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2011.08.30
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ケニー・ドーハム最後のリーダー作 ケニー・ドーハムは、華やかさやセールスといった面では、決して恵まれた境遇のミュージシャンではなかった。でも、ただ単に不遇というだけでなく、もしかすると本人にそういう商売気のようなものがなかったのかもしれないと思うこともある。レギュラー・グループで長く安定して活動することもなく、自分から時流に乗っていくこともなく、結果、リーダー作も、そのキャリアを考えると(決して少ないわけではないにせよ)特段に多いというわけではない。ブルーノートへの吹き込みを考えても、結構いろいろ残していそうなイメージがあるにもかかわらず、リーダー盤は5枚に過ぎない(その5枚目かつ生涯最後のリーダー盤が本作)。プレスティッジにいたっては、いろんなセッションには参加しているものの、彼自身の名義としては、『静かなるケニー』一作だけであったりする。 ケニー・ドーハムのリーダー作が長い一覧にならなかった理由は他にもある。1972年に48歳で亡くなったことである。もう10年、20年と長く生きていれば、もしかすると“ジャイアンツ”的な扱いのアルバムも作られ得たのかもしれないが、上で述べたような商売っ気のなさでは、長く生きてもそれすらしようとしなかったかもしれない。要は不器用で、自分の納得できるような環境での演奏しかしないタイプのミュージシャンだったのだろうと想像できる。 とはいえ、多少は遊び心もあったのかなと思うこともあるのが、本作『トランペット・トッカータ(Trompeta Toccata)』である。収録曲1.をそのままアルバム表題とした作品名だが、邦訳では『トランペット・トッカータ』と訳されている。けれども、原題をよく見ると、『Trompeta Toccata(トロンペタ・トッカータ)』となっている。おそらく“トロンペタ”はトランペットを意味するスペイン語、“トッカータ”は元は“感触”(転じて“演奏”)の意味のイタリア語から来ている模様。要は、タイトルからしてとりあえずラテン風にしました的ないい加減なネーミングなわけである(実際の曲は、アフロ・ラテン調のリズムの曲である)。 表題曲と並んで本盤で良くも悪くも注目を受けるのは、3.「ママシータ」という、ジャズ・ロックあるいはボッサ・ロック調の軽快なテンポの曲。このスペイン語の表題“ママシータ”というのは、そもそも「母ちゃん」の意味だが、中南米では(若い女性をつかまえて)「姉ちゃん」の意味でも使われる。本盤の収録曲のうち、この曲だけは共演者のジョー・ヘンダーソンのペンによるものだが、何とも軽いノリのお気軽曲で、この曲の躍動感がいいという人もいる。 けれども、筆者は本盤のよさは別のところにあると思う。上記のような曲を織り交ぜながらも、結局、ケニー・ドーハムは“ハードバップな人”だった。その基本スタンスはどうしても引っこむことがなく、その上で、メロディ感のあるソロを聴かせる。遊び心を持ち込もうとしても遊びきれないところ、なおかつ、結局はメロディの人であるというこの二点において、やっぱりケニー・ドーハムはケニー・ドーハムだったとの思いを新たにさせられる。 ケニー・ドーハム自身の話だけに集中し過ぎたので、最後に共演者について付け加えておきたい。テナー・サックスはジョー・ヘンダーソン(関連過去記事はこちら)、ピアノはトミー・フラナガン(関連過去記事はこちら)で、二人とも定評通りのなかなかいい演奏を披露している。[収録曲]1. Trompeta Toccata2. Night Watch3. Mamacita4. The Fox[パーソネル・録音]Kenny Dorham (tp)Joe Henderson (ts)Tommy Flanagan (p)Richard Davis (b)Albert Heath (ds)1964年9月14日録音 【送料無料】トランペット・トッカータ [ ケニー・ドーハム ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011.08.30
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個性がまったりとぶつかる不思議盤 ~後編~ さて、L・コニッツ、C・ヘイデン、B・メルドーというこの3人の組み合わせでのライヴ演奏盤(本記事の前編はこちら)、結果から言うと、人によってかなり好き嫌いが分かれそうな1枚であるようにも思う。実は、最初に筆者が聴いた時も、正直言って、ピンとこなかった。その理由は、全編にわたってどうも“まったり”しているのである。ドラムレスのトリオということもあるが、一聴してストレートにびんびん伝わってくる激しさや緊張感といったものは感じられない。本盤を聴いて“いまいち”と思う人はたぶんこの点で引っかかってしまうのだろうと思う。 けれども、数回聴いた後にこの第一印象はどこかへ吹っ飛んで消えてしまった。この“まったり感”と、その背後に絶えず展開している緊張感。これに魅かれる人も案外多いのではないかと思う。“まったり感”と“緊張感”、いずれも仕掛け人はリー・コニッツである。コニッツは相変わらず自由に吹き、有名曲ばかりをやっているにもかかわらず、原曲が分からなくなるほど即興演奏に徹する。その演奏をバランスよく、なおかつ安定させるかのようにベースを演奏するのがチャーリー・ヘイデンであり、叙情性に溢れつつも、演奏全体の安定感を保とうという姿勢がはっきりしている。ピアノのブラッド・メルドーはというと、挑戦的に破壊するのではなく、慎重かつ冴えのある演奏をしている。原曲のイメージよりもコニッツの演奏のイメージを踏まえながら秀逸なピアノソロを展開しているといった印象である。 といったわけで、つまるところ、原曲のイメージに沿いながら3人がアプローチするというスタイルの演奏ではない。原曲にじかにアプローチしているのは、実はリー・コニッツだけで、残る二人はコニッツの演奏にアプローチしているように見える。したがって、コニッツの演奏が自由でまったり気味で(ここでおそらくは聴き手の好き嫌いが分かれる)、その“まったり”に対する二人のアプローチが“緊張感”に満ちている、という展開なのである。 “ジャズを語る人間はくどくどうるさい” (このブログもその一つ?)と世間からはヤジが飛んできそうだが、ここはぜひとも言わせてもらいたい。きっとこういうところにジャズを聴く大いなる楽しみの一つがあるのだろうと、本盤を聴いていて、心底思う。演奏家同士の邂逅、ぶつかり合い。それは必ずしも対決というわけではなく、融合や融和もあれば、一方の投げかけに他方が応じる展開、お互いに歩み寄る演奏、お互いが距離を置きつつも対話する演奏、お互いが突き離し合う演奏(ちなみにこのパターンは駄盤の可能性が高い)、誰かが主役で周りがあわせる演奏、などなどいろんな展開があり得る。そんな観点に立つと、本盤はジャズの楽しみが存分に詰まった盤ということもできる。きっとライブ収録の現場の緊張感は素晴らしいものだったんだろうなあ…。 いつどんな気分の時でも聴ける盤ではないが、“単調で退屈”というのも一つの評価、でも落ち着いて聴けば、このまったり感と緊張感の不思議なバランスがたまらない。収録曲は全6曲で、いずれもが10分を超える長尺である。4.「恋とは何でしょう」や5.「ラウンド・ミッドナイト」など、完全にスタンダード化したジャズの曲を演奏しつつ、しかもドラムレスのこの構成で聴き手を飽きさせないのは見事というほかない。二重マルのお勧め盤。[収録曲]1. Alone Together2. The Song Is You3. Cherokee4. What Is This Thing Called Love?5. 'Round Midnight6. You Stepped Out Of A Dream[パーソネル・録音]Lee Konitz (as)Brad Mehldau (p)Charlie Haden (b)1996年12月21日・22日(ロサンゼルス、ジャズ・ベイカリーでのライヴ録音)[過去記事リンク]Lee Konitz, Brad Meldau, Charlie Haden / Alone Together(前編)へ 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2011.08.28
