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このところ、アメリカでは回顧録が流行っている。ジョージ・W・ブッシュ前大統領も11月9日に本を出すようだが、その中で2001年9月11日の一件に触れられているとイギリスのガーディアン紙は伝えている。ブッシュ前大統領は当初、自分の撃墜命令でユナイテッド航空93便が撃ち落とされたと思い込んだというのである。 当日の午前8時46分にアメリカン航空11便が世界貿易センターのノースタワーに、また9時3分にユナイテッド航空175便がサウスタワーに激突したとされている。ユナイテッド航空93便が41分遅れでニュージャージー州のニューアーク空港を離陸したのは、激突直前の8時42分。この頃、NORAD(北米航空宇宙防衛軍)は軍事演習「ノーザン・ビジャランス(北の警戒)」を実施中だったが、FAAからハイジャック事件が発生したことが知らされ、9時ころに演習は中断されたという。勿論、レーダー画面に偽のブリップ(光点)が残っていた可能性も否定できない。 その後、93便はハイジャックされたことになっているが、この便の乗客だけは、なぜか外部の人間に携帯電話で盛んに連絡している。10時過ぎに2機のF-16戦闘機が追跡していたという報道もあった。そして10時6分、ペンシルベニア州で航空機は墜落しているのだが、その時、小型で白いリア・エンジンのマークが識別できないジェット機を目撃したという複数の証言がある。また「墜落場所」にはクレーターがあり、その中に黒こげの小さな部品はあったものの、乗客のスーツケースも、機体の残骸も、そして遺体も見あたらず、がらくたの山しかなかったという。こうした状況のため、93便はそこで墜落したわけでも、また撃墜されたわけでもないと信じている人が少なくない。
2010.10.31
アメリカの中間選挙で「気候変動」が争点のひとつになっている。言うまでもなく、共和党には表だって「温室効果ガス」の排出規制に賛成する候補者は見あたらず、民主党も積極的だとは言えないが。争点というより、アピール合戦というべきなのかもしれない。 民主党のビル・クリントン政権時代、アメリカは規制に賛成する条件として「温室効果ガス」の「排出取引制度」を導入するように強く求め、1997年12月に議決された「京都議定書」にもこの取り引きは盛り込まれている。新たな投機市場の創設が目的だったと見られても仕方がない。 しかし、2001年1月に共和党のジョージ・W・ブッシュが大統領に就任すると京都議定書を完全に拒否してしまう。アメリカが離脱したことから、日本の大企業は京都議定書の取り決めは御破算になったと早合点したようだ。そこで、日本の二酸化炭素排出量は減るどころか増え続けた。 状況が大きく変化したのは2004年11月。ロシアが議定書を批准したのである。その結果、2005年2月に発効したのだが、予想外の展開に日本の財界が慌てたことは想像に難くない。アメリカと違い、京都議定書を議決した第3回気候変動枠組条約締結国会議の議長国だった日本としては離脱できない。その余波はいまだに収まっていない。 ともかく、「温室効果ガス」の排出規制は決まったのだが、ここで登場してくるのが原子力発電。「温室効果ガス」を出さないというのだが、燃料の製造から核廃棄物の処理、保管までを考えると大量の「温室効果ガス」を排出することは間違いない。 これまで人間は森林を伐採し、海を汚染し、少なからぬ動植物を絶滅させ、あたかも地球の支配者であるかのように振る舞ってきた。「温室効果ガス」、例えば二酸化炭素を排出しているだけが問題なのではない。二酸化炭素から酸素を作り出してきた光合成の力を人間が弱めてきたことも間違いない。また、大量の地下水をくみ上げ、水脈を断つだけでなく、地表をコンクリートで固めて雨が地下に染みこめないようにしている。自然のバランスを破壊し続けているわけだ。いつまで地球が耐えられるか・・・。 さて、現在、アメリカで「気候変動」への取り組みを拒否する急先鋒はティー・パーティーと呼ばれている集団である。「保守系の草の根運動」なのだというが、主張の根幹はジョージ・W・ブッシュ政権と同じ。つまり、大企業の利益を第一に考えている。 支持者の中心は「白人中産階級」だというが、キリスト教原理主義、つまりキリスト教系カルトと深く結びついている。このティー・パーティーに多額の資金を提供しているのが気候変動対策に反対するヨーロッパ系の大企業、例えば巨大石油企業のBP、総合化学会社のBASF、バイエル、ソルベイ、あるいはラファルジュ、GDFスエズなどが含まれている。「アメリカ頼み」という状況なのだろう。またテキサスの石油企業であるバレロ、テソロなども規制に反対して資金を提供している。 ちなみに、1990年代に入る頃からイヌイットは北極圏の氷が解けていると証言していた。極北地方で狩猟、漁撈、動植物の分布にも変化が生じているようだ。海氷の面積が減少していることも確認されている。今のところ、そうした状況に変化の兆しは見られない。
