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美しき過去の郷愁を求めてはいけない1枚 デヴィッド・クロスビー(David Crosby)は、1960年代、ザ・バーズ(The Byrds,過去記事参照)で華々しく音楽シーンに現れ、このバンドを脱退した後は、スティルス、ナッシュとの活動(CS&N,『クロスビー、スティルス&ナッシュ』)、さらにはそこへ二―ル・ヤングを加えてCSN&Yとしての活動(『デジャ・ヴ』)と米国音楽シーンの中核を担い続けた。簡単にまとめてしまえば、60年代から名声を築き、70年代もトップ・アーティストとして積極的活動を続けていた。 だが、私生活はそのキャリアから想像されるほど幸せではなかったようだ。60年代後半から既に彼はクスリに手を出しており、69年に当時の恋人を事故で亡くしてからは、薬物を頼っての現実逃避は次第にエスカレートしていった。80年代に入る頃にはもはやまともなミュージシャンとしての活動すらできなくなっていった。ドラッグで逮捕・釈放を繰り返した後、つ挙句の果てには、83年に実刑判決を受けて服役。その後も友人たちの協力で病院まで行ってはそこから逃げ出すなど、もはやどうしようもない麻薬中毒者になり果てていた。しかし、最終的にはテキサスの厚生施設で立ち直り、86年秋に二―ル・ヤング主催のチャリティ・ライブを契機に活動を再開。翌年には結婚し、88年にはCSN&Yのアルバム(『アメリカン・ドリーム』)にも参加した。ドラッグ後遺症の影響で生体肝移植を受けているが、69歳の現在も健在で、CSN&Yに加え、CPR(クロスビー、ピーヴァー&レイモンド)としても活動を展開している。 ソロ活動としては、1971年に最初のアルバム(『イフ・アイ・クッド・リメンバー・マイ・ネーム』)を出したが、ヤク中が進むとともに、2枚目のアルバムはなかなか現れないということになった。80年代に入ってソロ・アルバム(セカンド・アルバム)の企画もあったらしいが、薬物中毒状態でうまく進まなかったらしい。無事立ち直っての復帰後、CSN&Yのアルバムに続いてソロ・アーティストとしての復活を果たしたのが、本作『オー・イエス・アイ・キャン(Oh Yes I Can)』であり、ファースト・ソロ作からは何と18年ぶりの復帰作であった。 とまあこういう状況で出てきたアルバムなので、ファンの側としては、受け止め方は二通りあり得た。一つは、長らく消息を絶っていた(先端の音楽活動の場から遠ざかっていた)アーティストの復帰作を懐古的に受け止めるというもの。本盤『オー・イエス・アイ・キャン』をある程度聴き込めば、この理解は一種の誤解を伴っていたことがわかるだろう。つまり、冷静にこの時の状況を考えれば、この時点のクロスビーに往年の輝きを求めるのは容易ならざることだった。アルバム・セールスが必ずしもふるわなかった(ビルボードでの最高位は全米104位)理由は、このような受け止め方が案外一般的で、要は内容とリスナー側の受け止め方の間にギャップがあったためと想像される。 でも、もう一つ、異なる受け止め方もあったように思う。おそらくこちらは少数派だったのだけれど、上で述べたような“人間崩壊”の経緯を十分に理解していて、その復帰作としての受け止め方である。この前提に立つと、かつてのスターが痛々しい、あるいは生々しい姿をさらけ出すのもOKということになる。つまりは、決して美しいもの、きれいなものだけを求めるのではない本盤の聴き方ということになる。今になって見れば、まさしくそういうアルバムだったんだと思う。残念ながらリリース当時の筆者にはそういった受け止め方ができなかったのだけれど、今となっては赤裸々な人間像の浮かび上がってくるアルバムとして、たまに引っ張り出してきては聴いている。 ふと思い出したが、本盤を勧めて貸してくれたI君。長らく連絡もとっていないけど元気にしているのかなあ。[収録曲]1. Drive My Car2. Melody3. Monkey and the Underdog4. In the Wide Ruin5. Tracks in the Dust6. Drop Down Mama7. Lady of the Harbor8. Distances9. Flying Man10. Oh Yes I Can11. My Country 'Tis of Thee1989年リリース。下記ランキング(3サイト)に参加しています。お時間のある方、応援くださる方は、励みになりますので、ぜひ“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011年07月30日
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ジャズといっても、皆が想像するジャズではなく… ライ・クーダー(Ry Cooder)という人はたいへんに変わった音楽を創り出す人だと思う。おそらくは音楽的な感性が非常に鋭く、いろんな音楽ジャンルに興味が絶えない人物なのだろう。したがって、音楽史的な造詣が深く、マニア度も高い(来日時には、日本でしか入手できなさそうな古い盤を漁りに新宿へ出かけたこともあるとか)。彼の音楽的スタンスは“雑多”と言うよりは“融合的”で“複合的”である。つまり、異種のものがばらばらのまま入り混じっているのではなく、作品中でしっかりと溶け合い、新たなものや独自のものに変化しているように感じる。しかも、その“融合”というのは、いま現在だけを見ている(=共時的な)ものではなく、時間を越えている(=通時的な)ところが特別なのだと感じる。 本作『ジャズ(Jazz)』は1978年発表の作品。ロック畑のアーティストだと思って聴くと肩透かしを食らうし、タイトル(“ジャズ”)に変な期待を込めて聴くとがっかりするかもしれない。というのも、ここで展開される“ジャズ”とは、バップ→ハードバップという実際の進化とは違う方向に歴史が動いていたら、もしかするとジャズはこうなっていたかもしれない、という音楽だからである。 選曲からしてこの一風変わったアルバムの志向が伺える。6.~8.と続く3曲(「イン・ア・ミスト」、「きらめき(フラッシュ)」、「ダヴェンポート・ブルース」)は、1920年代にルイ・アームストロングと並ぶジャズ・ソロイストだったコルネット奏者ビックス・バイダーベック(Bix Beiderbecke)の曲。その一方で、2.「顔を見合わせて(フェイス・トゥ・フェイス・ザット・アイ・シャル・ミート・ヒム)」、5.「ハッピー・ミーティング・グローリー」、11.「いつか幸せが(ウィ・シャル・ビー・ハッピー)」は、ゴスペル定番曲にバハマ出身のギタリスト、ジョセフ・スペンスが手を加えたもの(この人物はライ・クーダーに大きな影響を与えているとされる)。 演奏者もなかなか凝ったラインアップで、数曲単位で異なるメンバーで吹き込まれている。4.「夢(ザ・ドリーム)」では、ジャズ・ピアノの開祖とされるアール・ハインズが参加している。そのほか、チューバ、トロンボーン、アルト・サックスなどの楽器演奏でジャズ系ミュージシャンが多く参加している。 ジャズ畑のミュージシャンが多く参加しているからといって、仕上がりが単なるジャズ・アルバムというのとは全く異なる。繰り返すが、ここで演奏されている音楽は、20世紀初頭のジャズが、もしも現実とは違った道筋を辿っていたならば、20世紀後半(本盤制作の時点)にはこうなっていたかもしれない、という姿を現している。なので、古き良きジャズの原風景への郷愁というわけでもない。1970年代にジャズはもしかしたらこういう楽しくのどかな雰囲気もたたえつつ、別種の進化を遂げた音楽になっていたかもしれなかった。おそらくはライ・クーダーの頭の中に想像されていたのは、そういうものであって、それをコンセプトとして本盤は練り上げられたのだろう。 米国音楽の伝統の深さを垣間見ると同時に、ニューオーリンズの原風景から続く“仮想現実”としての伝統音楽の楽しげな光景が想像される。一風変わったアルバムではあるが、それだけにいっそう想像力を掻き立てられる、そんな面白い盤であることに変わりはない。[収録曲]1. Big Bad Bill Is Sweet William Now2. Face To Face That I Shall Meet Him3. The Pearls/ Tia Juana4. The Dream5. Happy Meeting In Glory6. In A Mist7. Flashes8. Davenport Blues9. Shine10. Nobody11. We Shall Be Happy1978年リリース。 【Aポイント+メール便送料無料】ライ・クーダー Ry Cooder / Jazz (輸入盤CD) 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年07月28日
