全35件 (35件中 1-35件目)
1
イスラエルはガザを巨大な壁で囲って「収容所」を作り上げ、物資の流入を阻止して兵糧攻めするだけでなく、軍隊を侵攻させて大量殺戮を繰り返してきた。そうした状況に何ら有効な対策をとらない各国政府や国連に替わり、一般の市民が船団を組んでガザへ支援物資を運ぼうとしている。そうした活動に参加していたトルコのフェリー、マビ・マルマラが公海上でイスラエル軍に襲撃され、多くの死傷者を出したようだ。死者は10名とも19名と言われているが、実態は不明。 襲撃の際、イスラエル軍はジャミングで通信を妨害、拘束した市民をメディアと接触させないようにしているらしいのだが、ある程度の様子はアルジャジーラなどが伝えている。イスラエルのビンヤミン・ネタニアフ首相はアメリカのバラク・オバマ大統領との会談をキャンセルする一方、イスラエル政府は乗船していた人々がナイフや鉄パイプで攻撃、兵士の銃を奪おうとしたと弁明しているようだが、公海上で、ガザに向かっている船を襲撃する権利がイスラエルにはない。ガザをイスラエル政府は自分の領土だと考えているとするならば、これも大きな問題になる。イスラエル政府は庶民を敵に回したときの恐ろしさを理解していないようだ。
2010.05.31
日本でも国民監視システムは築かれてきた。そうした流れの中、プロバイダーのサーバーから個人情報を入手する仕組み「DPI」をカネ儲けに利用することを総務省の官僚たちが認めたと報道されている。 日本のエリートはアメリカの後を追いかけてきた。監視システムについてもこれは当てはまる。アメリカでは電子情報機関が個人情報を収集分析するシステムを開発、批判を受けながらも使い、最近では「潜在的な反体制派」を探しだして予防拘禁をしそうな雰囲気だ。 例えば、アメリカのフロリダ州では、司法当局が常習犯罪者になる未成年者を「予言」するIBMのコンピュータ・システムを導入すると言われている。つまり、犯罪へ向かうであろう未成年者を「予防更正」させて「安全な社会」を築くのだという。犯罪を生み出す社会的な原因には手をつけないということだが、それは当然。そうした問題を解決しようとすれば、エリートが大金を稼ぐうえで邪魔になる。 ところで、DPIが広がるとさまざまの問題が生じる。例えば、ダミーの会社を作れば、どの国の情報機関でも、捜査機関でも、犯罪組織でも、日本に住む人々の個人情報を手にすることができるわけだ。勿論、そのターゲットには庶民だけでなく、インターネットを利用している全ての人や団体が含まれる。政治家も官僚も経営者も例外ではない。 歴史を振り返ると、第2次世界大戦が終わって間もない頃からアメリカの電子情報機関NSA(国家安全保障局)はイギリスのGCHQ(英政府通信本部)と共同でUKUSA(ユクザ)なる連合組織を創設し、地球規模の通信傍受(盗聴)システムECHELONを運用してきた。 このシステムについてイギリスのジャーナリスト、ダンカン・キャンベルが触れたのは1988年のことだが、NSAの存在も一般に知られるまでには時間を要した。創設から四半世紀後の1972年にアメリカの雑誌「ランパート」が元NSA分析官にインタビューし、その中で「全ての政府」を監視しているNSAの存在を明らかにしたのだ。 1975年には、オーティス・パイク下院議員を委員長とする下院特別委員会で、ウイリアム・コルビーCIA長官はNSAが国際電話を傍受している事実を認め、一般市民の通信も盗聴されていると証言している。アメリカ人の通信を傍受する際には、イギリスなど「友好国」の情報機関に依頼していたともいう。 通信を傍受するだけでなく、不特定多数の個人情報を記録分析するシステムも開発されている。1970年代から1990年代にかけてはPROMISと呼ばれるシステムが有名だった。民間のINSLAWという会社がアメリカ政府の資金を使って開発したのだが、1980年代、つまりロナルド・レーガン政権に情報機関の関係者が「トラップ・ドア」を組み込んで世界中に売っていた。イスラエルの情報機関もPROMISのプログラムを入手、独自にやはり「トラップ・ドア」を組み込んで売っていた。アメリカやイスラエルの情報機関が手を加えたPROMISを導入した政府、機関、企業の情報はアメリカやイスラエルに筒抜けになった。 このPROMISに日本の法務省も興味を持った。遅くとも1979年にはINSLAWと接触、このシステムに関する概説資料と研究報告の翻訳を法務総合研究所が1979年3月と80年3月に「研究部資料」として公表している。この時、実際に動いていたのは敷田稔(後の名古屋高検検事長)であり、その上には一等書記官として日本大使館に勤務していた原田明夫がいた。言うまでもなく、原田は後に刑事局長として「組織的犯罪対策法(盗聴法)」の法制化を推進、事務次官を経て検事総長に就任している。 日本以外の国々では、1980年代の半ばからPROMISが注目され、アメリカの情報支配が問題になった。アメリカの司法省をINSLAWがPROMISを奪ったとして訴え、1988年2月にはワシントン破産裁判所が原告の主張を認める判決を言い渡したのだ。つまり、司法省は不正な手段を使ってINSLAWを破産させ、PROMISを横領したと認め、同省に対して680万ドルの損害賠償と120万ドルの弁護費用を支払うよう命じたのである。翌年の11月にはワシントン連邦地裁も破産裁判所を支持する判決を出し、1992年9月には下院の司法委員会が破産裁判所と同じ結論の報告書を公表している。 1997年8月に最高裁判所は司法省の言い分を認める判決を言い渡しているが、破産裁判所、連邦裁判所、そして下院司法委員会は司法省が民間企業の開発したシステムを横領したと認めたのである。大変なスキャンダルだが、日本のマスコミは無視していた。アメリカの司法省が横領するのは日常茶飯事だと思ったのだろうか? ちなみに、アメリカの最高裁が絶対的な信頼を寄せ、司法省の言い分を認める根拠にした証言をした人物とは、イラン・コントラ事件で偽証して有罪になったロバート・マクファーレンや、証券詐欺や銀行詐欺などでロサンゼルスの連邦地裁で有罪の評決を受けるアール・ブライアンたちだ。 ジョージ・W・ブッシュ政権になると国民監視システムの開発はさらに活発化、国防省のDARPA(国防高等研究計画局)はTIAというプロジェクトを開始、個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆるデータの収集と分析に乗り出した。TIAが発覚するとMATRIX、このシステムが露見すると別のシステム・・・というように監視システムは強化され続けている。 情報支配の問題を「カネ儲け」という視点からしか論じられない日本のマスコミ。怒りを通り越し、哀れみを感じてしまう。
2010.05.31
NPT(核不拡散条約)再検討会議が閉幕した。核兵器保有国の身勝手な態度に対する批判が強まる中で開かれたのだが、ここでもアメリカとイスラエルとの異様な関係が目立った。 核兵器の独占体制を維持しようとする核兵器保有国への批判が高まる中、昨年4月にバラク・オバマ米大統領は「核兵器のない世界」を訴えている。ネオコン(新保守/親イスラエル派)のような核攻撃を夢見る勢力を抱えるアメリカが核兵器の廃絶に向かうことはきわめて困難なのだが、そう言わざるを得なかったのだろう。 アメリカと特殊な関係にあるイスラエルは、核兵器を使った「恐怖外交」を駆使してきた。そのイスラエルを必死に擁護しているのが歴代のアメリカ政府。オバマ政権も例外ではない。どうやら、オバマ大統領が言うところの「核兵器のない世界」において、アメリカとイスラエルは例外的な存在なのだろう。アメリカとイスラエルだけが核兵器を保有する世界をアメリカ政府は夢見ていると思われても仕方がない。 そのイスラエルがイランに対し、核兵器を突きつけて脅している。射程距離が1500キロメートの核巡航ミサイルを搭載した3隻のドイツ製潜水艦をペルシャ湾に派遣、イランの海岸近くで威嚇しようとしているのだ。この潜水艦、50日間は潜水が可能で、約450メートルの深さまで潜れるという。こうした行為はアメリカ政府に対する恫喝という側面もあるはずだ。 イスラエルにはアメリカをコントロールした「成功体験」がある。1973年10月6日に始まった第4次中東戦争では、劣勢のイスラエルが8日に核ミサイルの発射を決断、この動きをソ連が察知してエジプト側に警告している。9日にはアメリカ政府へもこの事実を伝えた。アメリカ政府はソ連の動きを警戒、イスラエルの反撃を支援するため、同国に対して軍事物資を空輸している。そして停戦の合意が内諾された。 ところが、反撃体制の整ったイスラエルは停戦の内諾を無視、エジプトを激しく攻撃し続けた。そこでソ連は「適切な対抗策」を講じると警告、それに対してアメリカ政府は空母を地中海に派遣し、グアムからB52をアメリカ本土へ移動させた。アメリカとしてはソ連との軍事衝突も覚悟したのだろうが、ここでイスラエルの攻撃は収まる。要するに、イスラエルの核兵器はアメリカをコントロールする有効な手段だということ。当時よりも核攻撃能力がはるかに高まっているイスラエルが核兵器をすんなりと手放すはずはない。オバマ大統領にイスラエルを押さえ込む能力があるとは思えない。
2010.05.30
米軍再編に絡む海兵隊の「普天間基地(飛行場)」の問題で鳩山由紀夫首相は当初、国外への移設を主張していた。ところが結局は実現せず、名護市の「辺野古崎地区」へ移すということでアメリカ政府と合意、その流れで消費者担当相を務めていた社民党の福島瑞穂党首を罷免した。アメリカ政府や同政府の「走狗」と言えそうな言動を繰り返していた岡田克也外相や北沢俊美防衛相に完敗した形だ。 鳩山首相は当初の主張を翻すにあたって「抑止力」という言葉を使ったが、アメリカの海兵隊が抑止力になっていないことは多くの人が指摘している。そもそも「抑止力」という用語を使いたがるのは、アメリカが「防衛的」だという前提で議論を進めたいからにほかならないのだが、歴史を振り返れば、この前提が事実に反していることがわかる。戦後だけに限っても、ソ連への先制核攻撃を計画する一方、民主的なプロセスで誕生した政権を軍事クーデターで潰し、イタリアでは「爆弾テロ」の黒幕だった可能性が高い。ビル・クリントン政権ではユーゴスラビアを先制攻撃、ジョージ・W・ブッシュ政権はアフガニスタンやイラクへ攻め込み、占領軍として住民を今でも殺害し続けている。 ブッシュ政権は核戦争も視野に入れていた。2002年に核攻撃の潜在的なターゲットとしてイラク、イラン、シリア、リビアというイスラム諸国のほか、朝鮮、中国、ロシアを挙げていた。明らかに新保守(ネオコン/親イスラエル派)の戦略である。 この新保守は偽情報を有効に使い、多くの人々を操ってきた。ブッシュ・ジュニア政権では偽情報を流すため、OSP(特別計画局)を設置している。あくまでも事実に基づく分析を行うCIAやDIAに不満を持つ新保守としては、こうした機関が必要だったわけだ。この新機関は、自分たちの描くシナリオに合わない情報を事実として受け取らない。要するに、旧日本軍の作戦参謀と似ている。 さて、基地問題に関する鳩山首相の判断に影響を与えた出来事のひとつが、韓国軍の哨戒艦「天安」が沈没した事件なのだが、この事件は1982年10月にスウェーデンの領海で起こった潜水艦騒動を連想させる。国籍不明の潜水艦が侵入して大捕物が展開され、根拠が曖昧なままソ連の潜水艦だということにされた事件だ。 ちなみに、1983年4月には千島列島の近くでアメリカ軍が大規模な艦隊演習を実施、その際に艦載機が日本の「北方領土」上空を飛行してソ連を挑発した。さらに、8月31日から9月1日にかけて、北西太平洋では大韓航空機がソ連の領空を侵犯し、重要な軍事基地の上空を飛行して撃墜されるという事件が起こっている。この年の10月には、危うく核戦争が始まるところだった。 スウェーデンで潜水艦の追跡劇が始まるのは、アメリカから嫌われていたオルフ・パルメが首相に返り咲く1週間前のこと。この大捕物でスウェーデン国民の反ソ連感情が高まり、1980年まで5~10%だったソ連を脅威と考える人が事件後の1983年には40%に急上昇している。 ところが、この事件を調査していたノルウェーの情報将校は、問題の潜水艦を西側のものだ断言している。事件の直前、9月にNATO軍は北ヨーロッパ地域で上陸演習「ノーザン・ウェディング」を、またバルト海では「USバルトップス」を、さらに対潜水艦戦の訓練「ノットバーブ」を実施しているのだが、特に注目されているのが「ノットバーブ」だ。 韓国軍の哨戒艦が沈没した事件でも軍事演習が近くの海域で行われていた。敵軍の侵入に対処するための米韓合同軍事演習「フォール・イーグル」だ。今回の哨戒艦沈没でロシアが米韓両政府の主張に懐疑的なのも当然だろう。ソ連時代に自分たちも似たような状況に陥ったことがあるのだ。 哨戒艦の事件に対する疑問は調査団の中からも出ている。外部で爆発があった証拠は見あたらず、座礁した可能性が高いと主張しているのだが、米韓両政府の公式見解に反する意見を主張している調査員は「名誉毀損」で訴えられているという。アメリカの潜水艦に関する話も含め、この事件には謎が多い。 ところで、1982年の事件に限らず、アメリカによる大規模な「テロ活動」や侵略計画を、日本では新聞も雑誌もテレビも出版社も学者もまともに取り上げてこなかった。例えば、「テロ」や「旅客機撃墜」を演出してキューバ人の犯行に見せかけて軍事侵攻の口実にしようとした「ノースウッズ作戦」、ベトナム戦争で展開した反米的な地域の村民を皆殺しにしようとした「フェニックス・プログラム」、あるいはイタリアで左翼を装って展開した「爆弾テロ」とその黒幕だった「グラディオ」などだ。朝鮮が嫌いだからといって、「希望的観測」をするべきではない。