2010.10.30
世界の権力構造に変化の兆しが見える。イギリスのインディペンデント紙によると、アフガニスタンでの戦争から抜け出せずに苦しんでいるアメリカ/NATOがロシアに助けを求め、ロシアは応じたようだ。 アフガニスタン向けとしてロシアは軍用ヘリMi-17をすでにポーランドへ5機提供、今年中に2機は配備され、最終的にNATOは数十機のMi-17を購入する予定だという。ロシアの施設でアフガニスタンの将校が訓練を受けているともされている。 ロシア側の協力に対し、アメリカ政府はポーランドやチェコのミサイル防衛システムを断念、ロシアはさらにグルジアの現状を追認するように求める意向のようだ。合意内容は来月、リスボンで発表されると見られている。グルジアにはイスラエルが食い込んでいるため、パレスチナ問題にも影響が出るかもしれない。
2010.10.27
アメリカの権力グループ、特にジョージ・W・ブッシュ政権の関係者はWikiLeaksの活動に対する苛立ちを隠せなくなっている。そうしたひとりが前政権で「国務省北朝鮮人権担当次席特使」を務めていたクリスチャン・ウィトン。WikiLeaksのジュリアン・アッサンジや仲間を「敵戦闘員」として超法規的手段で攻撃すべきであり、サイバー攻撃を仕掛けるだけでなく、アッサンジをグアンタナモの収容所へ送り込み、サイトや支援者の資産を凍結しろ等と10月25日にフォクス・ニュースで主張している。 現在、アメリカのメディアはWikiLeaksと対立する姿勢を強め、アッサンジに対する人格攻撃を始めているが、それに対してアッサンジは25日、ダニエル・エルズバーグ(国防総省系のシンクタンク、RANDコーポレーションの元研究員で、研究員時代にはベトナム戦争に関する機密報告書の作成に参加、後にこの文書を公開した)とともにニューヨーク・タイムズ紙の姿勢を非難している。かつて、エルズバーグが公表した機密文書を同紙は掲載しているのだが、その際、重要な部分を削除していたと批判する人もいる。 アメリカの権力グループの反応を見ていると、外部で感じている以上に彼らは公表された機密文書でダメージを受けているのか、WikiLeaksの存在に恐怖しているようだ。
2010.10.27
WikiLeaksによる機密文書公表を受け、イスラエルの国会議員、ミハイル・ベンアリは国連事務総長に対し、アメリカによる戦争犯罪を調査するように求める書簡を送った。同議員はイスラエルの「最右翼政党」と言われている国家統一党(複数の政党が参加した政党連合)のメンバーで、アメリカとは対立関係にある。この人物、ガザ侵攻などに賛成する立場のようだが、その侵攻作戦を調査したリチャード・ゴールドストーンを調査の責任者に据えるよう示唆しているのだという。 自分たちの虐殺と破壊が戦争犯罪だと指摘されたことの腹いせでゴールドストーンの名前が浮上したのかもしれないが、そうしたベンアリの動機はともかく、アメリカ軍による戦争犯罪の調査をすべきだということは同意できる。 明らかにされた文書の中には「フラゴ242」なる指令が出てくる。2004年6月に出されたもので、武力衝突に関する如何なる違法行為も「連合軍」が直接関与していない限り、調査するなと連合軍に命じる内容だ。要するに、イラク政府による拷問や殺人を黙認しろということである。アメリカ軍の中にも面白半分に非武装の市民を殺している軍人がいるわけで、イラク政府が何をしようと、批判するのは土台無理な話だが。 現イラク政権はサダム・フセイン時代よりもひどいという話も聞かれるが、そのフセイン政権で外相兼副首相を務めたタリク・アジズに死刑判決が出た。WikiLeaksの文書公表に合わせた判決だったことから、アジズの関係者でなくても、政治的な動機に基づくものだと感じるだろう。 現イラク政権の人権相は、WikiLeaksを訴える権利をイラクは持っていると発言したようだが、今の状況はイラク政権にとって厳しい。ヌリ・アルマリキ首相をはじめとする閣僚は戦争犯罪人として裁かれても仕方のない立場にいるということだ。頼りはアメリカ政府だけだが、そのアメリカ政府も戦争犯罪の容疑者。こうした状況を吹き飛ばすような出来事をアメリカ政府は演出できるだろうか?