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個性がまったりとぶつかる不思議盤 ~前編~ 個性的なサックス奏者リー・コニッツ(1927年生まれ)、多彩な経歴のベテランであるチャーリー・ヘイデン(Charlie Haden、1937年生まれ)。この二人に、当時まだ若き新星的ミュージシャンであったブラッド・メルドー(Brad Mehldau 、1970年生まれ)が加わり、異色のトリオでのライブが収められたのが、1997年に出た『アローン・トゥゲザー(Alone Together)』であった(念のため、この3人の演奏なので、ドラムは入っていない)。録音がなされたのは、1996年(ライナー等では明示されていないが、おそらくは発売前年の1996年と思われる)12月、ロサンゼルスでの実況録音である。先頃、この三人にポール・モチアン(ドラム)を加えたライヴ演奏盤が出たが、筆者は未聴(とはいえそのうちに聴くのを楽しみにしている)ため、ひとまずは1997年のこの盤を取り上げておきたい。 当時、リー・コニッツは御年70歳。若い頃のアドリブの凄みは緩んできたものの、つかみどころのない独特のプレイは健在で、本盤でも“妖しげな舞い”を披露している。チャーリー・ヘイデンとブラッド・メルドーは、個人的にはパット・メセニーとの共演(録音日は本盤よりも後)を先に知っていたので、ある種現代的な仕上がりになっているのかな、とのイメージもあった。チャーリー・ヘイデンに関しては、リベレーション・オーケストラの印象も強い。彼ら二人のそれぞれの個性がどうリー・コニッツと組み合わさるのか、名前が併記されている時点から、期待が膨らむと同時に、不安がよぎる組み合わせである。 コニッツによれば、そもそもは日本のレコード会社からチャーリー・ヘイデンとのデュオ盤制作の申し入れがあり、実況録音するクラブも準備したと言う。ところが、ヘイデンの希望でブラッド・メルドーが加わってトリオになることとなった。本番に向けては、リハーサルや事前のアレンジは一切なく、デュオとトリオでの演奏が繰り広げられたと言う。(後編へ続く) *今回はやや長めの文になりそうなので、2回に分けて掲載します。演奏曲、パーソネルなどの情報は後編をご覧ください。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011.08.27
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マイルスの幻影か新時代の音楽か マイルス・デイヴィス(Miles Davis)は、ジャズに関わるあらゆるアーティストにとって、程度の差や形式はともかく、何らかの形で避けて通れない存在であろう。それは、単にマイルスの音楽が凄かったからというよりも、現在のジャズ音楽の様々な部分が彼によって規定されていたり、その影響なしに存在し得ないからだと言える。それゆえ、現代の優れたアーティスト(ジャズメンとは限らない)の中にも、当然ながら、それを意識した作品を作ろうとする人物が時折現れ続ける結果となる。 カサンドラ・ウィルソン(Cassandra Wilson)の本作『トラヴェリング・マイルス(Traveling Miles)』は、必ずしもマイルスに追従するといった風情のものではない。けれども、ジャズあるいはそこから派生したり影響が及ぼされている音楽をやる人間として、マイルスの影響力から逃れられないという、彼女の立場・心情を如実に反映するものだと思う。もちろん、本盤の発表時には、既にマイルス死去(1991年)から何年も経過している。けれども、生を全うしてもなお、マイルスの存在は大きい。これってマイルスにしてみれば、音楽家冥利に尽きるのか。はたまた、あの世へ行ってまで後輩ミュージシャンたちに尻をつけまわされて迷惑しているのがマイルスの気持ちなのだろうか。 カサンドラによって取り上げられた本盤の楽曲群は、一見すると統一性がない。無論、そこにはマイルスに所縁のある曲という共通性はあるものの、6.や7.のようにかなり昔のマイルスに縁のある楽曲もあれば、表題曲(2.)をはじめカサンドラ自身の作も、さらにはポップ歌手シンディ・ローパーの4.(と言っても、これもエレクトリック以後にマイルスが取り上げたものである)といったバラエティに富んだ選曲になっている。マイルスの幅の広さをあらためて確認するとともに、カサンドラ・ウィルソンという新しい世代のシンガーが、いかに多様な楽曲を取り上げつつも自分の世界を構築できる人なのかがよくわかる1枚である。そのトーンは重いが、カサンドラの実力をよく示す盤であり、楽曲の多様性ゆえ、マイルスその人やジャズという音楽に馴染みがない人にも比較的とっつきやすいアルバムではないかと思う。[収録曲]1. Run the Voodoo Down2. Traveling Miles3. Right Here Right Now4. Time After Time5. When The Sun Goes Down6. Seven Steps7. Someday My Prince Will Come8. Never Broken9. Resurrection Blues (Tutu)10. Sky & Sea (Blue in Green)11. Piper12. Voodoo Reprise13. Prancing~日本盤ボーナストラック~1999年リリース。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011.08.26
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ラテンの伝統音楽+現代ギタリストの異色アルバム タニア・リベルター(Tania Libertad)は、ペルー出身で、メキシコで活躍する女性シンガー。現代風なポップやロックというよりは、いかにもラテン系の伝統的歌唱を得意とするタイプの歌手(過去記事を参照)である。他方、一緒にアルバムの名義人になっているフィル・マンザネラ(Phil Manzanera, スペイン語読みではマンサネラ)は、イギリス人ながらコロンビア人の母をもち、ラテンアメリカでの生活経験を持つ、一風変わった音楽的バックグラウンドのギタリストである(同じく過去記事を参照)。 『ボレロス・デ・オイ』(スペイン語で『今日のボレロ』)という表題からもわかるように、本盤の題材はボレロでありながら、料理の仕方は“オイ(今日)”つまりは現在を意識したサウンドになっている。ボレロというのは、ショパンやラヴェルといったクラシックで言うところのボレロとは異なり、18~19世紀にキューバで発展した音楽で、ラテンアメリカ諸国に広まっていったとされる。タニア・リベルターが活躍するメキシコでもボレロの認知度は高く、根強い人気がある。それを現代的に解釈したのが、このアルバムということになる。 アルバム全体としての特徴は二つある。一つは、マンザネラの幻想的ギターの演出が随所で効果を発揮している点である。“現代的な音で演るボレロ”というコンセプトは大部分がマンザネラの優れたセンスのおかげで成功しているとすら言ってもいいかもしれない。 もう一つの特徴は、収録された全11曲中の4曲でのゲスト参加である。2.「トレス・パラブラス」は、いわゆるラテン・ジャズ系でもよく取り上げられる曲。ジャズ側の演奏では、例えば、ケニー・バレル(『ブルージー・バレル』)やスティーヴ・キューン(『キエレメ・ムーチョ』)などが思い浮かぶ。ここでは、スペインの有名シンガー、ミゲル・ボセー(Miguel Bos?)が共演している。3.「アモール・ヒターノ(ジプシーの愛)」ではアスカル・モレノ(Az?car Moreno)がゲスト参加となっている。 残る二つの共演曲のゲストは、ラテンアメリカではそれぞれかなりのビッグネームである。5.「アオラ・レスエルタ(いま、わかった)」では、この曲の作者(ちなみに本盤中では4.と10.も彼のペンによる)であるアルマンド・マンサネロ(Armando Manzanero)とのデュエット。アルマンド・マンサネロはメキシコの“小さな巨人”(小さな、というのは背が低いという意味)で、歌手としてだけでなく、数々の有名曲の作者として知られる。さらに、10.「ア・エソ・デ・ラス・オチョ(8時ごろ)」では、ジャズ界でも名を知られたブラジルのミュージシャン、イヴァン・リンス(Iv?n Lins)とのデュエットである。 正直なところ、そもそもボレロという時点で好みは分かれるかもしれない。けれども、ラテンのまったり目のノリが好きで(筆者はそもそもここがつぼにはまっている)、なおかつ古臭い感覚でなく新しい感性のものを求めている向きには、一聴の価値があろうかと思う。[収録曲]1. Flor de azalea2. Tres palabras (d?o con Miguel Bos?)3. Amor gitano (con participaci?n especial de Az?car Moreno)4. No ha pasado nada5. Ahora resuelta (d?o con Armando Manzanero)6. Qu? sabes t?7. Ay cari?o8. Estoy perdida9. Por qu? negar10. A eso de las ocho (d?o con Iv?n Lins)11. Usted1991年リリース。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011.08.25