2010.05.29
本コラムでも指摘しているように、韓国軍の哨戒艇「天安」が沈没した事件に関する「公式発表」は胡散臭く、説得力がない。確かに状況証拠としては、朝鮮軍が昨年11月で損害を受けた報復に出たとも見えるのだが、韓国軍の情報部が海軍に対して報復攻撃に警戒するよう警告していたこと、沈没現場がセンシティブな海域であり、細心の注意を払っていたはずであること、また哨戒艇は、米韓両軍が合同で行っていた敵軍の侵入に対処するための軍事演習「フォール・イーグル」に参加していたと思われること、しかも朝鮮軍の軍事技術は低いことなどから、韓国軍の哨戒艇に接近し、攻撃することは難しいと考える人も少なくない。ロシア政府も米韓両政府の発表を疑っているようだ。 この事件について、田中宇氏は韓国の公共放送、KBSテレビが伝えた情報を紹介している。一読する価値があるだろう。「天安」が沈んだそばにアメリカ軍の攻撃型潜水艦「コロンビア」が沈んでいる可能性があるというのだ。この潜水艦は昨年11月3日に母港のハワイを出港し、3月22日に韓国の港へ入っているという。もし、本当に沈没しているのならば、今後、何らかの形でアメリカ政府も潜水艦が「消えた理由」を説明しなければならなくなる。また、韓国のハンギョレ新聞も5月21日付けで興味深い記事を載せている。
2010.05.28
中東地域での秘密軍事工作を活発化させていることを米中央軍のデイビッド・ペトレアス司令官は認めた。中でも、重要視されている国がイランだ。2005年からアメリカとパキスタンの情報機関は「ジュンドゥラー」と呼ばれる武装集団を支援、イラン国内で破壊活動を展開し始めているが、そうした工作を発展させ、核施設に対する攻撃の準備をバラク・オバマ大統領は命じたとも報道されている。 アメリカのネットワーク局ABCによると、2005年当時、アメリカの資金はアブド・エル・マリク・レギなる人物を介して渡されていたのだが、この人物はタリバーンと手を組んでいるだけでなく、麻薬の密輸にも手を出していると言われている。 アメリカ政府が手先として使ったジュンドゥラーのメンバーは、パキスタンで訓練を受けていたという。現在、アメリカを中心とする占領軍はアフガニスタンでタリバーンと戦い、パキスタンとも関係が悪化している。 アメリカ政府はイランを「民主化」するようなことを言っているが、2009年6月にはイランで選挙が実施された。イスラム教徒の権利を認めず、破壊と殺戮を繰り返してきたイスラエルより、よほど民主的だ。 この選挙でマフムード・アフマディネジャド大統領が圧勝したのだが、この結果を認めようとしない反対派が激しい抗議活動を展開、日本を含む「西側」のメディアは反対派を「正義」として報道していた。「不正選挙に抗議する民主化勢力」という構図だが、その背後でアメリカ政府が黒幕として動いていたことを、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官も同年8月、CNNのインタビューで認めている。その際、アメリカ政府がイランの反政府派に提供した資金は数百万ドルに達したという。 実は、投票の3週間前にアメリカのNPO「TFT(恐怖のない明日)」が調査を行い、ダブルスコア以上の差でマフムード・アフマディネジャド大統領が圧勝するという結果が出ていた。つまり、ほぼ予想通りの結果であり、結果を左右するような不正があったとは言えないのである。 1953年にイランでは、ムハマド・モサデク政権がクーデターで倒されている。石油利権の維持を願うイギリスと、イランへの影響力拡大を狙うアメリカ政府の意向を受け、アメリカの情報機関CIAがシナリオを書いたのだが、この時もデモを演出していた。その際に使われた工作資金は1万ドルとも1900万ドルとも言われている。昨年の選挙でも似たような筋書きでアフマディネジャド政権を倒そうとしたのかもしれないが、失敗した。 内部からイランの現体制を倒すことに失敗した「反イラン勢力」、つまりイスラエルやアメリカの親イスラエル派としては外部からの圧力を強めるしかないのかもしれない。ネオコン(新保守/親イスラエル派)はイラクからサダム・フセインを排除し、イスラム諸国を破壊しようとしていた。同時に、経済面で成長が著しい東アジアを潰すという計画も持っていた。その延長線上に「第2次朝鮮戦争」というアイデアもあるはずだ。
2010.05.26
アメリカはイランの核開発を激しく批判し、軍事侵攻も否定していない。自らが世界最大の核兵器保有国だということを忘れ、中東にはイスラエルという世界有数の核兵器保有国があることを無視した説得力のない主張だ。 イスラエルはNPT(核不拡散条約)に加盟していない。イランはNPTのルールの中で曲がりなりにも査察を受けてきたにもかかわらず、激しく批判され、制裁されているのだが、イスラエルはお咎めなし。アメリカはイランを含む特定の国が核開発することを嫌っているのか、そうした国々を単に破壊しただけ・・・そう見られても仕方がないだろう。 アメリカがイスラエルの核開発に気づいたのは1958年のことである。CIAが飛ばした偵察機U2がネゲブ砂漠のディモナ近くで建設中の施設を発見したのだが、担当者は原子炉の疑いがあると判断した。 そこで、画像情報本部の責任者だったアーサー・ランダールはドワイト・アイゼンハワー大統領に対し、ディモナ周辺の詳細な調査を行うように求めるのだが、それ以上の調査が実行されることはなかった。後に、施設はフランスとの秘密協定に基づいて建設された2万4000キロワットの原子炉だということが判明している。 また、イスラエルの科学者は1960年2月にサハラ砂漠で行われたフランスの核実験に参加しているが、この直後にイスラエルは原爆を手にしている。1963年になると、イスラエルとフランスは共同で核実験を南西太平洋、ニュー・カレドニア島の沖で実施するのだが、両国の関係は1967年の第3次中東戦争で悪化、核開発の協力関係も崩れた。 フランスと入れ替わりで登場してきたのが南アフリカ。1968年に両国は核開発に関して協力することで合意し、イスラエルはウランを入手するかわりに核技術や兵器を提供することになる。 アメリカの研究者、サーシャ・ポラコフ・スランスキーは新著の中で、1975年に南アフリカの国防大臣だったP・W・ボタとイスラエルの国防大臣だったシモン・ペレスが会談、イスラエルが南アフリカに核弾頭を提供することで合意したことを明らかにしている。 その後、両国の関係は深まったようで、1976年1月に南アフリカはイスラエルのテルアビブに大使館を開設、同年4月には南アフリカのジョン・フォルスター首相がイスラエルを訪問している。 勿論、こうした動きをアメリカが知らなかったとは思えないが、ソ連も気づく。1977年8月、ソ連のレオニド・ブレジネフ書記長がカーター米大統領に対し、カラハリ砂漠で南アフリカが核実験を準備している証拠をコスモス衛星がつかんだと警告、この話はイギリス、フランス、そして西ドイツにも伝えられた。その直後、アメリカの衛星もカラハリ砂漠で地下核実験の準備が進んでいることを確認した。 この実験は米ソなどの圧力で中止になったが、1979年9月にはアメリカのベラ衛星が南インド洋、南アフリカの近くで強い閃光を観測、CIAやDIAは「90%以上の確率で核爆発だ」と判断した。ところが、ベラの情報だけでなく、無線通信の傍受内容、イスラエル国防相だったエツェル・ワイツマンの南アフリカ訪問などの事実をカーター政権は公表していない。ベンメナシェによると、南インド洋での実験で使用された核兵器の運搬手段は175ミリ砲だった。また、1981年にイスラエルはインド洋で水爆の実験を行っている。 そして1986年10月、イギリスのサンデー・タイムズ紙がイスラエルの核施設で働いていた技術者の証言を写真付きで報じた。その技術者がモルデカイ・バヌヌである。 バヌヌはイスラエルが保有する核弾頭の数を200発以上だとしていたが、イスラエルの軍情報部の幹部だったアリ・ベンメナシェは1981年で300発以上の原爆を保有、この年には水爆の実験にも成功しているとと主張、また1977年から81年までアメリカの大統領を務めたジミー・カーターは150発という数字を示している。 バヌヌの告発があるまで、アメリカのCIA(中央情報局)やDIA(国防情報局)はイスラエルが保有する核弾頭の数を24から30発と推測していたという。現在でもこの数字に若干上乗せした数を主張している人もいるようだが、堅めにみて百数十、おそらく数百発は持っていると考えるべきだろう。ともかく、世界有数の核兵器保有国である。 記事が掲載される前、バヌヌはイタリアでイスラエルの情報機関によって拉致された。大きな箱に押し込められ、船でイスラエルへ運ばれ、裁判にかけられている。拉致したイスラエル政府が制裁されることはない。1988年3月に懲役18年の判決を受けている。 2004年にバヌヌは出所したのだが、外国人と接触したという理由で2007年7月に懲役6カ月を言い渡され、再び収監されている。そして今年5月、また収監されている。理由は同じである。どうしてもイスラエル政府はバヌヌの口を封じておきたいようだ。 イスラエルが世界有数の核弾頭保有国であり、アメリカが核兵器の開発や核物質の入手などを容認してきた事実を語られれば、イランを批判しにくくなる。あるいは、公表されていない秘密がまだあるのかもしれない。
2010.05.26
アメリカ軍再編に絡む沖縄の基地問題で日本政府はアメリカ政府に完敗し、ヒラリー・クリントン国務長官は北京で鳩山由紀夫首相の決断に感謝したという。韓国軍の哨戒艇が沈没した事件もアメリカ政府にとって追い風になっただろう。 勿論、日米の合意に反発する声も大きい。社民党の福島瑞穂党首が「辺野古移設」を「愚策」と批判したのは当然として、民主党の小沢一郎幹事長も今回の決定を「公約違反」だと記者会見で暗に語っている。東京地検特捜部の小沢攻撃が辺野古の問題にも影響したと言えるかもしれない。 昨年10月頃、鳩山由紀夫首相は普天間基地(飛行場)をグアム、あるいは硫黄島へ移すべきだと主張、アメリカ政府と対立していたのだが、この時点で岡田克也外相や北沢俊美防衛相は早くも沖縄県外への「移設」は困難だと主張、アメリカ側についていた。 その前、つまり9月にアメリカと朝鮮は核問題について話し合う姿勢を見せていたのだが、10月に入ると、朝鮮海軍は韓国の艦船が1日に10回も領海を侵犯していると非難している。それでも、11月に朝鮮の外務大臣はアメリカ政府に対し、直接交渉に応じるよう求めていた。 そんな時、韓国軍と朝鮮軍、両軍の艦船が交戦するという事件が起こった。朝鮮軍の船は大きな損害を受けて犠牲者が出たようだ。 韓国側の説明では、朝鮮の船が領海を侵犯したので攻撃したとしているのだが、朝鮮側は越境を否定し、自国の領海を航行していた国籍不明の艦船を確認して戻るところだったと主張、韓国側に謝罪を求めている。もっとも、両国が主張する国境線が違う以上、この議論は平行線をたどるだけで結論は出ないが。 12月には朝鮮のハッカーが韓国軍のコンピュータに侵入し、朝鮮軍との戦闘を想定した作戦「Oplan 5027」を盗んだのではないかと報道されたのだが、盗んだかもしれないけれど、盗んでいないかもしれないという真偽のはっきりしない話だった。 この計画よりも危険視されているのが「OPLAN 5029-05」である。2001年にジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した直後、朝鮮国内が混乱した場合に備えて作成したと言われているのだが、「第2次朝鮮戦争」を想定しているとも疑われていた。作戦の背景には新保守(ネオコン/親イスラエル派)の思惑があったようだが、旧保守の反対で御破算になったとされている。 さて、状況としては、朝鮮軍が昨年11月の軍事衝突で損害を受けた報復として韓国軍の哨戒艇を攻撃したというシナリオが成り立つ。今年1月には韓国軍の情報機関が報復を警告していたという。そして韓国軍の哨戒艇が沈没したわけで、韓国側が反射的に朝鮮軍の報復だと思うのは当然のことだろう。 しかし、普天間基地の問題という視点から見ると、朝鮮半島の「緊張」は絶妙のタイミングで高まっていることも事実。まさか、辺野古への移設が本決まりになったら朝鮮半島の緊張も緩和という展開にはならないでしょうね?
