つにまとめることは困難になる。 中国の歴史を振り返れば、統一を欠き、小国が分立していた時代のほうがずっと長い。 ここ千年ほど、中国が超大国になれなかった最大の理由がここにある。A氏:一党独裁体制が続き、ソフトパワーも持てず、また、輸出依存型の経済成長が行き詰まり、次の産業が育たないという停滞した社会に中国がなるという可能性もあるということか。私:都市と農村の格差も是正されずに、今以上に暴動が出る可能性もある。 その矛盾を逸らすために対外的に強硬になることを著者は予想しているね。 それに対して、日本は柔軟に対応すべきとしている。 但し、この本が出版されてから、尖閣問題での中国の強硬姿勢が出てきているね。 どう落ち着くかが問題だね。A氏:日本は「モノマネ」で高度成長をしてきたが、そのために行き詰っている。 日本以上に「モノマネ」がうまい中国は、それで伸びている。 しかし、独自のソフトパワーが生まれない。私:日本はソフトパワーを強化して、中国市場を補うべきだという。 その点は、常識的な結論だね。 しかし、日本にはそういうソフトパワー(知的体力)があるのかね。 それが問題だね。
2010.10.03
コメント(0)
農民国家中国の限界私:この本は、日経ビジネスの紹介記事で、興味をもって6月末に図書館に予約。 尖閣諸島で日中がもめている今週にタイミングよく借りることができた。A氏:著者は、中国経済の専門家ではないね。私:アジアの環境問題の専門家だが、環境問題で中国を何度も訪問しているうちに、日本国内で語られていることと、実際に中国で見聞きしたことが大きく異なっていることがこの本を書く動機になったという。 そこでこの本を執筆するにあたり、150冊くらいの中国関係の本を読んだが、中国を敵視する本と、中国の経済発展を日本に紹介する本とにはっきり大別できたという。A氏:サブタイトルの「システム分析」というのは、どういう意味だね。私:システムを理解する上でもっとも重要な因子を見つけ出し、その因子のかかわりで全体を捉え直す作業だという。 確かに、この本は、今までの現代中国を論じているのと違った視点で捉えているね。 題名の「農民国家中国」とあるように、「世界の工場」という見方ではなく、未だ国民の約半数は農業に従事している点に注目しているね。 日本の高度成長が始まった東京オリンピックのときは、農業人口割合は27%。 中国は、北京オリンピック頃は、63%。 たしかに、農業国だね。A氏:中国には「戸口」という戸籍制度があって、都市戸籍と農民戸籍とで分かれているね。 一種の身分制度だね。私:農民戸籍を持っている人は8億3700万人。 人口統計では、都市人口が5億9400万人、農村人口が7億2800万人。 農民戸籍を持っている人より、農村人口が少ないのは、都会に出稼ぎに出ているからだね。 この数字だと、1億9000万人。 これを農民工と呼ぶ。A氏:君のブログの「大地の慟哭・中国民工調査」によると2億人とあるね。 農民工は民工とも言うんだね。私:著者は、中国の工業化と日本の高度成長との類似点をあげているね。 日本では、農村から集団就職のように、多くの農村人口が流入してきた。 しかし、日本と大きく違うのは、中国の都市と農村との格差が大きいことだという。A氏:日本も戦前には、都市部と農村との間には大きな格差があったが、戦後の高度成長の時は、格差は減少したね。私:中国の工業化にかかわらず、都市と農村との格差の拡大の原因を、著者は、土地の所有性にあるとしている。 日本では戦後の農地解放で、農民は土地を私有化できた。 そして、工業の発展に伴なう土地の価格高騰で、収入が増えた。 それと日本は民主主義国家だから、農民をバックにした自民党の農民保護の政策も影響しているという。A氏:中国の農地は私有制でなく、公有制だから、農民はその恩恵にあずかれないというわけだね。 そのカネは、どこへ行ったのだろうね。私:明確なデータは無いが、地方政府や公社関係者などに流れたのではという。 中国は、広大な地域を治めるので中央政権の力はそれほど強くない。 共産主義政治だから、贈賄などで権力のある者に流れたと考えられるという。 そして、このカネが中国のインフラ整備に流れたという。A氏:中国における投資は、外資が多いと思ったが、違うんだね。私;圧倒的に自己資金が多いんだね。 明日は、中国の未来にふれよう。
2010.10.02
コメント(0)
私:今日現在の図書館予約進行状況だよ。書名予約日9/17待ち数10/1・現在待ち数「天国は水割りの味がする」4/2533「『環境主義』は本当に正しいか?」5/230読了・9/21ブログ「プライド」6/30読了・9/18ブログ「虐殺器官」6/61 読了・9/30ブログ「学歴の耐えられない軽さ」6/123028「習近平の正体」6/2691「農民国家中国の限界」6/265読書中「ホームズ聖地巡礼の旅」6/274読了・9/29ブログ「六十年安保」7/821「モスクワ攻防戦」7/119 5「ホワイトハウス・フェロー」8/86 2「残夢整理」8/820 18近世の仏教8/22 0読了・9/28ブログ特捜神話の終焉8/25 3618カチンの森9/19-5灘校9/19-14若者よ、マルクスを読もう9/19-23A氏:トップの「天国は水割りの味がする」は、もう、半年待ちだね。 この半月ほど動かないね。 ベストセラーでもないのにね。私:それでも、この本は俺の後、まだ20人が待っているんだよ。 「学歴の耐えられない軽さ」も動きがにぶいね。 これは大体、言わんとしている内容は想像つくので、場合によってはキャンセルだね。 この表を眺めると予約待ち本は、大体、平均3、4か月待ちだね。 まぁ、図書館利用はノンビリといこう。 それが利用のコツだね。
2010.10.01
コメント(0)
全31件 (31件中 1-31件目)
1