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スティングらしさが発揮された好盤 スティング(Sting)は、ソロ・アーティストになってからの方が断然面白い。この評価はリスナーによって分かれるところだろう。だから、決して押し付けるつもりはない。だけれども、筆者としては、断然ソロのスティングの方が面白い。個人的には、ポリスはポリスで好きだし、別にポリス時代を否定するわけでもない。また、ソロになってからのスティングに必ずしもファンがつきやすいともあんまり思っていなかったりもする。いずれにしても、演っている音楽にポリシーがあるのかないのかよくわからなかった人物が、ソロになったとたん、強烈な一貫性と自己の世界を持ち始めたという印象を抱いているのは筆者だけではないだろうと想像する。 そんなスティングのソロ作には好盤が多い。その中でも“寄せ集め盤”呼ばわりされ、過小評価を受けやすいのが、1993年の本作『テン・サマナーズ・テイルズ(Ten Summoner's Tales)』というアルバムである。ソロ作としては4枚目(ライブ盤『ブリング・オン・ザ・ナイト』を含めると5枚目、スペイン語やポルトガル語ヴァージョンの企画盤『ナーダ・コモ・エル・ソル』を含めると6枚目)に当たる。 アルバム表題の“サマナー”とは、スティングの本名(ゴードン・マシュー・トーマス・サムナー,Gordon Matthew Thomas Sumner)とチョーサーの『カンタベリー物語』の登場人物名をかけあわせてつけられたものだとのこと。“テン(10)”というのもこれまた意味不明で、当初のリリースでは、プロローグ(序章)/エピローグ(終章)と名付けられた2曲を含め全11曲。後のリリース(日本盤を含む)では、「エヴリバディ・ラフト・バット・ユー(Everybody Laughed But You)」という曲が9曲目として追加された(9.以降は10.以降にずれる)が、1.と11.を除き、当初お蔵入りだった曲を入れて「10」ということなのだろうか。それにしては、1.「ルーズ・マイ・フェイス・イン・ユー(Prologue (If I Ever Lose My Faith in You))」と11.「ナッシング・バウト・ミー(Epilogue (Nothing 'Bout Me))」は、イントロ/余韻的な曲ではなく、4分前後のちゃんとした曲だし…。 ともあれ、本盤が“寄せ集め”のように言われ、その前後作ほど統一感がないのは、ある程度は確かにそうかもしれない。しかしなお、スティング色で見事に染まった1枚だと思う。言い換えれば、スティングのやりたい音楽像が明確に見えているという意味において、“寄せ集め盤”という評価は正鵠を射ていないと思う。明るく行こうとしてもこの“陰”を湛えた感じに落ち着いてしまうところがスティングのソロ作の神髄であり、ポリス時代には絶対に明確に出てこなかった部分である。筆者としては、もっと評価されてしかるべき盤ではないのかなあ、と常々感じている。[収録曲]1. Prologue (If I Ever Lose My Faith In You)2. Love Is Stronger Than Justice (The Munificent Seven)3. Fields Of Gold4. Heavy Cloud No Rain5. She's Too Good For Me6. Seven Days7. Saint Augustine In Hell8. It's Probably Me9. Shape of My Heart 10. Something the Boy Said11. Epilogue (Nothing 'Bout Me)*当初のリリースでは含まれなかった曲が日本盤・後のリリースには含まれている(9. Everybody Laughed But You;この曲が含まれる場合、9.以下は1曲ずつずれて前12曲)。1993年リリース。 【メール便送料無料】スティングSting / Ten Summoner's Tales (輸入盤CD) (スティング) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2011.08.24
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2011.08.23
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80年代後半、実はヒットが必然だったデビュー作 リチャード・マークス(Richard Marx)はシカゴ出身のシンガーソングライター。アーティストとしてデビューする以前、早くから音楽活動をしており、17歳の時にはライオネル・リッチーのアルバム(『ライオネル・リッチー』)にも参加をしている。また、その少し後には、デヴィッド・フォスターと共に仕事をし、シカゴやフレディ・ジャクソンへの曲提供も行っていた。 そんな彼がソロ・シンガーとして満を持してデビューしたのは、1987年の本作『リチャード・マークス(Richard Marx)』であった。出身はシカゴだったものの、当時既に彼は活動の場をロサンゼルスに移しており、西海岸ロックらしさを前面に押し出してのデビューとなった。そんなわけで、本デビュー作の日本盤の帯にも、“遥かなるウェスト・コーストの夢、ふたたび……”という謳い文句がある。別に西海岸だからと言って、イーグルスのサウンドをまねているわけではないが、参加メンバーに西海岸色が強いのも確かである。ジョー・ウォルシュ、ティモシー・シュミット、ランディ・マイズナー(いずれもイーグルスのメンバーとして知られる)がゲスト参加している。 このデビュー作の特徴は、本人がソングライティングを全面的に行い(収録曲の半分が自作、残り半分は共作)、プロデュースにも携わった(デヴィッド・コールとの共同プロデュース)点にある。一般には、ただ新たなシンガーが出てきたように受け止められた節もあった。けれども、実際のところ、リチャード・マークスの本領は、アーティストたる部分(単なるシンガーではなく)をこの20歳代前半の時点で兼ね備えていたことにあった。 案の定、シングルは次々とヒットを飛ばし、アルバム自体も全米8位の売れ行きとなった。最初の2枚のシングル(2.「ドント・ミーン・ナッシング」と1.「シュドヴ・ノウン・ベター」)は全米チャートで3位のヒット、続く第3弾シングルの3.「エンドレス・サマー・ナイツ」は全米2位、そして4枚目のシングル・カットとなった5.「ホールド・オン・トゥ・ザ・ナイツ」は、ついにNo.1ヒットを記録した。 どの曲もキャッチーでなおかつしっかりと作り込まれていて、今から思えばヒットするのが当然のような出来だった。骨太でキャッチーながらも軽薄に聴こえさせない巧妙なロック・サウンドの作りに関しては、上述の共同プロデューサ、デヴィッド・コールに負う部分が大きい。この人物は、本格的な王道アメリカン・ロック作であるボブ・シーガーの『ライク・ア・ロック』をちょうど手掛けたばかりだった。