2010.05.25
沖縄の宜野湾市にある米海兵隊の普天間基地に替わる基地を用意しろとアメリカ政府に強要され、自民党を中心とする政権は名護市辺野古沿岸部を提示、日米両政府は5年前に合意していた。これに対し、鳩山由紀夫首相は沖縄県民の反発を受け、自民党政権時代の合意を取り消し、「最低でも県外」にすると表明していた。その約束を破る決定を伝えられた沖縄の人々が怒るのは当然のことであり、政府は責任をとらなければならない。アメリカとの交渉がタフだということは、最初からわかっていたことであり、理由にはならない。 改めて書くまでもなく、沖縄の海兵隊は「抑止力」などになっていない。かつて、沖縄はアジアに正規軍が出撃したり、破壊活動の拠点になったり、秘密工作の訓練を行ったりする重要な基地として機能してきたが、そうした攻撃的な役割も過去のものになっているようだ。例えば、ジョージ・W・ブッシュ政権のイラク侵攻作戦では、ジョージア州のフォート・スチュワート、テキサス州のフォート・フード、カリフォルニア州のキャンプ・ペンドルトン、ケンタッキー州のフォート・キャンベルなどから戦闘部隊は派遣されている。イラク近くの基地は航空機の出撃に使われているようだが、それ以上に「保養施設」としての役割が大きいのだとか。 さて、今回の基地問題は、米軍の再編から派生したと言えそうだ。沖縄からグアムへ約8000名の海兵隊員と家族が移動するらしいが、この移動がアメリカで問題になっている。現在の推計では移設の経費は合計で107億ドル、そのうち日本が60億9000万ドルを負担することになっているそうだが、沖縄以外からグアムへ移る部隊の経費、訓練施設の造成、軍組織の増強等々の経費が含まれていないと指摘されている。要するに、最終的にどの程度の経費が必要になるのかが明確でない。そのグアムの施設も随分、贅沢なようだ。 ブッシュ・ジュニア政権の時代、アメリカには「中国の脅威」を叫び、「第2次朝鮮戦争」を目論む勢力が存在していた。海兵隊を抑止力と考えることはできないが、殴り込みの先兵にはなる。ネオコン(新保守/親イスラエル派)が主導権を奪い返したとき、沖縄の基地も必要になるのかもしれない。
2010.05.24
デニス・ブレア国家情報長官が辞表を提出した。昨年12月、オランダのアムステルダムからアメリカのデトロイトへ向かっていた旅客機で爆弾騒動があり、その責任をとった形だ。 この事件は、ナイジェリア人のウマール・ファルーク・アブドゥルムタッラーブが80グラムのPETN(四硝酸ペンタエリトリトール)を使った簡単な爆弾を下着の中に隠して機内へ持ち込み、爆破させようとしたというもの。結局は未遂に終わり、デトロイト空港へ旅客機は無事、着陸している。 事件前、イギリスの情報機関は「ウマール・ファルーク」という人物がアンワール・アルアウラキ、つまり破壊活動に関係し、イエメンにいると言われているイスラムの聖職者に接触しているとアメリカに通告、ウマールの父親、この人物はアフリカ屈指の富豪でナイジェリア第一銀行の元会長だが、この父親はCIAのオフィサーふたりに対し、息子の「過激な信仰」について報告している。 つまり、アメリカの当局はこの段階でウマールを要注意人物として認識していたはず。議会での証言によると、国務省はウマールのビザを無効にするよう主張したが、情報機関はアルカイダの調査に支障が生じるという理由で反対したという。アメリカの情報機関はアルカイダとの関係も疑っていたのだろう。そういう人物が旅客機に爆発物を持ち込めたことに不自然さを感じる人は少なくない。そこで、ブレア長官を排除したいと考える勢力の思惑が事件の背後で働いていたという疑いが生じる。 ジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した当時、ブレアは太平洋軍の総司令官を務めていたのだが、ブッシュ政権のネオコン(新保守/親イスラエル派)と中国をめぐって対立していた。 ドナルド・ラムズフェルド国防長官の命令で作成された報告書は、中国の長距離ミサイルの開発などで太平洋地域における米軍基地や空母は脅威にさらされていると強調していたのだが、ブレア提督はこうした見方を否定、中国は脅威でないと批判していた。その結果、政府はブレア提督を排除することになる。そのブレア提督をバラク・オバマ大統領が呼び戻していたのだ。 DCIとして、ブレア提督はイラン攻撃に慎重な姿勢を見せていた。この態度にもネオコンなどの好戦派は不快感を感じ、どうしても排除したいと考えていた可能性が高い。つまり、ブレア提督をDCIの座から引きずり下ろすことに成功したネオコンの影響力がホワイトハウスで強まっているとも考えられる。 東アジアの情勢も予断を許さない。そうした流れの中、韓国軍の哨戒艇が沈没したというのも奇妙な偶然だ。前にも書いたように、韓国の情報機関は今年の初め、海軍に対して朝鮮軍の報復攻撃に警戒するように伝えていたわけで、本来なら厳重な警戒態勢にあったはず。そこへ技術水準の低い朝鮮軍の潜水艦が近づき、攻撃したというシナリオにも不自然さがある。 ブレア長官の辞任は沖縄の問題にも影響してくるかもしれない。
2010.05.22
案の定、アメリカのイラン制裁案にトルコとブラジルは不快感を示している。自分たちがイランと合意した濃縮ウランとウラン燃料のスワップ取引を否定されたのだから当然のことだが、イランの核問題についてアメリカが話し合いで解決する気のないことも印象づけてしまった。アメリカへの信頼度がさらに低下するということだ。 その結果、「西とイランの対決」という構図から「北と南の対決」という構図に変化していく可能性がある。イラン/トルコ/ブラジルのスワップ取引合意の直後にイラン制裁の強化を表明したのは戦術的に正しかったとしても、戦略的には大きな失敗だったと言えるだろう。 イラク、アフガニスタン、パキスタンでも似たような間違いをアメリカは仕出かしている。NATOのデータでも今年1月から4月にかけて90名の市民が占領軍によって殺されているのだが、こうした殺戮が武装グループの兵士を増やしていることは否定できない。 最近、特に問題視されているのが無人機による暗殺工作。その実態は秘密にされているのだが、無人機を使った作戦を展開され、その過程で戦闘とは関係のない多くの人々を殺害していることは間違いない。 無人機を使用すれば、アメリカ人が殺されるリスクを冒さずターゲットを殺すことができる。そこで、アメリカ軍を撤退させて無人機や巡航ミサイルを使い、場合によっては空爆し、地上での活動が必要なら少人数の特殊部隊を投入すれば良いという議論も出てきた。が、そうした殺戮は何らかの形で自分たちに跳ね返ってくる。 ニューヨークのタイムズ・スクエアに「爆弾」を仕掛けたファイサル・シャーザドのような人間が次々に出てくる可能性があるということだ。そうした事態に備えてイスラム教徒に対する監視を強化し、場合によっては追い出すという方向へ向かうかもしれないが、アメリカを要塞化しても根本的な解決にはならない。外に出ないわけにはいかないからである。 現在、超小型の無人機、つまり窓から中のターゲットを殺すことのできる殺人マシーンを開発中だとも言われているが、そんなものを作り出してもアメリカが世界で孤立するだけの話だ。 ベトナム戦争では、CIAの破壊工作部門が軍の特殊部隊と手を組んで「フェニックス・プログラム」という「皆殺し作戦」を展開した。反米的な雰囲気の地域に住む村民を皆殺しにして恐怖で屈服させようとしたのだろうが、成功していない。このプログラムの残党がジョージ・W・ブッシュ政権で要職に就いていることもイラクやアフガニスタンでの作戦に影響しているかもしれない。 1968年3月、ウィリアム・カリー中尉に率いられた部隊がソンミ村(ミ・ライ)の住民350名以上を虐殺しているのだが、この虐殺もフェニックス・プログラムの一環だった。だからこそ、虐殺の当事者が厳罰に処されることはなかったのである。責任を問われるべきだったのはフェニックス・プログラムを指揮していた情報機関の幹部だった。アメリカ人はベトナム戦争から何も学ばず、21世紀になっても同じ失敗を繰り返している。
2010.05.20
株式であろうと商品であろうと指数であろうと、相場の値動きは資金の動きが反映されている。資金の動きを決める原因は数え切れないほど存在するが、最近では、投機資金の規制強化が重要なファクターになったと見るべきだろう。知られたくない秘密が露見することを投機筋は恐れ、相場の下落につながっているかもしれない。 17日にEUの欧州議会はヘッジ・ファンドとプライベート・エクイティへの規制強化案を承認し、翌18日には財務相理事会が規制強化を支持した。遅きに失した感は否めないものの、それでも「遣らずぶったくり経済」を修正するための第一歩とは言える。 投機資金が肥大化した大きな原因は、富が社会的に優位な立場にある巨大企業や一部富裕層に偏在したことにある。日本でも下請け企業や労働者に適切な対価が支払われず、多くの庶民が貧困化する一方で、支配層では「カネ余り」と呼ばれる現象が起こったわけである。余ったカネを支配層は社会に還流させず、博奕で儲けようとした。それがカジノ経済である。本コラムでは何度も書いているので食傷気味の人もいるだろうが、この事実を忘れてはならない。 日本では「国際競争力」という呪文を今でも唱え、巨大企業が大儲けできるシステムをさらに推進しようとしている。大企業が儲かれば社会が潤うという意味不明の主張なのだが、現実は社会を疲弊させるだけだった。理屈で考えても、そういう結果は予想されていたことだが。
2010.05.20