2010.10.26
機密文書をWikiLeaksが公開した後、アメリカでは軍や政府だけでなくメディアも癇癪を起こしている。アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権はイラクへの先制攻撃を実現するため、偽情報を撒き散らしていたことが明確になっているが、その偽情報を撒き散らす手先は言うまでもなくメディアだった。編集者や記者も偽情報だということはわかっていたはずだ。 日本のマスコミも積極的にプロパガンダに協力、戦争の障害になりそうな日本人を袋だたきにしていた。その結果がイラクやアフガニスタンでの略奪、破壊、そして殺戮。偽情報を広め、好戦的な雰囲気を蔓延させたメディアにも戦争を起こした責任があるわけで、自分たちが開戦を望んだ理由を説明するのは義務だ。 メディアが振りまいた偽情報の中心には「大量破壊兵器」があった。サダム・フセインをイラクから排除したあと、占領軍が調べても大量破壊兵器の研究開発や貯蔵の事実は見つけられなかった。これは開戦前、UNSCOM(国連特別委員会)の主任査察官だったスコット・リッターやIAEA(国際原子力機関)などが指摘していたことだ。 メディアも協力して引き起こされた戦争の実態をWikiLeaksは明らかにした。そうした行為を快く思っていないらしいワイアード誌はWikiLeaksが公開した文書の中に化学兵器のことが出てくると騒いでいる。少量ながら、武装勢力へ流れていたことがわかったというわけである。こうしたことも予想されていたことで、別の情報、例えばイラク人を使った拷問や殺人が許可されていた事実などより大きく扱うような話ではない。 考えてみれば、少なくとも結果として、ワイアード誌は内部告発したと思われる軍人の逮捕に協力した雑誌。そうした経緯を考えると、今回の記事が掲載されるのも当然かもしれない。 もっとも、CNNなどはWikiLeaks創設者を取材した際、機密文書でなく女性スキャンダル(相当怪しい話だが)ばかりに興味を持ち、取材が打ち切られてしまったという。このケーブルテレビ局は1999年、アメリカ陸軍の部隊に本部で報道の現場を体験させているほどの会社であり、驚くほどのことはないが。 アメリカに限った話ではないが、報道機関は、イスラエルに対する場合とイスラムに対する場合では別の対応をしている。つまり「二重基準」が用いられている。この事実を指摘したふたりのジャーナリストが今年、解雇された。CNNのオクタビア・ナスルと伝説的なベテラン記者のヘレン・トーマスだ。「異端」を抱えるだけの余裕をアメリカの権力者はなくしている。 1970年代の後半からアメリカでは権力集団によるメディア支配が強化され、今ではマインド・コントロール機関になっている。アメリカのメディアは目を覆うばかりの惨状だが、それでも日本よりはマシ・・・というのも悲しい現実だ。
2010.10.25
内部告発を支援するサイト、WikiLeaksが機密情報を公開し続けている。4月5日にアメリカ軍のアパッチ・ヘリコプターが非武装の十数名を殺害する様子を撮影した映像を同サイトは公開しているが、その際には黙殺していた日本のマスコミも最近は取り上げるようになった。 しかし、彼らに言わせると、WikiLeaksは「暴露サイト」なのだという。「暴露」という言葉に「悪意」、そして「私的」な行為を感じるのは私だけでないだろう。マスコミが意識してこの単語を使っている可能性はきわめて高い。 勿論、ロイターのスタッフ2名など非武装の人間を米軍が殺害した映像を含め、WikiLeaksが公開した機密文書に記載されている情報は基本的に知られていた話。当然、現地の住民が知っている情報も多い。そうした情報を公開する意義は、アメリカ軍/政府もそうした戦争の実態を認識していたことを確認することにある。つまり、シラを切れなくするということだ。日本の場合、そうした「常識」を報道しなかったわけで、マスコミの責任は重い。 市民の犠牲者数に関する文書も存在、2004年から09年にかけて10万9032名の戦闘での死が記録され、そのうち6万6081名がイラク市民だとしているのだが、これは最低限の数字。 アメリカ軍では、敵からの攻撃で即死、あるいはそれに近い死に方をした場合だけを戦死としてカウントしている。つまり、致命的な負傷をしても何日間か生きていたような場合、また攻撃を受けたことが原因で車両同士が衝突したり、建造物に衝突したり、道路から飛び出して死者が出た場合は「事故死」として扱われているらしい。イラク市民の場合も、どこからが戦闘での死なのか不明だ。また、空爆などの場合、死者の数を確認することのできないケースも少なくないだろうが、それをどのように扱っているのか明らかでない。 過去の例を見ても、軍事侵攻で犠牲になった人々の数は、侵攻した側と侵攻された側では桁が違うことが珍しくない。攻撃サイドは最終的な戦闘で死亡が確認された数を主張するのに対し、攻撃された人々は一連の侵攻作戦で死んだり行方不明になった人々の数を主張する。こうしたことも数字の違いを生む原因になっている。 2007年7月12日の「戦闘」に関する文書も見つかった。戦闘で13名の敵を殺害、2名のおとなと2名の子供が負傷したという内容の報告で、一見、通常の戦闘のように思えるのだが、4月に公表されたビデオとつきあわせると別の光景が見えてくる。アメリカ軍が言うところの「敵」の中にはロイターのスタッフが含まれていた。公表された映像を見れば、戦闘などなかったことがわかる。報告書の内容は嘘だということである。この映像を日本のマスコミは無視、報道しても「敵と間違って殺した」とアメリカに配慮をした表現をしていたが、実際に映像を見れば面白半分に非武装の人々を殺したとしか思えない。今回、公表された報告書の信憑性はその程度だということも忘れてはならない。 イラク政府による拷問をアメリカ軍が黙認していたことを示す文書もあるが、アメリカ政府は拷問を認めていた。歴史を振り返れば、ラテン・アメリカの軍人を訓練してきたSOA(スクール・オブ・アメリカズ、現在の名称は治安協力西半球研究所)」では暗殺や拷問のテクニックを教えていた。アメリカの巨大企業の利権を守る目的で樹立された独裁政権は「死の部隊」を使い、目障りな人々を虐殺したが、そのメンバーの多くはSOAの出身者だった。イラクでの拷問もアメリカの軍や情報機関が「先生」だったのではないだろうか?