コマーシャリズム上は、当時のリチャード・マークスは、ひょっこり出てきた“大型新人”として扱われていたかもしれないにせよ、実際には既にキャリアを重ねつつあったアーティストで、レコード会社としてもこれだけのヒットは計算済みだったのではないかという気さえする。 ついでに、ちょっとばかり幸せなエピソードを一つ。当時、リチャードは女優でシンガーのシンシア・ローズと付き合っていた。二人は1983年に出会ったそうだが、リチャードが7歳も年下ということもあり、その時は異性としての対象にもならなかったようだ。付き合い始めたのはその2年後にパーティで再会してからだったと言う。そして、付き合いが始まり、記念すべきリチャードのファースト・シングル(2.「ドント・ミーン・ナッシング」)のビデオにシンシアは出演した。そして、本盤発表の2年後、二人はめでたく結婚し、3人の子供に恵まれて現在に至る。[収録曲]1. Should've Known Better2. Don't Mean Nothing3. Endless Summer Nights4. Lonely Heart5. Hold On To The Nights6. Have Mercy7. Remember Manhattan8. The Flame Of Love9. Rhythm Of Life10. Heaven Only Knows1987年リリース。 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011.08.22
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80年代英国発HRの名作 デフ・レパード(Def Leppard)は、1970年代後半に形成され、1980年にレコード・デビューしたイギリスのハード・ロック・バンド。いわゆる“NWOBHM”(ニュー・ウェーヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルの頭文字)の旗手とされ、80年代~90年代前半に絶大な人気を誇り、同時期のHR/HMシーンを方向づけ、牽引した。主要メンバーの死去を含め、メンバーの入れ替わりはあるが、2000年代に入ってもコンスタントに活躍を続け、現在も活動を継続していて根強い人気を持つ。 彼らにとって、過去最大のヒット作となったのが、1987年リリースの本盤『ヒステリア(Hysteria)』である。UK、USともにチャート1位に輝き、セールス枚数でいうとアメリカだけで1300万枚も売り上げた。米国では、7曲ものシングルがカットされ、アルバムはトータルで3年間もチャートインした。現在とは違うCD普及率の時代において、60分を越える大作であった。CD時代になってからを考えればこの長さは普通だが、まだまだアナログ市場が中心だった当時の状況を考えると、1枚ものとしてはかなりヴォリュームのあるアルバムだった。 若々しくも自信と貫禄に満ちた1枚、というのが、筆者の正直な感想である。若々しいのだが、だからといって詰めの甘い部分がなく、しっかりと堅実に作り込まれている。デビュー以降のアルバムとしては4枚目で、彼らのキャリア上では、サード作の『炎のターゲット』(1983年発表)が大きなヒット(最高位全米2位)を記録した後の作品であった。大ヒット作の後の苦悩のようなものもあったのだろう。前作からこの4thアルバムが発表されるまでには4年の年月がかかっている。 全編を通して聴きごたえがあり、なおかつ曲ごとにも楽しめるというのが筆者の印象である。曲としてお勧めなのをいくつか挙げると、1.「ウィメン」はストレートでダイレクトなロックナンバー。4.「ラヴ・バイツ」は美しくまとまったHR系王道バラード。5.「シュガー・オン・ミー」は個人的にも特に好きな曲で、意図的にラフな感じに仕上げている感じがいい。7.「ゴッズ・オブ・ウォー」は、現代からすると80年代臭の強い感じはするものの、6分越えの大作で、音の広がりと映画のサントラ的演出が面白い。アルバム表題曲の10.「ヒステリア」と12.「ラヴ・アンド・アフェクション」は、聴き手にすんなり入ってくるメロディアスさが売りで、この頃のHRのよさの一つが如実に反映されている。 たまに思い出したようにしか聴かないアルバムではあるが、聴くたびに当時のHR/HMシーンの盛り上がりを懐古させられると同時に、何度聴いてもよく作り込まれた作品であることを再認識させられる1枚である。[収録曲]1. Women2. Rocket3. Animal4. Love Bites5. Pour Some Sugar On Me6. Armageddon It7. Gods Of War8. Don't Shoot Shotgun9. Run Riot10. Hysteria11. Excitable12. Love And Affection13. Love And Affection (Live) ←日本盤ボーナストラック1987年リリース。 ヒステリア/デフ・レパード[SHM-CD]【返品種別A】 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2011.08.20
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ブラス・ロックの先駆け以上の意味を持つロック界の胎動 ブラッド・スウェット&ティアーズ(Blood, Sweat & Tears、略してBST)は、アル・クーパーを中心に作られた“ブラス・ロック”の先駆的バンドとして知られる。1967年に結成され、1968年にレコード・デビュー。そのデビュー盤がこの『子供は人類の父である(Child Is Father To The Man)』である。 “ブラス・ロック”(管楽器を大幅に取り入れたロック)という小難しそうな名称、“血と汗と涙”なる重たい印象のバンド名、その上、なんだか壮大で仰々しいアルバム・タイトル…。今の時代の感覚からすれば、手を伸ばしにくいアルバムに映るかもしれない。確かに、従来のロックの枠からははみ出した楽器編成で、トランペット、フリューゲルホルン、トロンボーンといったメンバー自身の演奏のほか、バイオリン、チェロなどメンバー以外も異色楽器編成がクレジットには名を連ねている。そういう部分だけに目を向けると、ロックの中の細分化された一分野の名作と捉えられてしまうそうだが、実際にアルバムを聴いていて、個人的にはどうもそういう風には感じられない。もっと大きな何かがこのアルバムには潜んでいる気がしてならない。そのわけは、アル・クーパー(Al Kooper)というキーパーソンにあり、それゆえ、このバンドの2枚目(アルは1枚目にしか参加していない)以降とは趣を異にする。 本アルバム1枚への参加のみでBSTを捨てたアル・クーパーは、同じ年(1968年)に別のプロジェクトを企画している。マイク・ブルームフィールド、スティーヴン・スティルスと組んだ『スーパーセッション』である。同盤(さらにはその続編である『フィルモアの奇蹟』)はブルース・ロックの歴史の上でも外せない名盤である。 思えばアル・クーパーは1965年にはボブ・ディランがエレクトリックへ移行する際、かの「ライク・ア・ローリング・ストーン」でオルガンの名プレイを残した人物である。その時からこのアルバムが出た前後(さらにはその後しばらくも)、彼はロック界の大きな胎動の渦の一つだったと言えるだろう。そういう観点から、BSTのこの『子供は人類の父である』を聴くと、ブラス・ロックという名称に縛られて聴くのとは全然違う世界が見えてくるようにも思う。[収録曲]1. Overture2. I Love You More Than You'll Ever Know3. Morning Glory4. My Days Are Numbered5. Without Her6. Just One Smile7. I Can't Quit Her8. Meagan's Gypsy Eyes9. Somethin' Goin' On10. House in the Country11. The Modern Adventures of Plato, Diogenes and Freud12. So Much Love/Underture1968年リリース。 【送料無料】子供は人類の父である/ブラッド・スウェット&ティアーズ[Blu-specCD2]【返品種別A】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011.08.18