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バド・パウエルのピアノ・トリオ演奏の進化を聴く 唐突だが、バド・パウエルとエリック・クラプトンは似ている。いや、他にもこの手のミュージシャンは何人もいると思うのだが、人生が作品の録音に安易に反映されるという意味において、同種のミュージシャンだと言いたいのである。このような言い方は、クラプトンを神と仰ぐ人たちには不満かもしれないし、バド・パウエルの愛好者にいたっては“ブルースもどきのロックミュージシャンと一緒にするな”と目くじらを立てる人もいるかもしれないが、お許しいただきたい。 ともあれ、生き様がそのまま作品に映し出されるというのは聴き手の興味をそそる。だからこそ、クラプトンのファンにも、パウエルのファンにも、“調子のよくなかった時の作品も鑑賞に耐える”と考える人が存在するのではないかと思う。無論、生き様そのものが作品に素直に反映されてしまうことが、当の本人にとって幸せかどうかはわからないけれど…。 さて、バド・パウエルは1927年生まれのジャズ・ピアニスト。精神病などに悩まされながら(それは演奏の出来不出来のばらつきの大きな原因でもある)、41歳で亡くなっている。今ではピアノ・トリオ(ピアノ+ベース+ドラム)という編成はごくごく普通にありふれている。いわば“存在することが当たり前”な編成なわけだが、かつてはそうではなかった。その昔、トリオ編成と言えば、ふつうはギター+ベース+ピアノを指した。バド・パウエルは、現在私たちが普通に親しんでいるそういったピアノ・トリオ編成の草分けでもある。 1944年に初めてレコーディングに参加して以来、パウエルはいくつかのグループに加わり、ついには自身のリーダー名義の録音を行うこととなった。それが1947年のことだった。本盤『バド・パウエルの芸術』の前半(1.~8.)は、まさしくそのレコーディングの成果を収めたものである。ベースはカーリー・ラッセル、ドラムはマックス・ローチというトリオ編成。対して、本盤の後半は、日付も顔ぶれも全く異なる音源のものである。こちらの方のベースはジョージ・デュヴィヴィエ、ドラムはアート・テイラーである。録音は1953年で、アルバム前半の録音時点からは、およそ6年半の月日が流れている。 そんなわけで、本作『バド・パウエルの芸術』は、前半と後半で音質も雰囲気もまったく違っている。1.~8.の前半部分のパウエルは総じて“怖い”。怖いという表現が不適当なら、“鬼気迫る”迫力の演奏と言ってもよいだろう。初のリーダー録音、ピアノ・トリオ編成での録音という意味で、新しいチャレンジをしているという意気が、一つ一つのピアノ演奏のタッチにまで反映されているかのようだ。ちなみに、この前半部分は、“パウエル生涯最高の時期の演奏”とか、“ジャズ・ピアノの聖典”いう言われるほどの名演とされる。当時の年齢で言えば、パウエル22歳の時の演奏である。 一方、何年もの時を経た時点で録音された後半は、少し趣が異なる。ピアノ・トリオという形態を長く続けてきたパウエルは、明らかに、よりリラックスしている。その分、細かな部分に気を配った繊細な演奏ぶりがより目立っているように感じられる。無論、リラックスというのは、“緩い”という意味ではないし、“緊張感に欠けている”ということでもない。おそらくは、ピアノ・トリオの形態に慣れ、余裕が生まれてきた分、かつて(前半の演奏時)とは違う部分にも意識を向けられるようになったということなのだろう。 この文章をお読みの皆さんは前半と後半、どちらの演奏が好みだろうか。ちなみに、総論的には筆者は後者の方がいい。これはあくまで個人的趣味の問題だろうが、ピアノ・トリオはあまり緊張して聴くよりもリラックスして聴きたい派だからだ。でも前半の方がジャズ史上評価が高いのも事実。筆者自身の全般的好みは上記の通りではあるが、不思議なのは、前半のような緊張感いっぱいのピアノが、時折、無性に聴きたくなる(言い換えれば、いつもこういうのを聴きたいわけではないのも事実)。というわけで、そんな時に引っ張り出してくるのは、他の何枚かのパウエル盤(例えば、ブルーノートに残した最初のアルバムである『ジ・アメイジング・バド・パウエルVol. 1』)と並んでこの盤で、その時に聴きたいのは前半部分なのである。[収録曲]1. I'll Remember April2. Indiana3. Somebody Loves Me4. I Should Care5. Bud's Bubble6. Off Minor7. Nice Work If You Can Get It8. Everything Happens To Me9. Embraceable You10. Burt Covers Bud11. My Heart Stood Still12. You'd Be So Nice To Come Home To13. Bag's Groove14. My Devotion15. Stella By Starlight16. Woody'n You[パーソネル、録音]1.~8.: Bud Powell (p), Curly Russell (b), Max Roach (ds),1947年1月10日9.~16.: Bud Powell (p), George Duvivier (b), Art Taylor (ds),1953年8月14日 【送料無料】バド・パウエルの芸術 [ バド・パウエル ] 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年07月26日
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INDEX更新のお知らせ INDEXページ(ジャンル別、アーティストのアルファベット順)を更新しました。ここ最近の記事を追加しています。INDEXページへは、下のリンク、もしくは本ブログのトップページ右欄(フリーページ欄)からお入りください。 アーティスト別INDEX~ジャズ編へ アーティスト別INDEX~ロック・ポップス編へ アーティスト別INDEX~ラテン系(ロック・ポップス)編へ アーティスト別INDEX~邦ロック・ポップス編へ下記ランキング(3サイト)に参加しています。応援くださる方は、各バナーをクリックお願いします(1つでも2つでもぜひお願いします)! ↓ ↓ にほんブログ村 : 人気ブログランキング: 音楽広場:
2011年07月24日
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BIG MAN追悼、『明日なき暴走』~補遺~ 70年代ロック・シーンの金字塔の一つ、ブルース・スプリングスティーンの『明日なき暴走』(前編・後編)を取り上げたきっかけは、今年6月のクラレンス・クレモンズ(Clarence Clemons)の死去でした。そんなわけで、クラレンス絡みで少しばかり映像紹介です。 『明日なき暴走』のジャケットの強烈な印象からも、実際の演奏面においても、スプリングスティーンのバンドにこの人のサックスは欠かせないものでした。特にライブでは、その巨体もさることながら、プレーヤーとしての存在感は大きく、バンド・メンバーの紹介の時にもいちばん盛り上がるのが“BIG MAN”の場面でした。 そんなライブ映像から、『明日なき暴走』収録の「ジャングルランド」。NYライブからの映像で、クラレンスのソロ部分は4:20あたりから(3分ほどの長いソロです)。晩年のクラレンスは往年のキレに衰えがあるとの声もあるようですが、ロックバンドの編成で豪快に吹くサックスはこのビデオでも健在です。ここ10年ほどは、ご本人の年齢の重なりとともに、演奏の味わいも深まっていたように思います。 さらに、次は有名な場面。スプリングスティーンによるライブ中のBIG MAN紹介場面です。 こちらは80年代、『ボーン・イン・ザ・USA』のヒットで人気絶頂を迎えた頃のライブ映像から。セカンド・アルバム(『青春の叫び』)収録の「ロザリータ」。曲の中ほど(再生時間6:00前後)、バンドのメンバー紹介でクラレンスの紹介場面があります。 最後に、『明日なき暴走』収録の「凍てついた十番街」のボン・ジョヴィによるカヴァー。クラレンスが亡くなった直後、デンマークでのライブ映像です。後ろのスクリーンに映し出されているように、クラレンスへの追悼として捧げられた1曲です。 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年07月23日
