がんへの光選択的遺伝子導入に成功
2014年11月11日、東京工業大学の研究グループは光照射部位で選択的に遺伝子を導入することができるナノマシンを開発し、皮下にがんを持つマウスにナノマシンを静脈注射した後、がんに光照射することにより、全身投与後の光選択的遺伝子導入に世界で初めて成功したことを明らかにした。
研究成果はNature Communicationsに2014年4月2日から公開されている。
ベクターとしてはウイルスや、脂質をベースとした非ウイルス性の試薬が一般的に使用されている。だが、これらを生体に投与した場合、正常な細胞にも遺伝子が導入されてしまい、予期せぬ副作用を惹起してしまうことが懸念されている。
研究グループはこれらの課題を解決するための機能を高分子ミセルに統合することで、光照射部位で選択的に遺伝子を導入することができるナノマシンを開発した。
ナノマシンは、DNAを内包した内核層、光増感剤を内包した中間層、生体適合性材料の外殻層という三層構造を持っており、それぞれの層が効率的な遺伝子導入を行うための機能を持っている。
ナノマシンは血中に投与されると、生体適合性外殻により生体物質の吸着を抑制し、さらにDNAを内核に閉じ込めておくことにより、DNAの分解を回避しながら血流中を循環する。
がん組織の血管は未熟な構造をしており、血管壁にナノスケールの穴が開いているため、ナノマシンはこの穴を通してがん組織に移行することが可能である。
そして、ナノマシンはがん細胞にエンドサイトーシス と呼ばれる経路で細胞に取り込まれ、エンドソーム・リソソームと呼ばれる細胞の胃袋のようなものに運ばれる。
DNAそのものはそこから細胞質に移行することができないため、核まで到達することができない。
ナノマシンは、エンドソーム・リソソーム内の酸性環境を検知して光増感剤を放出し、エンドソーム・リソソームの膜と相互作用させる。そこに光を当てて光増感剤を活性化すると、活性酸素が産生されてエンドソーム・リソソーム膜を壊し、DNAを細胞質に移行させることができる。
今回の研究ではレポーター遺伝子を用いて光選択的遺伝子導入を実証したが、将来的には治療用タンパク質をコードしたDNAをがん組織中の細胞に選択的に送り込み、その場で治療薬を生産することにより副作用を最小限にとどめた、低侵襲治療を実現するためのシーズとして期待される。
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