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デビュー後いきなり“ウィズ・ストリングス”は大物ゆえ? ジャズで“ウィズ・ストリングスもの”というのがある。要するに、弦楽オーケストラをバックにサックスやトランペットといった管楽器がソロ演奏を繰り広げるというスタイルのもので、チャーリー・パーカー(『エイプリル・イン・パリ~チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』)や、クリフォード・ブラウン(『クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス』)なんかのアルバムがよく知られている。 一般論的に言うと、“ウィズ・ストリングスもの”は甘い。よく言えば上品で甘美ということになるのだろうが、基本的には、ソロイストがバラード系などを情感豊かに吹きあげるといった風情のものが中心で、ハード・バップに期待されるような緊張感や緊迫感といったものが見えにくい(あるいは、実際それが全くなかったりすることもある)。だから好き嫌いが分かれるのも当然と言えば当然である。 でもって筆者はというと、これがまた結構好きなのである。とりわけ、ジュリアン・キャノンボール・アダレイ(Julian Cannonball Adderley)のように、伸び伸び吹くタイプのアルトでこれをやられるとたまらなくよい。 キャノンボールは1928年生まれだが、当初は出身のフロリダ近辺で活動しており、ニューヨークにでてきたのは1955年のことだった。この年、ニューヨークのライブに飛び入り参加してから、一気に注目を浴びた。ちょうどチャーリー・パーカーの死と入れ替わるようなタイミングでの登場だったこともあり、同年の夏から次々とレコーディングを行う。そのうちの1枚がこの『キャノンボール・アダレイ・ウィズ・ストリングス(Julian “Cannonball” Adderley and Strings)』であった。キャノンボールの最初のリーダー作はサヴォイに残されている(『プレゼンティング・キャノンボール』)が、その後はエマーシーでの作品発表となった。本盤はエマーシーでの2枚目に当たり、いわばデビュー3枚目で既にウィズ・ストリングスものを披露する機会を得たということになる。ジャズ奏者にとって一度はストリングスものをやって見るのは夢だなどと言われるが、これが事実であるならば、キャノンボールはニューヨークのシーンへの登場と共にあっという間にその夢を叶えてしまったことになる。 キャノンボールのサックスは、ファンキーなイメージが強いという人もいるかもしれない。けれども、個人的にはこちらの伸び伸びとした演奏の方が好みで、実際、彼のよさの本質はこちら側の演奏にあるのではないかとすら思っている。2~3分台の歌もの的サックス演奏が12曲。編曲・指揮はハーモニカ奏者でもあるリチャード・ヘイマンで、ストリングスのメンバーは不明。無理に上品ぶって聴かなくとも、ただシンプルにキャノンボールの大らかな演奏に耳を傾けるだけで十分に楽しみ甲斐のあるアルバムだと思う。[収録曲]1. I Cover the Waterfront2. A Foggy Day3. The Surrey With the Fringe on Top4. Two Sleepy People5. I'll Never Stop Loving You6. (I'm Afraid) The Masquerade Is Over7. I've Never Been in Love Before8. Lonely Dreams9. Falling in Love With Love10. Street of Dreams11. Polka Dots and Moonbeams12. You Are Too Beautiful[録音・パーソネル]1955年10月27日(9.~12.)、10月28日(1.~8.)Cannonball Adderley (as)Richard Hayman (arr, cond)Strings Unidentified 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011.08.16
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2011.08.16
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暑い日が続くので、何か夏らしい曲を… それにしても、暑い日が続きますね。こんな時は涼しい音楽を聴いて気分だけでも涼むのも一興ですが、今回はその逆を行って、敢えて“夏らしい曲”でも聴いてみましょうか…。 というわけで、今回はド定番の夏の代表曲を取り上げてみたい。 ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)は1961年に結成された米国のロック・バンド。結成から今年で半世紀だが、形式上は未だ解散していないが、オリジナルメンバー5人のうち2人は既に故人で、中心メンバーだったブライアン・ウィルソンも個人で活動している。 そんなビーチ・ボーイズにとって最初の本格的ヒットとなったシングル曲がこの「サーフィン・U.S.A.(Surfin’ USA)」である。1963年初頭に録音され(ってことは、この夏らしい曲のレコーディングは冬場に行われたことになる)、同年3月初めにシングル発売。同月末にはこの曲を含むアルバム(『サーフィン・U.S.A.』)もリリースされた。シングル曲としては全米3位となり、同名のアルバムもチャート2位に入って、ビーチ・ボーイズのブレークとなった。 有名な話ではあるのだが、この「サーフィン・U.S.A.」という曲は、実は“パクリ”である。いや、この言い方がよろしくないなら、“替え歌”と言ってもよい。原曲は、チャック・ベリー(ロックの元祖として有名で、現在も84歳で現役続行中)の「スウィート・リトル・シックスティーン」である。実際、「サーフィン・U.S.A.」の発表後にチャック・ベリーは訴えを起こし、結果として、この曲の共作者としてクレジットされることに落ち着いた。 “替え歌”にせよ、それを“パクリ”と呼ぶにせよ、真にオリジナルとは言い難いこの曲が、何ゆえにそれほど人々に受け入れられ、50年近く経過した今でも夏になったら聞こえてくるような定番曲となったのだろうか。その答えは、ブライアン・ウィルソンの才能に尽きると思う。独創的アレンジ、コーラスを重ねて入れた工夫、そして、短い曲の中にサーフィン・サウンド的要素をうまく詰め込んでいる。“オリジナルじゃないからよくない”といった本質論は、少なくともこの曲には通用しない。ブライアン・ウィルソンと言えば、これよりも何年か後の『ペットサウンズ』(1966年)や、一度は制作を途中で断念してお蔵入りになりながらも37年後に完成させた『スマイル』(2004年)などの芸術性が評価される。けれども、その芸術性の片鱗は、実は早々にこの曲で示されていたと言えるのではないかと思う。[収録アルバム]The Beach Boys / Surfin’ USA (1963年)その他、各種編集盤にも収録。 ↓せっかくなので、同名アルバムのジャケ写真も載っけておきます。いかにも“サーフィン”なジャケットで気分だけでも涼んでください(笑)。↓ ビーチ・ボーイズ/サーフィンUSA 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011.08.14
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2011.08.13