2010.10.24
10月22日、内部告発支援サイトのWikiLeaksは、39万1832件の機密文書(イラク戦争記録)を公表した。概略はイギリスのガーディアン紙が掲載している特集で読むことができる。アメリカのフォーブス誌によると、公表の直前に「高い技術を持つ何者か」がサイトへの侵入を試みたという。 アメリカ政府は今回の機密文書公開だけを気にしているわけではない。WikiLeaksがさまざまな意味で信頼できると評価されるようになると、新たな内部告発者が出てくる可能性が高まる。そうした事態を恐れている。よりショッキングな文書、体制を揺るがすような情報が漏れることを阻止するため、WikiLeaksへの攻撃は、激しいものにならざるをえない。
2010.10.23
イスラエルの政党「シャス」の精神的指導者だというラビのオワディヤ・ヨセフが、またまた暴言を吐いた。今年8月にはパレスチナ自治政府のマームード・アッバス大統領に対して「この世から消えろ」と言ったうえ、パレスチナ人は「邪悪で、イスラエルの不愉快な敵だ」と言い放っているが、今回は「異教徒は我々に仕えるためだけに生まれてきた。仕えることなしに、この世界で彼らがいる場所はない。ただ、イスラエルの民に仕えるためだけに。」と公言したのである。 ヨセフは1920年9月23日生まれの90歳。感情を抑える理性の力が弱ったのかもしれないが、彼は「単なる老人の戯言」ではすまない経歴の持ち主だ。つまり、1973年にはイスラエルのラビ長(最高宗教指導者)に選ばれ、1984年にはシャスを創設している人物である。現在、シャスは与党の一角を占めている。イスラエルへ「ユダヤ人」を移住させるため、イスラエルの外でユダヤ系の人々が住みにくい環境を作るという政策があるようなので、ヨセフは確信犯的に発言した可能性もある。 ベンヤミン・ネタニヤフ内閣は10月10日、「非ユダヤ系住民」に対して「ユダヤ人国家」への忠誠を誓わせる法案を承認したのに続き、入植の凍結を延長してもらいたいならイスラエルを「ユダヤ人国家」として認めろとパレスチナ暫定自治政府に要求している。ヨルダン川西岸では入植者たちが新たに600軒の家を建設し始めたともいう。こうしたイスラエル政府の行動はヨセフの発言とリンクしているように見える。 勿論、ユダヤ教のラビ全てがヨセフと同じ考え方をしているわけではない。シオニストがユダヤ教の世界に大きな影響力を及ぼしていることは確かだが、シオニストを敵視する正統派ラビもいて、世界各地で抗議活動を続けている。
2010.10.22
先端技術分野で不可欠な「レア・アース(希土類元素)」を中国が売ってくれないと泣き言を言う人がいる。中国の工業化が進み、日本を含む諸外国の企業が中国に工場を建設している現在、中国での需要が高まるのは当然の成り行きであり、かなり前からそうした問題は表面化していた。 自国でもレア・アースを産出するアメリカやオーストラリアなどは、コスト面だけでなく、自分たちの資源を温存するために中国から輸入している可能性があり、日本がそうした国々で調達しようとしても、都合良く入手できるとは限らない。 日本のマスコミなどは、日本が世界の支配者とでも思っているようで、レア・アースの問題だけでなく、他国の領海近くや南極海などへ漁船を繰り出すようなことも当然視、疑問を感じていないようだ。全てが「オレ様」に都合良く動くべきだなどという発想は早く捨て去る必要がある。 穀物を始め、多くの食糧を日本はアメリカに依存してきたが、そのアメリカの農業は地下水に頼る不自然なもの。長い期間を経て溜まった地下水が枯渇する日は遠くないと言われている。食糧問題はレア・アースよりも深刻な事態だ。食糧がなくなれば餓死するしかない。アメリカが食糧を供給してくれないからといって自暴自棄になり、東アジアに軍事侵攻する、あるいは「第二の真珠湾攻撃」を実行する・・・そんなことはないと願いたい。もっとも、日本が飢餓状態になれば、支配層は食糧のある国々へ逃げるのだろうが。
2010.10.21
アメリカの国防総省と告発サイトWikiLeaksとの闘いが続いている。10月18日には同省の広報担当、デイビッド・ラパン大佐が報道機関に対し、WikiLeaksによる機密文書の公開に協力しないように求めた。同じ日にスウェーデン政府は、同サイトのジュリアン・アッサンジに対して労働と居住を認めないと発表している。アメリカ政府とスウェーデン政府が協力していると思われて当然のタイミングだ。 アッサンジはオーストラリアの情報機関にも追いかけられているようだが、アングロ・サクソン系の国々、つまりアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでは米英両国が情報機関のネットワークを使ってほかの国々を支配しているとする情報がある。オーストラリアの情報機関がアメリカの命令で動くのは当然だろう。 ペンタゴンではWikiLeaksが公表しつつある機密文書を「盗まれた」と表現しているようだが、とんでもない話だ。こうした情報は本来、国民のものであり、公表する義務がペンタゴンにはある。公表すると自分たちの悪事が露見するので、さまざまな圧力を加えて隠そうとしているだけの話だ。実際、公表された情報の中にはアメリカ軍による犯罪的な行為を明らかにするものが含まれていた。 しかし、米国防総省が本当に恐れているのはイラク戦争の実態を明らかにした情報ではない可能性もある。2001年9月11日の時点でWikiLeaksが活動していたなら、世界貿易センターや国防総省が攻撃されることはなかったとも言われているが、その当時の機密文書をWikiLeaksが入手したなら、アメリカ政府が崩壊するだけではすまないかもしれないということだ。「9/11」だけでなく、過去の出来事の真相が明るみに出た場合も、同じことになる。国防総省というより、アメリカの権力層がWikiLeaksを潰したがっているのではないだろうか?そうしなければ、安心して眠れないだろう。