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ボスの出世作にして70年代アメリカン・ロックの名盤 ~後編~ 前編ではアルバムの位置づけとバンドの話に触れた。続いて、この後編では、収録曲を順に見ていきたい。 冒頭の1.「涙のサンダーロード」は、ハーモニカとピアノの静かなイントロから始まり、最後のサックス・ソロにいたるまで次第に盛り上がりを見せる曲。ライブの出だしにも定番としてよく使われた。個人的な好みでは、本盤のみならず、B・スプリングスティーンのキャリアの中でもベスト・トラックの一つだと思う。 2.「凍てついた十番街」と3.「夜に叫ぶ」は、クラレンス・クレモンズのサックスのフィーチャーの仕方が印象的で、このバンドにとって彼が欠かせないメンバーであったことがよくわかる。2.ではホーンセクション(フリューゲルホルン、テナー・サックス、バリトン・サックス、トロンボーン)が導入されているが、最後にものを言うのはクレモンズのテナーで、3.では曲の開始と同時に、のっけからクラレンスのサックスの存在感がはっきりしている。 4.「裏通り」はやや長め(6分半)の曲。この手の曲は、連続演奏となるCDで中ほどに置かれると間延びしてしまう印象だが、LP時代には、A面を締めくくる曲という位置づけだった。ゆったりと始まり、段々と壮大な感じに盛り上げていくタイプの曲で、聴き手側の勝手な都合で言うと、若い頃に聴いてたのよりも、今の方が好きな度合いが増している。きっとこの手のカッコよさは、ロック音楽に疾走感や勢いをより強く求めていた若い頃の筆者には理解できていなかったのだろう。 5.「明日なき暴走」は言わずと知れた有名曲にして、本盤のタイトル・チューン(過去記事)。“走るために生まれてきた”という曲名が示すように、20歳代後半のスプリングスティーンとバンド・メンバーが一丸になって人生を走っているのが印象的。人気絶頂だった80年代のライブのハイライト・シーンでもこの勢いがそのまま反映されていてよかった(同時期の様子はライブ盤『ザ・ライブ1975-85』やDVD盤『ザ・ビデオ(Video Anthology)』で知ることができる)。 6.「彼女でなけりゃ」も、バンドの勢いと一体感がストレートに表現された曲。サックスと並んでピアノが重要な役割を果たしていることが、1.や8.などと同様によくわかるナンバーでもある。LP時代の曲順で言うと、B面最初の2曲を盛り上げた後、7.「ミーティング・アクロス・ザ・リバー」という静かなナンバーで一息つかせるというのも、なかなか気のきいた曲の配置。この7.は、バックのトランペットが郷愁を誘う。 本盤を締めくくる8.「ジャングルランド」は、10分近い長編作。ゆるやかに始まり、次第に激しく盛り上がっていく壮大な構成は4.とやや似ている。ピアノのイントロでゆっくりとした(しかしボーカルのテンションは結構高い)始まり方で最初のヴァースを歌い、次のヴァースではバンド・サウンドになり、盛り上がる中でスプリングスティーン自身のギター・ソロ。続いて、少しテンポを落として長めのサックス・ソロがあり、そのゆったりとした雰囲気の中、曲が終わるかと思いきや、ピアノ伴奏と共に再び抑えの利いたボーカル。そのボーカルはやがて再度の盛り上がりを作り出し、ドラムレスのまま荘厳な雰囲気を作り出して終わる。一般論的には、“もう少し聴いていたい”という感覚をリスナーに与えつつ演奏が終わるという名曲というものが存在する。ところが、この「ジャングルランド」はその逆を突いたようなナンバーで、ちゃんと満足するまで聴かせてくれるという、シングルでは決して出来ない技を実現したもので、なかなかの名曲だと思う。[収録曲] *( ) 内に邦題も挙げておきます。1. Thunder Road (涙のサンダーロード)2. Tenth Avenue Freez-Out (凍てついた十番街)3. Night (夜に叫ぶ)4. Backstreets (裏通り)5. Born To Run (明日なき暴走)6. She’s The One (彼女でなけりゃ)7. Meeting Across The River (ミーティング・アクロス・ザ・リバー)8. Jungleland (ジャングルランド)1975年リリース。[関連過去記事]ブルース・スプリングスティーン『明日なき暴走(Born To Run)』~前編~へ 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年07月22日
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ボスの出世作にして70年代アメリカン・ロックの名盤 ~前編~ 1975年発表のブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)のサード・アルバムが『明日なき暴走(Born To Run)』である。よく知られているように、スプリングスティーンの出世作で、“ディラン2世”の触れ込みでデビューしてから3年になってのブレークで、アルバムは初の全米トップ10入り(最高位3位)となった。先のクラレンス・クレモンズ逝去ということから、この盤を複数回に分けて取り上げたい。 ブルース・スプリングスティーンのバンドであるE・ストリート・バンド自体は1972年に形成されていたが、そのメンバーがほぼ固定されたのが本作『明日なき暴走』の頃であった。主なメンバーの異同としては、ドラマーの交代(ヴィニ・ロペスからマックス・ワインバーグ)、デヴィッド・サンシャスの脱退(本盤では一部演奏)、スティーヴ・ヴァン・ザントの加入(本盤の一部に参加)などがある。上記のような新メンバーが出揃った結果、後々のバンドのサウンドの方向性が示された作品が『明日なき暴走』だったと言える。 それまでのスプリングスティーンのアルバムを振り返るとサウンドに決して一貫性があるわけではなかった。デビュー作(『アズベリー・パークからの挨拶』)では“ディラン2世”的売り出しを図るため、必ずしも本意ではない音が作られた。第二作(『青春の叫び』)では、スプリングスティーンの中では進むべき方向性や楽曲のコンセプトがおそらくは固まってきたものの、聴衆にわかりやすい形でそれが示されたとは言いにくかった(セールスはいまいちだったが、この第二作は評論家筋の評価は当時から高く、個人的にも大いにおすすめ)。クラレンス・クレモンズは、元からこのバンドのメンバーであった。彼との絡みで言うと、前作の「ロザリータ」などを受けて、ストレートでソリッドなロック・サウンドに高らかに吹かれるサックスというバンドの売りの一つが明瞭に確立されたのもこのサード・アルバムだった。 そのクラレンス・クレモンズの位置づけは本盤のジャケットにもはっきり示されている。ジャケットを見ると、スプリングスティーンが左側の人物の背中に寄りかかっている。2つ折りのジャケット(LPの場合、CDだと分断された裏側)を開いてつなげて見ると、横長の写真になり、その背中の人物とはサックスを構えたクラレンス・クレモンズの姿であることが分かる。あまりにも有名なジャケットである。 紙ジャケ乱発の昨今のCD市場を見ていると、“これを紙ジャケにする必要あるの?”と思うものも数多い。けれども、このジャケットは本当に紙ジャケにする価値があるものの一つだと思う。いや、LPサイズの復刻ジャケだけを単独で売り出してもいいぐらいかもしれない。筆者はLP時代のジャケを未だに大事に持っているのでいらないけど、もしLPを保有し続けていなかったなら、ジャケット・アートの復刻盤だけでも絶対に欲しいと思うだろう。 ~後編(収録曲の内容)に続く~ *アルバム収録曲のリストは、次回更新の記事に掲載します。 ちなみに、ジャケット写真(表面)はこちら。↓ 【送料無料】明日なき暴走/ブルース・スプリングスティーン[CD]【返品種別A】【smtb-k】【w2】 さらに、何年か前に出た30周年記念エディションというのもあります。上は輸入盤、下は国内盤(筆者が持っているのは輸入盤で、デジタルリマスターのアルバム本体に加えて、メイキングDVDと75年のライブDVDがセットになっています)。 【送料無料】Bruce Springsteen ブルーススプリングスティーン / Born To Run: 明日なき暴走: 30th Anniversary Edition 輸入盤 【CD】 【送料無料】明日なき暴走-30th Annivers 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011年07月21日
