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作詩作曲した 「人間」
という曲です。
「見果てぬ夢」3
待望の日曜日。
彼と待ち合わせして、
うちに行く前にちょっとデート?
「あなたが例の転校生だってことは、内緒なの。
パパは私の好きな人よりも、
その転校生に会いたいって言ったのよ。
失礼しちゃうと思わない?
娘の恋人に会いたくないなんてね。
だから罰として驚かせてやるの。
あなたも黙っていてね。
約束よ。指切りげんまん。」
無理やり小指をからませて、
指切りをしてしまった。触れちゃった。
彼は怪訝そうな顔をして、
慌てて手を振り払った。
「どういうことだ?
僕が君の恋人だなんて。冗談じゃないよ。」
「冗談なんか言わないわ。
まあ、今は違うけど、未来の恋人よ。」
「君も相当な自信家だね。
いつ僕が君の恋人になると言った?」
「今にならせてみせるわ。
私は自信家ではなく、努力家よ。」
「そうか。それなら、僕も受けて立とう。
僕は決して君の恋人にはならないよ。
誰も愛さないし、愛されたくもないんだ。」
「『ならぬなら、ならせてみせよう、恋人に』
これ分かる?」
「『鳴かぬなら、鳴かせてみせよう、ホトトギス』
のパロディだろ。」
「そう、よく分かったわね。
歴史は習っていないはずなのに。」
「馬鹿にするな。だが僕の町しか、
歴史の研究は許されていない。
君こそ、なんでそんなことを知ってるんだ?」
「パパに教わったのよ。
昔の武将が詠んだ歌だって聞いたけど。」
「君のパパは怖ろしい人だな。科学者といえど、
そんなこと知ってる訳がない。歴史は国家の機密だ。
あの町でしか知りようがないはずなのに。」
「そう言えば、あなたのいた町は、
なんという町なの?
機密のある町だとかパパも言ってたわ。
それなのにあなたはなぜ出てこれたの。」
「僕は奴らのモルモットさ。
ロボットにどこまで出来るか、能力を
試されている。
だからこそ、僕は負けるわけには
いかないのさ。君にもね。」
「それで何もかも一番になろうとしているのね。
スポーツはかなわなくても、勉強では負けないわ。
私だってパパの子ですもの。
科学者になりたいと思ってるのよ。」
「ふん、科学者ね。君のパパの時代には、
人間が科学者になれても、
君の時代には、ロボットが頭脳労働の全てを
牛耳ることになるだろう。
もちろん、僕もその一人になってるだろうがね。」
「あなたも負けず、自信家というか、努力みたいね。
あなたのようなライバルが現れて
私も遣り甲斐があるわ。
今まで、私のような人間が首席を取れたくらい、
この学校にはろくな人間も、
ロボットさえもいなかったのよ。」
「能無しの人間と、顔色をうかがうロボットか。
それじゃ人間以下だな。」
「あまり馬鹿にしたものじゃないわよ。
人間だってやれば出来る
というところを見せてあげるわ。
そうそう、パパに会わせる約束だったわね。」
「自慢のパパとやらを紹介してもらおうか。
人間の科学者さんに。」
「言葉遣いにだけは気をつけてね。
パパは結構うるさいのよ。」
「君の言葉遣いだって、
誉められたものじゃないけどね。」
「だからいつも怒られているのよ。
レディじゃないって。」
「そうだろうな。
とてもレディとは思えない勇ましさだ。」
「冗談言ってる場合じゃないわ。
約束の時間に遅れちゃう。
パパは約束守らない子は嫌いだって、
言うんですもの。」
「君は本当にファザコンだな。
パパのことしか言えないのか。」
「もう、パパついての予備知識を教えてあげてるのよ。
結構、気難しいところがあるから。
根は優しい人なんだけど、
とっつきが悪いのよ。
まあ、あなたと似たようなものかしら。」
「僕と一緒にしないでくれ。
優しくなんかないぞ、僕は。」
「そんなことないわ。
本当はきっと優しい人よ。私信じてるもの。」
「勝手にそう思ってるがいいさ。
期待を裏切っても悪く思うなよ。」
「そういうところが優しいっていうのよ。
いたわってくれてるじゃない。」
「僕はさんざん人間に裏切られてきたから、
信用しないんだ。
君もせいぜい裏切られて学ぶがいいさ。
口で言っても分からないからな。」
「私は人を信じるわ。信じたいのよ。
人間もロボットもみんな人だわ。」
「君は甘いな。
人を信じて裏切られたことはないのか?」
「あるわ。でも、
その人にはその人なりの訳があったのよ。
裏切りたくて裏切った訳じゃないわ。
その人の立場になれば、仕方ないのよ。」
「そんなことを言っていたら、
自分の立場を守れなくなるぞ。
君は人間だ。ロボットじゃない。
いくらロボットの立場に立とうとしても、
出来るもんじゃない。
僕達の苦しみが人間に分かってたまるか。」
「分からないわ。だからこそ理解したいと
思っているの。駄目かしら。」
「余計なお節介はやめてくれ。
どうせ、分かりもしないくせに。
人間なら人間らしく、自分の立場だけを
守っていればいいんだ。」
「それだから、人間はロボットに
恨まれているんでしょう。
どうしたらいいというの。
私はどうすればあなたに近づけるの。教えて。」
「何もしないのが一番さ。
ロボットに軽蔑も同情もしないこと。
ただ放って置いてくれれば、
それでいいんだ。構わないでくれ。」
「それじゃ、いつまでもたっても
人間とロボットは平行線のままよ。」
「それでいいんだ。根本的に違うのだから、
同じ立場には立てない。」
「同じになろうとは思ってないわ。
ただ、少しでも歩み寄りたいの。」
「そんなことより、約束の時間に
間に合わないんじゃないのか?」
「あ、ホントだ。急がなくっちゃ。
走るわよ。ついてきて。」
「これだから人間は嫌なんだ。
君こそ遅れるな。」
ローリーはベスを追い抜かした。
ベスの家へ向かって走る。
「待ってよ。家が分かるの?」
「調査済みさ。君の家くらいすぐに分かる。」
やっと追いついた時は、既にベスの家の前だった。
ベスは息が乱れたら、
ローリーは顔色ひとつ変えずに玄関の前に立ち、
ベスを待っていた。
「ハァハァ、ちょっと待って。
少し落ち着くまで。」
「自分の家なんだから、中で休めよ。
早く呼んでくれ。」
「分かったわよ。もう意地悪なんだから。」
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