2010.10.19
鉱山の落盤事故で閉じ込められていた労働者33名全員が救出されたという。チリでの出来事だ。無事生還できたことは喜ばしいことなのだが、その一方で劣悪な労働環境が問題になっている。儲けを優先する会社がコスト削減のために安全対策を疎かにしていたということだ。 チリと言えば、シカゴ大学の教授だったミルトン・フリードマンの経済理論が最初に実践された国。フリードマンは「自由市場」(そんなものは存在しない)における政府の役割を減らすことが必要だと主張し、無政府状態にすれば、ことは全てうまく運ぶとしていた。要するに「レッセ・フェール(なすに任せよ)」への回帰、強者総取り経済を復活させようとしたにすぎない。 フリードマンが何と言おうと、彼の理論が弱者、つまり庶民を苦しめることになるのは目に見えていた。チリでこの理論を実践できたのは、一九七三年九月にオーグスト・ピノチェトが軍事クーデターを成功させ、理論導入に抵抗しそうな勢力が皆殺しにされていたからである。チリで経済政策を指揮したのは「シカゴ・ボーイズ」と呼ばれるフリードマンの弟子たちだった。 クーデターの黒幕は大統領補佐官を務めていたヘンリー・キッシンジャーであり、その時の大統領はリチャード・ニクソン。ところが、このニクソン大統領はフリードマン理論が失業者を大量に生み出すと考え、自国では採用していない。実際に導入するのはロナルド・レーガンである。 一九七九年から八二年にかけてチリ政府は輸入を奨励した。ペソが過大に評価され、贅沢品の消費ブームが起こるのだが、実態は惨憺たるもの。輸入の拡大を「経済成長」と錯覚する人もいたが、結局のところ恩恵に浴せたのは、上層階級と中産階級だけだった。 その一方、国産製品が売れなくなり、チリ国内の企業は倒産、貿易赤字と失業が膨らんで経済は破綻する。極端な低賃金で働かせる「失業対策事業」で失業率を低く見せようとしたが、実際の失業率は控えめに見積もっても20%以上。1980年代の後半、チリでは人口の45%が貧困ラインの下に転落していたという。貧困層の子供は教育を受けるチャンスを奪われ、さまざまな不平等を再生産することになった。日本も同じ道を歩んでいる。 こうしたチリでの実験を肯定的にとらえたのがフリードリッヒ・ハイエク。親しくしていたマーガレット・サッチャー英首相にフリードマン理論を売り込んだ。 勿論、通常ならイギリスの庶民が強者総取りの経済システムを受け入れるはずはない。それを可能にしたのが1982年の「フォークランド戦争」である。戦争に圧勝したイギリスではサッチャーが「戦争の英雄」になり、その雰囲気を利用してフリードマン的な国家改造を開始した。炭鉱労働者を攻撃したことから始まり、ブリティッシュ・テレコム、ブリティッシュ・ガス、ブリティッシュ航空、ブリティッシュ空港、ブリティッシュ・スティールなどを次々と民営化している。 石油相場の高騰という追い風を受け、1970年代の後半に入って北海油田の生産は本格化、1980年代に入るとイギリスは石油輸出国になる。このおかげでイギリス経済は好調に見えたが、その裏では貧富の差が拡大し、経済の基盤が崩れていた。1990年代の後半に石油の生産量が減少していくと、その実態は隠しようがなくなる。 政党は違うものの、サッチャーの後継者と言われた労働党のトニー・ブレアは偽情報を撒き散らしながら2003年にアメリカとイラクを先制攻撃したものの、戦争は泥沼化してしまう。イラクの社会的な基盤を破壊し、文化財を略奪し、人々を虐殺しただけでなく、イギリスの置かれた状況をさらに悪化させることになった。攻撃を正当化するために偽情報を流してたことも批判されている。 1980年代から90年代にかけて、フリードマン理論は世界規模で富を偏在させ、投機集団を儲けさせる一方、庶民の生活を困難にした。投機を規制しないと資本主義経済そのものが崩壊するという危機感を持つ人も増えてきたが、いまだに有効な規制は打ち出せないでいる。チリの軍事クーデターはチリ国民を苦しめただけでなく、世界の庶民を地獄へと導く門を開けたとも言えるだろう。
2010.10.16