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インスト中心、ジャズ・ロック志向のサンタナのひそかな名作 本盤『キャラバンサライ(Caravanserai)』は1972年にリリースされた。サンタナ(Santana)としては4枚目のアルバム。インスト中心の演奏ながら全米で8位、全英でも6位のヒットを記録した。 時折誤解されるので一応書いておくと、サンタナというのはバンドの名称であって個人アーティスト名ではない。そしてそのリーダーがカルロス・サンタナ(Carlos Santana, 本名カルロス・アウグスト・サンタナ・アルベス)という人物である。カルロスはメキシコのハリスコ州生まれだったが、10代の時に家族とともにティフアナ~サン・フランシスコへと移住。ティフアナ(米墨国境の町)では、ハビエル・バティスから教えを受け多彩なプレイを学んだ。その後は『フィルモアの奇蹟』(1968年)への参加、ウッドストック参加およびカルロス・サンタナ・ブルース・バンドとしてのデビュー(1969年、この際にバンド名は単にサンタナと変更している)とキャリアを積んでいった。 この頃のカルロス・サンタナは東洋哲学(インド出身のヨガ指導者シュリ・チンマイの教え)に傾倒しており、同じ一門のマハヴィシュヌ・ジョン・マクラフリンとの共作アルバム(『魂の兄弟たち』)を本作の翌年にあたる1973年に残している。本盤がどこか瞑想的なのもこうしたカルロス・サンタナの思想的傾向と関係がある。それは、前作までに確固たる人気を築き上げたサンタナというバンドが、それまでと同じ“売れる”路線を安易に継承せず、次なるステップへとバンドの音楽性を移行させていこうという試みでもあった。その結果、本作の後にバンドは大幅なメンバーチェンジを余儀なくされる(グレッグ・ローリーとニール・ショーンが脱退し、二人はやがてジャーニーを結成することになる)。 さて、上記の試みを押し進めたのは、カルロスに加え、共同プロデュースに携わったマイケル・シュリーヴである。実際、シュリーヴは、この盤によって“我々は、これからどんな音楽に取り組もうとしているのか、いったいバンドがどこに向かって行こうとしているのかを明確に表明したい、そう考えていた”と後年語っている。 時は折しも、マイルス・デイヴィスの『ビッチェズ・ブリュー』、さらにはウェザー・リポートの登場と、ロック界に限らずに音楽界を見渡せば、まさに新しいステージに入る様相を呈していた。そんな中で、カルロス・サンタナとマイケル・シュリーヴの打ち出した音楽性を見直すと、なるほど納得のいく方向を向いていた。つまりは、ジャズ的な要素を取り込んだロック、という方向性であり、新たな音楽のムーヴメントを自分たちも担って行こうという姿勢である。その結果としての本盤はジャズ・ロック的志向が作品として見事に結実した1枚となった。 アルバムのオープニングである1.「復活した永遠なるキャラバン」は、幻想的な虫の鳴き声から始まるインスト・ナンバー。その後も2.「躍動」、3.「宇宙への仰視」とインスト曲が続く。4.「栄光の夜明け」以降、6.「宇宙への歓喜」、8.「ストーン・フラワー」と3曲の歌入りのナンバーがあるが、もともとヴォーカルの比重がさほど高くなかったサンタナにとって、本作でのヴォーカルは“添えもの”的でしかなくなっているように見える。以前からのサンタナの特徴であったリズムはいくつかの曲では控えめながらも複雑さを増している。ギターの伸びのある音を生かした演奏を中心にしながらも、全体の流れ方(しばしばそれはドラムとベースを伴ったスイング感となって現れる)を強く意識しているように思える。 それにしても、各曲の邦題の仰々しさにはつい笑ってしまう。3.では“look up(見上げる)”が「仰視」と訳されている。5.は直訳すると“風の歌”だが、わざわざ動詞化し、能動性を出して「風は歌う」。さらに9.「リズムの架け橋」は、元のタイトル(スペイン語の曲名)が“La fuente del ritmo”なので、正しくは「リズムの源」であって、puente(橋)とfuente(源)を取り違えた誤訳と思われる。まあ、この仰々しさ、それはそれで悪い和訳ではないようにも思うけれど…。[収録曲]1. Eternal Caravan of Reincarnation2. Waves Within3. Look Up (to See What's Coming Down)4. Just in Time to See the Sun5. Song of the Wind6. All the Love of the Universe7. Future Primitive8. Stone Flower9. La Fuente del Ritmo10. Every Step of the Way1972年リリース。 【送料無料】キャラバンサライ [ サンタナ ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2011年07月18日
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紆余曲折の復活盤は過去作にも劣らぬ秀逸アルバム ザ・バンドは、1968年に『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』でデビューし、1976年に実質的解散コンサート(ライブ盤『ラストワルツ』)でいったん活動の幕を閉じた。だが、1980年代に入って再結成の機運が高まる。そもそもバンド解消の主な原因はロビー・ロバートソンと他のメンバーの食い違いにあり、1976年にロバートソンがライブ活動の停止を宣言した時も、リヴォン・ヘルムはこれに反対していた。 結局、1982年にロバートソン抜きの4人でライブ活動を再開し、1986年にはリチャード・マニュエルが死去するも、活動は続いた。1990年に本盤を制作するもCBSの方針でお蔵入りになってしまう。1993年になってからこの“幻の盤”はライノ・ディスク傘下(ピラミッド・レコーズ)からようやく発売された。それが本作『ジェリコ』である。 本作に参加しているのは、オリジナルメンバーとしては、リヴォン・ヘルム(ドラム、マンドリン、ヴォーカル)、リック・ダンコ(ベース、ギター、ヴォーカル)、ガース・ハドソン(キーボード、サックス)。また、6.「カントリー・ボーイ」については亡くなる前のリチャード・マニュエルの音源(1985年)である。その他のメンバーは、ジム・ウィーダー(ギター)、ランディ・シアランテ(ベース、ドラム、ヴォーカル)、リチャード・ベル(キーボード)で、正式にクレジットされたバンドメンバーは6名である。解散前のザ・バンドと比べ、ロバートソンのギターが抜けた穴については、ジム・ウィーダーの働きが特に目立っており、その欠落を存分に補っている。 結論から言うと、これぞザ・バンドという音に仕上がった盤で、過去の諸作に引けを取らない出来だと言える。往年のザ・バンドのファン(注:念のため、ロバートソンのファン、の意味ではない)が聴いて、確実に満足するだろう。ソングライティングに関しては、ロバートソンがいなくなった分、手薄になったのは否めない。しかし、そのことによって、本盤では興味深い成果も得られた。カヴァー曲を彼らが演じることによる成果である。とくにお勧めなのは、B・スプリングスティーンの4.「アトランティック・シティ」、マディ・ウォーターの9.「スタッフ・ユー・アッタ・ウォッチ」、さらには、おなじみのボブ・ディラン繋がりでの2.「ブラインド・ウィリー・マクテル」(余談ながら、ディランの曲はブートレグ・シリーズに収められた曲、スプリングスティーンの曲も弾き語り異色作『ネブラスカ』からの選曲といずれも渋い線で選ばれている)。こうしたカヴァーは、いずれもザ・バンドにしかできない解釈・演奏に仕上がっていて、ザ・バンドのアメリカ音楽への探求はこの段階においても真摯に続けられていたと言えるだろう。 無論、オリジナル曲も傾聴に値しないというわけではない。それどころか、3.「ジェリコ(ザ・ケイヴズ・オブ・ジェリコ)」などは、淡々としていながら叙情的な盛り上がりをもった、60~70年代のザ・バンド・ファンにとっても必聴の1曲。さらに上述の6.「カントリー・ボーイ」では、リチャード・マニュエルのヴォーカルあり、これもファンには外せないだろう。 ジャケットは、バンドの原点を意識したかのように、かのピンク色の家(過去記事『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』参照)である。まとめてしまうと、“新生ザ・バンド”というよりは、“過去からの継続”という意識が強く表れたアルバムで、60~70年代にやってきたことの上に成り立っているという印象。したがって、解散前の諸作のファンにも聴きごたえのある内容だと言える。[収録曲]1. Remedy2. Blind Willie McTell3. The Caves of Jericho4. Atlantic City5. Too Soon Gone6. Country Boy7. Move to Japan8. Amazon (River of Dreams)9. Stuff You Gotta Watch10. The Same Thing11. Shine a Light12. Blues Stay Away From Me1993年リリース。 【メール便送料無料】ザ・バンドThe Band / Jericho (輸入盤CD) (ザ・バンド) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2011年07月16日