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70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その3~ “ついでにもう1曲”的な取り上げ方をするのも何だけれども、「朝もやの二人」と同じアルバム(『シカゴXI』)からシングル・カットされた別のナンバーを、第3回(最終回)として取り上げておきたい。「シカゴへ帰りたい(Take Me Back To Chicago)」という曲である。邦題では“帰りたい”という主体的な訳語がとられているが、原題は“私を連れて帰って(take me back)”という半ば受動的な表現。まあどっちでもいいような気がする細かな話だけれど、以前からの素朴な疑問だったりする。 さて、この曲は、今回取り上げた70年代後半のシカゴの3曲のうちでは、いちばんマイナーな曲であろう。シングル曲としては63位と、さほど振るわなかった。けれども、こだわりをもって言えば、今回取り上げた3曲中では、これら一連の記事でもっとも強調したかったよさを発揮しているようすら思える1曲である。つまりは、バラード系だけれども“甘過ぎない”、仰々しさよりは“素朴さ”が強い、70年代のシカゴのバラードの特徴がよく表れた曲だと思う。 同列に連載シリーズで取り上げたとはいえ、実はこの曲は若干系統が違う。この曲の作者は、シカゴのオリジナル・メンバー(ドラム)のダニー・セラフィンであって、いわゆる“ピーター・セテラのバラード路線”というわけではない。この辺は、バンドが過渡期にあったということもあり、それゆえ、この曲が収められたアルバム(『シカゴXI』)は、統一感のない“寄せ集めアルバム”みたいな評価もなされる。 実際、シカゴのバンドとしての歴史を見ても、この時期は一つの区切りであった。『シカゴIX』はベスト盤でそれまでの活動の一つの総括であった。次いで「愛ある別れ」を含む『シカゴX』の発表。さらに、『シカゴXI』はデビュー時からシカゴを牽引してきたテリー・キャス(78年1月にピストル誤発射で死亡)が参加する最後の作品となった。メンバーそれぞれが新たな個性を発揮し始め、それゆえ、『XI』は“寄せ集め”盤的な評価が下されることもある。そんな状況だったからこそ、“甘さ”一辺倒の大仰なバラード路線(繰り返すが、筆者はこれもまた好きである)とは違う、デビュー以来のブラス・バンド路線から抜け出せず、なおかつどこかのどかな雰囲気を湛えたスロウ曲・バラード曲がこの時期に残されたということだろうか。[収録アルバム]Chicago / Chicago XI (1977年)その他、ベスト盤類にも収録。[関連過去記事リンク]70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その1~ へ70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その2~ へ 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2011.08.11
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70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その2~ 70年代のシカゴという、固定ファンのあまり多くなさそうな(?)中途半端な時期をテーマとしてみたが、この2回目で取り上げるのは、1977年のアルバム『シカゴXI(Chicago XI)』に収められたバラード曲である。邦語タイトルは「朝もやの二人」。原語では「ベイビー、何という驚き(Baby, What A Big Surprise)」(こんなわけわからないタイトルでは人を惹きつけられないので、「朝もやの二人」はどちらかと言えば成功した邦題のつけ方かと思う)。 さて、この「朝もやの二人」が、前作からのシングルヒットを受けて同じ路線を目指したものであったことは、時系列に見れば明らかである。つまり、「愛ある別れ」を出してみて見事にヒット(チャート1位にグラミー賞の大ヒット)し、シカゴとしては“これから生き残っていく道”として、この路線があることを認識したに違いない。では、この曲は単なる二番煎じだったのかというと、案外そうでもないような気がする。ちなみに、セールス面だけをみると、この“二匹目のドジョウ”は、一匹目を越えることはなかったが、それなりに十分成功を収めた。「愛ある別れ」が成し遂げた1位のヒットには及ばなかったものの、全米チャートでは4位のヒットを記録している。 “どこかのどかなバラード”という印象は、筆者の中では、「愛ある別れ」よりも強い。バラード的と言っても、80年代の「素直になれなくて」(『ラヴ・ミー・トゥモロウ』に収録)以降のバラード路線で急速に増していった仰々しさはない(その一例としては、過去記事の「スティル・ラブ・ミー」)。無論、80年代シカゴのバラードが悪いと言っているわけではないし、それはそれで筆者も思い入れのある曲が存在する。けれども、“素朴さ”と言い換えてもいいであろうこののどかで牧歌的な部分は、70年代後半のシカゴのバラードにしか見いだせず、とりわけこの曲ではその真髄がしっかり発揮されているように思える。 余談ながら、前述(「愛ある別れ」を参照)のピーター・セテラのアルバムにも同様に再録ヴァージョンが収められている。歌っているセテラ本人はどう思っているのかは知らないが、一人のリスナーとしての個人的な好みの意見を言わせていただくと、やはり元のヴァージョンにはかなわない。[収録アルバム]Chicago / Chicago XI (1977年)その他、ベスト盤類にも収録。[関連記事リンク]70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その1~ へ70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その3~ へ 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011.08.10
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70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その1~ シカゴの名バラードと言えば、最初にこの曲が思い浮かぶ人も多いであろうほどの有名曲が、この「愛ある別れ(If You Leave Me)」である。デビュー以来、政治志向を取り込むなど硬派なブラス・ロックを展開してきたシカゴにとって、この方向性はある種の転機で、80年代以降の甘口バラード路線の布石ともなった。1969年にデビューしてから21世紀の今まで、シカゴというバンドが実に40年以上のキャリアを誇るわけだが、シカゴの大きな転機はいつだったかと問われれば、明らかにそれは80年代にあったと思う。けれども、今になってから時系列で見ていくと、その転機を迎えるきっかけは70年代にあった。今回取り上げるバラードたちはちょうどその時期の作品ということである。 デビュー当初のシカゴは政治的なテーマも積極的に取り上げ、サウンド面では“これこそブラス・ロックだ”と誇示するかのような豪快なサウンドを展開した。その意味では、確かに70年代後半に入って、バラード調の曲をシングルとして出してきたのはある種の変化だった。けれども、80年代に入ってさらに変化していった彼らの音や趣向を考えると、この時期のシカゴのバラードは、良くも悪くもデビュー以来このバンドが築き上げてきた遺産を脱しきれていなかった。 印象の問題でうまく言葉にはできないのだけれど、バラードなのに“甘くない”、あるいは“甘さが過ぎない”というのが特徴と言ってもいいのかもしれない。どこかにブラス・ロック然とした垢ぬけない部分がある。こんな言い方をすると“貶しているのか”とファンの方からは叱られそうだが、決して悪い意味で言っているのではない。甘々になり過ぎないところでとどまり、どこか垢ぬけていない部分を残しているこの雰囲気こそが、実に味わい深いと言いたいのである。 いずれにしても、この方向転換はセールス的には大成功を収めた。全米チャートで2週連続1位を獲得し、バンド初のナンバー・ワン・ヒットとなったばかりか、グラミーも受賞した。 この曲が収められているのは、1976年発表のアルバム『シカゴX(カリブの旋風)』。また、後々のコンピレーション盤でも繰り返し収録されている。ちなみに、大ヒットだけあって、後々さまざまなカヴァー・ヴァージョンが生まれた。そうしたカヴァーの中には、ピーター・セテラ自身がカヴァーしたもの(1997年『愛ある別れ~ピーター・セテラ・ベスト・コレクション(You’re The Inspiration: A Collection)』に収録)もある。[収録アルバム]Chicago / Chicago X (1976年)その他、ベスト盤類にも収録。[関連記事リンク]70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その2~ へ70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その3~ へ 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011.08.09