アメリカ政府が朝鮮に対する核攻撃を検討してきたことを示す文書が発見されたとAPが伝えている。初めて核攻撃が検討されたのは1950年8月中旬、朝鮮戦争が始まって2カ月後のことである。山岳地帯での戦闘に不慣れなアメリカ軍は劣勢になり、半島の南端まで追い詰められていた。 戦争は6月25日、朝鮮軍の奇襲攻撃で始まったとされているのだが、元特務機関員で戦後はアメリカの情報機関で活動していた人物によると、その前から朝鮮に対する挑発工作が展開され、「開戦」の直前には軍事衝突が頻発していた。不意を突かれてアメリカ軍が追い詰められたわけではない。この段階で旧日本軍の将校たちがアメリカ軍へのアドバイスを始めたようだ。 その後、中国の「義勇軍」が参戦してくると、再びアメリカは核攻撃を考えている。核攻撃の危機は1951年4月に最も高まったという。1951年9月と10月には、B-29爆撃機が朝鮮の平壌を核攻撃するシミュレーションを実施、模擬爆弾を実際に投下したいう。さらに、1953年の初めにも核攻撃を考えている。1960年代の後半にも核攻撃の危機があり、1976年以降も朝鮮に対して核攻撃すると何度か脅していることも知られている。 そして2003年の春、ジョージ・W・ブッシュ政権は空母カール・ビンソンを中心とする艦隊を朝鮮半島に派遣、6機のF-117を韓国に移動させ、グアムにはB-1爆撃機とB-52爆撃機が配備させている。こうした動きに当時の韓国政府やアメリカの旧保守派がブレーキをかけなければ、核戦争に発展しても不思議ではなかった。アメリカが核攻撃を検討しない国は、核兵器で報復できない国だけだと言われている。 ちなみに、日本にも核武装の計画は存在する。アメリカが「核の傘」を提供することを条件に計画は中止されたとする人もいるようだが、アメリカの情報機関では1970年代以降も日本は核武装を考えていると信じられている。実際、東海村の核燃料再処理工場は核武装を念頭においたものではないかと疑われ、日本とアメリカとの間が緊張したとも言われている。
2010.10.13
イスラエルの強硬派が暴走を始めている。10月10日、ベンヤミン・ネタニヤフ内閣は「非ユダヤ系住民」に対して「ユダヤ人国家」への忠誠を誓わせる法案を22対8で承認したのに続き、入植の凍結を延長してもらいたいならイスラエルを「ユダヤ人国家」として認めろとパレスチナ暫定自治政府に要求した。 かつて、日本でも自国を「単一民族国家」だと表現した政治家がいる。民族という概念は曖昧で、何を意味しているのか明確でないのだが、例えば、アイヌ民族としては自分たちのアイデンティティーを否定するなと抗議して当然だろう。歴史をさかのぼれば、日本列島へはさまざまな地域からさまざまな人が渡ってきているわけで、それを「単一民族」と呼べるのかという疑問はある。が、それでも日本を「大和民族国家」などとは言わないだろう。アメリカを「アングロ・サクソン国家」、中国を「漢民族国家」、あるいはロシアを「ロシア民族国家」と呼ぶこともない。 そう言えば、ナチス時代のドイツでは自国を「アーリア人」の国にするつもりだったらしい。「アーリア」という言葉はサンスクリットの「アーヤ(高貴な)」に由来し、後に「インド・ヨーロッパ語族」の言語を話す人々が「アーリア人」に結びつけられた。ちなみに、イスラエルではヘブライ語を復活させ、その言語で「ユダヤ民族」としての意識を作り上げている。ナチスは「北方起源のアーリア人」を思いつき、少数民族の抹殺へと突き進んだ。イスラエルの強硬派はパレスチナ人をイスラエルから消し去ろうとしている。 最近のイスラエルはナチスの領域に限りなく近づいている。ちなみに、ナチスはドイツの大資本だけでなく、アメリカの金融資本からも支援されていたことがわかっている。
2010.10.12
中国の反体制派、劉暁波にノーベル平和賞が授与されるのだという。「中国での基本的人権を求める非暴力の闘い」を評価、世界第2位の経済大国になった中国に対し、そうした立場に見合った「責任」をノーベル賞委員会は求めていると伝えられている。 確かに、中国が人権を尊重する国だとは思えないが、そうしたことは、世界第1位の経済大国であるアメリカ、そして中国と並ぶ経済大国の日本でも同じことが言える。特にアメリカの場合、国際条約や自国の憲法を無視して拉致、拘束、拷問が実行されてきた。それだけでなく、アメリカ政府は暗殺も認めている。 過去を振り返ると、アメリカは自国を支配する巨大資本のカネ儲けを助けるため、少なからぬ国で軍事クーデターを演出し、軍事政権を作り上げてきた。その犠牲者は膨大な数にのぼる。人権を尊重する国のできることではない。 考えてみれば、核武装を考えていた佐藤栄作、チリやカンボジアにおける大量殺戮で黒幕的な役割を果たしたヘンリー・キッシンジャー、イルグンという「テロ組織」のリーダーだったイスラエルのメナヘム・ベギンも受賞している。ジョージ・W・ブッシュ政権が始めた人権を否定する政策を維持しているバラク・オバマもノーベル平和賞を受賞した。人権とか平和でなく、政治的な理由から受賞者は決められていると言わざるをえない。 裏の事情はともかく、アメリカが特別扱いしているイスラエルは、パレスチナ人の人権を無視してきた。ガザへの軍事侵攻にしろ、ガザ支援船の公海上での襲撃にしろ、国際的に批判が高まっているのだが、アメリカ政府は必死に擁護している。イスラエルによる破壊と殺戮に対し、アメリカ議会は政府よりも寛容な姿勢を見せている。 こうしたアメリカの姿勢を批判する「非暴力の活動家」は少なくない。しかも、アメリカの捜査機関や情報機関から敵視され、監視され、時には襲撃されてきた。こうした人々に対し、ノーベル賞委員会がどのような姿勢を見せるのか、興味深いところだ。
2010.10.09