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伝説のハード・ブギー・バンドの原点 ブルース・ロックを語る際、外せない存在の一つが英国のサヴォイ・ブラウンである。フォガット(Foghat)は、そのサヴォイ・ブラウンから派生したバンドで、70年代半ばにそこそこのヒットを飛ばし、途中、バンドが割れたり、中心人物が死去したりしたものの、現在まで細々と活動を続けているバンドである。 バンド結成の発端はサヴォイ・ブラウンからの3名のメンバーの脱退。“ロンサム・デイヴ”ことデイヴ・ぺヴァレット(ヴォーカル、ギター)が、ロジャー・アール(ドラム)とトニー・スティーヴンス(ベース)を引き連れてサヴォイ・ブラウンから独立し、ギターのロッド・プライスを加えて新バンドを結成した。フォガット(フォグハット、霧の帽子)というのがその新しいバンド名であり、1972年発表のセルフ・タイトルの本盤がそのデビュー・アルバムとなった。 フォガットの特徴はブルース・ロックから派生したブギー・サウンドにある。第1作の本盤ではその特徴はある程度顔を見せてはいるものの、まだまだ彼ら流のサウンドが十分に確立されているわけではない。むしろ、ブルース・ロックがハード・ロック化していく時代背景の中で、世の流れに簡単に流されまいとする頑なさという印象が筆者の中では強い。 その頑なさはカヴァー曲によく表れている(本盤でのカヴァーは1.、7.、9.の3曲ある)。そのうち1.「君を愛したい」は圧巻。マディ・ウォーターズはじめ数々のアーティストがこれまでに演じている曲だが、強くたたきつけるようなロック・ヴァージョンはフォガットの演奏曲の中でも1、2を争う出来だと思う。他方、チャック・ベリーの7.「メイベリーン」は後々のフォガットの方向性を考えると、勢いとヘヴィさと明るさがうまく調和した演奏。 残る6曲(2.~6.、8.)がメンバーのオリジナルで、いずれもロンサム・デイヴがソングライティングに加わっている。総じて英国系ブルース・ロックのイメージに反し、どこかにカラっとした明るさがあるのが特徴。筆者の好みで2つばかり挙げると、2.「トラブル・トラブル」は明るい曲調の中でブルース・ロック的ギタープレイがうまく組み合わされている。8.「ホール・トゥ・ハイド・イン」もアメリカン・テイストの強い曲でありながらブルース・ロックの要素をうまく保ち続けている。 ちなみに、ベアズヴィル・レーベルということで、当初はベアズヴィルの所属アーティストだったトッド・ラングレンがプロデューサーだったとのこと。けれども、意見が合わず、結局、プロデュースはデイヴ・エドモンズが担当することになり、後者の名がクレジットされている。[収録曲]1. I Just Want to Make Love to You2. Trouble Trouble3. Leavin' Again (Again!)4. Fool's Hall of Fame5. Sara Lee6. Highway (Killing Me)7. Maybellene8. A Hole to Hide In9. Gotta Get to Know You1972年リリース。関連過去記事リンク: フォガット『フォガット・ライヴ(Foghat Live)』(1977年) 【送料無料】フォガット [ フォガット ] Foghat フォガット / Foghat & Rock & Roll 輸入盤 【CD】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年07月15日
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先月18日、ロック界を代表するサックス奏者、クラレンス・クレモンズが亡くなりました。何か記事をと思いながら、落ち着いて書けずにいます。 とりあえずは、次のような追悼ビデオを見つけました。決してきれいな編集ではありませんが、所属するE・ストリートバンド(ブルース・スプリングスティーンのバンド)では、スプリングスティーンのデビュー当時からの相棒でした。そこでの活動から、アレサ・フランクリン、リンゴ・スター、最近ではレディ・ガガとの共演まで、ハイライトシーンがうまく集められています。 “BIG MAN”への哀悼を込めて…。R.I.P. 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年07月13日
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INDEXページ(ジャンル別、アーティストのアルファベット順)を更新しました。今回は洋ロック&ポップス、ジャズ、ラテン系ロック&ポップスの3種のリストが更新されています。 皆さんのお気に入りの盤、フェイヴァリットな1曲が見つかれば、ぜひ過去記事とともにお楽しみください。 INDEXページへは、下のリンク、もしくは本ブログのトップページ右欄(フリーページ欄)から入ることができます。 アーティスト別INDEX~ジャズ編へ アーティスト別INDEX~ロック・ポップス編へ アーティスト別INDEX~ラテン系(ロック・ポップス)編へ アーティスト別INDEX~邦ロック・ポップス編へ下記ランキング(3サイト)に参加しています。応援くださる方は、各バナー(1つでも2つでもありがたいです)をクリックお願いします! ↓ ↓ にほんブログ村 : 人気ブログランキング: 音楽広場:
2011年07月13日
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幻の名盤? はたまた単なるマイナー盤? アーサー・ルイス(Arthur Louis)は、1950年ニューヨーク生まれ(ジャマイカ生まれで4歳でNYに移り住んだとの説もあり)だが、英国の国籍を持つ。ロック、ブルース、レゲエをバックグラウンドにし、ギターとボーカルを担当する。何枚かのアルバムを残しているが、筆者はいまのところ本盤しか聴いたことがない。しかもこの盤が何ともややこしい経緯を持つ“幻の盤”であった。 事の経緯としてはこうだ。1974年に本盤は制作された。どういう経緯かは不明だが、エリック・クラプトンが自ら本盤への参加を申し出て、全9曲中7曲に参加している(6.「トゥー・ロング」と8.「サムワン・ライク・ユー」以外の全曲で参加)。当時のクラプトンはと言えば、ドラッグを抜け出してソロ活動を積極的に展開しており、新たなアーティストの共演に意欲を見せたということだったのかもしれない。ところがクラプトンは本作収録のB・ディランのカヴァー「天国への扉」を1975年にシングルとしてリリース。これと前後してA・ルイスの本盤がリリースされるが、当初は日本のみでの発売。“クラプトンにパクられた”とルイス側が騒いだことで、ルイス自身の盤の発売が複雑になったのではないかと想像されるが、真相はよくわからない。結局、本盤は“幻の盤”のような存在になり、筆者が所有しているのは1988年の再発時にオリジナルとは異なるジャケ・曲順で再リリースされたもの。さらに、ルイスの2枚目のアルバムが現れることは長らくなく、セカンドが世に出たのは20年以上後のことだった。 ジャマイカ人を母に持つアーティストということで、また上記「天国への扉」のレゲエ調アレンジのイメージが鮮烈だったこともあり、この人の評価は正当にされてこなかった。筆者自身も1988年の再発時に本盤を入手して聴いた時、“レゲエ・ブルース”みたいなイメージでもって聴いていた。でも、今となってはこのイメージは間違っていたと思う。 