韓国軍の哨戒艇が沈没した事件を調べていた「国際軍民合同調査団」は、「北朝鮮の小型潜水艦・艇による発射以外に説明がつかない」という結論に達したという。当初から韓国軍の情報部は朝鮮軍の「人間魚雷」による攻撃だと主張していたので、驚く内容とは言えない。 状況証拠は確かに朝鮮軍による攻撃を示している。事件までの流れを振り返ると、昨年10月の段階で朝鮮側は韓国の艦船が1日に10回も領海を侵犯していると非難、昨年11月には韓国軍の艦船が朝鮮軍の艦船を撃沈している。朝鮮側は国境線は越えていないと主張し、国籍不明の艦船を調査して戻ろうとしているときに攻撃されたとしていた。韓国と朝鮮、双方が相手に謝罪を求めていた。問題の地域は「国境」が確定していないため、非難合戦は延々と続くしかない。 この撃沈に対する報復を朝鮮軍は考えていると韓国の軍情報部は考え、今年の初めには海軍に対して警告していたという。つまり、北側からの攻撃だったとしても、韓国海軍の責任が問われる可能性はある。 勿論、別のシナリオもありえる。朝鮮軍を装った何者かによる攻撃だということだ。沈没現場の近くで「北朝鮮製とみられるスクリューの破片」が回収されたというが、決定的な証拠とは言えない。その程度の工作ができる国や組織は少なくないだろう。 過去を振り返ると、1960年代の「ノースウッズ作戦」がすぐ頭に浮かぶ。アメリカ軍がキューバを装ってアメリカの都市で「テロ」を実行、最終的には無人の旅客機を自爆させてキューバ軍に撃墜されたように見せかけようとしたのだ。また、ベトナム戦争へアメリカ軍が本格的に介入する切っ掛けになった「トンキン湾事件」では、アメリカの特殊部隊員に率いられたチームが攻撃を仕掛けていた。また、1982年10月にスウェーデン領海へ「国籍不明」の潜水艦が侵入した際、ソ連の潜水艦だという情報が広められたのだが、ノルウェーの情報機関は「西側」の潜水艦だった可能性が高いとしているようだ。 朝鮮軍による攻撃なのか、何者かによる「偽装攻撃」なのか、どちらのシナリオもありえる。要するに、現段階で結論を出すのは早すぎると言うことだ。
2010.05.20
経済産業省がまとめた「産業構造ビジョン」の中で法人税の「実効税率」を40.7%から25~30%に引き下げると提案され、直嶋政行経済産業相も法人税の引き下げを目指すと表明したという。マスコミも「主要国で最も高い水準」という枕を必ずと言って良いほどつけて法人税引き下げにエールを送っている。破綻している議論を蒸し返し、日本社会から富をさらに吸い上げようということのようだ。 「実効税率」の比較で法人の税負担を比べられないことは、多くの人に指摘されてきた。例えば、社会保険料の事業主負担額が日本は低いということのほか、地方の法人課税で、所得課税以外の方式による課税が比較の対象になっていない、また課税ベースが国によって異なっている等々。 単純に「実効税率」を比較しても意味がないことは国際的な共通認識になっているようで、法人所得課税と企業課税、法人が負担する不動産課税、そして社会保険料の事業主負担を加えた額などを、GDP(国内総生産)と比較するようになっている。神奈川県総務部税制企画担当課長だった井立雅之によると、2004年における対GDP比による国際比較は次にようになっている。A【法人所得課税】日:3.8、米:2.2、英:2.9、独:1.6、伊:2.8、仏:2.8B【A、地方事業課税等、不動産課税、社会保険料負担】日:9.4、米:7.2、英:8.3、独:9.2、伊:14.3、仏:15.8C【B、民間医療保険負担】日:9.4、米:11.2、英:8.3、独:9.2、伊:14.3、仏:15.8 これだけ見ても、日本の法人負担が重いとは言えないことがわかる。「実効税率」の比較とは、「重さ」を比較すると称してキログラムで表示された数字も、ポンドで表示された数字も一緒にして比べているようなものであり、無意味なのである。 ちなみに、直嶋大臣はトヨタ労組専従の出身で、その秘書はトヨタから派遣されたトヨタの正社員で、トヨタ労組専従員として年間で合計1200万円を超す給与の提供を受けているそうである。(渡邉正裕、林克明共著『トヨタの闇』ちくま文庫、2010年) 最近では、アメリカや西ヨーロッパ諸国では、法人や富裕層への課税を強化するべきだとする流れになっている。投機資本の一端が明らかになり、これまでのような「遣らずぶったくり」経済は通用しなくなったということだ。 「タックスヘブン」についても議論する必要がある。それにしても、日本人支配層の強欲さにはあきれる。
2010.05.19
イランが保有する濃縮ウランをトルコに搬出し、国外からイランへウラン燃料を搬入するというスワップ取引について、イラン、トルコ、ブラジルの3国が合意したのは16日のことだった。早速、中国政府はこの合意を歓迎すると表明しているが、その一方で18日にヒラリー・クリントン米国務長官は上院外交委員会で、新たなイラン制裁の決議案に中国とロシアが合意したと証言した。 クリントン長官が言うところの決議案の内容は不明だが、イラン/トルコ/ブラジルのスワップ取引合意を受け、慌てて「イラン制裁」をアピールしているようにも見える。合意されたスワップ取引を中国政府が歓迎していることを考えると、アメリカの「制裁決議案」はかなり中国やロシアに妥協した内容になっている可能性がある。 イラクへ軍事侵攻する前と同じ「手口」をアメリカは使っているが、最初のケースでアメリカが嘘八百を並べていたことが明らかになっているわけで、前回と同じように事態が進むとは考えにくい。支配層はイラン攻撃の方向に向かっているようだが、それだけで世界は動かない。無理をすれば、自分たちの支配システムが崩れることもありえる。 イギリスでは政権が交代し、自分を「イスラエルの生まれながらの友人」だと公言するウィリアム・ハーグが外務大臣に就任しているが、その一方でイラク攻撃へ至る過程について、ジョン・チルコットの委員会は調査を続けている。その調査はアメリカの政府高官や将校に及び、トニー・ブレア英首相は開戦の1年以上前にイラク攻撃に合意していたとする証言も得られた。 イラン問題とはイスラエル問題でもあるわけだが、イスラエル政府を後ろ盾としていたブレア首相がアメリカのネオコン(親イスラエル派)が描いたシナリオに合意するのは自然の成り行きだ。そのイスラエルがイランとは比較にならないほど深刻な核問題を抱えていることは、改めて書くまでもないだろう。 ともかく、イラン制裁決議案がどのような内容なのか、早く見たいものである。
2010.05.18
イランが保有する濃縮ウラン(濃度3.5%)1.2トンを隣国のトルコに搬出し、国外で加工されたウラン燃料(濃度20%)を搬入する交換取引を実施することで、イラン政府はトルコ政府とブラジル政府と合意したと報道されている。ウラン燃料がイランに渡されなかった場合、トルコはイランから搬出された濃縮ウランを返すことになっているという。とりあえず、これまで「西側」諸国が求めていたことを実行するというわけで、イラン攻撃はしにくい状況になった。 こうなると、西側としては今回のスワップ取引を無視するしかないだろうが、完全に無視することも難しい。何しろ、トルコはNATO加盟国である。罵詈雑言を浴びせるわけにもいかないだろう。 また、ブラジルを敵に回せば、ラテン・アメリカ諸国全体を敵に回すことにもなりかねない。勿論、中東のイスラム諸国はこれまで自分たちを搾取してきた西側諸国に対する積年の怨みがある。難癖のつけるにしても、慎重さが必要だ。 ところで、イスラエルの核兵器保有に関し、西側諸国は依然として寛大な姿勢を崩していない。今回の取り引きに関する対応を間違えると、イスラエル問題で揺れるIAEA(国際原子力機関)にとって危険な状況を招く可能性もある。
2010.05.17
OECDの加盟だけでなく、現在のイスラエルは全ての点でアメリカの支援なしには存在しえない。公然とアメリカからイスラエルへ渡っている資金は30億ドルに達するが、それ以外に水面下で流れている資金の総額は見当がつかず、「膨大」としか表現できない。 そうした資金供給、さらに技術的な支援でイスラエルは工業化を進めたのだが、その中核は軍需産業である。国連でもアメリカという「盾」がなければ、イスラエルは攻撃の矢面に立たされる。1990年代にアメリカのネオコン(新保守=親イスラエル派)は、イスラエルをアメリカから自立させると主張していたが、亡命ロシア人の力をもってしても、これは無理だろう。 しかし、アメリカという「盾」も最近は腐食が著しい。イギリスに「親イスラエル派」を公言する外務大臣が誕生し、OECDへの加盟も決まったとはいうものの、それでもイスラエルが厳しい状況下に置かれていることは間違いないだろう。ガザ地区への軍事侵攻を調査したリチャード・ゴールドストーンを委員長とする国連の調査委員会の報告は現に存在し、核兵器の保有を批判する声はIAEA(国際原子力機関)の中でも高まっている。イスラエルの核兵器開発を暴露したモルデカイ・バヌヌを正当な理由なく拘束せざるを得ない状況だ。 民主化勢力を弾圧し、言論を封殺しなければならないほどイスラエルの現体制は追い詰められている。例えば、イスラエル軍はヨルダン川西岸でパレスチナ人ターゲットを、逮捕でなく暗殺したことを示す機密文書を暴露した記者を逮捕、起訴しようとしている。 この文書をイスラエルのハーレツ紙に持ち込んだアナト・カムは昨年12月に逮捕され、記事を書いたウリ・ブラウ記者は現在、ロンドンにいると言われている。イギリスの政権交代でどうなるか・・・イスラエルの治安当局はあらゆる手段を講じて連れ戻すとしているようなので、また拉致するつもりなのかもしれない。16日には、アメリカの「ユダヤ系学者」でイスラエルの政策を批判し続けているノーム・チョムスキーMIT教授の入国をイスラエル政府は拒否している。 