「環境ホルモン学会の理事会などでは、お茶が出されなくなったそうだ。なぜ?」
「「残念なことに、日本のお茶からは100%、ネオニコチノイド系農薬が出ました。この農薬は水に溶けやすいので、お湯で抽出されたんですね。これは事実として受け止めなくてはならないと思う。ただ、検出された濃度は、残留基準値の数%にすぎませんので過度に心配する必要はないです」
う語るのは、この衝撃的な事実を調査したチームの一人、北海道大学の池中良徳准教授だ。
いずれにせよ、私たちの体は、お茶を飲むことで、農薬に汚染されているのだ。
ただし、中国産ウーロン茶からは重金属もよく検出されるので要注意だ。
な~んだ、そんな微量なのかと思うかもしれないが、実は図表1に示したこの数値、EUやカナダ、台湾、韓国などに輸出すれば検疫ではねられるほど高いのだ。それがなぜ日本のスーパーでは売られているのかと言えば、EUなどにくらべ、日本の残留基準値の設定が信じられないほどゆるいからだ。
「10年以上も前ですが、緑茶を飲んで痩せようと一日に何リットルも飲むのが流行ったことがありました。当時、急に手が震ふるえる、不整脈もすごい、目がうつろでフラフラ、食欲がない、心臓がバクバク、そんな患者さんがたくさん来られたんです。
お茶のせいではないかと疑い、飲むのをやめてもらうと、数週間でけろっと治りました。まさかと思って、ペットボトルの茶飲料を分析したら、本当にネオニコが検出されたのです(*4)。健康のためと思って、せっせと飲んで、病気になっていたのです」
この世に昆虫がいなくなれば、種子植物は受粉できなくなって農業は成り立たないことをご存じないのだろう。人間がこれをやらせようとすれば、ものすごいコストがかかるのである。
問題はそれだけではない。ネオニコは人の健康にも影響があるのではないかと言われている。
受容体にくっつくという作用は、ホルモンの作用によく似ている。ホルモンも一種の化学的情報伝達物質で、内分泌腺や細胞から血中に分泌され、血液の流れにのって臓器などにある受容体にくっつくことで作用を及ぼすのだが、それはきわめて低濃度で、10億分の1gどころかpg(ピコグラム)、つまり残留基準値よりはるかに低い1兆分の1の単位で大きな変化を引き起こすのだ。
人間の脳の中にもアセチルコリン受容体はたくさんある。ネオニコが人間の脳神経に影響することが明らかになっていけば、常時摂取しているだけに深刻な事態になりかねないだろう。
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