早い話、ジャマイカなんてものを持ち出さなくても、A・ルイスは優れたR&B/ブルース系ギター・プレーヤーだったのである。当時絶好調のクラプトンと共演し、何の遅れもなくブルージーなギターを披露できていること自体、その証明であった。1.「カモン・ラヴ・ミー」や4.「メイク・イット・ハプン」、6.「トゥー・ロング」のように元気のある曲が含まれるかと思えば、2.「ディーラー」(この曲ではジーン・チャンドラーがヴォーカル参加)や8.「サムワン・ライク・ユー」のようなゆったりとした曲、さらには5.「フィールズ・グッド」やインストルメンタルの9.「プラム」のようにさらにまったりしたブルース色の濃い曲まで、バランスあるアルバムになっている。 おそらくは、ブルース・ロックとして聴けばよい盤だったのに、「天国への扉」で見せたレゲエ風アレンジばかりが一人歩きし、彼のイメージとして喧伝されてしまった。でも、上のような流れの中で表題曲の3.「天国への扉」を聴くならば、必ずしもこの方向性が彼の本領ではなく、あくまでブルース的アルバム作りの工夫、あるいはアクセントのひとつであったことがわかる。 ところで、本盤はオリジナルのジャケットと曲順で今年(2011年)の2月に復刻リリースされた(本記事下部の商品リンク参照)。今のうちに手に入れておきたい方は、少々高めの定価設定だけれども、売り切れる前にお早めにどうぞ。ただし、オリジナルはダサいジャケット・デザインなので筆者はあまり気に入っていない。欧米向きの再発盤のギターを弾いている絵のジャケットの方が洒落ていると思うけれど…。[収録曲]1. Come On And Love Me2. The Dealer3. Knockin’ On Hevean’s Door4. Go Out And Make It Happen5. It Feels Good6. Been On The Road Too Long7. Train 4448. Someone Like You9. Plum (inst.)1976年オリジナルリリース。*オリジナルの曲順は、2.-1.-6.-7.-8.-4.-9.-3.-5.(2011年再発盤も同様)。上記は1988年の再発盤の曲順。 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ ↓本年2月の再発盤のジャケット写真はこちら↓【送料無料選択可!】【試聴できます!】天国への扉 / アーサー・ルイス&エリック・クラプトン☆【送料無料】 CD/アーサー・ルイス&エリック・クラプトン/天国への扉/CDSOL-1399
2011年07月12日
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凡庸なカバー集なのか、それとも… ユリディア(Yuridia)は“天使の歌声(voz de un Ángel)”の愛称で知られるメキシコの歌手(プロフィールはデビュー作の過去記事を参照)。爆発的ヒットを記録したデビュー作に続いて出された第2弾アルバムが、この『アブラ・エル・コラソン(Habla el corazón)』で、メキシコでは4か月にわたってアルバム・チャートの3位以内に留まる売れ行きとなった。第二弾もまたカバー曲集、それも英米のヒット曲をごっそり集め、大半をスペイン語で歌うという企画のものであった。 ふつうはこの手のアルバムは失敗に終わる公算が高い。英語の有名曲をカバーし、自国語の詞をつけて発表する時点で少々“イタイ”企画だとすら言っていいかもしれない。筆者も最初にこのアルバムを聴いたときは、“いまいちだな”と思った。けれども、よくよく繰り返し聴いていると、だんだんそうではないのではないか、という気がしてきた。 行き着いた結論は、音楽性・演奏・アレンジ云々ではなく、結局のところ、デビュー作と同様に、ユリディアの歌唱そのものを楽しむアルバムだったというものである。しかもデビュー作から本作までの間に、シンガーとしての力量は確実に上昇していた。少し大げさな言い方かもしれないが、喩えるとすれば、カレン・カーペンターのように思う。カーペンターズの場合、カレンには兄リチャードという有能な“裏方”がいたので、音楽的にも優れた作品が多いわけだけれど、問題にしたいのはカレンのボーカルである。明瞭にかつきれいな発音で英語の詞を丁寧に歌い、それが優れた歌唱力とセットになってそのボーカルの魅力につながっている。このユリディアのボーカルも同様に、明瞭かつきれいに発音しながらスペイン語の詞を歌っている。しかも前作のデビュー盤では荒削りな部分が見られた歌唱力についても洗練度が増し、実力がアップした。つまるところ、歌手としてのレベルが格段に上がっていたのである。 ちなみに収録曲の中には次のようなものが含まれる。ザ・ポリス(1.「見つめていたい(Every Breath You Take)」)、ボン・ジョヴィ(2.「ディス・エイント・ア・ラヴ・ソング」)、ボニー・タイラー(6.「愛のかげり(Total Eclipse of the Heart)」)、トニー・ブラクストン(8.「アンブレイク・マイ・ハート」)。1曲だけ(ベット・ミドラーの9.「ザ・ローズ」)だけは英語詞のまま歌われているが、残りはスペイン語の訳詞で、まさしく英語の有名曲のオンパレードである。 面白いのは、スペイン語で既発表の曲が結構多いことである。2.「ディス・エイント・ア・ラヴ・ソング」はボン・ジョヴィ自身がスペイン語圏への売り込みのため過去に録音している。本アルバムの表題になっている3.「リッスン・トゥ・ユア・ハート」はやはりロクセット自身が全編スペイン語の企画盤(『バラーダス・エン・エスパニョール』)を出した際に取り上げた曲の一つ。5.「アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー((Everything I Do It) I Do It For You)」もブライアン・アダムス自身が決して堪能ではないスペイン語で吹き込んだことがある。ビリー・ジョエルの10.「ピアノ・マン」は、スペインの歌手アナ・ベレンをはじめスペイン語で何度も取り上げられたことのある曲。[収録曲] = =内に英語の原題を表記1. Siempre te amaré =Every Breath You Take=2. Como yo nadie te ha amado =This Ain't a Love Song=3. Habla el corazón =Listen to Your Heart=4. Otro día más sin verte =Just Another Day=5. Todo lo que hago lo hago por ti =(Everything I Do) I Do It for You=6. Eclipse total de amor =Total Eclipse of the Heart=7. Estar junto a ti =Angel=8. Regresa a mí =Un-Break My Heart=9. Rose =The Rose=10. El hombre del piano =Piano Man= 2006年リリース。【メール便送料無料】YURIDIA / HABLA EL CORAZON (輸入盤CD) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011年07月10日