チョムスキーやノーマン・フィンケルスタインたちは「ユダヤ系」だが、激しくイスラエルの政策を批判している学者だ。さらに、少なからぬ「正統派ユダヤ教」のラビ(聖職者)がシオニズムはユダヤ教の教えに反していると主張、イスラエル政府によるパレスチナ人弾圧を厳しく批判している。 近代シオニズムの歴史を振り返ると、1838年にイギリスはエルサレムに領事館を建設、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査し、40年にイギリスのタイムズ紙は、同国政府が「ユダヤ人」の復興を考えていると報じている。近代シオニズムはセオドール・ヘルツルが1896年に始めたとされているが、その遙か前にイギリスは「イスラエル」建国に向かって動き始めていたということだ。 実は、1620年にシオニストがメイフラワー号でアメリカ大陸、現在のマサチューセッツ州プリマスに上陸した時点で「ピルグリム(巡礼者)・ファーザーズ」の聖職者は「ユダヤ人の国」をパレスチナに建設するべきだと考えていた。彼らは、自分たちこそがアメリカを開拓する使命を神から授かった人間であり、先住民は野蛮で未開の「サタンの息子」だとして殲滅すべき対象だと主張した。そして、後の大虐殺へつながる。イスラエルの歴史と酷似している。 そのアメリカでは、タイムズ・スクエアでの爆破未遂事件はパキスタンのタリバンが黒幕だとする話が政府から発信されている。軍ではなく、国務省や司法省から出ている話なのだが、「爆発物」に爆発しない物質が使用されているなど、爆弾の製造に精通している人間ではありえない間違いをしている。共犯者として3名が逮捕されているようだが、現段階では説得力のある逮捕理由は示されていない。インチキっぽいのだ。イスラエルを助けるための陽動作戦なのかもしれないが。 すでにアメリカはパキスタンの西部で軍事作戦を展開し、多くの市民を虐殺している。そうした現実に憤慨したことがファイサル・シャーザドを爆弾作りに向かわせたとする見方もある。日本のマスコミもそうだが、どうしてもタイムズ・スクエアの件をアフガニスタンやパキスタンの「武装勢力」とアメリカ軍との戦闘という構図に持っていこうとすると、容疑者の背後にはタリバンがいて、そうした戦闘の一環として爆弾を仕掛けたというシナリオにしなければならない。 このシナリオが暴走するとパキスタンでの大規模な軍事衝突に発展する可能性も出てくる。イスラム世界を瓦礫の山にして、イスラエルが全域を制圧するという妄想もありえるだろうが、そうなると世界規模でレジスタンスが始まるだろうし、中東全域が火の海に包まれて石油生産が止まったらどうするのか・・・。バラク・オバマ政権は危ない橋を渡っている。
2010.05.17
イスラエルをめぐり、ふたつの流れが激突している。ガザへの軍事侵攻で人道法や人権法に違反する多くの行為があったと国連の調査委員会に指摘され、シン・ベト(防諜/治安機関)の「反対派狩り」が問題視されているなどマイナス方向の流れがひとつ。逆の流れは「OECD加盟」に象徴される親イスラエル派の巻き返しだ。 本コラムでは何度も書いていることだが、こうしたイスラエルをめぐる動きが活発化した大きな原因は、ロシアからロンドンやイスラエルへ逃げ込んだ亡命ロシア人にあるだろう。ボリス・エリツィン時代に規制緩和と民営化で国の資産を不公正な手段で手に入れ、巨万の富を築いた人々である。そうしたグループの象徴的な存在がボリス・ベレゾフスキー(亡命後、プラトン・エレーニンに改名)だ。 ベレゾフスキーの人脈をみると、メディア帝国を築いてきたルパート・マードックや1980年代に「ジャンク・ボンド」の販売で違法行為が発覚して有罪判決を受けたマイケル・ミルケンと親しく、ジョージ・W・ブッシュ前大統領の弟であるニール・ブッシュと共同でビジネスを展開しているのだが、それ以上に重要なコネクションは、ジェイコブ・ロスチャイルド卿と息子のナット・ロスチャイルドだ。 ロスチャイルド親子が住むイギリスでは政権が交代し、保守党と自民党の連立内閣が誕生した。その外相となったウィリアム・ハーグはワシントンで、イギリスとアメリカとの関係は壊れることがないと宣言し、アフガニスタンでの戦争やイランに対する米国主導の敵対行為を支援すると表明した。 ハーグは自分を「イスラエルの生まれながらの友人」だと公言、イランに対する圧力が不十分だと不満を表明していた人物。イスラエル政府を後ろ盾とするトニー・ブレアが退場した後の労働党政権はイスラエルに批判的な姿勢を見せていただけに、イスラエル政府にとっては「良い知らせ」だろう。 イギリスとイスラエルとの関係を悪化させた一因は、今年1月にアラブ首長国連邦のドバイでハマスの軍事部門を創設した幹部、マームード・アルマボーが暗殺された事件。モサド(イスラエルの情報機関)の犯行だったのだが、暗殺グループがイギリスのパスポートを偽造して使っていたことから、前政権は調査を警察に命じていた。 この事件を追及していけば、モサドの長官だけでなく、イスラエル政府の責任も問われなければならなくなってしまう。ハーグ外相の「軽口」が深刻な問題を招く可能性もあるだろう。 イスラエルの加盟を認めたOECDも人ごとではない。ガザ地区を巨大な壁で囲んで兵糧攻めを実施、事実上の収容所にしただけでなく、軍事侵攻で多くの市民を殺害し、国連の施設まで破壊、ヨルダン川西岸ではパレスチナ人の人権を無視した形で土地を奪い、エルサレムの完全支配もイスラエルは狙っている。こうした反民主主義的な政策を批判する人やグループに対する弾圧も激しく、善く言ってもイスラエルは「警察国家」である。そもそもイスラエルには主権者としての「国民」が存在しない。国民という概念を導入すると、アラブ系住民の権利を認めなければならないからである。
2010.05.17
先週末から今週の初めにかけてアメリカの株式相場が急反発した。ギリシャの財政問題への対策が功を奏したというような「解説」をメディアは伝えているようだが、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)をめぐる動きも無視できない。「金融改革法案」の採決でFRBは「独立」を維持することに成功、つまり権力を維持することに成功したのである。言い換えると、金融/投機機関は国民による監視要求を押し戻したということだ。次は消費者向けの金融商品を規制する権限をFRBは取り戻そうとしているようだが、図に乗りすぎである。
2010.05.13
イスラエルのアビグドル・リーバーマン外相が来日し、鳩山由紀夫首相や岡田克也外相と会談、岡田外相とは「安全保障」について議論し、OECDのイスラエル受け入れで日本の支援に感謝したという。経済面の交流を促進するためとして、ビジネス界の人間とも会っている。 12日の会見でリーバーマン外相は自国の核兵器大量保有(70発から400発、ジミー・カーター元大統領は150発と主張)を棚に上げ、朝鮮とイランの核開発を非難した。さらに「大量破壊兵器」を生産して世界に広めているとしたうえで、朝鮮、イラン、そしてシリアを「邪悪な枢軸」と表現、イラク攻撃前のデジャブを感じさせる。さらに、昨年12月にバンコックで押さえられた輸送機は朝鮮からハマスへ武器を運んでいたとも非難している。 イラク攻撃の時に使われ、偽情報の象徴的な用語になった「大量破壊兵器」をまた持ち出してきたのには驚かされるが、パレスチナ人から生活空間を奪う「入植」をあたかも些細な問題であるかのように語る無神経さにも呆れる。入植地の問題にはアメリカ政府も批判的な発言をしなければならないほど国際的に非難されているのであり、ハマス人気にもつながっている。入植問題と真正面から向き合おうとしない姿勢は自らの首を絞めることになる。 2003年3月にガザ地区のラファーで殺されたアメリカの学生だったレイチェル・コリーの場合、イスラエル軍のブルドーザーが彼女を生き埋めにしている。パレスチナ人の生活を破壊するという点で最近の入植地問題と同じ流れの中にある。現在、コリーの遺族がイスラエル国防省を訴えているが、イスラエル政府がこの問題に神経を使っていることは間違いない。つまり、リーバーマン外相の入植地に関する発言は一種の「ハッタリ」だと言えるだろう。 入植問題の背後には、エリツィン時代の「規制緩和」と「民営化」で巨万の富を築き、プーチン時代にロンドンやイスラエルへ財産と一緒に亡命した人たちが存在し、旧ソ連圏からの移民が関係している。また、亡命した富豪たちがイギリスでロスチャルド一族を含む富豪たちと結びついていることも忘れてはならないだろう。一時期、イスラエルへの影響力を弱めていたロスチャイルドが動いている可能性がある。 ガザ地区への軍事侵攻でイスラエル側に人道法や人権法に違反する多くの行為があったことは、リチャード・ゴールドストーンを委員長とする国連の調査委員会も報告書の中で認めている。そうしたこともあり、イギリスの現政権はイスラエルの閣僚が同国へ入ることを事実上、認めていないのだが、今回の選挙で第一党になった保守党で「影の外相」を務め、新政権でも外相となったウィリアム・ハーグは自分を「イスラエルの生まれながらの友人」だと表現したうえ、イランへの攻撃にも肯定的な意見を表明した。 イスラエル政府をスポンサーとしていたトニー・ブレアが去った労働党にかわり、イスラエルへの肩入れを公然と表明する保守党の政権がイギリスに誕生した。亡命ロシア人とロスチャイルドを中心とする支配層の影響は無視できない。 日本の民主党はイギリスの「ニュー・レーバー(親イスラエル派)」を自分たちの「手本」にしていたが、次は親イスラエルの保守党?
