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あれからどう過ごしてきたのだろう。
朝起きて仕事に行っても、
心ここにあらずで、仕事だけ無感情にこなしてる。
まだすることがあってよかったと言う感じだ。
うちに帰ってからの長い夜。
もの思いにふけると、かぐや姫の姿が見えてくるようだ。
だから何も考えたくない。何も見たくない。
ただ、時間だけがぼんやりと過ぎていく。
涙も出ないほど、心が死んでいる。
こんなんじゃいけないと自分を奮い立たせるのだが、
なかなか力が出てこないのだ。
彼女と逢う前は何をしていたのだろう。
何を考えていたのか分からないほどだ。
彼女が置いていった服や香水「ナイルの庭」を、
処分しきれずにまだこの部屋に置いてある。
さすがにダンボールに詰め込んで、
見えないようにはしてあるのだが。
なぜか香りだけはするのだ。
詰め込んだ時にこぼれてしまったのか。
ドアを開けると「お帰りなさい」の声が聞こえたような錯覚。
この香りのせいなのか。
目を瞑るとその香りだけまとった
彼女のしなやかな肢体が目に浮かんでくる。
振り払おうとしても、頭から離れないのだ。
それならいっそ、その肢体を抱いてしまおうか。
夢の中で。
もう現実と夢幻の区別がつかなくなっているのか。
カーテンからこぼれ射る月光に浮かぶ彼女が見える。
僕もとうとう幻覚を見るようになったのか。
怖くなって、ふと我に帰る。
そういえば今日は何日だろう。
カレンダーさえも見ていない。
慌ててカレンダーを見ると、
10月15日に丸がつけられ、
「十三夜」と書いてあった。
携帯を見ると今日は14日。もう明日だ。
いつの間に一ヶ月近く経ってしまったのか。
彼女が「十五夜だけでは片見月になるから、
十三夜もお月見してね。」と言ってたのを思い出す。
そのために彼女が書いておいたのだろう。
「同じ場所でなければ。」とも言ってたな。
なぜあんなに十三夜の月見にこだわっていたのかな。
わけは分からないが、
またあの山を登らなければいけないのか。
それもたった一人で。
でも、そこから月を眺めれば、
少しでも彼女の近くに行ける気がする。
明日は行ってみよう。
そうすれば、こんな状態から抜け出せるような気がする。
気休めかもしれないが。
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