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歴史の重なりを感じさせる70年代スペイン・ポップスの名曲 アナ・ベレン(Ana Bel?n,1951年生まれ、マドリード出身のシンガー・女優)とビクトル・マヌエル(V?ctor Manuel,1947年生まれ、アストゥリアス地方出身のシンガーソングライター)の夫婦は早くからデュオで活動し、70年代後半から80年代前半にかけてのスペインの“移行期”を代表するアーティストと言われる。 少しばかり歴史的な背景を振り返っておくと、第二次世界大戦での敗戦によって各国のファシズム体制は崩れ去った。そんな中、スペインは1975年のフランコ総統死去まで独裁体制を引きずり、西洋諸国や日本のような現在の民主的体制が確立されるのに時間がかかった国である。アナ・ベレンとビクトル・マヌエルの世代のアーティストたちは、ポスト世界大戦の生まれでありながらも、スペインの個別事情からみると、フランコ体制の下で生まれ育ち、やがて現代の自由なEUの一国になるまでを体験した、そんな激動の世代というわけである。 他方、スペインは他のいくつかのヨーロッパ諸国と同じく、ローマ時代から脈々と連なる歴史の深みを感じさせる国でもある。そのことが筆者にとっての先入観となってしまっているのかもしれないのだけれど、以前紹介したジョアン・マヌエル・セラーの「メディテラネオ(地中海)」などを聴いても、今の地中海と同時に、悠久の過去の地中海(近世の海戦の舞台、古代のローマやカルタゴの交易や戦役などなど)も連想してしまう。ボストンやカリフォルニアなどという地名を聞いてもこういう発想は働かないのだが、イタリアとかスペインとかの地名を聞くと、不思議なことにそういう壮大な歴史のイメージが膨らむ。 これら二重の意味で、「アルカラの門」は歴史の重なりを感じさせる曲である。実際、この曲の歌詞には、カルロス3世(スペイン王、1759~88年)から、内戦を経て、いま現在その門を見ている自分自身まで、様々な登場人物が順に描写される。この門はもともとあった16世紀の門をカルロス3世が新たに建設させたもので、首都マドリードにとって、東側(フランス、カタルーニャなど)方面への玄関口だったという。この曲の詞の中では、カルロス3世がお供の者たちとこの門を通る姿が描写されている。 曲が進んで次のヴァースでは、1930年代のスペイン市民戦争時の光景、さらに次のヴァースでは1960年代の学生運動が取り上げられ、その次に現代の門の様子が描写される。つまりは、アルカラの門という実在のモニュメントが、過去から現代までその場所でこうした様々な歴史の光景を見つめ続けてきたことを詞にしているというわけである。 これだけで終わるとあまり面白くないのだけれど、最後に、自分自身がアルカラの門の前で立ち止まり、ふとそれを見つめるというシーンが詞に含まれている。その表現が“誰かに見られている気がして立ち止まり、気付くとそこにアルカラの門があった”というもので、つまりは、現在の自分自身も長い歴史を見てきたアルカラの門に見られているという設定が面白い。 ちなみに、作詞作曲はルイス・メンドとベルナルド・フステルを中心とするスペインのフォーク・ロック・バンド、スブルバーノ(Suburbano)によるが、アナ・ベレンとビクトル・マヌエルのヒットにより、このデュオの代表曲としてすっかり定着している。[収録アルバム]Ana Bel?n & V?ctor Manuel / Para la ternura siempre hay tiempo (1986年)Ana Bel?n & V?ctor Manuel / Dos grandes con historia (1992年)←ベスト盤Ana Bel?n & V?ctor Manuel / Mucho m?s que dos (1994年)←ゲスト多彩なライブ盤追記: ちなみに、プロフィール欄の写真が、このアルカラ門です(2012年春現在)。 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年07月09日
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おはようございます。現在、170000の累計アクセスをいただいております。ご覧の皆様にあらためて感謝いたします。開設したのはちょうど2年前ですので、今月で本ブログも2周年ということになりました。ロックとジャズをメインに徐々に記事を書きためてきましたが、過去記事のリスト(TOPページ右欄の「アーティスト別INDEX」)を見ると、結構増えてきたのかなと思ったりもします。でも、その一方で、あれもこれも抜けていた、まだまだ愛聴盤がいっぱい抜けているなと感じたりもしています。毎日更新とはいきませんが、これからも少しずつ、ゆっくりでもいいので長く続けられればと思っていますので、応援・ご愛読のほどよろしくお願いいたします。 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年07月08日
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ジャズとして至高かどうかはともかく、“ジャズはこうなのだ”的な演奏 ソニー・クリス(Sonny Criss)はこのブログではこれまで結構取り上げてきているが、それは、多分に筆者がソニー・クリスを好むからという理由による。なので、個人的好みが大きく反映された内容であることを差っぴいて、以下を読んでいただければと思う。 ソニー・クリスのピークは3つの時期に分かれるが、本盤はそのうち2番目の時期(60年代後半)に当たる。プレスティッジでは6枚目で、ワン・ホーンのカルテット演奏のリーダー盤としては4枚目の作品である。同じ年の録音としては、『ソニーズ・ドリーム(新クールの誕生)』や『ザ・ビート・ゴーズ・オン!』がある。 正直、本盤は少々“ウケを狙いすぎたかな?”という感が否めない。1.「エリナー・リグビ―」(ビートルズの有名曲)というのが冒頭に来ている点からも、いわゆる“ジャズ・ロック”的な演奏でリスナーのウケを狙ったであろうことは容易に想像がつく。他にも、いかにもな有名曲をとりあげて、一般聴衆のウケを狙っているかのように見える。演奏を実際に聴いてみても、楽器間の緊張感というよりは聴き手にとっての入りやすさ重視で、おそらくはジャズ専門の聴き手にはそっぽを向かれるかもしれない雰囲気が漂っている。 がしかし、である。本盤でのカルテットという構成は成功したと思う。とにかくソニー・クリスのサックスをしっかり聴かせるというコンセプト(これをコンセプトなし、とも言う)のお陰で、全体の演奏よりはアルトの音に否が応でも注目が集まるように作られている。そしてそのサックス演奏はというと、“これがジャズなのです!”と言わんばかりに開き直った演奏。確かにパーカーがこういう時代の、こういう雰囲気の中で、こういう企画盤に登場しるようなことが生前にあったとすれば、きっとこんな感じに吹いただろう。パーカを引き合いに出したが、“パーカー派”と呼ばれるソニー・クリスは、単に真似やコピーという意味ではなく、よきパーカーの継承者という面もちゃんと備えていたのだろう。 そのようなわけで、ジャズに精通した人よりは、ポップスからジャズに入っていくのに向いた盤ということになるのかもしれない。けれども、パーカーの遺産をポップスとの接近という観点にうまく引き寄せて、うまいことこのような盤にしてしまったことに、筆者は狡猾さよりもどちらかと言えば親しみを感じる。ジャズ奏者がポップスやその他の有名曲にすり寄っていくのではなく、(ちょっと無理しながらも)ポップスを取り入れてまで、“ジャズはこういう風にやるものなのです!”と示している、そんな印象を受ける。難しいことを考えず、頭の中を空っぽにして聴いていると、B級ながら思わず表情が緩む、そんな1枚だと思う。[収録曲]1. Eleanor Rigby2. When The Sun Comes Out3. Sonnymoon For Two4. Rockin’ In Rhythm5. Misty Roses6. The Masquerade Is Over[パーソネル、録音]Sonny Criss (as)Eddie Green (p)Bob Cranshaw (b)Alan Dawson (ds)1968年7月2日録音。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2011年07月06日
