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見るからに臆病そうなリノだが、今は驚くほど落ち着いた態度に、シモンは目を丸めながら相手の取り出したものを見やった。
そして、息を詰める。
それはリノの手の平に乗るほどの小型にもかかわらず、陣営から漏れくる松明の灯りを反射して、目に痛いほど燦然と光り輝いていた。
「それは…なんだ?」
上擦った声を漏らすシモンの脇で、リノは瞳に黄金色の光を反射させながら呟いた。
「もらったんです。
脱獄を助けた時に」
「もらった?
なるほど、脱獄幇助の返礼品ってわけか」
皮相交じりのシモンの声音に、だが、まだリノは恍惚としたまま、黙って頷く。
まさしく、それは、かつてトゥパク・アマルから渡された純金のビラコチャ神像――脱獄に必要な品々をトゥパク・アマルに依頼され、それらを外界から牢に持ち込んだ夜、その返礼の一部としてリノが受け取ったインカの秘宝であった。
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪シモン≫
植民地生まれの白人(クリオーリョ)の革命分子を束ねるリーダー。ただし、一般的に貧しいクリオーリョたちとは異なり、当地生まれでありながらも富裕層に属するらしきスペイン人。
トゥパク・アマルの反乱に乗じて、スペイン本国による植民地支配を瓦解させる機会を狙っている。
≪リノ≫
かつてトゥパク・アマルが囚われていた地下牢の番兵の一人。
脱獄をはかるトゥパク・アマルの説得(手管)によって、結果的にトゥパク・アマルの脱獄を援護することとなった。
植民地生まれの貧しいスペイン人。
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