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ライブで発揮される実力 正確には“オリヴァー・ネルソンのビッグ・バンド”(Oliver Nelson’s Big Band)という名義で出されたライブ録音盤。1967年6月にロサンゼルスの“マーティーズ”というライブハウスでの3日間の演奏からピックアップされたナンバーが収録されている。そもそも、60年代後半のこの時期になって、もはやビッグ・バンドという形式が商業的に成り立ちにくくなってしまっていたであろうこの時期に、こういう盤が吹き込まれた理由というのを少し考えてみたい。 そもそもオリヴァー・ネルソンが編曲家として実力を発揮するようになったのは、1961年に『ブルースの真実』を吹き込んでからであった。その翌年、ジミー・スミスの作品(ヴァーヴでの最初のアルバム)のアレンジを手掛け、彼は編曲家としての名声を得た。その後もニューヨークを拠点に活動していたが、ジャズに携わる一方で、テレビCMや映画音楽なども手掛けていた。そんな中、本盤を吹き込んだ年(1967年)の初頭、彼はロサンゼルスに居を移し、心機一転の生活を始めていた。本盤の収録場所がロスのジャズ・クラブというのは、こういう事情があったようだ。 本盤を聴きながら思うのは、何よりも、このオリヴァー・ネルソンという人のアレンジ力が本当に見事だという点である。そのことは、彼が編曲を担当した他の盤からも見て取れるわけだけれど、この『ライヴ・フロム・ロサンジェルス』が凄いのは、文字どおりライブ録音盤であるという点にあるような気がする。 当然、ライブだから、スタジオでのようにやり直し(何度も録り直す行為)がきかない。もちろん3日間のライブの中でベスト演奏をピックアップしているので、それなりに選ばれてはいるのだろう。また、録音が行われたロサンゼルスの“マーティーズ”での演奏は、実際にはこの3日間だけでなく1週間だったという。なので、実況録音という観点からすれば、それまでに4日間は公演しながら息をあわせ、完成度を高める機会はあったわけだ。そうは言っても、ライブの場でこれだけの構成力と統率力が発揮されているというのは恐れ入る。 当時の彼は、ジャズに限らずいろいろな音楽を好んで聴き、ポップヤクラシック、あるいは今で言うワールド・ミュージックなども分け隔てなく聴いていたらしい。つまり、聴き手としてのトータルな力がそのまま仕事に反映され、本盤の編曲、本演奏のまとまりに結びついているように思える。その編曲具合はと言えば、ある意味では実にキャッチー(もちろん悪い意味ではなく)で、聴衆のハートをつかむのがうまい。単なるビッグ・バンドというだけならなかなか人を振り返らせることがなくとも、これだけ聴き手の支持を得られるようなビッグ・バンドなら話は別だったのだろう。ライブの臨場感を楽しむというのがライブ録音盤の真髄なのかもしれないが、この盤にはそれに加えてネルソンの編曲のよさとバンドのまとまりがある。ふつうは後者が強いと前者が弱まるものだけれど、この盤はライブ感が失われないままそうした特徴が生かされている。その点において、傑出した出来の盤と言える。[収録曲]1. Miss Fine2. Milestones3. I Remember Bird4. Night Train5. Guitar Blues6. Down by the Riverside7. Ja-Da[パーソネル、録音]Oliver Nelson (ss, arr, cond)Buddy Childers, Bobby Bryant, Freddy Hill, Conte Candoli (tp)Billy Byers, Pete Myers, Lou Blackburn, Ernie Tack (tb)Gabe Baltazar, Tom Scott, Bill Perkins, Jack Nimitz, Frank Strozier (reed)Frank Strazzori (p)Monte Budwig (b)Mel Brown (g)Ed Thigpen (ds)1967年6月2、3、4日録音。 【送料無料】【輸入盤】Live From Los Angeles (24bit)(Rmt) [ Oliver Nelson ] 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011.08.07
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表題に羊頭狗肉の部分こそあれど、名演であること間違いなし ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)は1931年ジャマイカ出身でアメリカで活躍したジャズ・ピアニスト。マイルス・デイヴィスなど多くの有名ジャズメンと共演する一方、ソロ作も録音していったが、39歳で早世した。“もっともスイングしているジャズ・ピアニスト”と評さることもあり、派手さはないが実に安定した質の高い演奏を残している。 他方、ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)はインディアナ出身のジャズ・ギタリスト。親指ピッキングでのソロとオクターブ奏法が特徴で、現代ジャズ・ギターの基盤を作った。『フルハウス』(1962年)や『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』(1967年)といった代表盤で知られるが、1968年に心臓発作で亡くなっている。 本盤『ハーフノートのウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリー(Smokin’ At The Half Note)』はこれら二人の共演盤で、ウィントン・ケリーのトリオ(ベースはポール・チェンバース、ドラムはジミー・コブ)が、ウェス・モンゴメリーを迎えて4人編成で吹き込んだもの。アルバムの表題には“ハーフノート”という、場所を示す語句(したがってこのジャズクラブでのライブ盤を想像させる)があるのだけれども、これについてはやや羊頭狗肉っぽい。というのも、ハーフノートでのライブ演奏は1.と2.だけで、残る3曲はニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオで録音されている。つまり、LP盤で言うと、A面はライブ、B面はスタジオであり、アルバム表題の半分は正しいが、もう半分は誤解を招くといったところか。 そんなわけで、1.~2.と3.~5.は少し別の内容として受け止めた方がよい。前半のライブ演奏の躍動感は確かに素晴らしく、ここが本盤の聴きどころとして世間ではよく評価されているようだ。マイルス作の1.「ノー・ブルース」はその躍動感と観客との一体感が満開。バラード曲の2.「イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ」では、観客を引き込んで次第に盛り上げつつある演奏を披露している。 その一方で、忘れ去られてはならないのが後半の演奏。筆者はこちらの方も(いやむしろ“こちらの方が”と言ってもいいぐらい)大好きである。3.~5.の3曲は、一転して緊張感あふれる精緻な作りになっている。3.「ユニット・セヴン」のウェスのソロは見事だし、4.「フォー・オン・シックス」のタイトな盛り上がりは何とも言えない筆者好みの雰囲気。スタンダード曲の5.「ホワッツ・ニュー」は意図的に抑えた空気の中で演奏を繰り広げ、ケリーのタッチも素晴らしい。落ち着いて聴きこむという点では、この後半の方が断然よいのではないかとすら思えてくる。 最後に余談ながら、素朴な疑問を一つ。それにしても、なぜ日本盤ではアルバム名義の名前が逆になっているのだろう。元の英語表記はウィントン・ケリー(正確にはそのトリオ)が先に来て、ウェス・モンゴメリ―の名は後ろに加えられている。