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フラメンコ・ギター×ビル・エヴァンス ニーニョ・ホセーレ(Ni?o Josele, 日本盤ではホセレと表記される)は、1974年生まれのフラメンコ・ギター奏者。スペイン南部、アンダルシア自治州のアルメリア生まれで、1970年代に始まった“ヌエボ・フラメンコ”(スペイン語で“新しいフラメンコ”の意、英語に訳すとニュー・フラメンコ)の流れに属するギター奏者である。とはいえ、同時に“スペイン・ジャズ(スパニッシュ・ジャズ)”という分類のされ方もする。これまで5枚のアルバムを発表しているそうだが、筆者は現時点では本盤しか聴いていない。 ともあれ、このニーニョ・ホセーレの音楽は、伝統的ジャズでもなければ、伝統的フラメンコ演奏でもない。だが、この盤で演奏されているのは、有名ジャズ・ピアノ奏者、ビル・エヴァンスゆかりの楽曲群である。つまり、新しい現代音楽を創造し続ける人にとって、とりわけフランメンコの伝統を持つスペインのように「心」や「魂」で対話する音楽を受け継ぐ人にとって、ジャズという分野のビル・エヴァンスなるピアノ奏者が残した遺産は、今もそれだけの参照項とされるのであろう。 紹介ついでに少し苦言を加えておくと、ジャズの定番で人気の有名曲だからといって、邦盤のアルバム名を『ワルツ・フォー・デビー~ビル・エヴァンスに捧ぐ』というのは少しやり過ぎではなかろうか。本盤の原題は『Paz(パス)』といい、スペイン語で“平和”の意味である。ジャケット裏には確かにビル・エバンスの名が記されてはいるが、正確には“Ni?o Josele and the music of Bill Evans”とあるに過ぎない。つまるところ、ニーニョ・ホセーレがビル・エヴァンスゆかりの曲を演ることに意味があるのであって、ビル・エヴァンスだから何でもいいわけではない。買い手の気持ちになれば絶対的にそうのはずである。 ビル・エヴァンスがいいのならエヴァンス本人の演奏を聴けばよい。そうではなくて、スペインのフラメンコの流れを持つ新世代のギター奏者がそれらをどう解釈し、演じるかに注目するのが筋だろう。いや中にはビル・エヴァンス関係なら何でもという人もいるかもしれないが、そんなマニアはごくごく少数で、別に“ワルツ・フォー・デビー”なんて謳わなくてもこのCDを聴いたり購入したりするはずだ。というわけで、単にビル・エヴァンスが好きという人には到底勧められたアルバムではない。それどころか、ビル・エヴァンスこそがお気に入りという人が聴いたら、元のイメージから離れづらいだけに、かえってがっかりするかもしれない。そんなわけで、売り手の意図とは裏腹に、エヴァンス愛好家にとっては難しい1枚になるだろう。けれども、ヌエボ・フラメンコのギターに興味があって、なおかつジャズに興味のある(場合によってはビル・エヴァンスなどあまりよく知らないという)聴き手には、愛聴盤になる可能性を秘めた1枚ということになる。こんなことを思いめぐらせていると、音楽を聴くには先入観という要素が大きいということをあらためて考え込んでしまった次第である。[収録曲] 1. Peace Piece2. Waltz For Debby3. The Peacocks4. I Do It For Your Love5. My Foolish Heart6. The Dolphin7. Hullo Bolinas8. Minha9. Never Let Me Go10. Turn Out the Stars11. When I Fall In Love2006年リリース。 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年07月04日
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INDEXページ更新 INDEXページ(ジャンル別、アーティストのアルファベット順)を更新しました。過去の記事へのリンクになっていますので、お気に入りのアーティストやアルバムがあればお楽しみください。 INDEXページへは、下のリンク、もしくは本ブログのトップページ右欄(フリーページ欄)から入ることができます。 アーティスト別INDEX~ジャズ編へ アーティスト別INDEX~ロック・ポップス編へ アーティスト別INDEX~ラテン系(ロック・ポップス)編へ アーティスト別INDEX~邦ロック・ポップス編へ下記ランキング(3サイト)に参加しています。応援くださる方は、各バナー(1つでも2つでもありがたいです)をクリックお願いします! ↓ ↓ にほんブログ村 : 人気ブログランキング: 音楽広場:
2011年07月03日
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単なるパンクではない、骨太のロック ザ・クラッシュ(The Clash)と聴けば、パンクというイメージが強いという人も多いかもしれない。事実、1976年、ロンドンのパンク・シーンから姿を現したバンドであり、10年ほど存続した。しかし、時の流れとともに、結果的にはパンクという言葉では括れなくなっていったバンド、そんな形容がザ・クラッシュにはぴたりと当てはまる。 そもそもパンク・ロックはニューヨークのアンダーグランドな動きがロンドンにも飛び火し、一気に盛り上がったものだった。その分、ブームが引くのも早かったということにもなるのだろうが、そもそもパンクのコンセプトにあまり永続的な側面は見られなかったように思う。従来のロックが古典化し、技術的にも高度化する中で、演奏面でのシンプルさ、思想面での過激さ(反体制・左翼的発想)を伴って生まれてきた。当初はパンクの影響が強かったが後にそうではなくなっていったバンドが多かったのも、一つには流行りとしての一過性、もう一つにはコンセプトの限界があったのではないだろうか。 そう考えてみると、ザ・クラッシュがパンクにとどまりきれなかったのも、ある意味、必然と言えるかもしれない。ちょうどこのサード・アルバム『ロンドン・コーリング(London Calling)』以降、ザ・クラッシュの作風は普遍的なロックへと向かっていく。曲進行のシンプルさという点では、パンクからの流れもあるのだろうし、政治的メッセージという点では、ある意味パンク的である。だが、鳴っている音を聴けば、R&B、ロカビリー、レゲエ、スカ、HRといった多ジャンルな要素が織り込まれていることがすぐにわかる。少々大げさな言い方をすれば、パンク・ロックのムーヴメントがいったん解体にかかったロックというものを早くも再構築し、新たな骨太のロックを目指した作品と位置付けられるかもしれない。 なんだかんだ言って、本盤はザ・クラッシュの代表作として有名だし、筆者自身も聴いたことのある彼らの盤の中ではこれが一番気に入っている。ボリュームとしては2枚組み19曲(CDでは1枚に収録)という結構な分量に見えるが、シンプルながらも抑揚が付いており、しかも短い曲がたくさん並んでいる感じなので見た目(ずらりと並んだ全19曲)のわりにはとっつきやすいと思う。全編に亘り、概ね上で述べたようなサウンドのヴァリエーションとソングライティングのよさが際立っている。 個人的な好みで何曲かおすすめを挙げておきたい。1.「ロンドン・コーリング」、3.「ジミー・ジャズ」、6.「スペイン戦争(スパニッシュ・ボムズ)」、8.「ロスト・イン・ザ・スーパーマーケット」、12.「死か栄光か(デス・オア・グローリー)」、15.「ラヴァーズ・ロック」、18.「レヴォリューション・ロック」、19.「トレイン・イン・ヴェイン」。シリアスから軽いものまで多彩なテーマで、こうして何曲か取り上げて聴いただけでも、多ジャンルな色付けが見てとられる。だがその根幹にあるのは、あくまでもシンプルでかつ骨太のロックの音である。 確かにそれなり長さなので、クラッシュ節になじまないと最後まで通して聴くのは疲れる、という人もいるかもしれない。けれども、上で書いたように、元々本盤は2枚組であった。LP当時の形式からすれば、4つのパート(A面=1.~5.、B面=6.~10.、C面=11.~14.、D面=15.~19.)に分かれていたものである。CD化によって今ではCD1枚に収まってしまったが、そういう聴かれ方は制作当時には意図されていなかったわけだ。ということなので、別にこのアルバムに限ったことではないが、CD化で長尺アルバムに見えるようになってしまった過去のアルバムについては、現在リリースされる70分、80分の1枚もののアルバムとは根本的に違う聴き方を意識すべきだと思う。早い話、元々どこで区切れていたかの情報をできれば入手して、休み休み聴くという、それだけのシンプルなことで“長くて疲れる”という印象はだいぶ変わってくるだろうと思う。[収録曲]1. London Calling2. Brand New Cadillac3. Jimmy Jazz4. Hateful5. Rudie Can't Fail6. Spanish Bombs7. The Right Profile8. Lost in the Supermarket9. Clampdown10. The Guns of Brixton11. Wrong 'Em Boyo12. Death or Glory13. Koka Kola14. The Card Cheat15. Lover's Rock16. Four Horsemen17. I'm Not Down18. Revolution Rock19. Train in Vain1979年(英)、1980年(米)リリース。 【送料無料】ロンドン・コーリング [ クラッシュ ] 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年07月02日
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