2010.05.13
トヨタ自動車の連結決算が良かったそうだ。今年3月期の売上高は前年度比7.7%減の18兆9509億円だったが、営業損益は4610億円の赤字から1475億円の黒字に転換したという。「厳しいコスト削減」で「体質改善は着実に進んでいる」と豊田章男社長は記者会見で言ったそうだが、要するに労働者や下請け企業からカネを搾り取っているというだけの話。トヨタは「死のダイエット」を実行しているのだということを認識すべきだ。 日本の大企業に「技術力」はない。技術の開発、特に基礎技術の開発に経営陣がカネを出さないことが最大の原因だ。1970年代あたりまでは、アメリカで開発された技術を自社のエンジニアに改良させ、売っていた。決して日本のエンジニアに問題があるわけではない。エンジニアに研究させない経営者に問題があるのだ。7、8割の確率で商品化しろと言われれば、独創的な研究などできない。 1980年代、日本の大企業は「株価操縦」を利用して資金を調達していた。つまり、株価を引き上げ、その相場水準で時価発行増資したり、転換社債を発行したりしたのだ。言わば、濡れ手で粟の錬金術である。その資金力で半導体業界は売り上げを伸ばしたが、その実態を見ると、技術力のいらない製品を薄利多売していただけの話だった。 ここで思い出すのはソ連。この国も失敗が許されなかったようで、独創的な研究は少なかった。「成果主義」の先輩でもある。「成果主義」を導入すると、現場は高く評価される「成果」を求め、結果として表れにくい地道な活動は避けるようになる。その結果、組織は衰退していく。日本はソ連と同じ道を歩いているとしか思えない。 これはトヨタに限った話でなく、日本の巨大メーカー共通の問題だが、このところ、現場のエンジニアや研究者が疲弊し、精神的に参って休まざるをえない人が少なくないらしい。すると、経営者は別の部署からエンジニアを出張させることで対応し、さらに現場は疲弊するという悪循環に陥っている。 かつて、日本の製造業は優秀な「職人」によって支えられていた。本体だけでなく、下請け企業群の能力は日本を支えていたのである。ところが、現場では非正規の労働者が増えて技術の継承が困難になり、下請け企業も食いつぶされている。日本のメーカーは危機的な状況にあるのだが、経営陣に危機感は感じられない。 メーカーの中には、インドや中国のエンジニアを採用して切り抜けようとしている会社もあるようだが、日本人の技術水準が下がれば、日本企業の生産開発能力を維持することが難しくなる。 トヨタの体質を知るためには、1969年に起こった事故を考えるのが一番だろう。同社が開発したレーシング・カーがヤマハのテスト・コースで事故を起こし、ドライバーの福沢幸雄が死亡したのである。この事故でトヨタや警察の動きに不自然なものがあることは当時から指摘され、青木慧は『福沢幸雄事件』を、また黒井尚志は『レーサーの死』を書いている。事故の詳細に興味のある人には、これらの本を読んでもらうとして、ここではひとつだけ指摘しておきたい。事故が起こったのは「ヤマハ」のコースだった。トヨタではない。技術開発に対するトヨタの姿勢はこんなものだったのであり、その基本は今でも変化しているとは思えない。
2010.05.12
アメリカでは、バラク・オバマ政権も「テロ対策」を口実として、逮捕から取り調べまでの手続きを「緩和」しようとしている。容疑者に対し、どのような権利が認められているかを告知しなくて良いということのようだが、親イスラエル派で知られるジョー・リーバーマン上院議員は、「テロ容疑者」から市民権を剥奪するための法律を作れと要求している。 どうやら、彼が想定している「テロリスト」はイスラム教徒だけのようである。過去にアメリカがキューバに対して実行した「テロ行為」の実行者は対象になっていないようなので、これまで通り、アメリカで平和に暮らしていけそうだ。また、彼が信奉するイスラエルの歴代首相の何人かは「元テロリスト」なのだが、そうしたテロリストも考慮していない。要するに、リーバーマン議員が考えているのは「反イスラム法」である。アメリカには悪名高い「殺人者」も存在しているが、こうした人々から権利を剥奪するべきだとも考えていないようだ。 そうした殺人者とは、例えば「マンソン・ファミリー」を率いていたチャールズ・マンソン。1969年に映画監督ロマン・ポランスキーの妻だったシャロン・テートや食品雑貨チェーンを経営するレノ・ラビアンカの妻、ローズマリーを殺害したことで知られている。その前年に公開された「ローズマリーの赤ちゃん」という「悪魔崇拝」をテーマにした映画をポランスキーは監督している。 また、1976年から77年にかけて「悪魔の命令」で6名を殺したというデービッド・ベルコウィッツ。後に、自分自身で手を下したのは3名だけで、残りはサタンを崇拝するカルトの仲間が殺したと主張している。ガーリー・リッジウェイの場合、1980年代から90年代にかけて48名以上の女性を殺したという。 ところで、「テロリスト」とは具体的に誰を指しているのだろうか?アメリカの情報機関や捜査当局は戦争に反対する人や組織を最も警戒し、非合法な手段も使って監視してきた。「テロとの戦争」という口実でも反戦/平和運動は危険視され、盗聴のターゲットにもなっている。 かつて、アメリカ政府が「自由の戦士」と呼んでいたアル・カイダのようなイスラム武装勢力を現在、同じ政府が「テロリスト」だとしている。「自由の戦士」にしろ「レジスタンス」にしろ、支配者側から見れば「テロリスト」ということになる。つまり「テロリスト」を理由にして諸権利を奪うということは、反対派の弾圧にルールをなくすと言っているに等しい。つまり、ナチス時代のドイツや治安維持法が猛威をふるった時代の日本、あるいはヨシフ・スターリン時代のソ連と同じにするということだ。 戦後、アメリカを黒幕とする軍事政権は巨大資本の金儲けを容易にするため、反対勢力を徹底的に弾圧した。拉致、拷問、殺害・・・あらゆる手段が使われた。ラテン・アメリカで軍事クーデターを起こした軍人たちの多くは、アメリカ軍が創設したSOA(現在はWHISCまたはWHINSECと呼ばれる)で訓練を受けてきた。つまり、弾圧は御手の物というわけだ。
2010.05.11
ギリシャの財政危機を日本のマスコミも盛んに取り上げているのだが、核心部分に触れようとしていない。改めて言うまでもないだろうが、この問題の根には例のゴールドマン・サックスが存在していた。ギリシャ内部の腐敗した連中と手を組み、ターゲットを借金漬けにして「尻の毛」まで抜いてやろうという商売をしたと批判されている。犯罪組織がよく使う手法だ。ギリシャのケースでは、借金の急増を国民やEUに知られないようにしつつ、投機集団からカネを受け取り、その代償として公共部門の収入を差し出すということが行われていたと言われている。 借金を隠す手助けをしただけでなく、投機資金はCDSで儲けている。Credit Default Swapのイニシャルだが、日本ではそのまま「クレジット・デフォルト・スワップ」と呼んでいるらしい。要するに、債権者が債務不履行のリスクを回避するため、幾ばくかのカネ(保険料)を支払ってリスクを引き受けてもらうという取り引き。「連帯保証人」をビジネス化したようなものとも言える。(日本では、悪徳高利貸しがこの制度をよく使う。返済不能なだらしない人間にカネを貸し、お人好しの金持ちを連帯保証人にするわけだ。金銭感覚のない芸能人が被害にあったという話も聞く。) このCDSを広めることになった法律が「CFMA(商品先物現代化法)」。ビル・クリントン大統領の任期が終わろうとしていた2000年12月にアメリカの議会を通過したのだが、その強力な推進者の一人がアラン・グリーンスパン連邦準備制度理事会議長だった。 ギリシャの庶民からしてみると、自国の一部エリートが外国の投機集団と手を組み、自分たちの知らないところで多額の借金を作り、その借金を押しつけようとしているということになる。しかも、混乱の切っ掛けは、「格付け会社」(投機集団の仲間だが)によるギリシャ国債の格付け引き下げ。先頃、ギリシャでは大規模なデモがあったそうだが、当然のことだろう。 少なくとも結果から見ると、借金漬けのギリシャはアメリカがEUの内部に送り込んだ「トロイの木馬」だった。「ドル」に未来がない今、「ユーロ」を支配しようとしているようにも見える。EU内の巨大資本がギリシャの民営化された企業を乗っ取ろうと狙っているとも言われている。日本人にとっても人ごとではない。誰が日本を借金まみれにし、誰が大儲けしたのか・・・ということだ。(福祉が・・・などという戯言を口にするのは時間の無駄だ。どこに富が滞留しているかを見れば一目瞭然。) このままゴールドマン・サックスをはじめとする金融機関/投機集団を放置しておくと現在の支配システム自体が揺らぎかねない。やはり、アメリカ政府としても金融規制は避けて通れない問題だろう。
2010.05.11
ヒラリー・クリントン国務長官がパキスタン政府に対し、武装勢力に対する掃討作戦を強化するように脅し挙げた翌日、つまり9日、エリック・ホルダー司法長官はタイムズ・スクエアの爆破未遂犯の背後にTTP(テーリーク・エ・タリバン・パキスタン)が存在することを示す証拠があると繰り返している。具体的なことが明確でないので何とも言えないが、2日前にアメリカ中央軍のデイビッド・ペトレアス司令官が語った「単独犯行説」を否定しているように聞こえる。 事件直後、パキスタンの情報将校は事件にタリバンが関与していることを示す信頼できる情報はないと発言、パキスタンの外相はアメリカ軍の無人機による市民虐殺への報復という見方を示していた。戦闘と関係のない市民が昨年だけで700人前後が殺されたと言われている。WikiLeaksが公開した映像でもわかるように、占領軍は地元住民の命を軽く見ていることは明白だ。イラクやアフガニスタンでの軍事行動には沖縄に駐留している海兵隊も深く関係しているからなのか、こうした残虐行為を日本のマスコミは報道せず、政治家も触れたがらない。 パキスタンだけでなく、アフガニスタンでもイラクでも反米感情は爆発寸前まで高まっている。これ以上、軍事力で抑えつけようとしても無理だろう。「親米政権」まで崩壊させてしまう。ま、イスラエルの思うつぼかもしれないが。
2010.05.09
前原誠司国土交通相は7日の記者会見で、消費税の増税と法人税の減税を主張、所得税の累進率に関しては触れなかったようだ。庶民からカネを巻き上げ、巨大企業や富裕層のカネ儲けを助ける、要するに貧富の差を拡大させると宣言したわけである。すでに破綻している「理論」に執着している様子はカルト教団の狂信的な信者を彷彿とさせる。 何もしなければ、システム上、社会的に優位な立場にある組織や個人、つまり巨大資本や支配層に富は集中することになっている。中小企業や労働者に適切な対価を支払わず、余ったカネは投機資金(博奕)として使うので、経済活動は破綻してしまう。だからこそ、大企業を野放しにするわけにはいかないとフランクリン・ルーズベルトやジョン・F・ケネディたちは考えたのだが、アメリカの支配層はそう考えない。そして、1980年代からの本格的な規制緩和が始まり、社会システムは崩壊しつつある。 相場も新たな資金の流入が細れば頭打ちになって暴落するわけだが、その際、市場で主導的な位置にある人たちは暴落を仕掛け、損害を最小限に抑えることが可能だ。場合によっては儲けられる。そして、最終的な尻ぬぐいは庶民に押しつけ、貧富の差はますます拡大するということになる。 しかし、こうした投機経済にも限界がある。欧米のエリート層の内部にもそうした限界を感じている人たちがいるようで、金融規制に本腰を入れ始めたようだ。その第一弾とも言えそうな出来事が、アメリカのSEC(証券取引委員会)によるゴールドマン・サックスの訴追だろう。 さらに、5日には米上院で公的資金による金融機関の救済を禁じる金融規制改革法案修正条項を可決しているが、注目されているのは「CFPA(消費者金融保護庁)」の創設問題。巨大資本/富裕層が推進してきた「新自由主義経済」、要するに「遣らずぶったくり経済」に批判的なハーバード大学のエリザベス・ワレン教授の発案だが、この新しい官庁の創設にアメリカの金融界は反対している。すでに消費者は保護されているというのだ。 日本でも銀行、証券会社、保険会社などは多くの「金融商品」を考え出し、リスクを隠して売りまくり、トラブルを起こしてきた。ゴールドマン・サックスが訴追されたサブプライム・ローンの問題でも基本的に同じことが行われていた。きわめて不適切なビジネスでウォール街は儲けてきたと非難されている。こうした問題を知りながら報道しなかったメディアも同罪だ。 CFPAを発案したワレン教授とアメリカの金融界。意見をぶつけ合うのも悪くないと思う人は少なくないのだが、実現しそうにない。JPモルガンのジェイミー・デイモンはワレン教授との討論を拒否、ほかの銀行幹部も逃げ回っている。理由は言うまでもないだろう。欧米の株式相場が動揺している理由は、ギリシアの問題よりも、金融規制の問題の方が大きいかもしれない。
