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銀座に行くって言っても、
かぐや姫はどこにあるかも知らないんだよな。
やっぱり僕が連れていかなくてはいけないんだ。
電車にしようかと考えていたら、
以前、電車に一緒に乗った時のことを思い出した。
彼女の腕に触れただけで、ドキッとしたんだよな。
まあ、今でもキスまでしか進展はないけど・・・。
とにかく電車で行くことにしよう。
タクシーじゃ運賃がかかりすぎるからな。
一緒に電車に乗ったが、割に空いてる。
今日は、彼女もつり革につかまった。
前みたいに僕の腕につかまらせたいところなんだけど。
なぜか少し距離を感じるんだよな。
「僕につかまっていいよ。」と
さり気なく言ったつもりだったのに、
「あなたに頼りたくないから。」
冷たく拒否されてしまう。
「こうして一緒に行ってやってるじゃないか。」
つい恩着せがましく声を荒げてしまった。
「だから、これ以上頼りたくないの。」
ツーンと綺麗な顔を横に向ける。
「じゃあ、勝手にしろよ。」
僕もさすがに頭にきた。
次の駅で降りようとするが、
彼女は止めようともしない。
悔しいから、一旦電車から降りて、
隣のドアからまた乗る。
一人でどこまで出来るか見てやるんだ。
僕も結構意地悪だよな・・・。
彼女は、僕をしばらく探していたが、
溜息をついてから、窓の外をじっと見ている。
何を見ているのかと思ったら、
月が出ていたのだ。
雲が少しかかって、薄絹をまとっているようだ。
帰りたいのかとも思うが、
そんなことは言わない。
「銀座」のアナウンスを聞いて降りる彼女。
僕がいなくても大丈夫なのか。
少し離れてついていく。
尾行なんて、なんか情けないよな。
こんなんだったら、一緒に行ってやれば良かった。
彼女は駅を出て、歩道をさっさと歩いていく。
人込みの中で見失うまいと、早足で歩いていくと、
急に彼女が立ち止まって、振り返った。
見つかったかとあせったが、
また前を向いて歩き出す。
やっぱり一人では不安なのかな。
可哀相なことしたのだろうか。
また立ち止まり、小さなビルのネオンを見上げている。
意を決したように、そのビルに入り、
エレベーターのボタンを押す。
彼女だけを乗せたエレベーターが、
5階で止まった。
僕は階段で上がっていった。
結構きついな。
エレベーターにすればよかったか。
早足で上がったので、少し息切れしてしまった。
もう彼女は中に入ったらしく、ドアの前には居ない。
ドアには金色の文字で「月光」とある。
それで、このバーを選んだのか。
中から、女の嬌声が聞こえてくる。
「かぐや姫とはいいわ。
ここにぴったりよ。」
今だと思ってドアを開ける。
「こんばんわ。
かぐや姫が居るんだって?」
「いらっしゃい。よくご存知ね。」
愛想のいいママさんらしい。
「今聞こえたんだ。
かぐや姫を指名したいんだけど。」
「あら、残念。
もう別の人の指名が入っちゃったの。
最初から売れっ子ね。」
「だって、今来たばかりじゃないか。」
つい言ってしまったら、怪訝そうな顔で見る。
「そうだけど、お客さん・・・誰?
彼女のヒモならお断りよ。」
「そんなんじゃないよ。」
慌てて手を横に振るが、
かえって怪しまれてしまったかな。
「ならいいけど。かぐや姫以外にも、
綺麗な娘が揃ってるわよ。」
そう言われても、彼女以外は
興味ないんだよな。
というわけにもいかないから、
仕方なく誰でもいいと頼む。
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