いわば、「岡っ引き」が「探索相手」に情報を流した・・・NHKの記者が日本相撲協会の時津風親方に対し、警視庁が家宅捜索に乗り出すとメールで知らせたということは、そういうことだろう。 事件の端緒になりそうな話、容疑者やその関係者の動向、体制に批判的な団体や個人に関する情報などを警察/検察へ「御注進」に及ぶことは日常茶飯事のはずだ。政治記者なら政敵の動向を監視、スキャンダルを探っているという話も聞く。相撲を担当しているなら、通常なら日本相撲協会も警察/検察と同じ立場だ。日常的に情報を漏らしているので、気楽に「メール」という証拠が残る方法で知らせたのだろう。 マスコミは「権力」のプロパガンダ機関にすぎず、「社会の木鐸」だとか「権力の監視者」というような話は妄想にすぎない。勿論、権力犯罪を暴こうとしたメディアや記者が皆無だとは言わない。しかし、きわめて例外的なことであり、現在は絶滅寸前である。 大阪地検特捜部による証拠改竄が発覚して以来、マスコミの内部は動揺している。これまでも信頼されていたわけではないが、自分たちを見る読者/視聴者の目が厳しくなっていることを感じているのだろう。 証拠の隠蔽や改竄などが珍しくないことは、少しでも冤罪事件に興味のある人ならよく知っているはず。そうした事情があるため、大阪地検特捜部の問題は警察/検察の構造的なスキャンダルに発展する可能性をはらんでいる。警察/検察の上層部としては、どうしても「個人的な犯行」で決着させる必要があるわけで、そのシナリオを壊すような情報をマスコミが流さないように手を打つ必要がある。勿論、NHKのケースがそうだとは言わないが、警察/検察にとってこの問題がマイナスに働くということはないだろう。
2010.10.09
日本に限った話ではないだろうが、「政治とカネ」の問題は民主主義の根幹を揺るがしかねない。目を見張るような豪邸を建てたり、莫大な資産を残す政治家はこれまでも少なくなかった。何らかの不正が疑われるのだが、タックスヘブンを利用した財産隠しも行われているはずで、その全体像を国民は知りえない。ただ推測するだけである。 この疑惑を解明する手段として「強制起訴」という道があることが小沢一郎の一件で明確になった。資金を出したことを明らかにした政治家を起訴できるなら、隠している政治家の方が悪質なわけで、なおさら起訴しなければならない。 小沢一郎が虚偽記載で起訴されるなら、多くの政治家は起訴されねばならないが、そうした重箱の隅をつつくような話はさておき、そもそも、企業献金は賄賂にほかならないはずだ。企業は見返りを期待して献金するわけで、まず企業献金を受け取った全政治家を起訴しなければならない。こうした資金の遣り取りを容認してきた警察、検察、裁判所、そしてマスコミの責任は重い。判例?そうしたことに関係なく起訴できることも小沢一郎の一件は明らかにしている。 宗教団体と関係の深い政党の場合、税制上、優遇されている「宗教」を利用した資金面の不正があるのではという疑惑が囁かれ続けてきた。この疑惑が本当なのかどうなのか、確認するためにそうした政党の議員を起訴しなければならない。 政党の中には政党助成金を受け取らないところがある。受け取ると知られたくない内情、事実が外部に漏れてしまうため、それを恐れて受け取っていないという疑惑がある。この疑惑が事実かどうかを確認するため、そうした政党の議員を起訴しなければならない。 要するに、選挙で当選した議員は全員、一度起訴して身辺を調査するべきである。そうすれば、「政治とカネ」の問題は改善されるに違いない。 こんなことを言う人がいる。
2010.10.06
大阪地検特捜部の前部長と前副部長が逮捕された。ふたりの部下だった主任検事による証拠改竄を意図的に隠した容疑なのだという。 前にも書いたことだが、検察は被告にとって有利な証拠を隠し、証拠の捏造が強く疑われる事例も少なくないわけで、証拠の改竄という点に関して言うならば、珍しい話ではない。裁判所もマスコミも知っていたはずだ。珍しいのは検事が逮捕されたということだけである。早い話、日本は「疑似法治国家」、あるいは「法治国家もどき」にすぎないということだ。 検察は事件の「筋」を読んでシナリオを書き上げると、そのシナリオに合うような証拠を集め、供述を誘導し、押しつけ、不都合な証拠は隠してしまう。ひどい場合は証拠を改竄したり捏造するわけである。事実を重要視しないということでもある。何らかの理由でターゲットにした人物や団体を摘発することが当局の目的なのであり、冤罪かどうかに興味はないとしか思えない。 その目的が政治的であることも珍しくない。権力システムに批判的な人物や団体が攻撃されるだけでなく、体制内の有力者がターゲットになることもある。その一例として1948年3月に首相となった芦田均を挙げることができる。芦田の排除という目標が最初にあった可能性が高い。 その前年、社会党の片山哲を首班とする三党連立内閣が誕生しているのだが、これは潰された。そして登場したのが同じ三党連立の芦田内閣。芦田はGS(民政局)、つまりニューディール派から高く評価されていた人物で、日本を「右旋回」させようとしていた好戦派からは嫌われていた。 1947年に商工省の役人と昭電関係者との関係が問題になり、警視庁捜査二課は翌年になって昭和電工の本社を捜索しているのだが、その捜査を乗っ取る形になったのが特捜部。そして同年12月に芦田が逮捕され、好戦派が政権を奪還した。この事件に芦田は無関係で10年後に無罪判決が出ているのだが、その10年間に好戦派は「右旋回」を完成させて「日米同盟」の枠組みを作り上げている。 