2010.05.08
米国ニューヨークの繁華街、タイムズ・スクエアで爆弾を積んだ日産パスファインダーが発見されたのは5月1日のことだった。イギリスのタイムズ紙によると、最初に問題の自動車を見つけて警官に知らせたのは、アリオウ・ニアッセというイスラム教徒の写真売りで、Tシャツを売っているランス・オートンとハンドバッグを売っているデュアン・ジャクソンも通報したと伝えられている。プライバシーを侵害し、「警察国家」への道を歩むという代償を支払って導入した監視カメラは機能していなかったということだ。容疑者のファイサル・シャーザドは、ジョン・F・ケネディ国際空港から離陸する直前に拘束された。 アメリカのメディア(必然的に日本のマスコミも・・・だが)は出所不明の情報に基づき、容疑者とタリバン、あるいは国際的なテロリスト組織とのつながりを報じているのだが、アメリカ中央軍のデイビッド・ペトレアス司令官は「単独犯」だと言明している。 ある米軍将校は容疑者がタリバンから爆破の訓練を受けたかもしれないと曖昧なことを言い、容疑者本人もパキスタンで訓練を受けたと認めていると報道されているのだが、SUVに仕掛けた爆弾では間違った爆発物(化学肥料をベースにしたIED)が使われていた。そこで、爆破に関する訓練を受けたという話に懐疑的な専門家は少なくない。 そこで出てきたのが容疑者の経済状況の話。破産状態だったというのである。アメリカ政府のイラクなどイスラム諸国に対する残虐行為に憤った結果として破産があるのか、破産したことが爆弾製造に向かわせたのかは不明だが、航空機内では逮捕されるの待っていた節もあり、単純な「報復話」は崩れつつある。「国際テロリズム」が云々かんぬんという種類の話に説得力はなくなってきた。ここ数年の不動産市場の破綻、そしてアメリカで深刻化している中産階級の崩壊が背景にあるかもしれない。 イスラエルのパレスチナ人に対する弾圧/殺戮を容認するだけでなく、アメリカは自らがイスラム諸国に軍事侵攻して占領、戦闘に関係のない住民を大量殺戮している。イスラム世界だけでなく、世界の多くの国々で反米感情が高まっていることは間違いないのだが、今回の爆破未遂事件では、アメリカ国内の経済事情も浮上してきた。
2010.05.08
今年の3月からイスラエルのハイファで興味深い民事裁判が進んでいる。2003年3月にガザ地区のラファーでイスラエル軍に殺されたアメリカ人女性、レイチェル・コリーの家族がイスラエルの国防省を訴えたのである。彼女は平和運動団体「国際連帯運動」の活動家で、パレスチナ人の家を破壊しようとしていたブルドーザーの前に立って抗議していて生き埋めにされたという。 当初、イスラエル政府は事件を目撃した証人4名が入国することを拒否し、ヨルダン川西岸にある団体の事務所をイスラエル軍は何度も家宅捜索していた。結局、アメリカ政府の圧力で証人の入国は認められている。 事件当時、アメリカは親イスラエル派のジョージ・W・ブッシュ政権だったが、アメリカ人が殺されたとなると無視はできない。日本の政府やマスコミなら「殺されて当然」のようなことを言いかねないが、アメリカはそれほど無神経ではない。ブッシュ大統領に対し、イスラエルの首相だったアリエル・シャロンは徹底した、信頼できる、透明性のある調査を約束している。 イギリスのインディペンデント紙によると、事件の3日後、イスラエルの憲兵が当事者から事情聴取するのだが、そこへ予備役の大佐が現れて取り調べを中止させたという。何かを持ち出したり、書き残してはいけないとドロン・アルモグ少将(事件当時の南部方面司令官)が命令したということだった。少将本人はこの証言を否定しているが、今後問題になることは間違いないだろう。 「戦車やブルドーザーの悪夢を見ている。長期にわたる陰湿な大量虐殺を私は目撃している。とても怖い。こんなことは止めなければならない。」という内容の電子メールをレイチェルは母親に送っていたという。
2010.05.07
鳩山由紀夫首相が普天間基地の問題で立ち往生している。いわば「蛇に見込まれた蛙」のような状況だ。勿論、「蛇」はアメリカ軍であり、「蛙」は日本政府である。首相!まさか、本気で沖縄の海兵隊、あるいは海兵隊を含むアメリカ駐留軍が「抑止力」だと思っているわけではないでしょう? 第2次世界大戦後、アメリカの軍や情報機関は沖縄を情報活動や軍事行動の拠点として利用してきた。例えば、中国に対する情報活動や軍事侵攻作戦、あるいは朝鮮戦争やベトナム戦争、いずれも沖縄なしには成り立たない。 それほど重要な沖縄だが、これまで自民党を中心とする政権の扱い方は冷たかった。その理由を沖縄と日本との歴史に求める人は少なくない。つまり、1609年に薩摩が軍事侵攻するまで、現在の沖縄には「琉球王国」が存在、日本の一部に組み込まれたのは明治維新後のことである。つまり、日本政府は「他国」である沖縄をアメリカへ差し出したという解釈だ。 ところで、アメリカ軍「トータルとしての連携」を考えれば、イラクやアフガニスタンでの占領と市民虐殺に沖縄のアメリカ軍は重要な役割を果たしている。先日、ニューヨークのタイムズ・スクエアでは爆破未遂事件があったが、その容疑者は、アメリカ軍の無人機による戦闘と無関係な市民殺害に憤っての行為だったと報道されている。 また少し前、WikiLeaksはイラクでアメリカ軍が上空から一般市民を銃撃している映像を明らかにしたが、地上の人々が戦闘員でないことを承知の上で、面白半分に殺しているようにしか見えなかった。こうしたことが占領地では続いているということだ。これが「抑止力」の実態である。 日本の全マスコミをチェックしているわけではないので断言はできないが、日本ではタイムズ・スクエアの事件で逮捕された容疑者が動機として何を語っているのか、あるいはWikiLeaksの映像が伝えられていないのではないだろうか? 日本では、マスコミも出版社もアメリカの残虐行為について触れたがらない。「左」とされている人の大半も、ある一線のところで立ち止まる。せいぜい「アリバイ工作」的に実態を隠した形で表面を撫で、「反体制」を気取る程度だ。 かつてアメリカは海兵隊を使った「棍棒外交」を展開していたが、フランクリン・ルーズベルト大統領が「急死」してから「破壊工作(テロ)部隊」が主役になり、例えば、核攻撃計画、フェニックス・プログラムのような「皆殺し作戦」、要人暗殺計画などを実行して、民主的な手続きを経て成立した政権を何度も軍事クーデターで潰している。また、麻薬密輸にも手を出したことも間違いない。ジョージ・W・ブッシュ政権から再びアメリカの正規軍が前面に出てきたが、いずれにしろ、アメリカは戦後、「民主主義の破壊者」として世界に君臨してきた。アメリカ軍を「抑止力」として考えることはできない。 中には、タリバンやアル・カイダなどの名前を出して「テロの脅威」を主張する人もいるだろうが、タリバンとはアメリカのエリートたちがアフガニスタンを支配するために作り上げたのであり、アル・カイダはアメリカの軍や情報機関がソ連と戦う「自由の戦士」として組織したのである。ちなみに、朝鮮は1980年代にイスラエルに対して相当量のカチューシャ・ロケット弾を売却(イランへ転売)し、90年代にはブッシュ家と親しい統一協会から多額の資金を提供されている。意外と、朝鮮は「西側」とつながりがある。 勿論、沖縄からアメリカ軍を撤退させた場合、その反動が来る可能性はある。最も警戒すべきなのは、アメリカを黒幕とする破壊行為だ。西ヨーロッパでは1990年に「NATOの秘密部隊」の存在が公的に確認されているが、そうした機関が日本国内でも作られているだろう。そうしたことを理解した上で日本は自立し、民主主義を実現するために前進しなければならない。アメリカと日本、両政府の沖縄の人々を無視した身勝手な計画は両国に深い傷を残すことになるだろう。
2010.05.07
タイムズ・スクエアの爆破未遂事件を受け、相も変わらず、アメリカのメディアは「反イスラム」を叫び始めた。イスラム国を侵略し、戦闘とは無縁の市民を虐殺しているのがアメリカ軍を中心とする占領軍だということを気にもしない。(日本のマスコミはアメリカよりひどいが) 被差別部落やアジア人蔑視の問題にも通じるが、支配層は人種、民族、宗教などで差別が起こるように演出してきた。庶民を分断し、そのエネルギーが自分たちに向かうことを避ける手法のひとつだ。ソ連が消滅した現在、アメリカでは差別の主な対象が「イスラム教徒」になっている。 今回、爆弾を仕掛けられたSUV(1993年型の日産パスファインダー)を発見したのは露天商で、監視カメラは役に立たなかったとして笑われている。この「自動車爆弾」を発見したとして、Tシャツを売っているランス・オートンとハンドバッグを売っているデュアン・ジャクソンが注目されているが、イギリスのタイムズ紙によると、最初に発見して警官に知らせたのはアリオウ・ニアッセという写真売りで、イスラム教徒の移民だという。爆弾で死傷者がでなかったのは、イスラム教徒のおかげだと言うことができる。 そうした話はアメリカのメディアのとって都合が悪いからなのか、注目されていない。マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が米国テネシー州のメンフィスで暗殺されてから42年、アメリカの差別は続いている・・・日本と同じように。
2010.05.06
タイムズ・スクエアーで爆弾を炸裂させようとしたとして、ファイサル・シャーザドがジョン・F・ケネディ国際空港で逮捕された。本人も容疑を認めているようだが、その動機はパキスタンで非武装の一般市民が占領軍の無人軍用機に殺される様子を目撃したことにあると報道されている。昨年以来、全く戦闘とは関係のない市民を数百名、ある推計では約700名を無人機は殺している。 パキスタンのシャー・メフムード・クレシ外相は事件に絡んで2名を同国で逮捕したと発言したが、その際に無人機による市民殺害に対する報復だとする見方を示している。イラクでアメリカの戦闘ヘリが市民を殺戮する様子をWikiLeaksが公表しているが、ベトナム戦争でも似たことが行われていた。無人機にしろ軍用ヘリにしろ、市民の「殺戮」は反米感情を高め、新たな「戦士」を作り出すことになる。 よりによって先週末、バラク・オバマ大統領は無人の攻撃機「プレデター」をジョークに使っていた。その時点でも無神経だと批判する声があったが、タイムズ・スクエアーの事件と無人機との関係が指摘されてからは、批判する声が高まっている。 今回の爆破未遂事件では、シャーザドを追跡したのは「GR/CS(ガードレール・コモン・センサー)システム」を積み込んだRC-12という軍のスパイ機だとする話も流れている。無人機で殺害してスパイ機で監視する・・・SF映画が現実化している。
2010.05.05