ところが、邦盤では『ハーフノートのウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリー』という題名。ウェスの名を前に出した方が売れるとでも思ったのであろうか。でも、本盤の真髄はウィントン・ケリー・トリオにウェスがどうかぶさるかの緊張感にあるわけで、あくまでウェス個人が主役になっているわけではない。ひたすらウェスを楽しみたい向きには、ウェス個人の名義の盤を勧める。でも、ウェスの演奏がこういう環境のもとでどれほど緊迫感を持って見事なものになるかは、特に後半の名演から窺い知れ、聴き逃せない名演である。 ちなみに、同じジャケット・デザインで色違いの続編(赤色のジャケの『Vol. 2』)もある。本盤は青色ジャケ方なのでお間違えなく。[収録曲]1. No Blues2. If You Could See Me Now3. Unit 74. Four on Six5. What's New[パーソネル・録音]Wes Montgomery (g)Wynton Kelly (p)Paul Chambers (b)Jimmy Cobb (ds)1965年6月(1., 2.)、1965年9月22日(3.~5.) 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011.08.06
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2011.08.04
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代表作ではないが一聴に値する実験盤 トッド・ラングレン(Todd Rundgren)は、何かとマニアックな人である(過去記事『ミンク・ホロウの世捨て人』参照)。マニアックといっても、別に悪い意味で言っているわけではないのだが、ふつうの人間なら嫌になったり、気が遠くなったりするような作業もきっと楽しんでやってのける、そういうタイプの人なのだろう。そして、そんな彼のマニア度が、ある意味存分に発揮された1枚がこの異色盤『ア・カペラ(A Capella)』(1985年)である。 さて、この盤の特徴であるが、このアルバムでは実は楽器が使用されていない。要するに、トッド自身から発せられる音(声)を組み合わせてアルバム全体が出来上がっているのである。21世紀を迎えた現在では、声をサンプリングして音楽に組み立てていくという手法はさして珍しいことではない。しかし、この盤がリリースされた1980年代半ばにおいては、事情はまったく違っていた。70年代に開発が進み、ようやく80年代初頭に実用化されたエミュレータ(E-mu)という機械の技術を取り入れての革新的・前衛的・実験的レコーディングであった。冒頭でふれた“マニア”なトッド・ラングレンという話題からすると、こうした実験的な音づくりを、ふつうの人なら気の遠くなりそうな作業をおそらくは黙々と取り組むことによってようやくできあがったのだろう。 そのようなわけで、タイトルの『ア・カペラ』というのは、コーラス隊みたいなのがいて“ドゥー・ワップ”とやっているのを想像する方も多いかもしれないが、そうではない。念のためにはっきり言っておくが、そういう伝統的“アカペラ”のイメージとは、本盤は全く異なる。少々単純化することを承知で言ってしまえば、いつものトッドのような楽曲を、楽器に代わって上記の技術でやってのけたというサウンドである。なので、曲によっては声で演奏ができあがっているようには思えないものすらある(ただしちゃんと聴けばそれが声であることもすぐわかる)。 こういう盤なので、トッド・ラングレンを初めて聴いてみよう、などという人には間違っても薦められたものではない。けれども、何枚かのトッド盤を聴いたことがあり、マニアックな変わったアーティストであるとの感想を持ち始めた人には、試しに聴いてみる価値が十分にある盤だと思う。相変わらず、ソング・ライティングの実力の発揮度は折り紙つき。筆者の好みとしていくつか曲を挙げると、3.「プリテンディング・トゥ・ケア」は相変わらずのバラードの実力が存分に発揮されたナンバー。5.「失われた地平線」や6.「サムシング・トゥ・フォール・バック・オン」、8.「ロック・ジョウ」など、それぞれタイプの違う曲を並べて聴いていると、アカペラ企画というのを思わず忘れて聴けてしまう。その意味では、実に“音の魔術師”らしいアルバムということになる。ありきたりな結論だけれども、やはりソングライティングの段階からしてレベルが高いからこそ、音作りの面での実験性が単なる実験にならず、聴く価値のある“演奏”としての質を提供することになっている、ということだろうか。[収録曲]1. Blue Orpheus2. Johnee Jingo3. Pretending to Care4. Hodja5. Lost Horizon6. Something to Fall Back On7. Miracle in the Bazaar8. Lockjaw9. Honest Work10. Mighty Love1985年リリース。 【中古】洋楽CD トッド・ラングレン / ア・カペラ(廃盤) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011.08.03
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レインボーの最高作は決めかねるが、個人的に最も聴いているのはこれ レインボー(Rainbow)の最高作はどれか? 実に難しい問いである。ファンの間でもこの点は意見が分かれ、まとまりにくいところのようだ。一般向けには後期のキャッチーなのもいいが、熱心なファンの好みという点からすると、初期のバロック様式美志向の諸作を推す人も多いだろうか。 単純に作風が変わっただけというのも難しい。というのも、レインボーは、実質的には、ギタリストであるリッチー・ブラックモアのソロ・バンド・プロジェクト的な性格があり、バンドのメンバー変遷が激しい。それゆえ、メンバー変更による演奏や志向の変遷も聴き手の好みに大きく影響する。これぞ1枚というのを選ぶ際、コージー・パウエル(ドラム、1975~80年)の参加盤か否かは大きな要素になり得る。さらにボーカルが誰なのかも問題で、主にロニー・ジェームス・ディオ(1975~78年)派と、ジョー・リン・ターナー(1980~84年)派にファンは二分される(ちなみにボーカルだけで言えば、筆者の好みは明らかにジョー・リン・ターナーである)。 ともあれ、そんなことを考え始めると、結局のところ、筆者もどのアルバムをレインボーの“この1枚”に選んでいいか分からない。けれども、自分の中ではっきりしているのは、この『バビロンの城門(Long Live Rock’n’Roll)』を回数としてはいちばんよく聴いてきたということだ(ちなみに本盤の次によく聴くのは『ダウン・トゥ・アース』である)。つまり、回数だけで単純に決めてしまうのならば、筆者にとってのベストはこの『バビロンの城門(Long Live Rock’n’Roll)』ということになるだろうか。 1.「ロング・リヴ・ロックン・ロール」がノリノリの名曲で、勢いで聴かせるナンバー。けれども、アルバム全体としては、決してノリと勢いで押しまくると言えるほど単純な作りなわけではない。途中(といっても、もともとのLPではA面最後なので一区切りな配置なのだけれど)、4.「バビロンの城門(ゲーツ・オブ・バビロン)」という大作志向の曲もある。しかも最後の8.「レインボー・アイズ」が何とも抒情的な長尺。そう考えると実に起伏に富んでよくできたアルバム構成だと思う。[収録曲]1. Long Live Rock 'n' Roll2. Lady of the Lake3. L.A. Connection4. Gates of Babylon5. Kill the King6. The Shed (Subtle)7. Sensitive to Light8. Rainbow Eyes1978年リリース。 Rainbow レインボー / Long Live Rock N Roll: バビロンの城門 【SHM-CD】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011.08.01
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