ある目的のため、事実に基づかない仮想現実を描き出すという手法は、ジョージ・W・ブッシュ政権も使っている。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやワシントンDCの国防総省が攻撃されると、調査/捜査をろくに行っていない段階で「アル・カイダの犯行」が宣言され、実際には存在しない「イラクの大量破壊兵器」を口実として先制攻撃を実行している。1990年代からネオコンが主張していた「サダム・フセインの排除」を実現し、イスラム諸国を戦乱に巻き込むこともできた。 旧日本軍の作戦参謀たちも似たようなことを行っていた。自分たちが描き挙げたシナリオを実行するため、事実を無視して戦争へと突き進んだのである。情報将校のブレーキはほとんど効果がなかった。 自分が陶酔できるシナリオを頭に描き、そのシナリオに合うような情報を集め、不都合な事実を無視するのは検察や特定の好戦派だけではない。自分に都合が良ければ、怪しげな情報に飛びつき、都合が悪ければ確度の高い情報も無視する。そうした傾向は日本中に広まっている。勿論、マスコミも例外ではない。
2010.10.02
フランスではニコラ・サルコジ大統領がロマの国外追放を推進している。「違法キャンプの摘発」をしているだけだと主張しているが、ロマを狙い撃ちしていることは否定できない。こうしたフランス政府の政策に対し、欧州委員会の司法委員(大臣に相当)ビビアン・レディングはナチ占領下のフランスになぞらえて批判、委員会総体としてもサルコジ政権に対して政策の見直しを求めている。 言うまでもなく、ロマは移動しながら生活してきた人々で、近代ヨーロッパが決めた国境というルールは彼らの伝統的な生き方を否定するものだった。こうしたことは遊牧民全体にも言え、定住の強制といった問題を各地で引き起こしてきた。見方を変えると、国境という考え方は近代ヨーロッパが定めた「ローカル・ルール」にすぎないということだ。 また、イスラエルのアビグドル・リーバーマン外相はイスラエルからアラブ系住民を追放すべきだと主張、この持論を国連でも展開している。さすがに外相の主張はアメリカの「ユダヤ系団体」からも反発を受けているが、その発想の根本はサルコジ仏大統領と同じだろう。 現在開かれている衆院予算委員会で「尖閣諸島の領有権」を声高に叫ぶ政治家がいる。この方面の事情に精通しているわけではないのだが、この議論には近代ヨーロッパのルールは絶対だという前提が必要になるだろう。 近代ヨーロッパのルールを前提としても、尖閣諸島に関する日本による領有権の主張が100%正しいとは言えない。尖閣諸島を局地的にとらえるならば、そうした主張に説得力があるように思えるのだが、本コラムでも書いたように、当時の日本は近代ヨーロッパ、特にイギリスと手を組んで東アジアへの侵略を始めていた。そうした事実と尖閣諸島との問題が無関係ではありえない。琉球王国、台湾、朝鮮半島、そして中国という侵略の歴史の中での出来事だということだ。少なくとも、日本の周辺国がそう理解しても不思議ではない。 こうした問題が起こると、歴史だけでなく、現在の東アジア情勢を無視して「土下座外交」とか「弱腰外交」というキャッチコピーを連発して売り上げを増やそうという雑誌や新聞が現れ、番組の視聴率を上げようとするテレビ局が出てくるようだが、これは日露戦争の時代と大差のない現象だ。(日本の大企業は中国でのビジネスがなければ潰れてしまう。) こうしたマスコミも含め、日本では過去のアジア侵略を肯定的に考え、真珠湾攻撃でアメリカを敵に回さなければアジアでの戦争は勝てたという妄想を抱いている人たちが少なくないことも問題の解決を難しくしている。 「何度謝罪すれば・・・」という人も少なくないようだが、社会的に影響力のある人々の一部は、謝罪の後すぐに謝罪を否定してきた。ふてくされた表情での謝罪を漫才に採り入れているコンビがいるが、これと同じことを繰り返してきた。真剣に歴史を考えているとは到底、思えない。 中国にしろ、韓国にしろ、東南アジア諸国にしろ、お互いを完全に信頼しているわけではないだろうが、東アジアの安定が自分たちの繁栄につながると認識している。警戒しながらも協力しようということだ。 逆に、東アジアの成長を望まない人々は、この地域に混乱を持ち込もうとしている。現在、そうした混乱を最も望んでいるのがアメリカのネオコンだろう。ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2003年には「第2次朝鮮戦争」を始めかねない動きがあった。前にも書いたように、こうした動きを止めたのが当時の韓国政府やアメリカの旧保守である。日本ではない。 その旧保守の大物、ドナルド・グレッグは8月31日、ジミー・カーター元米大統領が平壌を訪問してアメリカ人の解放を実現した直後、3月に韓国の哨戒艦が沈没した原因に対する韓国政府の見解に疑問を投げかけている。この話を日本のマスコミが報道したという話は寡聞にして聞かない。東アジアの緊張を緩和させるような動きに興味がないようだ。また、9月29日には米下院の本会議で対中制裁法案が可決されているが、こうした動きと日本政府の行動が無関係だとも言えないだろう。
2010.10.01
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