沖縄の宜野湾市にある米海兵隊の普天間基地が問題になっている。1995年にアメリカ兵が少女を暴行した事件が発端になって沖縄では米軍駐留に反対する声が高まり、「普天間基地返還」の流れができたと言う人もいるが、日米両政府がそうした運動で動かされるとは思えない。沖縄に住む人々の気持ちを考えているならば「県内移設」などを口にできるはずがない。 普天間基地の問題を理解するためには別の「カギ」を探す必要がある。つまり、1996年に閣議決定された「防衛計画の大綱」、その翌年に発表された「日米防衛協力のための指針」、そして1999年の「周辺事態法」だ。問題の根にはアメリカの世界戦略が存在している。 日本に限らず、好戦派は「抑止力」という表現を使いたがる。報復攻撃力を持つことで先制攻撃を抑止すると言いたいのだろうが、少なくともフランクリン・ルーズベルト大統領が1945年4月に「急死」してからのアメリカには当てはまらない。好戦派は戦争したいだけなのだ。 ドイツ降伏した1945年5月にイギリスのウィンストン・チャーチル政権が「アンシンカブル作戦」、つまり数十万人の米英両国軍が再武装されたドイツ軍兵士10万人とともにソ連に奇襲攻撃を仕掛けるという計画を立てていたことは「別の国の話」だとしても、ソ連を核攻撃する計画はアメリカでも練られていた。ドイツ軍との死闘で疲弊していたソ連を潰すのは容易だと考えたのであろう。 広島や長崎へ原爆を投下したのも、ソ連に対する示威行動だと解釈する方が自然だ。何しろ、日本の敗北は明白であり、原爆を投下して非戦闘員を大量虐殺する必要はなかった。原爆投下だけでなく、東京などの都会を絨毯爆撃して市民を焼き尽くす作戦を指揮したカーティス・ルメイはソ連を核攻撃するべきだと主張するグループの主要メンバーである。 大戦後、アメリカは中国に国民党政権を樹立する予定だった。1946年の段階ではアメリカ軍の最新装備を持つ総兵力430万人の国民党軍が圧勝するのは間違いないと見られていた。何しろ紅軍は日本軍から奪った兵器しか持たず、兵力は120万人にすぎなかったからである。 ところが、1947年の夏になると兵力は、国民党軍365万人に対して人民解放軍(紅軍から改称)は280万人と接近、1949年1月には解放軍が北京に無血入城し、10月には中華人民共和国が誕生した。 元特務機関員で戦後はアメリカの情報機関で活動していた人物によると、1948年には中国共産党の幹部を暗殺し、混乱の中で親米派の軍隊を蜂起させて国民党政権を樹立させるという計画が存在したのだが、この計画が共産党側へ漏れたために中止、1950年の春には朝鮮半島で挑発活動を始めたという。その延長線上に朝鮮戦争やベトナム戦争があるのだが、その間にアメリカの情報機関は国民党軍を使って中国侵攻を何度か試み、失敗している。 テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授(経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスの息子)によると、1957年初頭にアメリカ軍はソ連に対する先制核攻撃を準備しはじめ、1963年の後半には実行するつもりだった。その計画を阻止したジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月に暗殺されている。 ケネディ暗殺の背後にソ連やキューバが存在すると好戦派は大統領に示唆、外部にもリークしたが、FBIがCIAの秘密工作を監視していたため、攻撃は実現していない。この間、アメリカ軍は核兵器を使わなかったのではなく、使えなかったのだ。少なくとも当時のアメリカ軍にとって、核兵器は決して「抑止力」ではなかった。沖縄に集中しているアメリカ軍の基地も「抑止力」ではなく、アジア全域を睨む「攻撃力」としての性格が圧倒的に強い。
2010.05.05
1970年5月4日、米オハイオ州のケント州立大学で4名の学生が州兵に射殺されるという事件があった。事件から40周年ということもあり、アメリカの内外で取り上げられている。 事件の背景にはアメリカ軍によるカンボジア空爆という事実があり、戦争に反対する学生が抗議活動を展開していたのだ。泥沼化したベトナム戦争から抜け出すはずだったリチャード・ニクソン政権は1969年3月、カンボジアに対する大規模な空爆を秘密裏に開始、その1週間後にカンボジア政府はアメリカ軍によるカンボジア領内の爆撃を非難、その2日後にはノロドム・シアヌーク元首相も記者会見を開き、農民、女性、子供が犠牲になっているとして爆撃の中止を求めている。 これに対し、アメリカの大手メディアは反応せず、せいぜいニューヨーク・タイムズ紙のウィリアム・ビーチャーが「ベトコンや北ベトナムの軍事物資集積所や基地への攻撃」と書いた程度だった。 ところが、爆撃を主導していたヘンリー・キッシンジャーはこの記事も許すことができなかった。爆撃自体が秘密だったからである。そこで、キッシンジャーはJ・エドガー・フーバーFBI長官に対し、ビーチャーの情報源を調べるように命令、それから21カ月間、政府職員13名とマスコミ関係4名に対する盗聴が続くことになった。 その後も続いた空爆で殺されたカンボジア人は約60万人におよび、約200万人が難民になったと言われている。1975年から78年にかけてクメール・ルージュ(ポル・ポト派)に処刑されたカンボジア人は7万5000人から15万人、飢餓や病気などで死んだ人は約100万人と言われている。飢餓や病気による死にはアメリカ軍も責任があることを忘れてはならない。 しかも、1979年にポル・ポト派政権が崩壊してヘン・サムリン政権が誕生すると、アメリカはクメール・ルージュを支援したという。ジョン・ケリー米上院議員の側近だったジョナサン・ウィナーは1986年に、「ワシントンは1980年以来、クメール・ルージュ軍に8500万ドルを提供している」と主張している。 アメリカの大手メディアはカンボジアの空爆に関して沈黙していたが、ニクソン大統領は1970年4月30日になってカンボジアを攻撃している事実を公表、翌日にはケント州立大学の学生約500名がデモを行っている。5月2日にケント市のレロイ・サトロム市長は緊急事態を宣言、オハイオ州のジェームズ・ローズ知事に州兵の派遣を要請し、夜には部隊が同市に到着している。 4日には抗議活動のために約2000名が集まり、行進を始めた。そして12時24分頃に州兵から銃撃されて4名が殺されたのである。犠牲になったのは抗議に加わっていたアリソン・クローズとジェフリー・ミラー、そして教室に向かっていたサンドラ・シュアーとウィリアム・シュローダーだ。事件の真相は今でも明らかにされていない。
2010.05.04
東京都目黒区の「自由が丘」で監視カメラ15台が繁華街を取り囲むようにして新たに設置され、運用が始まったそうだ。 この地区では、行政、警察、地元住民が協力して治安対策に取り組んでいて、2年前には商店街がすでに36台の監視カメラを設置済みだ。監視カメラへの信頼はどこからくるのか知らないが、もうそろそろ地区の名前を変えるべきだろう。監視カメラを設置すれば「安全」になるという発想も恐ろしい。 ところで、アメリカのニューヨークでは、監視カメラが役に立たないとして物笑いの種になっている。タイムズ・スクエアーに駐車していたSUV(1993年型の日産パスファインダー)に爆弾が仕掛けられていたのだが、この「自動車爆弾」を発見したのは警官でも監視カメラでもなく、ふたりの退役軍人、つまりTシャツを売っているランス・オートンとハンドバッグを売っているデュアン・ジャクソンだった。 その後、監視カメラの映像から怪しい人間を警察は捜し、自動車の名義人を事情聴取しているようだが、容疑者の逮捕には至っていないようだ。 タイムズ・スクエアーにも多くの監視カメラが設置されている。市民団体の調査によると、1998年の段階で75カ所(マンハッタン全体では2400カ所弱)、2000年5月には131カ所、2002年9月には258カ所、そして2005年5月には604カ所に増えていた。監視カメラのメーカーが儲かったことは確かだろうが、どの程度有効なのかは不明であり、市民監視という「副作用」も問題だ。犯罪者ばかりが監視されているわけではない。
2010.05.03
通常国会に政府は「放送法等の一部を改正する法律案」を提出している。「60年ぶりの大改正」で、ブログなどネット・コンテンツ全てが規制の対象になる。どのコンテンツが「放送」なのかは省令で、つまり大臣が決めるというのだ。実は、内容の詳細をこれまで知らずにいた。自らの不明を恥じるばかりである。 問題になっている箇所のひとつは、「地上波のテレビ・ラジオを除く放送事業者」に対して総務大臣が「業務停止」を命令できるという点。すでに、身も心も権力グループに捧げ、「プロパガンダ機関」として機能している「基幹放送」、つまり地上波放送局や衛星放送などは業務停止の対象から外されている。 個別の番組で権力グループにとって都合の悪い情報を取り上げることもあるが、それは例外中の例外であり、個別に対処することができる。政府機関にしろ大企業にしろ、自分たちの意に反する形で情報を番組として取り上げられそうなら、あらゆる手段を使って潰してきた。公の場で問題になることはほとんどない。 既存のマスコミは企業であり、金儲けを目的としている。スポンサーの意向に逆らえば業績が悪化するのは当然であり、銀行が融資を渋れば倒産してしまう。スポンサーや銀行には逆らえない。スポンサーや銀行を動かすことのできる人物や組織にもマスコミは逆らえないということだ。 勿論、インターネットに問題がないわけではない。単に誹謗中傷するだけという書き込みやブログも存在し、自分たちが思い描く妄想を書き連ね、扇動する人たちもいる。嘘も繰り返せば本当だと信じる人も出てくるだろう。(ま、既存のマスコミも大差はないが)犯罪行為を煽るだけでなく、犯罪行為そのもののようなサイトもなくはない。 しかし、だからといって、言論の自由を規制するべきではない。言論を封じ込めるために、権力グループが誹謗中傷、扇動、犯罪助長といったサイトを放置し、場合によっては息のかかった連中に作らせることさえありえる。戦後、1960年代から1980年頃にかけてイタリアでは情報機関(バックはCIA)が「右翼グループ」を使って爆弾テロや要人誘拐などを繰り返していた。社会不安を煽り、「左翼の恐怖」を演出し、反民主主義的な「治安システム」を築いていったのである。 少し前、東京都は「青少年健全育成条例」を改定し、アニメなどに登場する「18歳未満と判断される架空の人物」の性描写を規制対象にするという話が流れ、批判を浴びた。性描写の規制から言論の弾圧は始まるとも言われているが、この条例と放送法の「改正」は同じ流れの中、庶民の言論を封印するという目的で出てきたと考えるべきだろう。 放送法の「改正」を問題にしない日本のマスコミは、中国政府とGoogleとの対立には敏感に反応していた。このGoogleは不特定多数の個人情報を入手、蓄積している会社であり、Googleのアプリケーションを使えば使うほど、Googleに個人情報を握られてしまう。検索パターンを知られるだけでなく、使うサービスによっては、声紋や知人の写真まで記録されてしまう。しかも、同社がアメリカの情報機関と密接な関係にあることも秘密ではない。人と人とのつながり、あるいは情報機関や捜査機関への情報提供ということもあるが、それ以上の関係だ。例えば、Google Earthの技術を開発したKeyhole、そのKeyholeに設立資金を出したIn-Q-TelはCIA系のベンチャー・キャピタルだ。
2010.05.03
訪問先のシリアで、イランのモハマド・リダ・ラヒミ副大統領は、イスラエルがシリアを攻撃した場合、「イスラエルの足を切り落とす」と語った。イスラエルやアメリカのシリア批判に対する「回答」だとも言えるだろう。 シリアがヒズボラにスカッド・ミサイルを渡しているとイスラエルのシモン・ペレス大統領が4月の初めに非難したのに続き、27日にはロバート・ゲーツ米国防長官が、また29日にはヒラリー・クリントン米国務長官が同じ趣旨の発言をしている。 ところが、こうした主張を裏づける証拠が示されているわけではなく、胡散臭いと感じている人は少なくない。アメリカ政府の内部にも「スカッド・ミサイル話」に懐疑的な人たちがいると報道されている。 ミサイルをシリアがヒズボラに供給しているとする主張をシリアやレバノンの政府は否定、ヒズボラは「大きなお世話だ」としている。また、こうしたイスラエルの発言は軍事侵攻の布石だとする見方も存在する。 現在、イスラエルは国際的に孤立しつつある。ガザへの軍事侵攻で「戦争犯罪」があったと指摘される一方、核問題でイスラエルだけが特別扱いされることを批判する声も大きくなっている。「核兵器の削減」に取り組んでいると称するバラク・オバマ米大統領としても、イスラエルはNPT(核拡散防止条約)に調印するべきだと発言せざるを得ない状況だ。 勿論、イスラエルはオバマ発言を無視し、NPTに調印するつもりはないと開き直っている。第4次中東戦争の際、イスラエルは実際に核攻撃の準備をしていた。ソ連が動かなければアメリカは黙認しただろうとも言われている。 アメリカにしても、中東の油田地帯を核攻撃されてはかなわない。イスラエルの核兵器はアメリカを操る有効な道具だとも言えるだろう。パレスチナ人の弾圧/虐殺を非難する声を封印する切り札と考えているかもしれない。 こんな状態でイランが「核兵器を開発するかもしれないと」大騒ぎしているアメリカの滑稽さが際だつ。要するに、オバマ大統領は核兵器の廃絶を目指しているわけではなく、核兵器の独占を願っているだけのこと・・・少なくとも彼の行動を見る限り、そう結論せざるをえない。イスラエル問題を解決しないかぎり、核問題は一歩も前進できない。 イスラエルが国際的に孤立するなか、南アフリカのシオニスト(ユダヤ教徒とは区別する必要がある)団体はイスラエルのガザ侵攻を調査したリチャード・ゴールドストーン、この人物は「ユダヤ系」なのだが、このゴールドストーンに嫌がらせをする一方、チェコではシオニスト団体が小規模ながら、イスラエル支持のデモを行っている。 入植問題もそうなのだが、最近のイスラエルは以前にも増して傲慢になっている。その背景として、アメリカのネオコンだけでなく、ウラジミール・プーチンにロシアを追い出された「富豪」たちの存在も無視できないだろう。巨万の富を抱えてロンドンやイスラエルへ彼らは亡命し、イスラエルの政策にも影響を与えているのだ。
2010.05.01
全35件 (35件中 1-35件目)
1